【16.04.21.】法務委員会『強要した自白をもって有罪にするなどあってはならない』

190回国会質問 国会質問一覧

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

先ほど、小川委員の司法取引とその違法性、司法取引の要件を満たさないものについての違法性について、私も重要な答弁があったと思います。そこで、通告した順番と違いますが、まずその問題について、先ほどあった大臣の答弁との関係で局長にこの問題をお尋ねしたいと思うんですが。

一昨日の参考人質疑において、日弁連の河津参考人がこの問題についてこのように意見陳述をされました。ちょっと速記録から読み上げますが、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度が創設されるのであれば、その要件を満たさない事実上の取引は違法であると解するべきですと。この見解について、法務当局の御見解はいかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) 今回、合意制度というものを法律で定めて、その対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項等を法律で限定している、こういったことに鑑みますと、これらに反する合意をすることは違法となるものと考えられます。

○仁比聡平君 先ほど大臣が御答弁になっていたこと、刑事当局からするとそうした御答弁だと思うんですが。

そこで、その要件、改正案の要件を満たさない、つまり違法であるとされた場合に、一体その司法取引で得られた証拠、まず第一義的には供述証拠ですね、その供述証拠から更に捜査を経て得られる様々な物的なものも含めた証拠ということが考えられるわけです。先ほど小川委員が指摘をされたように、司法取引によって得られた供述を証拠とした身柄拘束ということも当然考えられるわけですね。

違法な司法取引、事実上の取引によって得られたそうした様々な証拠というのが捜査と裁判においてどう使われるのか、あるいは使われないのかというのがこれは重大な問題です。私が指摘したような数々の証拠の、法律的には証拠能力といいますが、つまり、有罪を立証する証拠として使えるのか、使えないんじゃないのかと。この問題については法務省はどうお考えですか。

○政府参考人(林眞琴君) 法律で定められた今回の合意制度ではない事実上の合意、こういった形での合意がなされた結果、その証拠が他人の公判に顕出され、それがそういった当該合意に基づくものであることを理由として証拠能力を争われた場合について考えますと、その場合のその証拠能力につきましては、法律上明文で対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項が限定されているにもかかわらず、これを意図的に無視しており、法軽視の態度が顕著であると言わざるを得ないこと、また、仮にこのような証拠を許容したとすれば同様の事態が繰り返されるおそれが大きいこと、こういったことを考えますと、刑事免責制度に関する最高裁大法廷判決の趣旨に照らして証拠能力が否定され得ると考えられます。

○仁比聡平君 今の御答弁よく吟味する必要あると思うんですけれども、一点だけ。他人のための公判の証拠として顕出された場合というふうに、公判廷における証拠として検察が請求した場合という裁判所の判断というふうに場面を限定をされたわけですが、司法取引あるいは事実上の要件を満たさない違法な取引によって得られ得る証拠というのは、先ほど申し上げたように様々あるわけでしょう。その情報というのは、これは捜査上も当然使い得るという前提なんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 一番争われる場合としては他人の公判に顕出された場合、これを想定して今お答えいたしましたが、全体としてこういった形での違法の程度が大きいということでございますので、そのもの、証拠につきましては、それ以外の場面においても違法に収集された証拠、こういった評価を受けることとなろうかと思います。

○仁比聡平君 今、違法に収集された証拠という言葉がありましたが、これは法律家の言葉で違法収集証拠排除法則というふうに言われる概念だと思うんですが、その判断基準というのは一体どうなるのか。先ほど、公判に証拠として顕出された場合の判断の言わば要素のような事項をお答えになりましたけれども、基準はどうなるのか、判断の。ここはいかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) この違法収集証拠に関する証拠能力につきましては最高裁の判例がございまして、この中身におきましては、例えばこの関連の事案でいいますれば、令状主義を没却するような非常に重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合、こういった場合には証拠能力は否定されると、こういった判例がございます。

○仁比聡平君 今局長がお答えになった基準というのはこれは極めて著名な基準なんですけれども、その令状主義を没却するような場合というのがこれは司法取引の場合にも適用されるわけですか。

○政府参考人(林眞琴君) 違法収集証拠排除法則、この判例というものがございますけれども、これについての適用というものについては実務上その具体的な判断基準が確立しているわけではございませんが、先ほど申し上げた判例の趣旨に鑑みますと、今回の合意制度によって、法に基づかない合意によって得られた証拠の証拠能力につきましては、先ほど私申し上げましたが、法律上明文で対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項が限定されているにもかかわらず、これを意図的に無視しており、法軽視の態度が顕著であると言わざるを得ないこと、仮にこのような証拠を許容すれば同様の事態が将来繰り返されるおそれが大きいこと、こういうことを考えますと、そうした最高裁の判例等の趣旨にも照らしますと証拠能力が否定され得ると考えられると答弁させていただいております。

○仁比聡平君 司法取引というのは検察官の判断で行うと。司法警察職員が実際上それ行うのではないのかということが大問題になってきているわけです。

今の、実際に公判に顕出された場合に、法軽視の逸脱が顕著であるとか、あるいは将来そういう同種のことを引き起こすおそれがどうなのかというその判断というのは一義的じゃないわけですよ。これまでの裁判上でいうと、そうした違法に収集された証拠ではないかということが大争点になりながら、いや、違法でない、だから有罪証拠として使えるとされてきたのが刑事裁判の現実ですから。そのことを大前提として、違法収集をされればそれが何だか当たり前のように証拠として使えないのかといったら、そうではないのだということが大問題です。私はこの問題についても吟味をしていく必要があると思うんですね。

第二に、部分録画規定についての解釈についてお尋ねをしたいと思うんですが、参考人質疑で示されたこの法案についての肝要な部分の解釈について、参考人と法務当局の認識が言わば一致したのかなと思うのは、今の問うた司法取引の部分くらいなんですよ。部分録画という規定の問題についてはどうか。日弁連の河津参考人は、議事録でそのまま読みますと、こうお話しになりました。

今言及のございました今市事件のように、別件被告人勾留中に対象事件である殺人事件の取調べを行うときは、この条文の文言に照らすと録音・録画義務があると読むのが自然なのではないかと考えられます。なぜならば、これはまさに対象事件である殺人事件について、別件被告人として勾留されている対象事件の被疑者として取り調べるときに当たると考えるのが通常の読み方であると思われるからです。

これ、今日も午前中、三宅理事が問うたんですが、この立場とは違うんだということを法務当局はおっしゃっている。これは違うわけですね。

○政府参考人(林眞琴君) 河津参考人がそのような意見を表明されていたことは承知しております。

一方で、本法律案の録音・録画義務が課される取調べについて、刑事訴訟法第三百一条の二第四項におきましては、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しているところでございます。したがいまして、録音・録画義務が課されるのは起訴前勾留中の被疑者を取り調べる場合に限られまして、起訴後勾留中の被告人を取り調べる場合には録音・録画義務の対象とはならないものでございます。

参考人の中でも、小池参考人については私の法務当局での今申し上げた見解について意見を表明されていたものと承知しております。

○仁比聡平君 そのとおりです。小池参考人は私と同様、刑事局長の答弁では極めて重大な部分録画の危険が起こるではないかと意見陳述をされたわけです。ちなみに、与党が推薦をされたもうお一人の参考人、大澤参考人は、今の点は恐らく河津参考人が言われたとおりであろうかと思いますと述べておられます。

法務省は、この一括法案を、法制審議会特別部会において全会一致で採択をされた、だから成立を急げと随分宣伝をしてこられましたが、こうした肝腎要の問題について本当に全会一致だったんですか。それは採決は全会一致だったかもしれない。けれども、法案にしてみたら、実際日弁連だって与党推薦の刑事法の研究者だって違うって言っているじゃないですか。

この問題について、大臣、前回、私こうした起訴後勾留、別件起訴によって勾留をされた被告人に自白が強要されることについてのおそれ、危険を申し上げたつもりです。大臣にそうした自白がうそかもしれないということが恐ろしいとは思いませんかとお尋ねをいたしました。

そこに関わってお尋ねをしたいと思うんですけれども、感想をお尋ねしたいと思うんですが、今ほどお聞きのように、刑事局長は、起訴後の勾留、つまり今市事件でいうならば商標法等違反で身柄は勾留されているわけです。けれども、これは在宅にいる被疑者と同じ状態であるとおっしゃってみたり、あるいは任意同行について、これは取調べ室からいつでも立ち去ることもできる、そうした状態である、だから任意であるというふうにおっしゃっているんですが、任意でも何でもないでしょう。出ていきようがないし、その場で、例えば今市事件で、検察官から詰め寄られて、迫られて、被告人が窓に向かってうわっと突進する、そうした状況が起こっているわけですね。

この任意だと法務省が言う取調べ室の状況を、大臣はこれどう思っていらっしゃるんですか。

○委員長(魚住裕一郎君) まず法制審議会の全会一致かどうかという点について、法務省林刑事局長。

○政府参考人(林眞琴君) まず、先ほどの大澤参考人が河津参考人のそのとおりと言われたくだりでございますが、その後の大澤参考人の意見を伺いますと、河津参考人の言われた中で、別件の被疑者勾留中の中で余罪取調べをした場合に、その余罪が対象事件である場合にもこの取調べの録音・録画義務が掛かると、こういった部分についてそのとおりであると言われたものと理解しておりまして、大澤参考人がこの起訴後の勾留中の被告人についての取調べにおいて対象事件を調べる場合にこの取調べの録音・録画義務が対象となるという意見を持っておられるとは私どもとしては理解しておりません。

なお、法制審議会におきましては、この点については明確に、その被疑者の取調べ、被疑者として勾留されている者の取調べについて、対象事件について取り調べる場合に録音・録画義務が掛かると、こういった意見で統一されていたものと考えております。

○国務大臣(岩城光英君) おただしの件は、法律的には任意の取調べということでありますので、いつでもそれは拒むことができますので、局長が答弁をしたとおりでございます。

○仁比聡平君 その参考人質疑において、桜井参考人は、昨年六月の当時と私たちの危機感は全く違いますと、この刑訴法改正の部分可視化によってますます冤罪をつくるものという確信になりましたと述べられ、そして大臣、今まで何件もの死刑事件、無期事件、たくさんの冤罪仲間が苦しんできたのに立法府では一度たりともその検証をしたことがありません、私たちは非常に暗たんたる思いでいます、どれだけ多くの仲間が冤罪に苦しんだら冤罪をなくす手だてを国会の方たちは考えてくださるんでしょうか、どれだけ国民が冤罪に苦しんだら立法府は民主主義の最高の立場として冤罪を防ぐ法律を作ってくださるんでしょうかと述べられたことは、大臣もお聞きなんだと思うんですよ。

現実に、任意だと言いながら、現在進行している無期懲役の判決が出ている事件で、別件の起訴後に検察は取調べを行って、これ録音、録画してないじゃないですか。その前提となる任意同行からの身柄拘束の間もその取調べの中身は定かじゃないんですね。現に捜査機関はそのように現行法でも運用しているんですよ。その下で、この法案によっても録音、録画の対象にならないと明言しておられるわけですから、その下で行われる取調べ、そこで得られる自白というのは、大臣、恐ろしいと思いませんか。

○国務大臣(岩城光英君) 一昨日の参考人質疑の中で、桜井参考人がいろいろと御自身の経験からお話をされていらっしゃいました。再審で無罪となられた方々の有罪判決が確定して服役された後の苦しみ等についてのお話は、私としても非常に重く、そして厳粛に受け止めるべきものと考えております。

その上で、自白に関わるお話でありますけれども、刑事裁判における有罪の認定は、自白だけでなく様々な証拠を総合的に検討し、検察官が掲げる公訴事実が被告人側の反論、反証を踏まえても合理的疑いを入れない程度に証明されたかどうかを判断することにより行われております。そして、検察官が公訴事実を合理的疑いを入れない程度に証明できなければ、疑わしきは被告人の利益にの原則の下、被告人は無罪となります。

また、自白については、虚偽自白による誤判を防止するため、刑事訴訟法におきましては、任意でされたものでない疑いのある自白は証拠とすることができない、自白だけでは被告人を有罪とすることはできないという厳格なルールが設けられております。そして、自白に任意性が認められたとしても、その内容を有罪認定に用いるためには、自白が信用できるか否かについて、他の証拠をも総合して多角的な観点から慎重に検討されるものと承知をしております。

以上のように、自白のみで被告人が有罪と認められるものではない上、厳格な任意性、信用性に関するチェックを経た自白を他の証拠とともに事実認定に用いることに問題はないと考えられる、そのように思っております。

○仁比聡平君 大臣の御認識は極めて非現実的です。桜井参考人の意見陳述をおっしゃったように深く受け止められるのであれば、物証の乏しい事件、とりわけ被告人と犯人を結び付ける証拠が物的にはない場合に、自白がその被告人を真犯人だとする唯一の証拠、ほぼ唯一の証拠、そういうときに極めて危険なうその自白というのが数々の冤罪をつくり出してきたんだと、それがこれまでの現実なんですよ。その認識がない下でこの法案というのを本当に審議を行っていくことができるんでしょうか。

私が指摘している部分録画の使われ方、使い方について、今朝、三宅理事も指摘をされていました最高検の平成二十七年二月十二日、取調べの録音、録画を行った場合の供述証拠による立証の在り方等についてという依命通知について法務省の御認識を伺いますが、もう繰り返し読みませんけれども、この依命通知は、事案によっては、より効果的な立証という観点から、記録媒体を実質証拠として請求することを検討すると言っているわけです。

刑事局長、このより効果的な立証というのは一体何を意味しているんですか。

○政府参考人(林眞琴君) この通知でございますけれども、最近、裁判員裁判を中心としまして公判中心主義の刑事公判というものに移行してきている、こういった問題認識がございます。その際に、裁判員裁判においても、検察においても証拠立証方針といたしましてまずは被告人質問という公判における立証、これによって立証を行っていこうと、こういうことを考えているわけでございます。

その上で、被告人質問を経た上でなお捜査段階での供述、これが必要となる場合にどういった立証手段、証拠で立証していくかと、そういったことについて、ここにおきましては、被疑者供述を録音、録画した記録媒体もひとつ実質証拠として請求する、こういったことの試みをしていこうと、こういうことを述べているわけでございます。

そういった場合に、供述証拠がある場合ない場合ございますけれども、供述証拠がある場合と仮に例えますと、その場合に、録音、録画の記録媒体といいますのは、そのまま検察官の発問も、またそれに対する被疑者の答え、応答もそのときの表情も全てそういった記録媒体に記録されておりますので、その意味において供述調書よりもより効果的な立証が可能ではないか、こういった観点で述べているものと承知しております。

○仁比聡平君 私はごまかしちゃならないと思うんですよね。そんな抽象的な場面じゃないでしょう。検察は、有罪と確信して有罪の立証を行っているんです。

裁判員裁判の流れの中で、まず第一に被告人質問を行うという法廷の運営が行われるようになった。つまり、被告人質問というのは、主には弁護人が被告人に主尋問を行う中で被告人の供述がなされる、それに対して、検察官がその被告人に対する反対尋問を行う中でその被告人の言い分を、傍聴席ももちろん公開をされている、被害者が参加をしている事件であれば被害者の方々もいらっしゃる、そうした下で、つまりオープンな法廷、公判廷で事実があったのか、そこをただしていくというのがつまり被告人質問ですよ。この質問がまず最初に行われるようになってきた、その下で、効果的な立証のために密室で撮ったビデオを法廷に使うというのは一体どういうことか。

そのビデオによって犯罪事実があるかないかの立証のために使うというのが実質証拠だと、三宅理事に今朝御答弁になりましたね。つまり、被告人の言い分に対して、公判廷での言い分、吟味された言い分に対して、これをひっくり返すために録音、録画を使おうと、効果的な立証ってそういうことでしょう。

○政府参考人(林眞琴君) 当然のことでございますが、証拠請求いたしましてそれが採用されるかどうか、検察官がこの録音・録画記録媒体を実質証拠として立証しようと考えたといたしましてもそれが採用されるかどうか、これについては裁判所の決めるところでございます。したがいまして、検察にとって例えば有利な供述部分のみを立証する、こういったことでの立証方針を取ったといたしましても、それが裁判所において入れられることになるとは限らないわけでございます。

検察当局におきましては、捜査段階での取調べの状況というものを幅広く録音、録画することによりまして捜査段階での供述の任意性の立証、こういったものに役立てようと、こういった形でこれまで取組をしてきたわけでございまして、その中ででき上がりました記録媒体について、それを事案に応じては個々の実質証拠として請求することもひとつ試みてみようと、こういうことを述べているわけでございます。

もとより、検察官の勝手に、検察当局によって有利な供述のみ記録した部分で立証を行っていくと、そのようなことを仮に考えたといたしましても、それが入れられるわけではございません。

○仁比聡平君 いやいや、検察官は有罪立証の方針を立てて、それを実現するために法廷で努力するわけでしょう。当然、入れられることがあるかないかは、それは別の問題。何のために部分録画をするのか、それは、つまり実質証拠として請求することを検討し、そのために当初から録音、録画を行っても差し支えないというふうにこの通知は書いてあるわけですよ。

大臣、そうした中で、部分的に録音、録画をされた、その証拠が裁判官や裁判員にどれほどの影響力を与えるのかと。これ、新聞報道はお読みになっていると思うんですけれども、今市事件の裁判員の皆さんが、情況証拠のみだったら判断できなかったとか、録音、録画がなければ判断は違っていたとか、決定的な証拠がなかったが、録音、録画で判断が決まったとか、臨場感があり、自分の目で見ることに意味があった、こうした判決後の感想を述べておられるわけですね。

午前中も議論があったんですが、今局長が答弁になったように、どう使うのか、何のために使うのかということについて、法律家は任意性の立証のためだとか、あるいは今朝、三宅理事が示された例、設例でいえば、ろうばいして入ってきた事実を証明しようとするのか、あるいは自白、殺したというその内容そのものを証明しようとするのか、様々な場合がありますというふうに検察は言うけれども、現実にその録音、録画が再現されて、それを見れば、何が立証手段、立証目的だったかということとは無関係に、実際に強い印象、その心証を抱いてしまうというのが今示されている部分録画の懸念なんじゃないですか。

そうした自白が最初になされたプロセスが明らかにされない部分録画、それは結局、公判中心主義に大きく動いてきたのに、これを、密室で検察官と対峙する被疑者が迫られている、この映像を法廷で見て有罪か無罪かを決めてしまうという、かつての調書裁判、これまでの調書裁判を言わば録画裁判にしてしまう。大臣、そういうことなんじゃないんですか。

○国務大臣(岩城光英君) 一般的に申し上げますと、近時の裁判実務におきましては、裁判員裁判事件を始めとして、証人の尋問や被告人質問を中心とした審理が行われているという現状にございます。したがいまして、録音・録画記録が裁判における証拠として提出される場合でも、まずは証人の尋問や被告人質問が行われることと思われます。

その上で、検察官がなお録音・録画記録による立証の必要性があると判断してこれを証拠として請求をした場合、弁護人が証拠意見を述べ、これを踏まえて裁判所がその必要性、相当性を考慮して採否を判断することとなります。そして、録音・録画記録が取り調べられる場合であっても、その信用性は、例えば公判廷における証人の尋問や客観的な証拠の取調べの結果、被告人質問において直接被告人が取調べの状況や事件当時の状況などについて供述した結果などを総合的に評価する中で適切に評価されることになるものと考えられます。

したがいまして、検察官が録音・録画記録を証拠として用いることがあったといたしましても、そのこと自体が公判中心主義に反する、そういった御指摘は当たらないものと考えております。

○仁比聡平君 いや、大臣、よく考えていただきたい。

私のこの指摘に対して日弁連の河津参考人は、御指摘のとおり大きな危険があると思いますというふうに述べられました。真意が私が申し上げるのと一致しているのかどうかは、何かあればまた伺いたいと思いますが、公明党の矢倉理事、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思いますと、小池参考人の意見陳述を受けて御発言に一昨日なられました。

実はこれは最近の議論ではありませんで、民主党政権の時代に滝元法務大臣が、公判主義との問題からすると、それでいいのかというようなことに突き進む、そういう懸念もないわけではありませんという法務大臣としての懸念を示しておられるんですよ。

林局長、試行しているというふうに何か言い逃れようとされるけれども、この実質証拠として使うことを目的として録音、録画する、この通知は撤回すべきじゃありませんか。

○政府参考人(林眞琴君) この通知におきまして、先ほど部分録画を試行していると、こう言われましたけれども、これはまさしく、部分的な録画を行いそれを実質証拠として請求していこうと、このようなことを内容とするものでは全くございません。検察におきましては、全体としてその全過程の録画というものに取り組んでいるわけでございまして、そういった中で、様々な試みの中で供述の録音、録画の記録媒体というものができ上がるようになりました。そういった中におきまして、実際にその供述調書というものが全く捜査段階での取調べの中で作成できない、作成されない場合もございます。そういったことも踏まえて、こういった録音、録画の記録媒体を直接証拠として請求していくという、こういうことについても試みていこうということでございます。

なお、こういったもので録音、録画の記録媒体を証拠で請求した場合に、その立証趣旨と離れて、印象度が強いために立証趣旨と離れて犯罪事実の認定などがなされるおそれがあるという点につきましては、これは、証拠については証拠調べ請求をしたときにその立証趣旨というのは明確にされるわけでございまして、その立証趣旨から離れての認定というものは裁判所においては当然されないわけでございます。その点については、裁判員裁判におきましても、当然、裁判所、裁判官がそのような事実認定の原則というものを必ず裁判所の中で共有されるものと考えております。

○仁比聡平君 そこまでおっしゃるなら聞きますけれども、今市事件において、編集された七時間の録音、録画、これ何を立証趣旨にして証拠請求したんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 個別事件でございますので、その点についてどのような立証趣旨であったかということについてはここでは差し控えさせていただきますが、基本的に、検察におきましては供述調書というものについて、供述調書があれば、それについて任意性というものの立証に記録媒体というものを使っているのが通常であろうかと思っております。

○仁比聡平君 そのように任意性の立証目的だったというふうに言いながら、裁判員の皆さんは、先ほどおっしゃったように、これを見なかったら分からなかったと言っているじゃないですか。それが現実だということなんです。

時間が迫っていまして、そうした録音、録画が、法務省は恣意的濫用の余地はないというふうに言うけれども、本当にそうですかという問題について、中心は次回に譲らないといけなくなりましたが、一問だけその問題で聞いておきます。

現在、録音、録画が行われております。この件について、昨日、東京地検に私たち視察に訪れまして、私、総務部長に、今現在行っている知的障害を有する被疑者で言語によるコミュニケーションの能力に問題がある者又は取調べ官に対する迎合性や被誘導性が高いと認められる者に係る事件、精神の障害などにより責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、こうした事件での問題があるとか疑われるとか、これは取調べ官が判断するほかない、ここに何らかの基準が作れますかと申し上げましたが、それは基準を作るのは困難でありますとお話しでした。

さらに、被疑者の供述が立証上重要である場合、被疑者の取調べ状況をめぐって争いが生じる可能性があるものの判断や被害者や参考人の供述が重要になる事件という、この重要性の判断、これも捜査官でしかできないことなんですね。これらについて基準は作れていませんよね、局長。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、検察で今現在行っている録音、録画について、例えば知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者に係る事件、こういったものについて録音、録画に取り組んでいるわけでございますが、もとよりこれは現在本格実施を行っているわけでございますが、当初はこれは試行という形で始めました。

試行の段階におきまして、この知的障害により云々というこの事件をどうやって画するのかということについては、当然問題がございました。なぜならば、この知的障害というものは、法的にも現在統一された定義というのはございません。その中で、取調べを行う者が、どういった事件がこの知的障害によりコミュニケーション能力に問題があるかと、こういったことを画することは厳密な意味ではできませんが、少なくともその当時、検察におきましては、こういったやはり被誘導性の高いと思われる、またあるいは迎合性の高いと思われる、こういった知的障害を持つ方の取調べをどのようにしていくのかという課題に直面しておりまして、それにおいては厳密な基準は設けられないけれどもこの試行を行っていこうという積極的な意味で始めたわけでございます。

それによりまして、今回、知的障害の判断におきましても、現実には、例えば療育手帳を持っているかどうかとか過去に特別支援学級や特別支援学校に在籍したことがあるかとか、こういう客観的な情報を集めながら認定はしておるわけでございますけれども、客観的な状況がなくても、例えば実際の取調べの中の受け答えの中でそういったコミュニケーションの能力に問題があると思われる被疑者については、幅広くそれを対象事件として捉えてこの録音、録画に取り組んでいるものと承知しております。

○仁比聡平君 今局長がお話しになったとおりなんですよ。つまり、捜査官の録画するという判断によって、録画されない取調べと録画される取調べというのが区分されるんです。それは、密室で捜査官と被疑者が向き合う、そういう取調べである以上、それは当然のことなんですよね。つまり、捜査官、取調べ官側の判断で録音、録画するのかしないのかが区分される。これは、この改定案での例外規定、とりわけ今日も議論になっている十分な供述とは何かというような問題をめぐっても大問題だと思いますが、ちょっとこの問題は次に譲りたいと思います。

最後に一問聞いておきたいのは、通信傍受に関してです。

小川委員の質問の中で、私が問いたいと思ってきた大前提の事実は随分明らかになりました。つまり、対象犯罪の拡大によって事件がそもそも格段に増加することは間違いないでしょうという問題。それは、日常的に盗み聞き、メールの盗み読みが行われ、刑事裁判の証拠としない以上、とりわけ犯罪と無関係の通話やメール、これがほとんどなんですから、現実には。その内容というのは知らされないということなんですよね。私がこれから議論をさせていただきたいと思うのは、そうして警察が得た情報、これが一体どのように使われるのかが大問題だということなんです。

私たちも現場で視察をしたように、電子コンピューターを使ってこれを録音、録画するというシステムを使い、これから更に開発していこうというわけですけれども、このシステムで作られるDVD―RAMのほかに紙の記録が作られます。私の手元に、平成二十二年四月三十日に警察庁が通達をしている犯罪捜査のための通信傍受に関する法律の運用に当たっての留意事項の改正についてというものの別添資料で、傍受日誌というものが作られることになっています。

警察庁、これは通信傍受を行っているその同時進行に作るのですか。そんなことできるわけないわけだから、今であれば警察署に戻ってから、そしてこれから先は、いながらにして自分の警察署で傍受をしてゆっくりこれを作るということになるのではありませんか。

○政府参考人(三浦正充君) 今回の新しい制度によりまして一時的保存による傍受ということも可能になるわけでございますけれども、それを再生、傍受するに当たりましては新しい特定電子計算機というものを用いることがこれは法定で定められるものになります。

この電子計算機の機能によりまして、現在、傍受実施状況書というものを、これは通信傍受法に定めるものとして作成をしております。今現在では、傍受の実施の状況を記載した書面として、傍受の実施の中断又は終了後、捜査員が当該書面を作成をしているわけでありますけれども、新しい方式になりました場合には、これはまだ現在、具体的には今後また詳細検討していくわけでございますけれども、現時点においては、人為的な記載ミスの防止等の観点から、特定電子計算機の機能により傍受の実施と同時に自動的に書面の記載が行われるというものを作ることを想定をしております。

○仁比聡平君 そんなふうにおっしゃるんですけれども、小川委員がずっと議論をしておられるのでよくお分かりのとおり、令状記載事実に該当するのかどうかのスポット傍受という形で実際聞くわけですね。そして、それに該当するという判断をしたら丸ごと聞くわけです。しかも、他犯罪、つまり別件の通信というのもこれは傍受できるようになっていて、これも記録をされるわけですね。

それぞれなぜ聞いているのかという判断、これは捜査官の、何らかの根拠がある、それまでの通話やメールの中身でこれは該当するという判断があって、その根拠があって傍受するということになるわけですけれども、この警察庁の留意事項の中には、他犯罪傍受については他犯罪通信に該当すると認めた理由というのを記載するというふうなものにもなっているわけですね。

こうした判断の理由や根拠も含めてきちんとこの報告書といいますか傍受日誌に作っていくとしたら、これはそのときのメモとか、あるいはこれまでの警察のいろんな捜査の内幕が明らかになる中で出てきた例えば取調べの小票のようなもの、傍受小票のようなもの、こんなものを作らないと裁判所に提出する書面をちゃんと作るということは私できないと思うんですけれども、つまり、裁判所に提出されるこの記録のほかに、警察において様々なメモだとかあるいは小票だとか、こういうものを作っているんでしょう。

○委員長(魚住裕一郎君) 警察庁三浦刑事局長、時間が過ぎていますので、答弁は簡潔に願います。

○政府参考人(三浦正充君) はい。

実際、傍受をする場面において、そういった犯罪関連通信等を傍受をしそれを記録をしていくと、こういう作業を行いますので、当然その過程で様々なメモでありますとか、そういったものが作られるということはあるのだろうというふうに思います。

○仁比聡平君 今日は終わります。


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