2020年7月の記録的大雨で死者・行方不明者が69人になるなど甚大な災害に見舞われた熊本県の球磨(くま)川流域で、日本共産党の仁比聡平参院議員らが行った現地調査(3日)では、災害から4年の現状や課題、要望が浮き彫りになりました。

 人吉市の中心市街地の球磨川沿いの「人吉旅館」おかみの堀尾里美さん(66)は、仁比議員に治水への思いを話しました。球磨川の氾濫では人吉旅館も1階の天井に届くほどの浸水被害を受けました。

 被災直後の生活・生業(なりわい)の復旧もままならない中、国、熊本県が被災者の要望を聞くこともなく流水型(穴あき)の川辺川ダムを中心に据えた河川整備計画の方針を決め強引に計画をすすめています。堀尾さんは「ダムを造れば川は汚れ、緊急放流などの危険にもおびえなければならない」と不安を語ります。

ダムで氾濫防げず

 国、県は「ダムありき」の一方的な説明を押し付けているとして、予想外の豪雨による川の氾濫をダムで防げると信じる流域住民は「ゼロに近い」と指摘します。

 ダム前提の治水を望まないのは、市内の旅館業のおかみたちも同じだと堀尾さん。「声をあげることがまず大事」と、熊本県庁にもおかみたちとたびたび訪れ、川の流量を増やすための河床掘削などの治水案を申し入れています。「あきらめない」と力を込めました。
 ダムにより一部が水没する五木村はダム計画に村も住民も翻弄(ほんろう)されてきました。ペンションを営む傍ら同村の観光案内人として村の振興に力を尽くしてきた黒木晴代さん(67)は、「2008年に川辺川ダム計画が白紙撤回されてからの12年間、村の振興にいろいろな夢があった。(水害後に計画が復活し)ダムができれば村も夢も水没してしまう。いまが一番つらい」と話しました。

 ダム計画で人口流出や村民間の分断などの犠牲を強いられてきたと話す男性(69)は、「誰かを助けるためとして、ほかの誰かが犠牲になることは納得できない」と訴えました。

ダムの代替案提示

 仁比議員は住民らに連帯して、ダム計画の中止などに力を合わせてきました。「20年の水害からの復興は、流域住民の声が反映されないまま進められていることが問題だ」と指摘し、住民の声や願いをもとに本当の安全を提起しなければならないと強調します。

 人吉市内のダムの代替案として、仁比議員は京都・桂川嵐山地区の河川整備で防災と景観維持の両立を図る「可動式止水壁」や、堤防のかさ上げと景観と環境の調和をすすめる白川の「緑の区間」(熊本市)を提案しました。

 ダムによらない治水が実現するまで「あきらめない」という住民に、仁比議員は「住民が自ら決める治水へ転換するため、国が押し付ける『ダムありきの計画』をはね返す論戦を国会でも」と答えました。(しんぶん赤旗 2024年8月26日)