○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
前回、五月二十七日、私は、今日我が国における最大の憲法問題は、安倍内閣の集団的自衛権行使容認など、昨年七月一日の閣議決定及び今国会への戦争法案の提出強行であり、それ自体が戦後最悪の憲法破壊であって断じて許されないことを厳しく指摘しました。そして、今日、二院制をめぐり参議院に問われているのは、その戦争法案を廃案にすることというべきです。
第一に、立憲主義と国会の役割についてです。
安倍政権は、決めるべきときは決めるのが民主主義だ、国民の十分な理解が得られなくても決めなくてはならないなどと言いますが、全くの暴論です。民主主義の根幹は、政治と社会の根本的な在り方を国民が憲法に定め、その憲法に従って政治をするところにあり、政府及び国会議員は重い憲法尊重擁護義務を課せられているのです。
侵略戦争に対する痛恨の反省を踏まえ、日本国憲法は憲法九条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を明記しました。明白な憲法違反の法案を数の多数で強行することはできません。
六月四日、衆議院の憲法審査会で与党推薦を含む三人の憲法学者がそろって戦争法案は違憲と述べたのを引き金に、言わば違憲ショックが政府・与党を襲いました。与党幹部は、国会運営に緊張を欠いていたとか、事前に防ぐことができたと述べましたが、事前に防ぐことができたどころか、大抵の憲法学者なら、正面から質問されれば誰でも憲法違反と答えるしかないのは当たり前です。
与党幹部は、砂川判決を読んでいないのかとか、何が必要かを考え抜くのは憲法学者ではなく政治家だ、憲法の番人は最高裁であり憲法学者ではないなどとも言いましたが、法案それ自体が戦後最悪の憲法破壊にほかならないという根本的矛盾は、議論すればするほど深まるばかりです。
今月三日、取材に応じた山口繁元最高裁長官は、集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反、立憲主義や法治主義が揺らぐ、従来の解釈が国民に支持され九条の意味内容に含まれると意識されてきた、その事実は非常に重いと警鐘を鳴らしました。また、砂川判決が集団的自衛権を意識して書かれたとは考えられない、七二年見解の論理的枠組みを維持しながら集団的自衛権の行使も許されるとするのは相矛盾する解釈の両立を認めるもの、七二年見解が誤りだったと位置付けなければ論理的整合性は取れないと、いずれも論理的な矛盾がありナンセンスだと厳しく批判しているのです。憲法九条との論理的整合性も法的安定性も欠如した戦争法案は、廃案しかありません。
第二に、戦争法案は、自衛隊が平時から有事まで切れ目なく米軍と一体に肩を並べて軍事行動を行おうとする改定ガイドラインの実行法です。重大な軍事行動について、法案上、法理上に限定はなく、時の政府の判断次第で先制攻撃と侵略を辞さない米国と際限なく一体化し、武力行使を可能とするものです。それは、憲法九条をなきものにする憲法破壊であり、政府答弁が破綻と撤回を繰り返し、国会審議が中断を繰り返している根本問題は、かかる法案の違憲性、対米従属性にあるというべきです。
我が党が独自に入手し、国会に示してきた統合幕僚監部内部文書や統合幕僚長の米軍幹部との会談記録は、陸海空自衛隊を束ねる統合幕僚監部が、法案の八月成立を前提にして、海外派兵や日米共同作戦計画などを、国会答弁さえごまかし、国会にも国民にも全く秘密裏に具体的に検討し、進めていることを示す重大問題です。そこで明らかとなっているのは、憲法を根底から覆す究極の対米従属というべき事実であり、この問題を明らかにすることは法案審議に先立つ参議院の責務というべきです。
最後に、私は、衆参それぞれの院が、主権者国民を代表する唯一の立法機関として審議を尽くすことが二院制の基本原理であることを強調したいと思います。八割を超える国民が今国会で成立させるべきではないと声を上げ、八月三十日の日曜日、戦争法案廃案、安倍政権退陣、国会十万人、全国百万人大行動が行われました。人々の怒りが世代を超えて重なり合い、文字どおり国会は包囲され、埋め尽くされました。官房長官は、大きな誤解が生じていることは極めて遺憾などと述べましたが、それこそが大きな誤解です。深い理解が広がり続けているからこそ巨大な人々が動き出しているのです。この民意を正面から受け止めるのが参議院の責務です。
強行採決は絶対に許されないし、世論に包囲され、参議院が審議を続けているのに衆議院が再議決するなどはまさに国民主権の否定、ファシズムにほかなりません。その衆議院の与党多数は、二〇一二年総選挙でも四割の得票で八割の議席という、小選挙区制による虚構の多数でしかないのです。
日本共産党は、憲法違反の戦争法案を廃案にし、憲法改悪のあらゆる企てに断固として立ち向かう決意を述べ、意見表明といたします。