郵政や国鉄などで民営化をまたいで労災を負った労働者が、公務災害・労災保険双方から不支給とされてきた問題で、厚労省がいずれかの保険制度で救済するよう徹底する「事務連絡」をこのほど都道府県労働局の労災補償課長あてに出しました。

 全日本建設交運一般労働組合(建交労)九州支部と日本共産党の仁比聡平参院議員の取り組みの成果です。建交労が相談を受けた事案も解決にすすみつつあります。

双方で対象外

 長期におよぶ仕事の負担で起こる「遅発性疾病」には、振動障害や難聴、腰痛、じん肺などがあります。民営化で公務から民間への移行や、船員保険と労災保険の統合で適用保険が切り替わると、どの時期が疾病の起因かをめぐり双方の保険制度が「対象外」として不支給にするケースが相次いでいました。

 建交労と仁比議員の問題提起で、今年1月、厚労省は発症の事実があれば労災保険として補償が受けられるルールの明確化を約束しました。ところが、建交労が労災申請を支援してきた事案が解決しなかったため、再交渉を重ね、改めて8月27日付で「事務連絡」が出し直されました。

 「事務連絡」は、「国家公務員災害補償制度又は船員保険若しくは労災保険により災害補償を行う」といずれかの制度で補償されることを明記。「事務処理に遺漏なきを期されたい」と、双方から不支給とされる漏れがないよう重ねて注意をうながしています。

 仁比議員と建交労が9月4日、「事務連絡」の内容を確認したところ、厚労省の担当者は、(1)就労期間の長短だけで判断せず、まず労災保険で調査する(2)発症日は労働者が自ら不調を訴えた日にするのではなく、療養が必要となった日(検査日)とする(3)労災保険で不支給と判断される事案は、(双方不支給にならないよう)決定を出す前に厚労省に報告する―と説明しました。

時効乗り越え

 建交労が支援している熊本県の郵便バイク労働者が発症した振動障害の事案は、3月28日に不支給取り消しの審査請求決定が出されました。宮崎県の2事案はまだ決定が出ていません。船員の労災申請では、振動障害や騒音性難聴が4件不支給となり、1件は裁判になっています。

 建交労によれば、今回の事務連絡で、船員の事案で請求権2年の時効を乗り越え、5年さかのぼって労災保険が認定されました。再審査請求で不支給が確定していた事案も、再請求の形で認定になる見込みとなり、解決に向けてすすんでいます。

 建交労九州支部の高田正矢書記次長は、「労災保険か関係制度で必ず救済されることになりました。労働組合と共産党が連携して取り組んだ成果です」と強調しています。

「事務連絡」力に理不尽正す

 仁比議員の話 民営化に関係なく同じ仕事で働いてきたのに、労災になったら「発症は民営化の前か後か」と争って不支給にする。そんな理不尽がとうとう正されました。個別事案の解決とともに「事務連絡」を勝ち取ったことは大きな前進です。現場の声に寄り添って取り組んだ建交労のみなさんの力によるものです。(しんぶん赤旗 2018年10月21日)