【08.11.27.】第170回国会 参議院法務委員会 第5号 2008年11月27日 仁比聡平参議院議員

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第170回国会 参議院法務委員会 第5号
2008年11月27日 仁比聡平参議院議員

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

我が党は今回の改正案に賛成でございます。

今回の改正案は、日本人の父から生まれた子でありながら、これまで日本国籍を取得できずに、いじめや差別を受けて、あるいは基本的人権の保障などを受け る上で重大な不利益を被っているという、そういった実態に対して、最高裁大法廷の違憲判決を受け、現行法から婚姻要件を外して法の下の平等を保障しようと するもの、そういった意味で、部分的な救済ではありますが、一歩前進であるというふうに受け止めてございます。

あわせて、国際人権規約B規約、あるいは子どもの権利条約における子供の差別禁止規定や、子どもの権利条約には子供の国籍を取得する権利も規定をされて おるわけでございますし、女子差別撤廃条約、そういった国際人権法の趣旨に基本的にかなう方向、そういったものとして前向きに受け止めております。

その趣旨は、前回、最高裁判決を法務省あるいは大臣としてどのように受け止めていただいているのかということを中心に質問させていただいたところでござ いますので、今日は、まず偽装認知、いわゆる偽装認知防止のための対応策と今回の改正案で削除するという御提案があっている婚姻要件、この関係がどうなっ ているのかというところからまず伺いたいと思うんですね。

局長、よく質問聞いていただきたいんですが、まず最高裁判決との関係からお尋ねしたいと思います。前回の質問の最後にこの点少し局長とやり取りをさせて いただいたんですが、会議録も見まして、つまり、局長の前回の御答弁は、婚姻要件を削除した上で、偽装認知の問題は別問題なんだからそれは考えなさいとい うふうに最高裁は言っているのではないか、そういう御答弁をされていると思うんですが、そういった理解でよろしいですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁の判決があそこのくだりでどういう表現をしていたか今ちょっとよく覚えていないんですが、偽装認知の問題というのは婚姻要件を外すかどうかと直接関係がないというか、そういう表現であったのではないかと思いますが、ちょっと言っていただければ。

○仁比聡平君 その部分の最高裁判決を改めて紹介をしておきますけれども、「仮装認知がされるおそれがあるから、このような仮装行為による 国籍取得を防止する必要があるということも、本件区別が設けられた理由の一つであると解される。しかし、そのようなおそれがあるとしても、父母の婚姻によ り子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが、仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有する ものとは」言い難いというふうに判決理由は述べているわけです。そのとおりですね。

○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。

○仁比聡平君 つまり、現行法の婚姻要件、これが偽装認知防止の要請との関係で必ずしも合理的関連性を有するものとは言い難いというふうに最高裁は多数意見で判断をしているわけです。

今日、他の先生の御質問に対する答弁で、この婚姻要件がどのような役割を果たしているのかという議論がありまして、これが削除されることによって抽象的 には偽装がやりやすくなっていくという趣旨の答弁をされたと思うんですね。この抽象的にはというのは、つまり、これまでは認知とそれから婚姻の届出、ここ の二つの局長の表現で言えばハードルがあったと、これが一つになるという意味だろうと思うんですけれども、抽象的にはそういうことになるかもしれません が、具体的にそういった偽装のおそれが高まるといった立法事実、そういうのはあるでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 具体的には、例えば外国で、これは制度も事情も違うんで完全に並べることはできないんですが、そういうことが起こったというふうな話はございます、先ほどのドイツの例なんかがそうなるのかなと思いますが。

今、日本で具体的にそれがあるのかというと、まだやってないわけですから分からないということにはなりますけれども、先ほどの婚姻プラス認知ということ が認知だけでよくなったという、ハードルが一つ減ったというだけではありませんで、婚姻を偽装しようとすると、やっぱり婚姻の実態を偽装しないといけない んですね、入管当局などが摘発するケースというのはよくそれが多いんですが。だから、ある程度男性と女性が一緒に暮らす外形をつくるとか、そういうことも しないと婚姻の実態がないということで偽装婚姻だとやられる。認知の場合には、認知という意思表示だけでそれでできてしまうという、そこも、もう比較の問 題でありますけれども、やりやすくなると。そういう意味ではそういう偽装認知が起こるという懸念はあるという意味で申し上げました。

○仁比聡平君 私も懸念があることそのものを否定しようというつもりはないんです。私も、偽装認知や、あるいはよく指摘をされているような ブローカーあるいはまがいのそういった違法というのは、これは正すべきだと思っております。ただ、そういった懸念がどれほど具体的な事実によって、いわゆ る立法事実によってこの婚姻要件と結び付けられているのかということを今お尋ねしているつもりなんですね。

二つおっしゃいました。一つは、ドイツの問題では、これ局長も前提にされましたけれども、制度がそもそも我が国とは違うわけですね。その下で、今日午前 中お話を伺いました中央大学の奥田教授は、このドイツの法改正、これを日本でそのまま当てはめるというようなものではないはずだという趣旨の陳述であった と思うんです。それはどうですか。

○政府参考人(倉吉敬君) それは制度の実情が違うわけですから、私も先ほど、ドイツのようなあの制度を取り入れるべきかと言われれば、それは日本では違うということは先ほど答弁したとおりでございます。

○仁比聡平君 入管の在留管理との関係でのお話がもう一つの点なんですけれども、先ほどのお話でいいますとね。在留資格との関係という御答弁だったんでしょう。違いますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど申し上げたのは、婚姻までも偽装しようとすれば、ただ届出だけでは終わらないので婚姻の実態まで偽装しなければならなくなると、それが入管の摘発事例なんかからはうかがわれるということを申し上げました。

○仁比聡平君 ですから、入管の摘発事例との関係で、婚姻の実態があるかどうかがそういう意味では問題になり得るのであって、届けの段階では、区役所に婚姻届を出すときに一緒に暮らしているかどうかを区役所の窓口、確かめないじゃありませんか。違いますか。

○政府参考人(倉吉敬君) それはもちろんそのとおりでございます。

○仁比聡平君 過去の偽装認知と言われる件数が三件だというのは先ほどから御答弁があっているとおりなんですが、違いますか。でしょう。で すから、そういった中でどういった偽装が婚姻要件と結び付いているかということは、これは具体的なケースや事実としてはなお明らかではないと私は思うんで すよね。

こういった中で、今日もこの婚姻要件の削除が人身売買奨励法であるという批判がなされましたけれど、私はその批判には根拠があるとは思えないんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(森英介君) ちょっと十分理解できてないのであれですけれども、私は直接関係ないというふうには思いますけれども、直接的にはですね。

○仁比聡平君 つまり、婚姻要件が現行法に存在することが偽装を防止するために極めて重要な役割を果たしているということが具体的なケース において明らかであるというのであれば、これを削除するという今回の改正案が、この偽装との関係で改正案そのものが議論されるというのもあり得ることかと 思うんですけれども、そういった事実はないのではないかと私は思うんですよ。懸念はもちろんありますよ。そこをよく、提案を受けて審議をしている私ども は、冷静にといいますか、この国籍法の改正そのもの、それ自体が法律としてどういう意味を持っているのかということをよく受け止めなければならないのでは ないかと思っております。

制度の悪用、あるいはましてブローカーは許されないというのはもう申し上げたとおりで、これは私の弁護士活動の中で、国籍ではありませんけれど、戸籍制 度を悪用、濫用して、養子縁組をもう考えられない十数回も繰り返して、姓あるいは本籍、これをごまかし偽って悪用するというこのケース、事案に取り組んだ ことがございます。実態は戸籍の売買だったのではないかという、そういうケースが現実にあるわけですね。これが組織的に行われている、これを食い物にして いる、そういうやからがおるというのは、これは厳格に取り組まなければならない問題だと思うんです。

そこで、法務省が、今日も出ていますけれども、国籍取得届に対してどのような対応をこれからされようとしているのか。これ通達の規定ぶりというのは検討 中というお話ですから、そこはもう結構ですので、考え方として、もう一回まとまった形で局長に御紹介いただきたいと思うんですが。

○政府参考人(倉吉敬君) 偽装認知ということがしかも組織的に行われるということになれば、これは大きな問題でございます。現実にそれが どれぐらいの確率で起こるのかと言われると、そこはこれからのことであるので分かりませんが、少なくとも懸念はあると。すると、それに対しては十分な対処 をしておかなければいけないと思っております。

そこで、法務局の窓口に届出人が、普通は母親が来ることが多いと思いますが、法定代理人として、その人に対していろんな事情を聴く。それから、母国で 取ったいろんな書類であるとか、それから父親の戸籍であるとか、そういったものを客観的な書類を出していただいて、そして、その父親と知り合った経緯、い つどのような交際をしたのか、子供が生まれるまでの経緯はどうか、それから、今父親は同居して一緒に暮らしているのか、そうでないとすればその事情は何な のかとか、そういったことをるるお尋ねをいたしまして、それと客観的な書類との間に矛盾はないか等々を検討をして、少なくとも偽装認知だけは防ぐというこ とを対処していきたいと思っております。

これは、これまでの通達でも、疑義があるときはきちっと関係人から事情を聴いて、そして書類を集めて云々ということはあるわけでございまして、基本的にはこれまでの基本通達の線をより慎重に進めていこうというものでございます。

○仁比聡平君 これまでの御答弁でいいますと、その中で犯罪性を認識するということがあれば捜査機関との連携をするということかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。捜査機関だけではなくて、入管等の情報交換等も含めて関係機関と連携してやってまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 そうした法務局での取組は、これちょっと理屈っぽいですが、法律に基づく行政行為、その中での言わば法の適用に当たっての事実認定の問題だというふうに私は理解したんですが、そのとおりでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。その国籍取得届をするに当たっての国籍取得の、国籍法三条一項の要件がきちっとあるかということを審査するということでございます。

○仁比聡平君 その審査に当たって、もちろん今回問題になっています偽装認知を防止するという、この角度はお持ちになるのが当然だと思うん ですが、元々国籍取得という重要な法的地位にかかわる事実認定なわけですね。この事実認定において、真実の認知が保護されると。真実の認知が排除されるこ とは本末転倒だと私は思います。

日本の家事あるいは人事の裁判でも、あるいは審判や調停でも、子の福祉を最優先に、あるいは子の最善の利益を最優先にというこういった考え方で、手続の土俵が、みんながそこを向いて、関係者がそこを向いて設定されて運用されていると思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 真実父子関係があり、真実日本国籍が欲しいということで届出をしている人、そういう人たちの権利や利益が損なわれないようにする、あるいはそういう人たちにつらい思いをさせると、そういうことがないようにするというのはもちろん大事なことだと思っております。

○仁比聡平君 そこで、DNA鑑定を義務付けるか否かという問題がございまして、これも今日いろんな形で局長から御答弁があっているんです が、改めてDNA鑑定を義務付けることは非常に難しい問題だといった御答弁をこれまでしておられると思うんです。その理由を少しまとめてもう一度御答弁い ただきたいと思うんですが、今日、大臣からも科学は万能ではないという御発言もありましたし、あるいは今日午前中の参考人からも、実務として厄介な問題を 抱えることになるなり、あるいはそもそも必要ないというような御意見もあったところなんですが、局長、いかがですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど来申し上げているとおりでありまして、一つは、日本の親子法制といいますか家族法制に好ましくない影響を与えるのではないかということがございます。

それからさらに、基本的に認知が問題でございますので、本来DNAを取るとすれば、最初の市区町村の認知の窓口のときではないかということが当然問題に なってくると思うんです。そうすると、外国人を認知するという場合にだけDNAを要求するというようなことになりかねない、それは外国人に対する新たな差 別を生むのではないかと、こういうこともございます。

それから、DNAについては、一定の負担と、それからもちろんDNAを機関のところに行って受けるための手間が掛かります。そういう負担を一部の人だけ に掛けさせるということでいいのかという問題もあろうかと思いますし、それから法務局においても、検体が同一性がきちんと確保できているのかとか、検体の すり替えがないのかとか、そうしたことについてきちんと担保できるだけの能力というのは、それはなかなか難しい問題もあるといったような事情でございま す。

○仁比聡平君 衆議院の答弁を拝見をいたしますと、今おっしゃられた点に加えて、現代の科学水準に合わせたきちんとした鑑定ができているの か、あるいはだれだれが鑑定したとなってはいるがそれが偽造ではないか、そういったことが窓口では判断できないという問題があるということ、あるいは鑑定 に相当の費用が掛かるというお話がありますが、それらも理由ですか。そういったことも局の理由ですか。

○政府参考人(倉吉敬君) それも理由でございます。

○仁比聡平君 この国籍取得届が要件を満たすかのこの事実認定において、Aという証拠がなければ、要件がある、要件事実が存在するというこ とを認定しないという、ちょっと専門的な用語で言うと法定証拠主義と言うのだろうと思うんですけれども、つまり、この件に照らしますと、DNA鑑定がなけ れば要件があるとは絶対に認めないというようなルールは、行政が行う事実認定においても、あるいは裁判における事実認定においても、我が国の事実認定の在 り方にはなじまないし、これまでそういったルールはないのだと思いますが、いかがでしょう。

○政府参考人(倉吉敬君) 少なくとも、特定の事実をこの証拠だけで認定しなければならないと、そのような制度はないのではないかと思います。

○仁比聡平君 加えて、不誠実な父親ということを考えたときに、検体の入手がその子供あるいはその法定代理人である母にとっては不可能であ ると。実際に日本人の父との間に生まれた子であるんだけれども、間違いないんだけれども、だけれども今その日本人父から検体を入手するということは不可能 だという、そういう場合は十分あり得ることだと思うんですよね。あるいは、先ほど写真というお話がありまして、これは今後の具体化のお話でしょうからこだ わるわけじゃないんですが、これ、あれば別ですけれども、ないものを出せと言われてもこれは不可能を強いるということになるかと思うんですよ。

民事局としてもあるいは大臣としても、そういった国籍取得の届出を行う子供、法定代理人に対して不可能を強制しようという、そういうおつもりはないと思いますけれども、いかがです。

○政府参考人(倉吉敬君) もちろん、先ほど来提出してもらう書類というものをきちっと決めていこうというようなことも考えておりますけれ ども、これは、その書類が提出できないときは提出できない事情を書いた、理由を書いた紙を出してくれというようなことにしていかないといけないと思ってお ります。

○仁比聡平君 そういった意味では、国際人権法の言葉で言いますと、国籍を取得する権利あるいは国籍の重要性ですね、これをしっかり保障す る、受け止めるということと、それから偽装を防止するということと、これ大変大事な取組が現場で行われるということになると思いますし、これが人権侵害的 な形で運用されるということになれば、これはまた裁判だったりというようなことになりかねない。そんなことは、こうした最高裁判決も受けてせっかくの法改 正をしようというわけですから、そんなことがないように頑張らなきゃいけないと思うんですが、大臣、御感想ありましたらいかがですか。

○国務大臣(森英介君) 極めてごもっともな御指摘だと思います。先ほど来申し上げていますように、やはりしゃくし定規じゃなくて、やはり 事例に応じて、しかし総合的にまた厳正にという、非常に難しい何といいましょうか作業が要求されると思いますけれども、そういったことをしっかり運用面を きちんとできるように十分に研究し、また実施に当たりたいというふうに思います。

○仁比聡平君 最後に局長にお尋ねしたいと思うんですが、今日も、例えば胎児認知の問題をめぐって、現行法、つまり今回改正対象になる以外 の部分の条項について、現行法以上に要件を付することもあり得るのではないか、どうなのかといった議論もあったんですけれども、これは国籍の重要性やある いは国籍を取得する権利という国際的な人権法との関係でいいますと、現行法以上に要件を厳しくしていくという方向は、その国籍を取得する権利との間で抵触 を起こすのではないかという問題がこれは起こり得ると私は思うんですけれども、それはいかがでしょう。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど答弁申し上げました住所要件とか、そういった問題のことでございますね、そうですね。

○仁比聡平君 あるいは、胎児認知も届出を要するか。

○政府参考人(倉吉敬君) 胎児認知も届出を要するとか。それは国籍の本質に反するかどうかということをやると問題でございますけれども、 少なくとも新しい差別と申しますか区別というか、新しい要件を付加することによってこれまで以上に負担を増すということになるのであれば、それが説明でき るだけの、まさに最高裁がいろいろ言っています、嫡出子と非嫡出子との間でこういう区別を設けることが立法目的に照らして合理的な関連性があるのかという ことが絶えず問われるということにはなろうかと思います。

○仁比聡平君 終わります。


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