○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
上川大臣の所信的挨拶を伺いまして、二点、まず選択的夫婦別姓について伺いたいと思います。
午前中も質疑がありましたけれども、大臣は夫婦別姓に積極的に活動をしてこられたと思います。二〇〇七年には、福田内閣の少子化対策・男女共同参画大臣として、市川房枝記念会の「女性展望」二〇〇八年一月号にインタビューに答えられまして、私も選択的夫婦別姓については賛成で、そのために議員として活動してきました、それぞれの時代にふさわしい形で法律を見直していかなければならないと思っていますというふうにお答えになっておられます。松島みどり前大臣も長年選択的夫婦別姓に賛成をしておられたと私は理解をしているんですけれども、所管大臣になったら、言わば自らの政治的信念を曲げて、民法改正はできないと答弁をされて、私、前回その認識をただしたわけですね。
上川大臣も、一人の政治家として、あるいは福田内閣の閣僚としては選択的夫婦別姓に賛成としながら、安倍内閣の法務大臣になったら姿勢が変わることになるのでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 私が過去におきまして雑誌「女性展望」のインタビューにお答えをさせていただいたこと、その中で選択的夫婦別氏制度につきまして賛成である旨を述べたことについては、委員の御指摘のとおりでございます。
もっとも、御指摘のこの「女性展望」のインタビューについてでございますけれども、選択的夫婦別氏制度につきましては、国民の間に様々な御意見があるということ、また通称使用につきまして広く使用されるようになってきており、制度導入のためには社会の意識が熟していくということが重要であるというふうにお答えしたというふうに思っているところでございます。
法務大臣として、現在、今政治家として基本的な考え方については、そうした考え方を取っているところでございます。選択的夫婦別氏制度の導入ということにつきましては、我が国の家族の在り方の根幹に深く関わるものであるというふうに考えておりまして、国民の皆様の理解をしっかりと得ながら行う必要があるというふうに考えているところでございます。
平成二十四年の世論調査の結果を見ましても、国民の皆さんの意見が分かれているということでございまして、その意味で、現時点で直ちに民法を改正して選択的夫婦別氏制度を導入するということについてはなかなか難しいというふうに考えておりますけれども、今後も引き続き皆様の意見を幅広くお伺いをしながら、またこうした世論調査の動向等も参考に国民の皆様の理解を得てまいるということでございまして、各方面の議論の推移、しっかりと注視をしていきたいというふうに思っているところでございます。
また、このインタビューの中で、先ほどちょっと言及させていただきましたけれども、通称使用について触れておりますが、このことにつきましては、いわゆる士業の職種の皆様の中で既に職務上これが広く認められるようになるということが徐々にできてきているということで、社会の認識は私がこのインタビューをしたときと比べて進んできているのではないかなというふうに思っております。
さらに、社会生活上不便を強いられているような場面もまだまだ多くあるということでございますので、私としては、この安倍政権、女性が輝く社会を目指して国、地方、企業一体となって女性が活躍しやすい社会環境をつくっていく、社会づくりを進めていくということでございまして、その観点から、旧姓使用が認められないために被っている社会生活上の不便の是正に向けた措置について、関係省庁と協議をしながら前向きに検討してまいりたいというふうに思っております。
○仁比聡平君 今大臣がいろいろな事情をおっしゃいましたけれども、この当時のインタビューでは、そうした要素も踏まえた上で、それぞれの時代にふさわしい形で法律を見直していかなければならないと思っておりますとお答えになっているんですね。
世論調査でいいますと、もう今日詳しくは伺いませんけれども、世論は大きく変化しているでしょう。大臣が以前、男女共同参画担当大臣をされた当時、このインタビューの当時の二〇〇六年の十二月の世論調査、内閣府のものがありますけれども、このときには、選択的夫婦別姓に賛成は三六・六%、反対は三五%といった数字でしたが、例えば直近、毎日新聞が十月二十日付けで発表している世論調査でいうと、選択的夫婦別姓に賛成は五二%と過半数を超えて、反対は四〇%。大きく変化しているんですね。世論が前進しても、かつて選択的夫婦別姓に賛成しそれを求めていた女性議員が所管大臣になったら次々と信念を捨ててしまうということになったら、法務大臣こそが世論に逆行して、世論を抑える桎梏になってしまうということになるわけです。
私は上川大臣にそうなってほしくないと思ってお尋ねをしているんですけれども、この「女性展望」のインタビューでは、大臣が男女共同参画について大変生き生きと語っておられます。とりわけ印象深いのは、一直線に進むということが難しい部分もあります、だから駄目だと考えるのではなくて、乗り越える課題があればあるほどいろいろと知恵も働く、乗り越えていくチャンスなんだとポジティブに考えていきたいと思いますとおっしゃっているんですね。
選択的夫婦別姓を実現する上で壁があるなら、このときにお述べになっているように、それを乗り越えるためにイニシアチブを発揮すると、それが大臣の責務なんじゃないですか。
○国務大臣(上川陽子君) 今、私がかつてインタビューに答えてお話をさせていただいたことについて触れていただきましたけれども、なかなか、女性活躍について、また男女共同参画の推進ということについて、本当に試行錯誤をしながら、今でもそうですけれども、こうしたことを議論をしながら進めていくということが本当に必要だなということを改めて感じているところでございまして、その当時の感じてきたことについての基本的な考え方は今も変わっているものではございません。
社会の中で、男女共同参画の担当大臣をしておりましたときにも、この方向に進めていきたいなと思ってもなかなか課題があるということで、一つずつ課題を解決するわけでありますが、全体としての意識を変えていくためにやはり力が結集していかなければいけないのではないかというふうにも思っていたところでございます。そういう中で、男女共同参画の動き、あるいは女性の活躍を推進していく様々な課題については、どれ一つ手を抜くことなくしっかりと向き合って、そしてその課題解決に向けて進めていこうということの考え方は今も持っているところでございます。
国民の皆さんの考え方がどのようになっていくのかということについては、やはりいろいろなアンテナを張り巡らせて本当に真摯に向き合っていかなければならないと。その中の一つが国民に対しての世論調査ということであるというふうに思っております。先ほど御指摘がございました調査は、平成十八年の時点で賛成が三六・六、通称使用のみの容認が二五・一、反対が三五・〇ということについて、二十四年の段階での数字もほぼ同一ということであります。
通称使用ということで現実的に対応していくというところについて、現場の中で努力をして、またそれに向けて前進しているというところの動きがやはり社会を一つ前進させていくための大きな力になるということで、今回、通称使用のこの部分について、日常的に非常に不便を感じていらっしゃるところの声ということについて、更に広げていくことができるかどうかということについては前向きに検討してまいりたいと思っております。
○仁比聡平君 いや、そうやって通称使用についてはといって限定的におっしゃるような態度は、課題があればあるほど乗り越えていきたいと言っていたスタンスと違うじゃないですか。通称は、広く使用されるようになれば解決する問題じゃないということは、もう大臣よく御存じだと思うんですよ。
やむを得ず通称使用をするために、例えば職場で、あるいはその関係機関に認めさせるためにどれだけ苦労しているか、現場の女性たちが。例えば、ある教員の方は、教育委員会も含めて何度も説明して足を運んで並大抵ではない苦労をされているんですね。同じような苦労を今も多くのカップルが強いられているわけです。しかも、銀行だとか役場だとか病院だとかクレジットカードの使用、ここでは戸籍名しか通用しないでしょう。ですから、日常二つの名前を使うことに慣れているはずの方もうっかり通称を書いてしまって不審がられたり、見ず知らずの人に一々言い訳をしなきゃいけなかったりと。これは、最高裁もかつて述べたことのある、氏の呼称は人格権の一内容であるという考え方に反しているんだと思うんですね。
女子差別撤廃条約の委員会が〇九年八月の最終見解で、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依存するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべきであると指摘をしていること、大臣も御存じだと思います。世論の多寡で背を向けてはならないのが人権ではありませんか。今の夫婦同姓を強制するという制度が人権問題であると、人権を制約していて、その解決が問題になっているという認識は、大臣、おありですか。
○国務大臣(上川陽子君) ただいまの御指摘、また国際的な評価ということでございまして、そうしたことの部分、つまり社会の情勢、いろいろな事情、そういったことも総合的に勘案しながら考えていくべきことだというふうに思います。
そういう意味で、今回、これから取り組むことにつきましても虚心坦懐にいろんな御意見をいただきながら、ただ単に世論調査が、数字だけで見るということではなくて、取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。
○仁比聡平君 数字だけを見るのではなくてという御発言を本当によく考えていただきたいと思うんですね。世論調査の結果で人権を侵害してはならないんですよ。この解決が問題とされているときに世論調査だけを理由にしてはならないんですよ。女性の活躍を掲げながら、女性閣僚が一政治家として持っている信念を曲げさせるみたいなことになったら、これはとんでもないことであって、私は安倍内閣挙げてしっかり議論をさせていただく必要があると思っております。
もう一つの点は、袴田事件についてです。
静岡地裁は、とりわけ五点の衣類などのDNA鑑定関係の証拠及び五点の衣類の色に関する証拠に新規性、明白性があると認めて再審開始を決定をいたしました。この袴田事件は、一九六六年に一家四人が殺害されたという事件ですよね。ところが、それから一年二か月もたって、みそだるから突然発見をされたのが五点の衣類です。地裁の再審開始決定は、捜査機関によって捏造された疑いがある、国家機関が無実の個人を陥れ、四十五年以上にわたり身体を拘束し続けたことになり、刑事司法の理念からは到底耐え難いことと言わなければならないと厳しく断罪をいたしました。ところが、これに即時抗告を申し立てた検察官が、この五点の衣類について著しく不当で正義に反する訴訟活動を行っています。
二点伺いたい。
一つは、その発見直後に撮影されたカラー写真のネガが発見されたんだといって、再審開始決定後に抗告審に、この再審開始決定を覆すべく、検察官が証拠提出をしているわけですね。この証拠は地裁の段階で当然、袴田さんの弁護団が開示請求をしたにもかかわらず、静岡地検は二回にわたって存在しないといって提出してきませんでした。なぜ今頃になって出てくるのかと驚くべきことです。
そこで、まず警察庁に伺いますが、静岡県警の刑事部長は記者会見において、再審開始決定後に偶然発見し、東京高検に連絡した、それは県警の施設内であると述べていますけれども、一般に刑事事件の証拠、これどんなふうに管理しているんですか。証拠の標目、あるいはそれに従った整理というのが当然されているものだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(荻野徹君) お答え申し上げます。
一般論として申し上げますと、証拠物件は犯罪の立証のための資料であることなどから、犯罪捜査機関等の規定に基づきまして、証拠価値の保全に努め、定められた保管設備において適切に保管することとしていることでございます。
○仁比聡平君 袴田事件の証拠は、そうした考え方で静岡県警が管理をしていたということですか。だったら、一貫した最大争点であり、弁護側から証拠開示が求められてきたにもかかわらず偶然発見したと、こんなことあり得ないじゃないですか。偶然発見したってどういう意味ですか。
○政府参考人(荻野徹君) お答え申し上げます。
お尋ねの件につきましては、現在、再審請求審に係属中の刑事事件に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 警察が管理していたということも認められないんですか、審議官。
○政府参考人(荻野徹君) お答え申し上げます。
お尋ねにつきましては、基本的には現在再審請求審に係属中のものの証拠の存否等に関わる事柄であろうということでもございますので、この場でのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 とんでもない話じゃないですか。偶然発見したと県警の刑事部長が記者会見しているんでしょう。それをなぜ国会で答えられない。係属中だから答えられないというんだったら、再審無罪が確定したら答えるんでしょうね。再審無罪が確定したら答えるのか。
○政府参考人(荻野徹君) まず、御質問の事柄につきましては、基本的には現在係属中の刑事事件の中で取り上げられることであると考えております。
その後のことにつきましては、仮定の御質問ということもございますので、お答えは差し控えたいと思います。
○仁比聡平君 仮定ではなくて、私は無罪を確信をしております。
ネガというのは、これは形のあるもので紛れようはないんですよ。実際に、偶然発見されたというのは、その辺りにあったということでしょう。これを、証拠開示を求められながら隠していたのではないのかと。探せば当然見付かったはずじゃありませんか。
法務省刑事局長に伺いますが、地検が存在しないと繰り返してきたのは虚偽ですか。
○政府参考人(林眞琴君) お尋ねの件につきましては、現在、即時抗告審係属中の個別の再審請求事件に関わる、またその証拠に関することでございますので、そのお答えについては差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 この問題について進行協議の中で謝罪したと、検察がという報道がありますけれども、それは何をどのように謝罪したんですか、刑事局長。
○政府参考人(林眞琴君) 今のお尋ねの件に関しましても、非公開で行われております即時抗告審におけます個別の再審請求事件に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 証拠隠しだと非難されて当然です。いつどこで発見されたのか、なぜ原審での審理中に発見されなかったのか、これを私は明らかにすべきだと思います。
しかも、検察はネガが発見されたという事実をすぐに弁護団に知らせませんでした。それだけでなく、再審決定を覆す証拠とするべく、学者によるネガの鑑定まで行っているわけですね。元々、冤罪からの救済と真相の解明というのが再審請求の趣旨でしょう。その再審において捜査側の手持ち証拠は、私は全面的に開示されるべきだと思います。
ネガが発見されたにもかかわらず弁護団に知らせもしなかったというのは、これ、刑事局長、なぜなんですか。
○政府参考人(林眞琴君) お尋ねの件に関しましては、そうした証拠、現在、即時抗告審に係属中の個別再審請求事件の中で、まさしくその証拠をめぐって様々議論されており、争われている事柄でございます。そうしたことから、法務当局といたしましては、それに対するお答えは差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 苦難を経て再審開始が決定された袴田さんに対して、あくまで犯人と決め付けて、再審開始決定を覆すために、これまで出してこなかった、隠していたんじゃないのかという証拠を使う。これが公正な裁判を実現すべき公益の代表者としての検察官の責務に沿うものと言えますか。私は、著しくその責務を損なうものだと思います。
もう一点、この五点の衣類などのDNA鑑定、いわゆる本田鑑定について、今、検察は非科学的かつ鑑定人独自の手法で、鑑定結果に信用性はないと主張しているわけですね。ところが、同じ本田鑑定、これが、例えば神戸地方裁判所、平成十八年の殺人被告事件の有罪証拠として、最重要証拠として検察官によって提出をされ、これが有罪確定の証拠になっております。
この事件の論告で検察官はこう主張しています。V―PCR法という本田鑑定の方法、これは従来の方法ではPCRを掛けることができないような微量の鋳型DNAでも、活性化によりPCRを掛けることが可能となり、その意味で画期的な方法である。しかし、PCR法としては一般的に用いられているPCRバッファーを改良したものにすぎず、従来のものと違いはない。触媒などを添加して増幅効率を上げること自体、化学反応としては一般的であり従来のものとは違いはない上、誰が行っても可能な普遍性を有するものであると。これがこの事件での検察の主張ですよ。
袴田事件で非科学的であるとする根拠は何なんですか。
○政府参考人(林眞琴君) そのDNA鑑定に関する事柄につきましても、現在係属中の個別の再審請求事件に関わる事柄でございますので、法務当局からのお答えは差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 鑑定した専門家のDNAが混入した可能性があるなどとも主張されておられるんですが、私はもう名誉毀損であって、ここまで来たら、こんな主張は直ちに撤回をすべきだと思います。
大臣に伺いたいと思うんですけれど、科学的捜査と証拠方法の評価について、何らの検討や研究も行わずに、自分たちの描いた、捜査機関が描いた心証に沿えば科学だ、沿わなかったら非科学だと、それが検察の言う科学捜査ですか。二枚舌を使って、一方の事件では有罪証拠とし、もう一方ではそれを覆そうとする、方法をですよ。そうした態度というのはそういうことじゃありませんか。私は、こうした態度はもはや一般論を超えていると思います。検察のやり方は、憲法三十一条のデュープロセス保障に照らして著しく不当であり、正義に反するんじゃないですか。
早期に私は無罪判決を確定することを願っていますけれども、今、大臣と検察がやるべきは、なぜ無実の袴田さんの自由を四十八年間も奪うことになったのか、死刑の恐怖にさらし続けて心身に深刻なダメージを与えることになったのか、これを徹底して検証する第三者機関を設けて、全面的に協力をすることだと思います。それが二度と冤罪を繰り返さないための政治的責任ではありませんか。大臣の御意見を伺います。
○国務大臣(上川陽子君) 大変厳しい状況の中で今があるということをしっかりと受け止めながらも、今回は即時抗告審に係属中の刑事事件に関わる事柄でもございまして、所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
○仁比聡平君 大臣がそんなことでは駄目ですよ。
私は、そうした今おっしゃったような一般論を超えるような重大な憲法違反、正義に反する、こうしたやり方に対して徹底して議論をしていくべきだということを強く申し上げて、今日は質問を終わります。