20221101法務委資料一式

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、女性差別撤廃条約の選択議定書の速やかな批准について、大臣に、政府に強く求めたいと思うんですけれども、既に百八十九か国の批准国のうち、今年四月にモロッコが批准をして百十五か国になっているのがこの選択議定書なんですが、この間、地方議会において、資料、お配りしている二枚目ですけれども、批准を求める意見書がどんどん採択をされています。

 

 

 

 

 

 

とりわけ、二〇一九年に女性差別撤廃条約実現アクションという広範な女性運動あるいはNGOが集まっている運動が発足して以来、急速に伸びておりまして、次のページに全国の議会の名前を出していますけれども、九月までに百六十四の議会に上っているんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

府県議会の採択が今九ですけれども、採択順に紹介しますと、高知県、島根県、宮城県、徳島県、富山県、大阪府、埼玉県、そして三重県、滋賀県と。宮城では二回も意見書が上がっているという状況でして、そのうち、次のページに、速やかな批准に向けた環境整備をという大阪府議会の意見書、それから批准に向けての速やかな検討をという徳島県議会の意見書、それぞれ御紹介をいたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

この女性差別撤廃条約実現アクションの皆さんに伺うと、この取組というのはとっても生き生きしておりまして、大阪ではこの府議会を先頭に府内全議会で批准のこの意見書が上がったんですけれども、二時間に一本のバスしか通っていないところや、みぞれが降る中でも府内のあちこちの議会に出かけて説明してきたと、そんなインタビューをしておられます。府議会では自民党の皆さんが提案をされて、全会一致になっているんですね。
徳島での運動は、徳島県女性協議会の皆さんが先頭に立っておられますけれども、徳島県議会にまず直行されたそうです、意見書上げてほしいということで。そうしたら、当時の総務委員会委員長をお務めになっておられた自民党女性議員の御尽力が大きかったと。で、委員会、全委員が紹介議員の了承を得て、本会議で全会一致で採択をされた。
この方は、女性の人権を守るためにはやはり女性議員を増やさなければならないと思いますとおっしゃると同時に、男性議員の理解者を探す、これが大事だと。話せば分かる人が思っていたよりたくさんいたとおっしゃっていて、やっぱりこうした生き生きした女性を先頭にした運動が人権を真っ当ならしめる、そうした社会への原動力なんだなと、わくわくするような思いで私、この百六十四という意見書を受け止めているんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(葉梨康弘君) やはり各地方自治体の決議に基づく意見書、これは本当に自治体の住民から選出された議員が自主的に、今委員おっしゃられたように、議会の意見として決議したものだというふうに思っておりまして、私も真摯に受け止めなければならないと思います。
○仁比聡平君 もっとわくわくした気持ちで受け止めてほしいなと思うんですけれども、そこで、資料の一枚目に、国連女性差別撤廃委員会の事前質問に対する回答の形で政府が昨年九月に提出をしておられる女子差別撤廃条約実施状況に関する第九回報告の第一問の部分をお配りをいたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

この政府報告に対する条約委員会の審査、これ、これから始まるんですね。とりわけ来年、佳境を迎えてくるんじゃないかというふうに言われているんですけれども、この場で批准するという姿勢を示していくということが国際社会に大歓迎される道なんではないかなと私は思います。
この上の四角の中にあるように、条約委員会は、選択議定書を批准するために行った検討及び批准に対する障害につき詳述されたい、また、選択議定書の批准のために要する期間に関連し、国会承認に向けた計画及び見通しについても報告されたいというふうに質問をしてきていまして、これに対する今の段階の文字になっている回答は、つまり政府の事務方が作られている回答は、ちょっと申し訳ないけれども、二十年一日というんですかね、真剣に検討するとおっしゃいながら、早期に締結をというこの共同参画計画の表現に対してもちょっとどうなるのという感じがあるんですけれども。
この問題について、二年前、二〇二〇年の三月二十六日の外交防衛委員会で、当時の茂木外務大臣がこう答弁しています。論点というのは明らかなわけでありますから、これを関係省庁との間でずるずる引っ張るということではなくて、しっかりと議論して、どこかで結論を出さなきゃならない問題だと、このように考えておりますと。
その結論を出す時期、つまり批准する、あるいは批准に向けてこの条約委員会の問うてきている計画や見通しを具体的にもう明らかにすると、そういうふうな姿勢を示すという段階に来ているんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(葉梨康弘君) もっとわくわくするというお話ございましたが、なかなか一つの役所、法務省だけで、じゃ、この場でお答えできるかというと、お叱りを受けるかも分からないんですが、まだその段階ではないということです。
ただ、私どもも、この個人通報制度などの選択議定書、これ非常に注目すべき制度だというふうに考えています。その上で、通報事案への具体的在り方などを含めた所要の検討、これが必要だと。そうすると、私どもの省だけではなかなか検討、解決できるものではないということでございますので、外務省を中心とする関係省庁連携して、政府全体で各方面の意見を聞きながら、同制度の導入の是非について検討を進めていきたいということで、ちょっと前の答弁と一緒になっちゃって申し訳ございませんが、ということでございます。
○仁比聡平君 大臣が今申し訳ございませんがとおっしゃるとおり、だって、外務大臣がどこかで結論を出さなきゃならない問題だと前向きな姿勢を既に示しているんですよ。法務大臣が人権の問題について、やっぱりしっかりと政府、各省の認識を深めて、そして速やかに批准に向かうという時期に来ている、もう遅過ぎると私は思うんですけれども。
体制という問題についてお話がありました。司法に関して、これまで必ずしも司法の独立と相入れないものではないというような趣旨の、必ずしもみたいな議論が付いてきたんですけれども、二〇〇三年の条約委員会の総括所見に、選択議定書により提供される制度は、司法の独立性を強化し、女性に対する差別への理解を進める上において司法を補助するものであると強調をしています。
私、このことの意味というのがとても大事だなと思っていて、二〇一八年に来日されたこの委員会の個人通報制度作業部会長パトリシア・シュルツさんの講演を私も伺いました。人権の保護における司法の基本的な役割は、国際的な審査を受け入れることによって強化されるのですというふうに述べておられるわけですね。この意味というのは、大臣、どんなふうに理解しておられますか。
○国務大臣(葉梨康弘君) このそれぞれの御意見というのは、当然、それぞれ立場の方が述べられて、意味のあるものだというふうに思いますけれども、事この今回のここの委員会で議論になっています選択議定書の関係について述べると、ちょっとコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 これ通告したときに、どう答弁されるのかなということで関係省庁、御苦労されたようなんですけど、コメントすること差し控えるという答弁だとは思ってはいなかったですよね。
だって、人権というのは、これは生まれながらにしてみんなが享有しているもので、国籍や人種や性別に、もちろんそれを超えたものですよね。国際社会で人権水準が発展していく、その水準が条約やあるいは条約委員会の勧告などに示されてくる。これを私たちの社会、日本社会の例えば司法がどう受け止めるのか。そのことが選択議定書を批准して個人通報制度ということになっていくときの大きな意義なのであって、国内の状況に応じて、その要請との関係で受け止めた上では議論がありますよというんだったら、それは議論はしたらいいんですよね。法的に拘束されるものではないわけですから、勧告など。
だから、そうした国際社会の国際人権水準に照らした議論がきちんとされるということが人権の保護という司法の基本的な役割を強化することになるというのは私はもっともなことだと思うんですけど、なおコメントができませんか。
○国務大臣(葉梨康弘君) 今、先ほど申し上げましたとおり、この司法の役割は国際的審査を受けることによって更に拡大されるということになって、そういうことについての議論、意見と、それからこの選択議定書との関連での意見ということになると、さっきの答弁のとおり、じゃ、どういう意見をお持ちですかというふうに言われても、ちょっと、この発言に対しての評価は今ここでちょっと申し上げるというのはむしろ適当ではないのかなというふうに思います。
ただ、国際的に審査を受け入れるという面に関しては、日本の人権状況等々について、積極的に私ども法務省も国連の人権理事会等々でしっかり説明をするというような形での審査を受ける、これはもう真摯に対応するというのは当然のことだと思います。私どもはまさに、司法全体というのもそうですけれども、法務行政としてそういったことには対応させていただいております。
○仁比聡平君 ちょっとまだよく分からないんですけど、また次の機会にしっかり議論させていただきたいと思うんですが、例えば国籍法の違憲判決だったり婚外子相続分の差別違憲判決だったり、そういうような中で、条約あるいは条約の委員会からこういう勧告を受けているということ自体が違憲判断の要素にもう最高裁しているんですよね。
この間、この報告書にも指摘をされている選択的別姓をめぐる訴訟や、あるいは再婚禁止期間への一部を違憲にした判決などの中で、補足意見や反対意見を中心に、この条約の趣旨というのはこれは深められている。だから、裁判所の中では既にそうした議論はされている。そのことがとっても大事なんではないかと思うんですけれども、既に裁判所の中ではこの条約が定める人権基準を踏まえた議論がされているのではないのかと。大臣、いかがですか。
○国務大臣(葉梨康弘君) これ、裁判所の中での議論について法務大臣の立場でなかなか物を申し上げるというのは非常に難しいなというふうに思います。それぞれ最高裁あるいは高裁、地裁も含め、それぞれの裁判体の中において判断されているものだというふうに思います。その内容については、ちょっとこちら、私として申し上げることは差し控えたいと思います。
○仁比聡平君 林陽子さん、女性差別撤廃委員会の委員長もお務めになられましたが、最近の論考で、「司法におけるジェンダー平等 なぜ必要か、そして何が必要か」という論考がありますけれども、今日、訴訟で争われる問題は、夫婦別姓、同性婚、離婚後の共同親権、正規と非正規労働者の格差、様々な形態のハラスメント、暴行、脅迫を要件とする性暴力罪等、多種多様であり、そこには根底にジェンダーに基づく差別が潜んでいることが少なくない、最高裁が最たる勝ち組の人々だけではなく、より多様なバックグラウンドを持つ人々によって構成されるよう期待する、それは市民が司法を自分たちのものと体得し、信頼する基盤となるものであるというふうにおっしゃっていて、私そのとおりだと思うんですが。
最高裁に最後、事実だけ確認したいと思いますけれども、一九四七年、最高裁の発足から二〇二〇年九月までの間に最高裁裁判官には百八十二名が就任したが、うち女性は一九九四年以来七名で、現職十五名のうち女性は二名であるという指摘はそのとおりか。そして、いまだキャリア裁判官から女性の最高裁判事が選任されていませんという指摘はいかがですか。


 

 

 

 

 

 

 

○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答えを申し上げます。
御指摘のとおり、一九四七年の最高裁発足から二〇二〇年九月末までの間に百八十二人が最高裁裁判官に任命されており、そのうち女性は一九九四年以降に任命された七人でございます。また、二〇二〇年九月末当時の現職の最高裁裁判官十五人のうち女性は二人でございました。
二つ目の御質問についてでございますが、下級裁判所の裁判官としての経験を有する女性の最高裁判事としては岡部喜代子元最高裁判事がおりますけれども、最高裁判事に任命される直前に下級裁判所の裁判官の職にあった女性の最高裁判事はおりません。
○委員長(杉久武君) おまとめください。
○仁比聡平君 第五次男女共同参画基本計画には、最高裁判事も含む裁判官全体に占める女性の割合を高めるよう裁判所等の関係方面に要請するという文言も挿入されているわけですね。
この司法の分野を始めとして、ジェンダー平等の前進が必要だと。選択議定書の批准、それは我が国のそうした姿勢を国際社会にしっかり示すものになるということをしっかり胸に刻んで、大臣、臨んでいただきたいということを最後に申し上げまして、今日は質問を終わります。