日本共産党の仁比聡平議員が6月14日の参院本会議で行った改定入管法・技能実習法に対する反対討論の要旨は次の通りです。(記事はコチラ)
 

 
 反対する第1の理由は、永住者の在留資格取り消し事由の拡大は断じて許されないからです。永住者は本来、在留期限や活動に制限がない最も安定した在留資格で、華僑や在日韓国・朝鮮人、日系ブラジル人をはじめ、日本社会で暮らしている歴史的背景や定着性に照らし、より安定したものとされなければなりません。

 突然、法案に持ち込まれた「義務を遵守せず、故意に公租公課の支払をしない」という取り消し事由は、軽微な義務違反を端緒に、入管の裁量で取り消しうる不安定な地位へと百八十度変えるものです。

 法案は、入管が国家にとって好ましい振る舞いをしないとみた永住者を、在留管理のまな板に載せ、生殺与奪の権を握ろうとするもので、深刻な外国人差別、抜き難い排外主義を世界に発信することに他なりません。戦後も、入管行政に底深く続く外国人差別と排外主義から抜け出す第一歩として、この条項は削除すべきです。

 反対する第2の理由は、人権侵害を繰り返してきた技能実習制度の廃止こそ出発点だったにもかかわらず、「育成就労」と言い換えるだけで、看板の掛け替えにさえなっていないことです。

 失踪は、この5年間だけでも4万人に上りますが、原因究明と再発防止はあいまいにされてきました。外国人労働者を一人の人間、住民として受け入れるためには、入管支配から脱却し、国境を越えた移住労働者として、正面から職業安定・労働者保護にとりくむ根本的転換が必要です。

 転籍について、実習先の不正行為など「やむを得ない場合」に加え、本人の意思による「変更を可能」としています。転籍の自由は不当な搾取から自らを守り、労使対等を実現する最も中核的な権利であり、その期間制限は不当です。

 研修生制度以来、外国人労働者を食いものにしてきた悪質なブローカー、人材ビジネスの利権の温床になってきたのに、「監理支援」と看板を掛け替えただけです。監理団体の許可が取り消されたのは48件に過ぎず、不当な監理費を理由に許可が取り消されたことはありません。

 育成就労への派遣解禁は重大です。派遣手数料の負担は、労働者の待遇をさらに悪化させ、新たな搾取の仕組みになりかねません。人権侵害を生み出してきた構造に反省なく、人手不足対策だと前のめりの政府に“白紙委任”などできません。

 「人があって材がある」。横浜華僑総会の曽徳深参考人の言葉に学ぼうではありませんか。苛烈な外国人差別と迫害の歴史、真の共生社会への強い要求を真正面から受け止め、全力を尽くす決意です。(しんぶん赤旗 2024年6月15日)