○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、安倍政権と自民、公明両党が、戦争法案の夏までの成立という対米誓約の下、今国会で強行してきた数々の強行採決、憲法と議会制民主主義を破壊する数々の暴挙に満身の怒りを込めて抗議するとともに、ただいま議題となった中川雅治議院運営委員長の解任決議案に断固賛成の討論を行います。
その最大の理由は、憲法違反が明白の戦争法案を何が何でも成立させるために、議会制民主主義を踏みにじり、この本会議の開会を強行したことであります。
与党が本日夕刻に安保特別委員会で行った戦争法案の強行採決は、暴力的とはもはや形容できない、暴力そのものでした。鴻池委員長が、解任動議の取扱いの後、委員長席に座るや否や、多数の与党議員が委員長席に飛びかかって防壁をつくり、野党議員を突き飛ばし、突き落とすなど、断じてあってはならないことです。
与党諸君、質問権も、討論権、意見表明権を奪ったのは、与党と自民党委員長ではありませんか。一切の議決は存在しません。何をどう議決したというのか、誰がどんな態度を取ったというのか。議事録には、議場騒然、聴取不能とされているのみであります。委員会に差し戻し、審議を続けるべきであります。
ところが、中川議運委員長は、憲法に基づいて本院の中立公正な運営をつかさどるべき重い職責を負いながら、議会制民主主義を踏み破って暴走する与党の言いなりに、議院運営委員会、そして理事会で、戦争法案の本会議上程を職権で強行したのであります。野党理事の事実の確認、抗議と意見も打ち切って乱暴に本会議を設定した職権濫用には重大な瑕疵があり、立憲主義も国会も壊そうとする暴挙にほかなりません。
これに先立つ九月九日、中川委員長は、国民の意見を聞いて酌み取る場である中央公聴会をも職権で強行し、強行採決の条件づくりとしたのであります。
昨日の地方公聴会で、弁護士の水上貴央公述人は、単なるセレモニーではなく、公聴会を開いたかいがあったと言えるだけの十分かつ慎重な審議をお願いしたい、法案は憲法九条に反する、重要な問題が明確になる中、法案を通せば単なる多数決主義であり、民主主義ではないと述べられました。
中央公聴会でも地方公聴会でも、多様な意見が豊かに語られた国民の声を、特別委員会で与党は地方公聴会の派遣報告さえ行わなかったのであります。強行採決への通過儀礼におとしめた与党と安倍政権、そして中川委員長の罪は余りにも重い。厳しく抗議をするものであります。
与党諸君には、八割を超える国民が今国会で成立させるべきではないと答える世論、そして、今この瞬間も国会を包囲し、日本中に噴き上がる廃案廃案の声がどう聞こえているのですか。その憤りは安倍政権に突き付けられた主権者国民の直接的不信任であり、強行採決はその火に油を注ぐだけであります。
九月十五日、安保特別委員会の中央公聴会でSEALDsの奥田愛基さんは、要旨、こう述べられました。
強調しておきたいことがあります。それは、私たちを含め、これまで政治的無関心と言われてきた若い世代が動き始めているということです。これは、誰かに言われたからとか、どこかの政治団体に所属しているからとか、いわゆる動員的な発想ではありません。私たちは、この国の民主主義の在り方について、この国の未来について、主体的に一人一人、個人として考え、立ち上がっていったものです。それは、不断の努力なくして、この国の憲法や民主主義、それらが機能しないことを自覚しているからです。その当たり前のことを当たり前にするために、これまでも声を上げてきました。私たち一人一人が思考し、何が正しいのかを判断し、声を上げることは間違っていないと確信しています。また、それこそが民主主義だと考えていますと。
民主主義とは何か。憲法の価値と理念を渾身に訴える学生たち、若者たちの姿に多くの人々が励まされています。
元最高裁判事の濱田邦夫公述人も、OBとしては、本来は黙っていようと思ったんだけれども、どうにもこれでは日本の社会全体が駄目になってしまうということで立ち上がっているわけです。その点では、奥田さん始めSEALDsの皆さん、全国のいろんな階層の人が、学者の人が、芸能人も文人もみんな立ち上がっている。その事実を認めようとしない政府の態度というのは、非常にこれからの日本の政治、日本の社会に禍根を残すものだと思いますと。述べられたとおりです。
濱田公述人は、そうした思いに立って、安倍政権に対し、集団的自衛権は認められないとした七二年政府見解を強引に武力行使が日本に対するものに限られないんだと読替えをするのは、法匪、つまり、法律、字義を操って法律そのもの、法文そのものの意図するところとは懸け離れたことを主張するあしき例であり、とても法律専門家の検証に堪えられないと厳しく指摘されました。そのとおりであります。
六月四日、衆議院の憲法審査会で与党推薦を含む三人の憲法学者がそろって戦争法案は違憲と述べたのを引き金に、政府・与党を襲った言わば違憲ショックに対し、与党幹部の、砂川判決を読んでいないのかとか、何が必要かを考え抜くのは憲法学者ではなく政治家だなどという、立憲主義を意に介さず、異論を敵視し封殺しようとする姿勢は、追い詰められた権力者の開き直りにほかならないことはもはや明白であります。与党諸君はこうした議論にどこまで付いていくつもりですか。
安倍政権は、憲法の番人は最高裁であり憲法学者ではないなどと繰り返しましたが、とうとう山口繁元最高裁長官は、集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反、従来の解釈が国民に支持され、九条の意味内容に含まれると意識されてきた、その事実は非常に重いと警鐘を鳴らし、また、砂川判決は集団的自衛権を意識して書かれたとは考えられない、七二年見解が誤りだったと位置付けなければ論理的整合性は取れない、いずれも論理的な矛盾があり、ナンセンスだと厳しく批判をいたしました。閣議決定と戦争法案は憲法違反。答えは初めからはっきりしているのであります。
にもかかわらず、なぜ今国会で何が何でも強行か。それは、戦争法案が、自衛隊が米軍と平時から有事まで切れ目なく一体に肩を並べて軍事行動を行おうとする日米合意、改定ガイドラインの実行法だからです。
我が党が国会に示してきた統合幕僚監部内部文書や統合幕僚長の米軍幹部との会談記録は、法案の八月成立を前提に、国会にも全く秘密裏に海外派兵や共同作戦計画の具体化を進めている重大問題を示しています。そこで明らかになっている憲法を壊す究極の対米従属というべき事実を明らかにすることは、参議院の重要な責務ではありませんか。にもかかわらず、安保特別委員会の審議を暴力で打ち切り、法案の緊急上程と強行成立のための本会議開会など、国会、参議院の自殺行為にほかなりません。
安倍総理は、国民の十分な理解が得られなくても決めなくてはならないとか、支持が広がっていないのは事実だが、時が経ていけば間違いなく理解は広がっていくなどと言いますが、とんでもない暴論です。民主主義の根幹は、国民が政治と社会の根本的な在り方を憲法に定め、その憲法に従って政治をすることであり、政府、そして今、国会を構成する私たち一人一人の国会議員に重い憲法尊重擁護義務が課されているのです。明白な憲法九条違反の法案を数の多数で強行することは絶対にできないのであります。その国会運営に重大な責務を負いながら職権を振るう中川委員長の責任は厳しく問われなければなりません。
これら数々の暴挙には、安倍政権が憲法と国民主権をじゅうりんして強行しようとする戦争法案の本質が現れています。自民党、公明党の与党諸君は、この本会議場で、あらゆる手続において数の暴力を振るって法案を強行しようというのですか。議会を壊し、憲法を踏みにじる暴挙を絶対にやってはならない。憲法違反の戦争法案は断固廃案。
日本共産党は、力を尽くして闘い抜くことを宣言し、議院運営委員長解任決議案に対する賛成討論といたします。(拍手)