実態はひとり親でも父母の収入合算し判定

高校無償化も対象外?

 高校の授業料を無償化する就学支援金制度について、盛山正仁文部科学相は「保護者などの収入に基づき受給資格認定をする。共同親権であれば、親権者2人分の収入に基づいて判定を行うことに当然なる」(16日の記者会見)と発言。離婚後「共同親権」の場合は原則、父母双方の収入を合算して受給の可否を判定すると説明しました。

 文部科学省のホームページによると、国による就学支援は公立11万8800円、私立39万6000円が給付されます。子ども1人の場合、親権者1人の時は公立で年収約910万円以下、私立で年収約590万円以下が対象です。

 しかし、親権者が父母双方の場合、2人の所得が合算され、公立は年収1030万円以下、私立660万円以下となります。父母双方の収入で計算され、所得制限により子どもが「無償化」の対象から外れる恐れがあります。

 改定案では、すでに離婚して「単独親権」となっていても、別居親が「共同親権」への変更を申し立てることができます。仮に父母間で合意ができなくても、裁判所が「共同親権」と定めることも可能です。

 仁比氏は18日の参院法務委員会で「共同親権」となっても別居親が養育費を支払わない場合、授業料無償化の対象から除外することは「子の利益に反する」と追及しました。

 梶山正司文部科学戦略官は「経費の負担を求めることが困難な場合は、親権者1人で判定を行う」と答弁。現在も、婚姻中で親権者が2人でもDV(配偶者などからの暴力)や虐待などがあった場合には、親権者1人で判定していると説明しました。

 では実際にどんな実績があるのか―仁比氏の追及に梶山戦略官は「都道府県において個別のケースに応じて判断する。文科省において件数は把握していない」と答弁。仁比氏は「現場がどうなっているかの実態を把握していなければ、安心できない」と批判しました。

影響及ぶ支援策多数

 「共同親権」の導入で影響が及ぶ可能性がある支援策は、高校無償化にとどまりません。

 小泉龍司法相は5日の衆院法務委で「(支援制度の)細かい規定はさまざまある。各省庁の行政の観点が必ずしも同じではない」と答弁。「共同親権」導入により、ひとり親世帯の支援制度などにどんな影響があるかを調査していないことを認めました。

 日本共産党の本村伸子衆院議員は12日の同委で「ひとり親世帯にどういう経済的な影響が及ぶのか、十分に議論できていないのに採決を強行するのは絶対に駄目だ」と主張。採決が強行された16日の衆院本会議では、高校無償化や税金控除、各種ひとり親支援制度について「使えなくなることが絶対にないようにするべきだ」と要求しました。

 仁比氏は19日の参院本会議で、親の収入などが要件となる各省庁の主な支援策が少なくとも28件あると明らかにしました。18日の参院法務委では「共同親権」導入に伴う、それぞれの制度の運用について追及しました。

 犯罪被害にあった家庭が対象の「まごころ奨学金」について、金融庁総合政策局の若原幸雄参事官は「審査の方法は現時点では決定していない」「(法務省から)制度に関する協議は承っていない」と答弁。法務省と各省庁で協議や検討が行われていない実態が判明しました。

 一方、厚生労働省の斎須朋之審議官は法務省と「協議は行っていない」としつつ、障害児が対象の特別児童扶養手当や福祉手当について、親権の有無にかかわらず、監護の実態などで判断すると答弁。こども家庭庁の野村知司審議官は児童扶養手当について「監護の実態があるかで対象者を判断する」と述べました。

 仁比氏は「共同親権」導入がどのような影響を及ぼすか、法務省と関係省庁とが協議し、国民が一覧できるよう速やかに示すべきだと求めました。

 離婚後「共同親権」では進学、転居、入院などあらゆる場面で別居親の同意を得なければならない可能性があります。DV・虐待の被害者から、子の権利や利益を阻害するとの懸念の声が広がっており、徹底審議が求められます。(しんぶん赤旗 2024年4月21日)

■親の収入などが要件となっている各省庁の主な支援策

(仁比聡平参院議員事務所調べ。18日時点)

▽幼児教育等の無償化

▽幼稚園等における副食費免除

▽就学援助制度

▽特別支援教育就学奨励費

▽高校無償化(高等学校等就学支援金制度)

▽高校生等奨学給付金

▽大学等無償化(高等教育の修学支援新制度)

▽貸与型奨学金

▽幼児教育・保育の無償化

▽保育所等における副食費免除

▽児童扶養手当

▽母子・父子自立支援プログラム策定事業

▽自立支援教育訓練給付金事業

▽ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援事業

▽高等職業訓練促進給付金等事業

▽ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業

▽ひとり親家庭住宅支援資金貸付事業

▽特別児童扶養手当

▽障害児福祉手当

▽補装具費支給制度

▽小児慢性特定疾病児童等への医療費助成制度

▽まごころ奨学金

▽訴訟上の救助

▽訴訟費用執行免除

▽代理援助及び書類作成援助

▽セーフティーネット登録住宅の家賃低廉化支援

▽セーフティーネット登録住宅の家賃債務保証料等低廉化支援

▽セーフティーネット登録住宅への住み替え支援