○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、提案者の皆さんがこの法案をしきりに理念法というふうに繰り返しておっしゃいますので、この法案の中でキーワードになっています部落差別の解消に関する施策に関係して、ちょっと質問の通告の順番と変わりますけれども、現在も西日本を中心に全国各地に残っている同和対策事業の特別扱い、この問題についてこの法案がどう考えるのか、お尋ねをまずしたいと思うんですけれども。
先ほど有田議員から福岡のお話が少しありました。私、福岡の北九州市の出身で、この福岡県下、旧同和地区が数多くございます。
そうした中で、この同和対策の特別事業が、二〇〇二年三月に国の事業は完全に終了したにもかかわらず、自治体において、特別扱いが個人給付も含めて今も続いているという自治体が幾つもあるんですね。詳しく御紹介をするのはまたの機会にしたいと思いますし、紹介するだけではなくきっぱりたださなければならない、特別扱いはなくしていかなきゃいけない、つまり、垣根は、これはなくしていくというのが私たちが部落問題を解決する道だと思うんですよね。
ところが、福岡県の、最近合併がありましたので旧と言った方がいいんでしょうが、旧筑紫郡という地域があります。この市町には同和対策の特別事業がたくさん残っております。
ある市では、個人給付を含めて同和対策事業費が四億五千七百三十六万という規模。中身は、老人福祉費、これは介護サービスの助成金、老人医療費を助成する、あるいは旧同和地域の隣保館費、児童センター費、あるいは解放保育園などと言われる保育所の費用、それから住宅管理費などなど、こうした大きな金額があるわけですね。
名目は、あるいは事業名は少々違っても、個人給付の仕組みとかテーマというのは多くのところで共通するわけですが、また別の市では、短期一日人間ドック事業、あるいは固定資産・都市計画税の減免、中、高、大学、専修学校の入学支度金、高校、大学、専修学校の進学奨励金、五歳未満児医療費の扶助事業、それから自動車の技能取得訓練費、これはいわゆる免許を取りに行くというこの費用の個人的給付なんですが、あるいは保育料の減免などがありまして、これ、最近の年で一億九千七百二十五万円、およそ二億円、そんなに大きな町ではないんですけれども、そういう規模で特別扱いが存在するわけです。
これ、どうしてこうなっているかと。これ遡りますと、昭和四十年代、私が、六〇年代後半から確認・糾弾路線で解同が極めて暴力的に行政への圧力を加え続けたという時期があります。せんだって御紹介した八鹿高校事件というのは、直接行政ということではなく学校ですが、あれも、県あるいは教育委員会全部巻き込んで、圧力を掛ける中での起こった事件なんですよね。この市町のところでは、一九七九年の六月に一通、そして十二月にもう一通、その自治体の首長たちと部落解放同盟筑紫地区協議会との間で確認書というのが交わされ、言わばこれに基づいてずっとこの同和の特別扱いが続いてきたわけですね。
そこで、発議者にお伺いをしたいんですけれども、この今度の法案というのは、これは成立すれば地方自治体がその地域の実情に応じて施策を講ずるように努める、あるいはその施策に資するものとして、皆さん、そうやって地域を特定するんじゃないというふうにこの間おっしゃっているんですけれども、何にせよ、全国規模だとか、あるいは、衆議院段階でしたか、エリアごとにというので、例えば九州なら九州という地域の実情に見合って実態調査をするというふうにおっしゃっているでしょう。こういうもので実態が調査をされる、そうしたら、それを引き続き部落差別が極めて深刻な状況にあるというふうに受け止めての特定運動団体が、今度は、この部落差別解消法というのがあるではないか、ここで国、自治体はそうした施策を行うと書いてあるではないか、この差別の、つまり我々が差別と認定するこの事態を解決をするためにこういう個人給付だってすべきではないか、あるいは、皆さんがやらないとおっしゃっているんですけど、地域改善事業のような、そうした事業もやれと言われたときに、何しろ現にやっているわけですから、特別対策として、今やっている特別対策を拡充せよとか、あるいはもうやめるなと、これからずっとこれやれと、そういう足掛かり、根拠に使われてしまうじゃないか、それは当然の懸念だと思うんですが、しかも、法文を見る限り、それを排除する、そんな条項はどこにもありません。これは発議者、どう考えているんですか。
○衆議院議員(宮崎政久君) 幾つかの御指摘をいただきましたけれども、まず、例えば財政措置が伴うようなことについて、この法律を根拠として行政に対して行為を求めていくことはできないというふうに考えております。
この法案は、生活環境の改善などのために行う事業について定めている旧同和三法とは異なりまして、部落差別を解消する必要性に対して国民一人一人の理解を深めるように努めることによってその解消を図ろうとするものであります。ですから、財政出動に関する規定は一切置いていないところでありますので、この法案において、部落差別の解消に関する施策として、相談体制の充実と教育及び啓発と部落差別の実態に係る調査の三点のみを定めておりますので、本法案ができたということを根拠として国や地方公共団体が旧同和三法のような形で地域改善対策特定事業のような財政出動を求めているわけではありませんし、また、そのような根拠に使われるものではないというふうに考えているところであります。
○仁比聡平君 いや、私の問いに答えていただけないんですが、今、宮崎提案者がおっしゃったことは条文のどこにも書いていないでしょう。
少なくとも、提案者の皆さんはよくよく財政措置を伴う法文がどんなふうになっているというのにお詳しくてそんなことをおっしゃっているのかもしれないけれども、だって、国民一人一人に理念を呼びかけているんでしょう。国民が見たときに、第三条、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関する施策を国は講ずるって書いてあるでしょう。二項には、地方公共団体は、繰り返しませんけど、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めると書いてあるじゃないですか。確かに地方自治体は義務付けはされていないかもしれない。だけど、努めるって書いてあるんだから、目の前にこんなに差別があるんだから、だからこれは講ずるのが当然ではないかという論拠になるのは間違いないんじゃないですか。そうしたら、自治体の皆さんは、それは違うんですとどうやって言ったらいいんですか。
○衆議院議員(宮崎政久君) まず、この法案の規定ぶりについてでありますが、先ほど御説明を申し上げましたとおり、旧同和三法とは異なって、財政出動に関する規定は一切置いていないわけであります。ちなみに、旧同和三法におかれましては、旧の同和対策事業特別措置法では、第二条で同和対策事業について第六条各号に掲げる事項を実施する事業だという定義付けをした上で、第六条に国の施策があるわけでありまして、それを受けて、第七条で特別の助成ということで、同和対策事業でこれに要する経費について国が負担し、又は補助するものに対するその負担又は補助についてという形で、この支出についての算定の仕方などについても規定をしているところでありました。
また、旧の地域改善対策特別措置法においても、目的や地域改善対策事業の推進等が一条、二条というところで定められました上で、第三条で特別の助成という形で、この経費について国が負担又は補助することを定めた上で、その予算の範囲内での三分の二の割合をもって算定するということも定められておりました。
また、旧の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、これは法律の名前からいたしましても財政上の措置について定めたものでありますけれども、第二条において、地域改善対策特定事業について定義を置いた上で、その事業の内容を示した上で、続く第三条において特別の助成ということで、これに要する経費について国が負担し、又は補助するものについて、その算定の割合について、三分の二の割合でありますけれども、こういった定めを置いていたわけであります。
本法案について、今回定める法案を提出するに当たっては、このような形での財政上の措置を伴うような事項については定めておりません。そして、その上で、第二条で基本理念のところで、繰り返しになりますけれども、一人一人の国民に対して部落差別の解消の必要性の理解を深めるということで、その旨施策を行っていくという基本理念を定めているものでありまして、こういった定め方から財政上の措置はされないということを規定ぶりとして定めているところであります。
○仁比聡平君 そうすると、この基本理念というものが理解を深めると書いてあるんだから、理解を深めるのに財政措置は、これは掛からないというか、含まないというか、ないとか、そういうことですか。
○衆議院議員(宮崎政久君) 規定の、今第二条に触れましたのは、第二条の基本理念でこの法案の趣旨を定めているということを説明をしたわけでありますが、財政措置がないと、財政措置に関しては先ほど申し上げたような形で旧同和三法との対比をさせていただきましたけれども、そのような定めを一切置いていないということが、この法案の中で財政出動の措置が、とることを目的としていないということを表していると説明したものであります。
○仁比聡平君 いや、提案者の皆さんそうおっしゃるんですから、国会議員やあるいは国の機関は、自治体からそういう相談がもしあったら的確にそういうお答えをされるということなんでしょうけれども、ただ、部落差別を解消するための施策ということの実現を掲げて、言わば理念で迫ってくるというそうした圧力に、これで本当に現場の自治体の職員の皆さんや首長さんが行政の自主性を失うことなく本当に対応できるのかと。
先ほど私が挙げている町の二つの確認書をちょっと紹介しますと、まず最初に問題にされたのは、実態調査も行わない、部落差別の現実さえ把握しないまま同和行政の具体的施策は推進できないと。これ、確認書の中で、これを実施していない市は、同和問題が行政の最重点課題になっていなかった、これは部落問題を自分の問題として捉えていなかった首長自身に原因がある、部落問題についての認識を深めるためのあらゆる研修を定期的に積極的に行っていく、その計画や講師の選定については筑紫地協、つまり解同と協議をして決める、あらゆる部落解放のための事業を進めていく上で、筑紫地協を唯一の協議団体とし、協議を密にし、連携を深めていくという確認書が交わされているんですね。もう一通の確認書には、もっとあからさまで、町長は部落問題を自分の問題として捉えていなかった、このことは町長自身の差別性である、今日までの取組は差別行政であった、部落解放は行政の責務であり、部落を解放するためのあらゆる事業については赤字になってでも取り組んでいくという確約があるんですよ。これは一貫してどうなったか分からない。
実際、ここまでの主体性を奪われてしまって確認書を結ぶというのは、それはその行政に対する確認・糾弾がもう極めて激しく行われているからでしょう。そうそう簡単に首長や職員の皆さんが屈するわけがない。だけれども、それを屈せしめるところまで、部落民以外は差別者である、その差別性は解同が認定するのであるというこの確認・糾弾というものが部落解放運動を大きくゆがめ、行政をゆがめたわけです。それが歴史の痛苦の教訓なんですよね。
そこでお尋ねをするんですが、発議者、今日はおいでではないんですけれども、衆議院の五月二十五日の質疑で山口提案者が、糾弾、これも一切ないようにかなりきちっと心掛けて条文を作ったつもりと答弁をしておられるんです。これ、先ほども少し関わる御答弁があったんですが、先ほどは条文をきっちり作ったというお話では全然なかったんですけど、条文のどこに今私が申し上げているような運動を排除するという規定がありますか。
○衆議院議員(門博文君) 今の、去る五月二十五日、衆議院の法務委員会での山口提案者の答弁の一部を御指摘をいただいておりまして、繰り返しますけれども、糾弾、これも一切ないようにかなりきっちりと心掛けて条文を作ったつもりですという答弁に対して、法文のどこにそういうものが担保されているかという御質問だと思いますけれども、私は山口提案者と一緒にこの立法作業にずっと携わってきた者でありますし、そしてまた、その過程において様々な方々から、そして様々な団体から御意見を賜ってまいりました。その上で、今御指摘いただきましたこの「糾弾、これも一切ないようにということをかなりきちっと心がけて」という後の「条文をつくったつもり」というのは、立法作業をしてきたつもりということで、その趣旨で山口提案者は御発言をされたというふうに思います。
その上で、今御指摘いただきました、そしてまた先日の参考人質疑でも様々な糾弾の歴史について参考人からそれぞれ意見が陳述されたところでありますけれども、私たちも、かつてのこの民間団体の行き過ぎた言動並びに糾弾については大変問題意識を持っておりまして、このことが差別意識の解消を阻害し、そしてまた新たな差別意識を生む要因となり得るという点については強く認識をしております。
○仁比聡平君 いや、提案者の方々のお一人お一人の議員としての思いはそれはそうでいいですよ。けれども、恒久法をお作りになるわけでしょう。独り歩きするじゃないですか。何にしろ、それが政府解釈かどうか、あるいは有権解釈かどうかが現場で問題になるんじゃないんですよ、ここにこう書いてあるじゃないかとやるわけですから。それを阻む条文がどこにありますかと聞いたら、そういう意味の答弁ではなかったというのは驚きです。
実際、今、部落解放同盟が私が御紹介したようなことを暴力を使ってやっているかということを声高に申し上げようとしているわけじゃないんです。けれども、おとといの参考人質疑で解同書記長の西島参考人は、私が、二〇一一年に改定をされた部落解放同盟の綱領の解説文書だということで解同のホームページにアップされているし、この委員会の調査室の資料としても配付されているその資料をお示しして、そこの中に糾弾というのはこれは堅持すると書いてあるから、だから、かつてのようなこういう確認・糾弾というのが今も生きているのかと趣旨のお尋ねをしたら、いや、いつの時代の文書に基づいてそんなこと言っているのかと、お答えにならなかったんですよね。
その確認・糾弾の中で、およそ四十二年前になるんですが、八鹿高校事件に至るエスカレートというのがありました。この事件についての総括を有田議員がお聞きになったんだけれども、私に対しても有田議員に対してもですが、五十年ほど前の事件ですからということで直接その総括というのはお答えにならなかった。
そうすると、この糾弾というのは解同の運動方針の何しろ基本の第一に掲げられていますから、そうした下で全国各地で、例えばせんだって御紹介しましたから議事録などで御覧になったのかもしれませんけれども、大分県の宇佐市に対して昨年の夏に八十数項目の個人給付も含めた要求書が提出され、市がそれを応じるという、そうした状況になっているわけなんですね。
そういう下で、この確認・糾弾というのをこれどうやって、復活をやめさせるといいますか、そういう行政の主体性をしっかり確保して、民間運動団体のそうした不当なやり方というのをこれやめさせていこうということなんですか。
○衆議院議員(宮崎政久君) 今御指摘がありましたようなその民間運動団体の行き過ぎた確認・糾弾行為、これが不適切なものであるというふうなことについて、提出者としてもその認識は共通しておるところであります。
そして、この法律案の中でどうなのかと言われたら、これはやはり理念法であって、そしてこの法律の中では、具体的な施策としては、四条の相談体制の充実、五条の教育及び啓発、そして第六条の部落差別の実態に係る調査というところに規定をしているところでありまして、この法律が定めることによって、今御指摘のような形で確認・糾弾が、例えばその根拠を与えるような、裏付けになるようなことはないということは再三再四申し上げているところでございますし、また、そのことに敷衍しながら、第二条の基本理念の中では、この法律案というのは、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによって、部落差別のない社会を実現することを旨として行わなければならないというふうに定めているということを指摘したわけであります。
それで、御指摘のとおり、私ども提案者も、先日の参考人質疑、これも映像でも確認もさせていただきましたし、記録の上でも読ませていただきました。
その中で、灘本参考人のお答えの中で、今のような御質問に対して灘本参考人はこんなふうにもお答えになっておられていました。この法律を見ると、何かよこしまな人が入ってきてあれもこれも差別だと言い立てて、何か利権を昔のように貪るようなことは到底不可能な程度のと言ったらちょっと申し訳ないですけれども、そういう法律じゃないかなと思うんですね、だから、それほど何かおいしいことは何も書いていないんじゃないかというので、そういう危惧は、そういう危惧というのは、これも部落差別だから解消するためにこれもやれという要求を地方公共団体に言ってくる可能性という仁比委員の御質問の中のことをおっしゃっていると思うんですが、そういう危惧は私は法案を読む限りは払拭しましたけれどもという御意見がありました。
私どもは、こういった形で理念法を定めさせていただいて、不当な要求であるとか、そういった言動に対していささかの根拠も与えるものではないということを繰り返し述べているところであります。
○仁比聡平君 いや、何言っているんですか。灘本参考人がそうおっしゃったのは、それは当然でしょう。私も伺っています。その引用をして提案者の答弁にするというのは、一体どういう了見ですか。提案者なら自らの言葉で語るというのが当たり前じゃないですか。答弁の中に灘本参考人の質疑が引用されているって、一体どんな議員立法だ。
大臣はこの点について、お伺いはしませんが、十一月の二十二日でしたかの質疑で、私が申し上げているような、民間運動団体の行き過ぎた言動等によって、行政の主体性の欠如、あるいはえせ同和行為の横行が見られるという、この問題が新たな差別意識を生む要因になり得るという点については、現在も変わらないものと承知をしておるという御答弁をなされておりまして、これ極めて重要だと思うんですよね。確認・糾弾の通知が平成元年に出されて、もう二十五年、四半世紀たっているから、だからもうこれ消えているのかと。二十五年じゃないか、二十七年ですか。そんなものではない、そこははっきりとさせておきたいと思うんです。
そうした中で、これが差別だ、これは差別ではないかといって不当に圧力を掛けてくるということがあったときに、いや、これは、ここに言う部落差別というのはこういう意味ですから、だからあなたのおっしゃるのは差別ではありませんというふうに言えるのか言えないのかというのは、前面に立たされる行政の職員にしてみれば極めてもう重要な問題ですよね。だから、私は部落差別というのはどういう意味なのかと繰り返しお尋ねしてきたわけですが、結局、最後、今日に至るまでよく分からない。
そこで伺うんですけれども、この部落の出身者であることによる差別という考え方は、部落解放同盟の綱領にある部落民の定義と同様です。そして、せんだって解同書記長参考人にこの出身に当たる部分のお考えを伺いましたら、そういう定義ではないんだと。社会の側が、おじいちゃんやおばあちゃんや、もしかしたらその上までたどって差別をする、それに対して、言わば運動の構えといいますか、そういうものを示しておられるというような御趣旨だと私は受け止めたんですけど、そうすると、解同の皆さんもそうした、何というんでしょうか、きっちりした範囲みたいなのを確定しておられるわけじゃない。だけれども、皆さんは、一義的に明確であって、これは行政にとっても明確だとおっしゃり続けてきたわけです。
そこで、出身というのをどんなふうに考えておられるのか、ちゃんと伺いたいと思うんです。そこに住んでいるという、居住している、あるいはかつて本人が住んでいた、あるいは、自分は住んだことはないけれどもお父さんやお母さんがそこに住んでいたことがあるとか、親も住んだことはないけれどもおじいちゃんやおばあちゃんがそこに住んでいたことがあるとか、もしかしたら更に本籍をたどるとか血統をたどるとか血縁たどるとか、そういうような、出身というのはそういう概念たり得るでしょう。どこまでということなんですか。
○衆議院議員(宮崎政久君) お答えするまず前提として、この法案は、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによってその解消を図ろうとしているものでありまして、対象地域や対象者を特定して何らかの施策を行うことを求めるものではないと、こういうことを踏まえた上で、今、部落出身者ということについて定義規定は置いていないわけであります。
その上で、お尋ねがありますので、出身という言葉は、一般的にはその生まれた土地や卒業した学校などがそこにあることというふうに解されているというふうに理解をしております。ただ、本法案は、繰り返しになりますけれども、部落差別そのものの解消を目指しているものであって、その差別の理由が部落に関係あるものであるとすれば、実際に、ある個人であるとか、今御指摘があったような親族であるとか祖先とかの住所や出自が特定地域であったかどうかということに関係なく、本法案ではその施策の必要な範囲でということで射程になってくるというふうに考えているところであります。
○仁比聡平君 ごめんなさい。たどることなく、誰が対象になるんです。もう一回お願いします。
○衆議院議員(宮崎政久君) 最後の部分でよろしいでしょうか。
この法案自体は部落差別そのものの解消を目指しているものでありますので、差別の理由が部落に関係するものであるとすれば、それが実際にある個人であるとか、御指摘あったような例えば親族であるとか祖先の住所や出自が特定地域であったかどうかということに関係なく、本法案の射程になってくるというふうに考えているところであります。それはつまり、先ほど申し上げましたとおり、この法案が対象地域や対象者を特定して何らかの施策を行うことを求めるものではないからであります。
○仁比聡平君 いや、重大じゃありませんか。初めて御答弁になったら、そんな答弁している。
長野県に旧同和対象地区のある御代田町がありまして、茂木祐司町長のインタビューを衆議院で皆さんお聞きになったと思うんですね、私どもの議員から。そのインタビューの中で町長は、行政が部落の人と特定し特別な事業をする場合、その人はどこに行っても部落の人となりかねません、結婚するとその家も対象になります、解消どころでなく、逆に部落の復活になりますとおっしゃっています。今の宮崎提案者の御答弁だったらば、文字どおりこうなるんじゃないですか。
それは、かつて大きな格差があり、特別対策で、けれどももう今は全く分からない。だから、混住も進んでいるし人口移動も激しいと。元々住んでいた人はもうほとんどいないというところだってあるでしょう。結婚だって、地区外の方々ともう結婚するのが当たり前と。八割、九割がと自由同和会の灘本さん、おっしゃっていたじゃないですか。八割、九割が恋愛で結婚して、そのうち七割、八割の方々は何の反対も受けていないと。そういうような状況になっているわけですよ。
そこを、自治体がそうやって部落の人と決め付けて、その人と結婚したらみんな実態調査なら実態調査、部落差別を受けていないかの対象といいますか、していくということになったら、部落の復活になるじゃないですか。それを恒久法で、実態調査を例えば五年ごととか十年ごととかとやっていったら、ずうっと部落なくならないじゃないですか。そうしたら、部落差別もなくならないんじゃないですか。何が解消推進法だ。
○衆議院議員(若狭勝君) この法律は、これまで何度も申し上げてきているとおり、特定の地域とか対象者を定めてあるいは特定してその施策を行うというものでは決してございませんので、委員御指摘のような状況になることはないものと、私として、提案者としては今確信しておるところでございます。
○仁比聡平君 いや、この間から若狭提案者がそう確信しておるとおっしゃるので、条文上は全く無限定ではありませんかと申し上げ続けてきているわけですね。これは折り合いは付かないですよ。
もう私の質疑時間が残り四、五分ということになってきて、いや、こんな中で本当に質疑を終えれるのかと。私は、この御代田の町長さんも、私どもが本当だったらお邪魔してお話を伺う、それが当然だと思いますよ。けれども、与党の御努力もあって、せんだって参考人質疑が実現をしました。だったらば、この国会においでいただいて、ちゃんと、そういう行政のあるいは学校教育現場の部落問題をめぐっての様々な努力や経験あるじゃないですか、いい経験いっぱいありますよ。逆に、困っていること、本当に恐ろしかったこと、それをどうやって乗り越えてきたかと、たくさんあるじゃないですか。
それ乗り越えて、この茂木町長が同和事業を十年近く前に廃止されたわけですが、同和関係住民も、町を脅している部落解放同盟の一部幹部と同じように見られてきたことがつらかったと、そういう声を上げられておられるようです。もしこの法案が通れば、実態調査で解同には自治体に介入する絶好の口実ができると町長はおっしゃっています。実態調査を自治体から請け負って、差別意識はあるだろうと、一方的に差別事象だと脅すことが大いに予想できますと。実際、私が厚労省の委託事業として行われた隣保館調査というのをこの委員会でお示しをしましたけれども、いや、実際、そうやって委託を受けてやっていますからね。そういうふうになるじゃないかというこの自治体の首長さんの声にどう応えるのか。
最後、門発議者に是非お伺いをしたいと思っているんですが、ちょっと興奮して資料どこに行ったか分からなくなっているので、ちょっと待ってください。
和歌山県の御坊市長の柏木市長が、九月議会で私ども日本共産党の議員の質問に対して、つまり質問は部落差別解消法の、推進に関する法律案についての市長の所見いかんということなんですが、一般施策の中で教育、啓発、相談体制の充実を行えばと考えている、時計の針を巻き戻すようなことにならないよう願っているとおっしゃっているんです。
住民の皆さんの声として、これはこの和歌山でということじゃないですけど、かつて同和地区と呼ばれたり被差別部落と呼ばれたりした地域に対して、今改めて部落というレッテルを貼ろうとしています。それも未来永劫、その地域とその地域で生きる人間を調査対象にしようとしています。その地域がこの国から特別視される新たな事態が始まるのでしょうか。もう同和地区はありません、したがって同和地区住民の方はいません、被差別部落もありません、全て一般地区になりました、これでよいのではないでしょうか、いけませんかという声ですけれども、こうした住民の皆さんの声を背景に、時計の針を巻き戻すようなことにならないよう願っているとおっしゃる首長の意見に対してどう思われますか。
○衆議院議員(門博文君) 今の和歌山の御坊市長さんの議会での発言は、私は今初めてお伺いをいたしました。まさに私の認識も、その時計の針を戻すことのないようにという思いで我々発議者、発案者もここまでこの審議に臨んできたところであります。
それで、先ほども申し上げましたけれども、旧同和三法は、被差別部落とそうでない地域、同和地区とそうでない地域というところに線を引いて、そして特にその被差別部落、同和地区に対して事業を行うという法律であったと認識をしております。
今回は、その地区に線引きをするのでなくて、広く国民一人一人が部落差別があってはいけないということを認識を一にして、将来にわたってこの部落差別をなくそうということでありますので、委員も、部落差別が現在残っているか残っていないかということはともかくとして、もしそういうことが残っているのであれば解消しようというお気持ちは我々と共通の認識をお持ちいただいていると思います。
○委員長(秋野公造君) この際、お諮りいたします。
本案に対する質疑を終局することについて賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、本案に対する質疑は終局することに決定いたしました。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、ただいまの質疑打切りに厳しく抗議するとともに、部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対の討論を行います。
その理由は、本法案が、部落差別の解消推進のための理念法と言いながら、部落問題解決の歴史に逆行して新たな障壁をつくり出し、部落差別を固定化、永久化する恒久法であり、その危険は重大だからであります。
国の同和対策特別事業が二〇〇二年三月に終結して十四年たつ今日、社会問題としての部落問題は基本的に解決された到達点にあります。時として起こる不心得な部落問題に関する非科学的認識や偏見に基づく言動が、その地域社会で受け入れられない民主主義の力を強めていくことこそ重要です。行政施策は全ての国民に対し公平に運用するのが原則であり、人権問題の相談、教育、啓発活動は憲法に基づく一般施策として行うべきです。
法案の「現在もなお部落差別が存在する」という規定について、提案者は、依然として存在するとか、肌で分かっているとか述べるだけで、何をもって部落差別とし、それがどのように存在するというのか具体的に示すことはできませんでした。
参考人質疑においては、自由同和会推薦の灘本参考人からも、部落解放同盟の部落差別はいまだに根深く厳しいという現状認識は差別の過大評価、日本は差別をうまくなくしてきているとの評価が具体的に語られ、全国地域人権運動総連合事務局長の新井参考人からは、各地の実態に基づき、従来の部落の枠組みが崩壊し部落が部落でなくなっている状況、国民の多くが日常生活で部落問題に直面することはほとんどなくなったことが明確に述べられました。部落問題を特別扱いする本法案の立法事実はないのです。
法案には部落差別の定義規定がありません。提案者は、定義を置かずとも一義的に明確、その者が部落の出身であることを理由にした差別と言いますが、それは部落解放同盟綱領の言う部落差別の考え方を法に持ち込むものです。その説明は極めて曖昧であり、濫用による表現や内心の自由が侵害される危険は重大です。
かつて解同は、部落民以外は差別者、差別かどうかは解同が認定するとして、八鹿高校事件を始めとする数々の暴力的確認・糾弾事件を引き起こしましたが、その総括を問われた解同書記長の西島参考人は、五十年ほど前の話と言うだけで直接答えませんでした。弁護士の石川参考人は、弊害は今後に続きかねないと警告しましたが、そのとおりであります。
昭和六十一年、地対協基本問題検討部会報告は、何が差別かというのは一義的かつ明確に判断することは難しいことである、民間運動団体が特定の主観的立場から恣意的にその判断を行うことは、異なった理論や思想を持つ人々の存在さえも許さないという独善的で閉鎖的な状況を招来しかねないことは、判例の指摘するところでもあり、同和問題の解決にとって著しい阻害要因となると述べています。
民間運動団体の行き過ぎた言動、その圧力に屈した行政の主体性の欠如が新しい要因となって新たな差別意識を生むことこそ、歴史の教訓です。国の特別対策の終結は、部落問題の特別扱いが差別解消に逆効果となったからであることを銘記すべきであります。
更に懸念されるのは、不公正な同和行政による特権と利権の復活です。提案者は理念法と言いますが、法案の言う部落差別の解消に関する施策、相談、教育及び啓発、実態調査の条文は極めて無限定であり、同和対策事業の復活を排除するものとはなっていません。これが民間運動団体の、あれも差別、これも差別といった圧力の根拠となり、行政が主体性を失って、補助金や委託事業による民間運動団体の相談事業、教育、啓発を押し付けられる危険があります。学校や自治体、企業や地域で、あるいは人権擁護委員にまで、特定団体による教育、啓発が実質強制されかねません。各地になお残る個人給付を含む同和対策の特別扱いを固定し、助長することにもなります。
さらに、部落差別の実態を明らかにするとして行政に義務付けられる実態調査は、旧同和地区、旧同和地区住民の洗い出し、精密調査や行き過ぎた意識調査によって、それ自体が国民の内心を侵害し、分け隔てなく地域で生活する旧地区住民とそうでない者との間に新たな壁をつくり出す強い危険があります。これらが部落問題についての自由な意見交換のできる環境づくりを困難にするものとなり、部落問題の解決につながらないことは明白です。
なお、提案者はインターネットにおける差別事象を言いますが、削除要請などの具体的課題は、ヘイトスピーチを始め他の人権問題も同様である上、本法案によって具体的解決が進むものとはなっていません。
法案は断固廃案とすべきことを重ねて申し上げ、反対討論を終わります。
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