○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。

九州熊本地震で亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。

会派を代表して、九州熊本地震対策と補正予算について、総理並びに関係大臣に質問いたします。

私も、本震が襲った翌日の四月十七日、余震で大きく揺れ続ける熊本に入り、一週間後の二十四日、また二十九日、五月一日、七日と、熊本市、益城町、西原村、南阿蘇村、阿蘇市、菊池市、大津町、御船町、甲佐町などを訪ね、被災者の皆さんの声を伺い、また各自治体の対策本部や関係団体の皆さんの御要望を受け止めて、その実現のための活動を続けてまいりました。

そこで、まず総理に伺いたいのは、発災から四週間となる今もなお、全ての被災者の実情は把握されておらず、被災者の切実で深刻なニーズが埋もれかねない現状を打開するために、自治体との連携と人的支援を強めることについてです。

震度七の前震、本震はもちろん、震度六や五を含む大きな余震が連続的に続くという経験したことのない今回の激しい地震は、少なくとも七万棟以上の住宅、建物の全半壊、一部損壊という甚大な被害をもたらし、人々の安心できる住まいが失われました。

その被災者が必要としているニーズは、指定避難所への避難者数だけで把握できるものでは到底ありません。近くの公民館などでの自主避難、車中泊や公園、駐車場のテント避難が行政に把握されず、水や食料さえ提供されない実情に全国の人々が胸を痛めてきました。今でも、指定避難所でさえ行政から支給される食料はおにぎり一個かパン一つです。

ここに指定避難所の拠点化だといって避難所減らしが進められるなら、被災者が行き場を失い、やむなく危険な自宅へ戻らざるを得なくなる方々の二次災害が現実に懸念されます。とりわけ高齢者や障害者、所得の少ない方々など、災害弱者の深刻な困難が見えなくなり、被災者が孤立することになれば、震災関連死にもつながりかねないことになります。

全ての被災者の実態とニーズの把握は今こそ急務であり、日々変化するニーズをつかみ続けなければ、被災者本位の対策を具体化し、一人一人の被災者に届け切ることはできません。総理の御認識と、政府としてどのように自治体を支援していくかお伺いをいたします。

あわせて、避難生活について、メニューの多様化や適温食の提供を始め、良好な生活環境の確保を求めた政府の四月十五日通知と現実に大きなギャップがある中で、どのように改善していくのか。また、区や町内会、PTAや女性団体、労働組合や商工団体、市民団体、そしてボランティアの皆さんが、ニーズをつかみ、直ちに対応するために懸命に努力しておられます。その声を行政として正面から受け止め、被災者の要求、ニーズ最優先の対策を具体化していくことが必要です。それぞれ、防災担当大臣の認識を伺います。

全ての被災者が元の生活を取り戻すことが復興の基盤であり、その焦点は住まいとなりわいの再建です。

熊本県弁護士会が各地の避難所で献身的に行っている無料法律相談では、住むところをどうしたらいいのか、これからどうなるのか先が見えないと、悲痛な相談が次々と寄せられています。阿蘇大橋がのみ込まれた南阿蘇村立野地区のある方は、家は建っているが住めるかどうか分からない、まだ水も来ておらず、先が全く見えないのに、行政から仮設住宅を希望するか家の応急修理を選ぶかと聞かれても、どう答えたらいいのか、仮設に入るには建っている家を諦めなければならないのかと、追い詰められた心情を打ち明けられたそうです。

住まいの再建に向けた道筋と公的支援の具体化を政府がしっかり示し、一人一人の状況に応じた、被災者の納得のいく支援ができる体制を整えてこそ、生活再建への希望を持つことができます。住宅被害が極めて甚大となった今回の災害で、住まい再建の公的支援の重みをどう考え、どのように行っていくのか、総理の基本認識を伺います。

被災地を歩きますと、古くからの農家など母屋だけでも大きな家屋が深刻な被害を受けています。被害認定で仮に半壊とされても、災害救助法の応急修理だけではとても安心できないおうちもたくさんあります。

本日、野党四党は共同して、被災者生活再建支援法の改正案を衆議院に提出いたしました。被災者生活再建支援金の上限額をこれまでの三百万円から五百万円に引き上げ、支援対象を半壊にまで拡充を求める声は切実です。総理、この声に応えるときではありませんか。

また、生活の再建に一定の期間を必要とする被災者が相当数に上ることからすれば、公営住宅の提供や民間賃貸住宅借り上げのみなし仮設住宅を更に広げるとともに、被災者が納得のいく被害認定が行われ、再建の道筋が見えるまで安心して生活できる避難先の確保が求められます。阿蘇など被災した観光旅館の安全と生活環境の確認、復旧を急ぎ、二次避難先としての提供も喜ばれると思いますが、防災担当大臣、国交大臣、いかがでしょうか。

震源の活断層の真上となった益城町や西原村などでは、私の身長を優に超える断層や、どこまで続いているのか気の遠くなるような地割れや深い亀裂が発生しています。幾つもの集落、地区がほぼ丸ごと全壊し、集団移転も検討される中で、村の存亡に関わると西原村の村長が訴えておられるとおりの事態です。

西原村の大切畑という集落では、家屋の倒壊で九人の方々が生き埋めになりましたが、集落の皆さんの必死の救出で全員の命が守られました。そのようなコミュニティーを維持しながらの仮設住宅の早期建設、水道を始めライフラインの早急な復旧、生活基盤、社会基盤の早急な復旧と村づくりは、たとえ激甚災害指定で補助率がかさ上げされても、村の財政規模では到底不可能です。

被災自治体の財政負担を実質ゼロにする、復旧復興は全額国庫負担で行うことを早急に表明し、法的措置を含め、被災自治体が被災者の生活再建と復興に全力を挙げられるようにすべきです。総理、いかがですか。

農地、農業施設の復旧と営農再開支援について伺います。

この地震がなかったなら田植を迎えて美しい水田風景になっていたはずの阿蘇のカルデラ盆地や菊池市の中山間の棚田を訪ねて、どこまで続くのかと思われる地割れや深い亀裂に言葉を失いました。

水源地からの用水路が壊れ、トンネルが何か所も埋まり、水が来るか、水を張って漏れないか、二次災害は起こらないか、こうした農地、農業施設被害の全容把握は到底自治体だけでできるものではありません。国が乗り出してしっかりつかみ、技術面の調査と速やかな復旧の支援を尽くすとともに、営農が再開できるようあらゆる支援が求められています。

また、倒壊した畜舎など生産施設の解体撤去を含む復旧再建や、巨額の負担のために見通しが立たないJAのカントリーエレベーター復旧など、生産者と生産者団体の切実な要望に応える特別な支援がどうしても必要です。

甚大な農業被害をどう捉えているか、その基本認識と併せ、農水大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 仁比聡平議員にお答えいたします。

被災者のニーズの把握についてお尋ねがありました。

高齢者や障害者、乳幼児等、特に配慮が必要な方々を始め、被災された方々お一人お一人の状況や要望に応じたきめ細やかな支援を実現するためには、被災された方々のニーズを的確に把握することが重要です。

そのため、被災自治体と一体となって、避難所等において、民間企業の協力を得て導入したタブレット端末の活用や、職員やボランティアによる丁寧な聞き取りなどにより、障害者の方々が直面されている課題などを含めそれぞれの避難所等のニーズを迅速かつ的確に把握し、それに応じたきめ細かな支援を行ってまいります。

住まいの支援についてお尋ねがありました。

今般の地震により、多くの方々が避難所等において不安で不自由な生活を余儀なくされています。こうした方々に一日も早く安心して生活できる住まいに入居していただく、又は自宅を修理して戻っていただくことが極めて重要であると認識しております。

そこで、住家に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた場合に、被災者生活再建支援制度により最大三百万円の支給を行い自立した生活再建を支援することとしており、また、住宅に半壊の被害を受け、自らの資力では応急修理ができない方に対しては、災害救助法に基づく応急修理の支援が行われています。一部損壊の住宅等について耐震性等を向上させる改修を行う際にも、社会資本整備総合交付金等により必要な支援を行っております。

政府としては、引き続き、被災されて自宅に帰ることが困難な方々の住み慣れた土地を離れたくないといった思いにもしっかり寄り添いながら、仮設住宅の提供や応急修理など、被災自治体による住まいの整備の取組を全面的に支援し、一日も早く被災された方々の避難生活を解消できるよう取り組んでまいります。

被災者生活再建支援金制度の拡充についてのお尋ねがありました。

被災者生活再建支援制度は、自然災害により、その生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、自立した生活再建を支援し、被災地の速やかな復興に資することを目的とした制度であるため、住宅に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた世帯に限って支援の対象とし、最大三百万円の支給を行うものです。

このような制度の趣旨からすれば、支給対象の拡大や支給額の引上げについては、東日本大震災を始め過去の災害の被災者との公平性、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えます。

地元自治体の負担についてお尋ねがありました。

復旧事業における地方負担については、御指摘の激甚災害指定をしたことにより、補助率かさ上げで地方負担を軽減することに加え、その地方負担分についても手厚い地方財政措置を行っており、実質的な地方公共団体の負担は相当程度軽減されていると承知しております。

それに加え、財政面での支援として、今般の補正予算等により当面の復旧対策に万全を期すこととしております。その上で、個別具体的な被害状況や必要となる復旧事業等の内容を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財政面での手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかり検討してまいります。

残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(河野太郎君) 避難生活の改善についてお尋ねがありました。

今般の平成二十八年熊本地震においては、今もなお多くの方々が不自由で困難な状況に置かれています。いまだに強い余震が発生するなど、不安を感じながらの避難生活が続く中、少しでも良好な生活環境の下で安心して生活できるよう、政府一体となって様々な対策を進めているところです。お尋ねのメニューの多様化や適温食の提供といった取組については、地域の皆さんの御協力や避難所運営にたけたボランティアの協力を得て、改善を行っていくことが重要であると考えております。

今後とも、地域住民の皆さんの力を生かして、良好な生活環境の確保された避難所の運営が図られるよう支援に取り組んでまいります。

被災者のニーズ把握についてお尋ねがありました。

災害対策においては、行政による公助のみならず、地域の住民などによる自助、共助の精神に基づく防災活動が極めて大切であります。

今回の被災地である熊本県御船町の一部の避難所では、当初から避難者自らが自主的に避難所運営を行っていたと聞いております。また、西原村の地元住民で構成される消防団がいち早く救助活動や避難所への食材を届けるなどの活動が報道されたことも承知しております。また、宇城市では、避難所運営にたけたボランティアの協力を得て、避難者を巻き込みながら避難所の環境改善を行っています。

今後とも、地域住民やボランティアの皆様と力を合わせながらニーズを酌み取り、良好な生活環境の確保された生活再建が進むよう、その支援に取り組んでまいります。

二次避難所の提供についてお尋ねがありました。

政府としては、現在、安定した住まいの確保に向け、地方自治体と連携し、公営住宅や応急仮設住宅の早期の提供に努めております。これと並行して、お尋ねの二次避難所については、高齢者、障害者等の要配慮者の方について、できるだけ早く負担の少ない環境に移っていただくべく、現在、ホテル、旅館の提供を行っているところです。

今後とも、被災された御本人の被害の状況把握や意向を踏まえながら、熊本県と十分に連携を取り、旅館、ホテルの活用など適切な支援に努めてまいります。(拍手)

〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕

○国務大臣(石井啓一君) 被災者への公営住宅の提供についてお尋ねがありました。

被災者の住まいの確保に関しましては、それぞれのニーズに応じて段階的に措置を講じていくことが必要であります。

被災状況から御自宅にすぐに戻れない方々について、その再建、補修等までの間の応急的な住まいとして、全国の地方公共団体等に協力を求め、公営住宅等の空き住戸の提供を行っていただいております。全国で一万八百八十二戸を確保し、このうち、昨日までに熊本県内において入居決定したものが三百七十二戸、熊本県内を含めて九州全体で入居決定したものが八百二十三戸、これらを含め全国で入居決定したものが九百二十五戸となっております。

今後とも、被災者の住まいの確保について、熊本県等をしっかりと支援してまいります。(拍手)

〔国務大臣森山裕君登壇、拍手〕

○国務大臣(森山裕君) 仁比聡平議員の御質問にお答えいたします。

農業被害についての基本認識、農地、農業施設の復旧、営農再開支援についてのお尋ねがありました。

今回の地震による農林水産業の被害は、十一日時点で約一千百億円となっておりますが、現在も余震が続く中、今後も被害が更に増加すると考えられます。

迅速な復旧に向けて、全国の農政局や土地改良団体から農業土木技術者を現地に派遣をし、被害状況の把握を行う地方公共団体を支援をしております。また、農地、農業用水等の復旧、ため池の復旧、畜産・農業用ハウスなど生産施設の再建、修繕や家畜の導入への支援、被害関連資金の当初五年間の無利子化など、多様な措置を講じております。さらに、麦の刈り入れどきを目前に控えておりますので、カントリーエレベーターの復旧は急がねばなりません。また、共同利用施設の整備、被災施設の撤去費用、作付けの転換を行う際の種苗や種子の購入等への支援についても早急に検討してまいります。

熊本県知事から話のありました創造的な復興を支援していくため、柔軟に状況に応じた対策を検討し、きめ細かな支援を行うことにより、農林水産業の復旧復興に全力で取り組んでまいります。(拍手)