○仁比聡平君
日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、大臣に法務省職員の抜本的増員についてお尋ねをしたいと思うんです。
九月にTBSのニュース番組の特集で少年院ウオーターボーイズという特集がありまして、これが大変感動的でした。大阪の和泉学園なんですけれども、厳格な少年院生活や職業訓練とともに、映画にヒントを得て、この十年以上、シンクロナイズドスイミングに少年たちが取り組んできているわけです。その練習風景も含めた取材が特集をされたんですけれども、これ是非委員の皆さんに御覧いただきたいし、一度委員会で視察に行ってもいいぐらいじゃないかと思っているんですけれども。
その特集の中である少年が、非行より楽しいことがある、成長した自分を親に見せたい、親に感謝の気持ちを伝えたいというその思いを語っています。一方で、同じような思いはあっても、衝動を自制できずにその取組に参加できなくなってしまう、言わば処遇困難な少年の姿も伝えられているわけですね。
私、これを改めて拝見して、少年院における処遇というのはやっぱり教育なんだということを痛感しました。全国の少年院でこうした努力が行われていると思うんですが、ところが、その処遇を担う教官の体制はどうなっているかという問題です。
そこで、まず局長に人員についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、年度初めに定員割れでその年が始まる、年度途中に退職者もしばしばという院が少なくないと思うんですね。今年度でいいましても、四月に定員の四十九名減で始まって、九月には五十九名減ということになっていて、教官が十九名減員になっています。現場は圧倒的な職員不足だと思うんですけれども、局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(西田博君)
お答えいたします。
御指摘ございましたとおり、多くの、例えば医師も含めまして年度当初から確かに欠員がございます。やはり、今おっしゃっていただきましたように、少年の処遇というのは法務教官が担っておりまして、彼らの献身的な努力というか気持ちが大事でございまして、欠員があるということは彼らの負担を強くしているものですから、これを何とか解消したいというふうにはずっと考えております。
以上でございます。
○仁比聡平君
通常国会でも質疑をしましたけれども、法務教官の皆さんの勤務というのは三、四日に一度は夜勤があるという、もう一人休むと全てが壊れてしまうというような過酷な状態なんですね。この少年院の教官の教育力、指導力、ここに少年院処遇が懸かっていると言っても過言ではないと思うんですね。
NPO法人非行克服支援センターといいます元家裁調査官や弁護士や親たちの団体があって、親や少年に聞き取りの調査をして、「何が非行に追い立て、何が立ち直る力となるか」という調査研究を最近出版をされました。ここで拝見をすると、例えば親御さんが、信頼できる大人に会えた、行かなくて済むなら少年院には行かない方がいいけれども、体を張ってくださる先生方に人間不信から脱却できたといったアンケートを出されておりまして、子供たちも、人間を信じられなかったけど少年院の先生はそうじゃなかったとか、先生たち、すげえな、本気なんだなという、こうした思いが立ち直りの力になっているわけですよね。
近年、処遇困難な少年も増えている中で、個別の少年たちの処遇計画を充実をさせていくという少年院法の改正の方向も考えたときに、これはもう少年院の法務教官の抜本的な増員というのはどうしたって必要だと思います。少なくとも、今予算要求をしておられる来年度のこの増員は必ず達成をしていただきたいと思いますけれど、大臣の思いを聞かせてもらいたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君)
先生から御指摘をいただきました、少年の立ち直りに大人との信頼関係が非常に大事だということで、その先端で担っている職員の皆さんの努力と、新しい少年院法の改正に伴う様々な業務の推進ということにおきましても、増員につきましては大変大事だというふうに思っているところでございます。密度の濃い矯正教育ということで、先ほど教育というお話がございましたけれども、そのことを担うためのきめ細かな対応をしていくために、平成二十七年度の予算要求におきましては、少年院につきましては五十五名の増員をお願いをしているところでございます。
今後とも、必要な人数の確保ということについてはしっかりと訴えてまいりたいというふうに思いますし、また、それに実現をしてまいりたいというふうに思っております。
○仁比聡平君
この大阪の和泉学園で保護室がないという物的な問題もあるんですね。落ち着かなくなった子供を保護室のある加古川学園に移さざるを得ないという事例もあります。自殺念慮の子供たちも入ってくるという中で、この和泉学園、西日本で二番目というような大きな院なんですよ。ここにさえ保護室がない。日本中見ますと保護室のない少年院というのが結構あるわけで、私、これ全てに直ちに造るべきだと思いますけれども。
和泉学園でいいますと、保護室の設置場所というのも空けて待っているという状況で、これは直ちに造っていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(上川陽子君)
保護室の役割については、先生御指摘のとおり大変重要であるというふうに思っております。役割としては、収容している少年の鎮静及び保護に充てるための特別な設備あるいは構造を持っている居室ということでございまして、大変大事な施設であるということでございます。昭和六十二年から少年院の保護室の整備を進めておりますが、まだ少年院の五十二庁のうちの約四割程度というところにとどまっているところでありまして、この和泉学園につきましてもまだ整備をされていない少年院の一つであるということでございます。
〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕
法務省といたしまして、今後も順次、財政当局の理解をしっかりと得ながら所要の予算確保に努めながら、施設の状況を検討して、でき得る限り早期にこの保護室の整備を進めてまいりたいというふうに思っております。
○仁比聡平君
前々回、矢倉先生の方から御指摘のあった刑務所の老朽化の問題もそうなんですが、これまでの予算の枠内で何とかやりくりというみたいなことで順次と言っていたら、いつになるか分からないわけですよ。もう本当に直ちにという整備を求めたいと思います。
人員の問題に戻したいと思うんですけれども、先ほど、来年度の増員を頑張りたいという御趣旨の御答弁だったんです。それは頑張っていただきたいんですが、来年度以降の、平成二十七年度から平成三十一年度の定員合理化目標数という数字があります。これ、とんでもない。私、安倍政権は一体、法務省あるいはその中の行政をどうするつもりかと、憤りをあらわにせざるを得ない思いがしているんですけれども。今の少年院を含んだ矯正施設で、合理化目標数は五年間で二千三十人マイナスとなっています。法務局はどうかと、千百二十一人マイナスだというわけですね。
この法務局で千百二十一人減員といいますと、私、出身九州なんですけれども、九州の法務局、支局、出張所、これ全部で働いている人員をいなくしてしまうというものになるんですね。そんなことを仮にやって、法務局の機能がもう果たせなくなるんじゃないのか。実際、九州でいいますと、支局というのは離島などに存在をしています。例えば壱岐や対馬や五島というところで、係長さんの下に人がいないというような支局も全国見渡せばある中で、これ以上減らすなんて、これあり得ないじゃないですか。
それから、法務局が担っている登記はもちろん、戸籍や国籍、供託、訟務、人権擁護、こうした現場での取組を本当にやっていくためには、こんな減員の計画というのは、これはもうきっぱりやめなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(上川陽子君)
答弁の前に、先ほどちょっと発言をいたしました保護室の整備状況ということで、四割まだ残っているということでございますので、訂正させていただきます。
ただいま委員から、二十七年度から平成三十一年度までの五年間においても、閣議決定によって定められた方針に沿って千百二十一人の定員合理化の目標数ということで設定をされたところでございます。先ほど御指摘いただきました、法務局自身が大変国民の権利義務に係る重要な所掌をしておりまして、登記もそうでございますが、その機能を十全に果たすためには、やはり十分な人的体制というのが極めて大事だというふうに思っております。
他方、その定員の合理化につきましては、厳しい行財政の事情もございますので、政府全体としても取り組まなければいけないということでございますので、法務局においてもこれに対しての協力については様々な工夫をして体制整備をしていこうということでありまして、これまでも、登記所の統廃合でありますとか、あるいは乙号事務につきましては包括的に民間に委託をする、あるいは情報通信技術を最大限活用していこうということでこの業務処理の効率化につきましても進めてきたところでございますが、いささかこれにつきましても限界のところもございまして、片やそうしたことの努力はするものの、やはり同時に必要な人数につきましては確保していかなければいけないというふうに思っております。
〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕
業務上の必要性となる増員の要求、さらにその確保に最大限努力をし、法務局の機能の維持、そしてさらに向上というところに資するように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○仁比聡平君
大臣、いささか限界とおっしゃいましたけど、いささか限界どころじゃない、もう法務行政そのものを遂行すること、あるいはこれを継承していくことがこのまま行ったらもう困難になるという事態に立ち至っていると思うんですよね。
定員合理化のこれまでの政府の取組の下で、平成十九年度から新規採用が抑制されました。法務局でいいますと、平成十九年度、三人しか採用していない。二十年度、二十一年度はゼロで、その翌年、二十二年度は六十三、二十三年度が十七、二十四、七十九、二十五年度は七十人ということで、こうした下で、現場に行きますと法務局に二十代の職員がいないわけですよ。かつては、乙号の業務を若手の職員も担いながら先輩たちの仕事を受け継ぐ、あるいはたくさんある古い地図なんかもここの中で勉強するというような取組があったけれども、いや、大臣、乙号業務、民間委託して何かこれが協力だみたいなことを言っているけど、それが法務局を壊しているわけですよ。
そうした下で、この二十代がいないという今の職員体制の下で、これ以上の仕事が増えたり、あるいは新しい事態が起こってきたりとかしたら、もう到底どうにもならないじゃないですか。いろいろ工夫するといって現場に努力を押し付けたら、この中で長時間労働や、今もう始まっている在職死や自殺という本当に取り返しの付かない事態が起こるじゃないですか。
こんなやり方はもう絶対やめなきゃいけないと思うんですけど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(上川陽子君)
御指摘いただきました若い世代の職員が極めて少ないという意味では、大変いびつな年齢構成になっているというふうに思っておりまして、そのため、将来的な法務行政を担う知識あるいは経験ということを世代間で継承していくというところについては、大変十分ではないということで危惧を抱いているところでございます。
そして、そういう状況の中で新規採用の抑制政策というのが見直されたという、その後の二十六年度につきましては三百人規模の新規採用をすることができたということでございまして、その意味で、法務局がこれまで培ってきました知識や経験をこうした新規職員の若手の職員に継承させるべく、各法務局におきましても、若手研修、職員研修、あるいはオン・ザ・ジョブ・トレーニングという形で育成方針を新たに検討をし直して実施に移しているというところでございます。
御指摘いただきました、若手職員が途切れなく採用することができるようにしていくということは非常に大事なことであるというふうに思っておりますので、今後ともそのような方向で尽くしてまいりたいというふうに思っております。
○委員長(魚住裕一郎君)
時間ですので、仁比君。
○仁比聡平君
いびつである、危惧を抱いているという認識を示されたのは大変大事なことで、これを打開するのは抜本的な増員しかないんですよ。その立場で、財政当局はもちろんのこと、政府を挙げて取組を転換するように、大臣にちゃんと責任を果たしていただきたいと強く求めて、質問を終わります。
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