戦後民法は、憲法施行に伴い家制度を廃止し、女性と子どもを無権利者とした明治民法を根本的に改めて出発しました。しかし、嫡出・非嫡出の差別や懲戒権など差別的概念をそのまま引き継ぎました。本法案は、憲法と国際人権水準の要求に応えるものでなければなりません。
戦後、憲法24条の完全実施を求める民法改正運動は高揚し、再婚禁止期間の削除は1954年には検討されていました。政府は85年に女性差別撤廃条約を批准。96年に法制審議会がまとめた民法改正要綱は、再婚禁止期間の見直し、選択的夫婦別姓の実現など、家族法制の抜本的な改正を目指す重要なものでした。以来26年、その実現に背を向け続けてきたのが自民党政治ではありませんか。
女性にのみ婚姻の自由を著しく制約してきた憲法違反がただされるところに、本改正の意義があります。個人の尊重とジェンダー平等をあらゆる法制度と施策に貫くべきではありませんか。
「嫡出」という用語は、戦前の家制度のもと跡取りである長男を「嫡男」と特別扱いし、「正統」か「正統でない」かを意味する差別的概念です。用語そのものをやめるべきではありませんか。
嫡出推定見直しの問題は、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する現行法の規定をそのままにすることです。DV(家庭内暴力)などの事情で婚姻を届け出ない場合、現行法同様の問題が残ります。
国籍法3条の改正により、認知された子が血縁のない事実が判明した場合、さかのぼって日本国籍を失う懸念があります。何ら責任のない子の生活基盤とアイデンティティーが奪われます。
懲戒権にかかわって、11年、国連子どもの権利委員会は日本に「子どもに対するあらゆる形態の暴力は認められない」と求めています。「子の心身の健全な発達に有害」という文言が新たな虐待の口実に使われてはなりません。
96年の法制審答申のうち、実現していないのは選択的夫婦別姓のみです。すみやかに実現すべきです。
女性差別撤廃条約を実効ならしめる個人通報制度を定めた選択議定書に、早期批准すべきです。
自民党は、統一協会と半世紀にわたり癒着し、反共、改憲、ジェンダー平等への敵対で相互に利用し合ってきました。その影響をぬぐい去り、個人の尊重、多様性が光る社会を実現するよう求めます。(しんぶん赤旗 2022年11月21日)