参院法務委員会は7月2日、3カ月以上日本に滞在する外国人の管理を厳格化する出入国管理法(入管法)など改定案に対する参考人質疑を行いました。同改定案は、日本人と結婚した外国人配偶者が配偶者としての活動を継続して6カ月以上行わない(例えば別居)場合、在留資格の取り消し対象とされています。
参考人の「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鈴木健事務局次長は、日本人と結婚した女性が「おまえの在留資格を取り上げてやる」と夫から脅され、家庭内暴力(DV)に耐えている事例を挙げ、「改定案はDV被害者の生活環境の悪化につながる」と強調しました。
現在の制度では、在留資格の有無にかかわらず(仮に不法滞在でも)、居住実態があれば、市町村は外国人登録証を交付し、国民健康保険や生活保護などの住民サービスを実施しています。
改定案では外国人登録証は廃止され、法務大臣が「適正」と認めた外国人に対して在留カードが交付されることになります。このカードをもとに、市区町村は外国人を住民基本台帳に記載します。
在留カードを所持しない外国人は台帳に記載されないため、行政サービスから排除される可能性があります。
改定案に賛成の多賀谷一照参考人(千葉大学教授)は、「人道的な問題は従来通りに」と述べ、サービスからの排除がないよう求めました。
参考人の意見を聞いた日本共産党の仁比聡平議員は、「市町村には、外国人登録証の交付を通じて、それぞれの地域事情、歴史的背景のもとで積み上げてきたものがある。(改定案にもとづく)新制度のもとでは、外国人との共生を図っていくのは非常に難しいとの感想を持った」と述べました。
“声聞いて”当事者ら集会
日本に滞在する外国籍住民への管理強化となる入管法改定案に反対する集会が2日、国会内で開かれ、在留外国人ら約100人が出席しました。日本共産党からは仁比聡平参院議員が出席しました。
パキスタン人の女性は、「当事者の私たちの意見をなぜ聴かない。日本政府は身勝手だ」と批判。19年前に来日したビルマ(ミャンマー)人の女性は「区役所が外国人登録証を交付してくれたおかげで、部屋を借りられた。日本人と外国人が平和的な関係を築けたのは外国人登録証のおかげだ」と訴えました。
日本人と結婚して来日したフィリピン人女性は娘の悲惨な実態を報告しました。この女性は、前夫のフィリピン人男性との間にできた娘2人を日本に呼び寄せたところ、日本人の夫が娘を虐待。離婚したため娘2人は在留資格を失いました。
「長女は在留資格を得るために好きでもない日本人男性と結婚、次女はフィリピンに戻りました。私たちは日本で平和に暮らしたいだけ。(改定案は)私たちをさらに苦しめるだけ」と話しました。
仁比氏は「日本共産党はみなさんと同じ反対の立場。外国籍住民の多い地域に議員が出向いて声を聞くなど徹底審議が必要だ」とあいさつしました。(2009年7月3日(金)「しんぶん赤旗」)