【16.04.26.】法務委員会『ヘイト根絶に向け、多くの者が賛成できる法案を』

190回国会質問 国会質問一覧

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

前回に続いて法案の意味するところを発議者にお尋ねをしていきたいと思うんですが、まず、法案の第四条で国と地方公共団体の責務を定めようとしておられます。特にその二項についてお尋ねをしたいんですけれども、地方公共団体に何を求めるか、あるいは期待をするかという法律上の用語として当該地域の実情に応じた施策という概念がありますが、この当該地域の実情に応じた施策というのは発議者はどのようなものを考え、具体的にはどのようなことを想定をしておられるのでしょうか。

○矢倉克夫君 ありがとうございます。

当該地域ごと、それぞれこのような言論の対象になる方が人口の中でどれくらい比率があるかであるとか、どれくらい頻繁に行われているか、それぞれ地域ごとにあると思います。日本の中ではこのようなヘイトデモが行われていないような場面もある。そのような事情、事情を考慮して、例えばその事情に合った相談体制であるとか、そういうものを整備することを一つ考えております。

○仁比聡平君 もう少しお尋ねしたいんですけれども、つまり、例えば在日コリアンの集住地区が自治体の中に歴史的に存在するという自治体や、あるいはよくコリアンタウンというふうに称されるような大きな町があると、そこがにぎわいの場でもあるという地域もありますよね。一方で、そうした集住地区などはないんだけれども、けれども、そこでヘイトスピーチが許されていいはずももちろんないということだと思うんです。

ですから、地域によって様々な実情があるといいますか、実情がそれぞれであると。それから、戦前戦後にわたる歴史的な在日外国人の皆さんとの共生の取組あるいは過去排斥をしてきた経過などがそれぞれの地域で、歴史もあるいは取組の到達点も違うと。であるから、どんな取組を行うのかというのは、それぞれの地方自治体ごとにいろんな取組があり得るというような意味なのかどうか。改めて、法文の用語は「当該地域の実情に応じた施策」となっているわけで、これがどれほどの深みを持って発議者が提起をしておられるのか、もう一度お尋ねいたします。

○矢倉克夫君 仁比委員おっしゃるとおりの趣旨であります。

例えば、桜本などこの前も視察へ行かせていただいた、やはり外部からわあっと人が来て、元々そこで共生をしていた社会が分断されていく、子供たちの間でも友達であった同士が謝り謝られというような関係に追いやられる、こういう卑劣な行為、許されてはいけないと。そういうような場面では、相談体制通して、やはり共生という社会をどうやってつくっていくのかということをこれはしっかり行政と一体になって考えていくというような施策もまた考えなければいけない、その後の体制もつくらなければいけない。

他方で、この前お話のあった銀座とかで、じゃ、こういうようなヘイトデモがあった場合どういう対応があるのか。当然、銀座だから許されるという話ではありませんで、まさにこういうような言動はそういうような場面でも許されないということをこれは理念法として表した。

で、その理念法の文脈といいますか、これを、例えば騒音防止であるとか公安の、やはり全体の平和を乱す行為に対してどのように対処をするかというような文脈でこのような法律が作られる、そしてそれに応じて、その場の、銀座であるとかその辺りの自治体がしっかりと対応すると、それぞれごとの、地域ごとの対応の仕方はあるわけでありますし、それに応じた措置をとるということを趣旨としてこの法文は規定しているという理解であります。

○仁比聡平君 つまり、確認をすると、地域によって、この地域では許されないが別の地域では許されるという意味ではそれは毛頭ないと。で、地域の実情に応じて、法案の用語で言いますと、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組」、この解消に向けた取組の内容といいますか、講ずべき対応措置についてこれはいろんなことがあるだろうと、そういうことなのかなとも思うんですけれども、それぞれの地域においてヘイトスピーチは許されない、断固として許されないという立場に立って、そこそこの自治体が取り得ることを行うべきであると、そういう意味でしょうか。

○矢倉克夫君 まさに許されないということをここでしっかりと規定をし、その思いの下で地域も社会も、そして個人も一体となってこのような社会、そういうようなものを根絶していこうというところを訴えた理念であります。先生のおっしゃるとおりであります。

○仁比聡平君 ということであれば、その地方公共団体が取り組むその措置というのは、法的な根拠も、あるいは手法もいろんなことがあり得るんだろうと思うんです。

私たちが訪ねた桜本のような集住地域に迫ってくる、踏み込んでくる、そうしたデモ申請を許すのかという許可の問題があるでしょうし、あるいは公園などの使用許可という問題もあるでしょうし、あるいは、そうした集住地区ではないんだけれども、一般的に、公民館などの公的会館をヘイトを行っている集団が使用許可申請をしてきたときにどう対応するのか、あるいは、先ほど騒音防止条例などというお話もありましたけれども、銀座や新宿をそうしたヘイトデモを行うという行為に対してどう対処するのかなどなど、場面によっていろいろでしょう。

そのそれぞれの場面に応じた施策にこの提案されておられる理念法が生かされる施策というのが、この当該地域の実情に応じた施策の意味ということでしょうか。

○矢倉克夫君 おっしゃるとおりであります。

○仁比聡平君 そのそれぞれの、つまり、地方自治体とそのデモ申請者などとの関係で見ると、これは言わば法的関係になるんですよね。この許可、不許可というのは、これはつまり行政処分ということになって、西田発議者も前回からよくおっしゃられるように、これが、例えば不許可にしたことが不当であるといって争われる、そのことが裁判になり得るというような場面なわけですが、つまり、与党発議者がおっしゃりたいのは、そうした行政判断を行うとき、そしてその行政判断の当不当、あるいは適法、不適法が争われるときにこの理念法が規範として働くはずであるという、そういうことでしょうか。

○西田昌司君 まさに今、仁比委員がおっしゃったことを我々は期待しているわけであります。

ですから、要するに、表現の自由を公権力が規制したり、直接的にそういうことをすること自体はやっぱり憲法に抵触してくる。しかし、この理念を設けることによって、それぞれ具体的な行政が許可、不許可、道路使用許可だってそうですね。ただ、内容で一概に駄目だということはなかなかできないわけでありますけれども、トータルで総合的に判断してきたときにある一定の行政判断が出てくる。そのときの行政判断をしていただくときに、我々は、いわゆるヘイトは許さない、あってはならないというこの理念法を設けたことによって行政判断がなされて、そして、そのことについて、そのヘイトを行っている側がそれは不当な行政判断なんだと、我々の表現の自由、集会の自由を行政がそういう公権力によって禁止することはおかしいという裁判が出る場合も当然考えられますね。出てきたときに、我々が、国権の最高機関としての国会がこういう理念法を定めて、そういうヘイトというのはあってはならないのであると、そういうことを基に行政が判断し、そして裁判所も同じく我々の立法趣旨を基にして判断がされていくものと期待しております。

○仁比聡平君 まず、西田議員がよく御答弁の中で使われる公権力という言葉なんですけれども、広い意義でいいますと裁判所も公権力の一環だということになるんだと思うんです。今ずっとお使いになられている意味は、つまり行政機関が、国であれ、あるいは地方公共団体であれ、行政として表現の内容に立ち入って当不当の審査をする、そういうことはやるべきではないという、そういう意味合いで使っておられるわけですよね。

○西田昌司君 まさにそういうことです。行政府の側が当不当の判断をすべきではないと。あくまでそれは、最終的には司法の方の場の話になってくると思います。ですから、最終的には司法判断になるでしょうけれども、行政の側が自分たちで基準を設けて、こういうことはしてはいけない、してもいいとかいう、そういうところの形のことをすることは私は憲法違反になってくると思っています。

○仁比聡平君 今の点について各会派のところでいろんな議論があるということはもちろん一つのテーマなわけですが、ちょっと先に進みたいと思うんですけれども。

今、西田議員がおっしゃった意味で、つまり行政機関が表現内容にわたって審査をすることはない、そういう意味で理念法であるということと、今私がお尋ねしている地方公共団体の責務ですね、つまり、四条の二項の最後の部分を「努めるものとする。」という表現にしていること、つまり国は責務を有するんだが地方公共団体は施策を講ずるよう努めるものとすると、言わば努力義務のような形に規定をしていることとの間に私、論理的必然はないんだと思うんですよ。

といいますのは、先ほど来確認をしているとおり、求められる施策というのは、これは当該地域の実情に応じてそれぞれなわけですよね。これは当然なんです。それが憲法の定める地方自治の本旨に直接かなうものであるし、私たちが訪ねた川崎の取組を踏まえても、つまり、共生というものを実現をしていくのは、地域社会においていろんな闘いがあり歴史があって前進をしてくるわけで、それはつまりそれぞれのコミュニティー、自治、共生を大切にするという取組の中で行われるわけですよね。そうしたものとして当該地域の実情に応じた施策というものが求められるのであれば、それは、自治体それぞれがそれぞれですよというのは、それはそうなんだから、別に努めるものとするというふうに引かずに、腰を引くのではなくて、国と同じように責務を有するとはっきり書いても差し支えはないのではないかと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君 仁比委員がおっしゃるところもそのとおりだと私も思います。

ただ、これ一般論として、国はそういう様々な規則や法律で、ある種公権力として行政府として仕組みをつくって、ある種のこういう強制的な面がありますよね。ところが、いわゆる地方自治体の場合には、コミュニティーの、その社会の皆さんの中の仕組みでありますから、どちらかというと、そういう言葉よりも柔らかい言葉の方がなじみやすいのではないかと、そういう意味で使っているわけでありまして、だからといって、国はやるけれども地方公共団体はしなくてもいい、まあ努めるようにしてくれたらいいというような、何か腰の引けたつもりで言っているわけではもちろんございません。

ただ、今委員がおっしゃるように、要するに、地域社会というのは余り四角四面な法律で縛り付けるというよりも、皆さんがやっぱり長い間そこに住んでコミュニティーを築いてこられた、それをいかにして安寧な社会を続けていくかという、お互いがお互い、お互いさまで協力し合うという、そういう社会でありますよね。だから、努力義務のような形をしておりますけれども、我々が思っているのは、それを国の方には義務があるけれどもこちらの方には義務がないとか、そういうつもりで使っているわけではございません。

○仁比聡平君 ということであれば、これから行われる協議においてもきちんと検討の余地は十分あるなというふうに今受け止めたんですけれども。

地方自治体といっても、これはやっぱり大きな力を持っているんですよね。例えば、私の、九州、地元の例えば福岡市あるいは北九州市ということを考えたときに、市がどんなスタンスで物事に臨むのかというのは、これは決定的です。このときに、この大切な法案において、国は責務があるが地方公共団体は努めるものとするとされているというこの表現一つで地方公共団体の構えが変わるようなことになるならば、それは法案提案者の意図とも違うのだなと今改めて思ったわけですね。

例えば、前回も申し上げましたが、札幌市議会で当時の市会議員さんがアイヌ民族なんていないという趣旨の発言をされて、これがアイヌ民族に対する極めて悪質な、しかも政治家による、公人によるヘイトであるということが大問題になり、辞職勧告決議が出されたという経過があります。

こうした地方議会も含めて、あるいは首長がそうした言動を行うなんてもってのほかだと思いますけれども、特定の民族や人種に属することを理由にしてこうした社会から排斥するというような言動から守らなければならない行政の側が自らヘイトを行うということは絶対にあっちゃならぬということをはっきりさせる上でも、私はもう責務ときっぱりはっきりさせた方がいいと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君 今おっしゃったことは一考するべきところがあると私も思います。

○仁比聡平君 そうした中で、協議を続けていくことを求めて次のテーマに移りたいと思うんですけれども。

対象となる言動についてどのように定義をするか、これは法案の大きな課題なわけですが、私どもの法務委員会で、せんだって国連人権理事会特別報告者のデビッド・ケイ教授とお会いをいたしました。委員長始め理事の中心メンバー、私も含めて懇談をさせていただいた中で、このヘイトスピーチの規制をどう考えるのかということが大きなテーマになり、後、デビッド・ケイさんが記者会見をされた中で、ヘイトスピーチの定義が曖昧なまま規制すれば表現の自由に悪影響を及ぼす可能性があるというふうに指摘していると報じられています。また、獨協大教授の右崎正博さんが、不当な差別的言動という言葉は曖昧であり、言論と行為を区別すべきだというふうに指摘もされているんですね。

不当なという概念が、これが評価も含めて広範、曖昧ではないか、それから差別的という表現が、用語がこれ曖昧ではないかというこの懸念は、これは以前から示されているわけですけれども、このデビッド・ケイさんや右崎先生の指摘に発議者はどのようにお答えになるでしょうか。

○矢倉克夫君 まさにこのデビッド・ケイ氏のおっしゃっているところはそのとおりであるかなと。我々も懸念しているところはまさにこの点でありまして、表現のとりわけ内容に関する規制というもの、これが外延が明確でなければ、どこまでが公権力が介入する言論かというところの外延が明確でなければ、全ての言論の規制にもなるし言論に萎縮効果を生むと、ひいては民主主義に甚大な影響を与えるというところであります。まさにそういう問題点に立って、私たちは、表現の内容というものに着目した禁止に基づく法律ではなく理念法として法の立て付けをすることが、表現の自由をしっかりと遵守しながらこのような卑劣な言動というものをなくす社会をつくる上で唯一の手段であると、最善の手段であるというふうに理解もしてこのような形で法規をさせていただいた、そういう点では、デビッド・ケイ氏の発言はそのとおりであるというふうに思います。

そして、もう一つ、右崎先生の御発言であります不当な差別的言動というところでありますが、こちらの法律は不当な差別的言動というものをこれ定義付けておりまして、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動という形であります。この不当なとか、そういった文言の曖昧さという部分ではなく、まさに扇動であるとかそのような形での定義も入れているところでありますので、曖昧であるという御批判はこれは当たらないというふうに理解をしております。

○仁比聡平君 今のお話は、つまり、不当なというのが、その裸で不当なというふうに評価される概念ではないという意味なんでしょうか。つまり、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動するものが不当なのであると、そういう意味でしょうか。

○矢倉克夫君 まさにそういう意味を込めて二条で定義条項という形で加えさせていただいたところであります。先生おっしゃるとおりです。

○仁比聡平君 先ほど、侮蔑あるいは侮辱というような概念をここで、この部分に盛り込めないのかという趣旨の議論もありますし、この定義をどう明確にしていくのかというのは協議の大きなテーマなんだと思うんですね。

そうすると、今の与党としては、この法文のここの部分をきちんと議論していくことで、許されないヘイトスピーチを明らかにし、外延を明確にしたいと、そういうことでしょうか。

○西田昌司君 この法案を提出しまして、民進党から、また御党、共産党からも修正項目の要求があったわけでございますが、実は今日の四時から我々与党のワーキングチームでそのことについて協議をすることになっております。その中で、今おっしゃったようなことも含め考えていきたいと思っております。

○仁比聡平君 ということなのですけれども、念のため確認をしておきたいと思うんですが、我が国の法制でこの不当な差別的言動という用語は極めてまれです。

法制局においでいただいていますが、この用語例というのはどのようなものがあるでしょうか。

○法制局参事(加藤敏博君) 不当な差別的言動という語句でございますが、これは一つの法令用語として用いているわけではございませんで、不当、差別的、それに言動という三つの用語を組み合わせた語句でございます。

その上で、不当な差別的言動という語句を用いた立法例としましては、いわゆる障害者虐待防止法、この法律の中で、定義規定の中で、「障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。」というふうに定義規定を置いているところはございます。

○仁比聡平君 今お話しの、つまり、今御紹介のあったいわゆる障害者虐待防止法に唯一例があるということなわけですね。

近年制定をされたわけですけれども、この障害者虐待防止法における不当な差別的言動という概念が法制上どんなふうに位置付けられているか、つまり何のための規定として設けられ運用されているか、厚労省、お答えください。

○政府参考人(藤井康弘君) お答え申し上げます。

いわゆる障害者虐待防止法第二条第七項及び第八項におきましては、虐待の通報義務の対象となってまいります障害者福祉施設従事者等又は使用者による障害者虐待に当たる行為が定義をされております。

この中で、いわゆる心理的虐待につきましては、「障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。」と定義をされておりまして、この不当な差別的言動は著しい心理的外傷を与える言動の例として規定をされてございます。

○仁比聡平君 つまり、今の現行法で例のある規定は、障害福祉事業を利用する方、その事業者からサービスの提供を受ける方、いわゆる利用者ですね、利用される障害者、高齢者の場合もあるでしょうけれども、そうした方に対してその事業を行っている側、それを従業員というふうに呼んでいるわけですが、つまり、サービスを提供される、しかも、介護度や障害の度合いにもよりますけれども、極めて弱い立場にある方々に対してサービスを提供する、言わば支配をする側による不当な差別的言動という意味で主体が限定をされているわけですね。あるいは、障害者を雇用している使用者がその雇用関係にある従業員、障害のある従業員に対して虐待をする、ここを捉まえて不当な差別的言動という概念がある、そうした場合に通報義務があると。

そういう意味では、不当な差別的言動という概念は主体の面でも限定をされているということだと私は理解するんですが、厚労省、そういう理解でおおむね間違いないですか。

○政府参考人(藤井康弘君) 先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、この障害者虐待防止法におきましては、障害者福祉施設従事者等又は使用者による障害者虐待に当たる行為が定義をされておりまして、その中で、いわゆる心理的虐待につきまして、その一つの例示としてこの不当な差別的扱いということが規定をされてございます。

○仁比聡平君 つまり、私の指摘はそうは間違ってはいないという趣旨なんだと思うんですよ。ですから、対象となる許されない行為を、言動をきちんと明確にするというのは、これまで与党発議者がお話しになっていた基本的なお立場を踏まえながら、やっぱりもっともっと議論して、きちんと定めていかなければならないと改めて私思うんです。

ちょっとそことの関わりもあって、この二条の定義に与党の皆さんは「公然と」という用語を使っておられます。具体的に言うと、「公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知する」という文案になっていまして、ここに言う「公然と」という意味が何なのか。私は、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法による言動というふうに捉えるべきだと思うんですけれども、与党の皆さんの意味するところはどうなんでしょうか。

○矢倉克夫君 一般に、公然とというのは、不特定又は多数人が認識できる状態という意味であるというふうに解釈されているというふうに理解もしております。ですので、こちらの「公然と」という意味は先生の御指摘のとおりであると思います。

○仁比聡平君 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法というのは様々なものがあるわけですけれども、矢倉発議者、そういう理解でよろしいですか。

○矢倉克夫君 そのような見解で結構です。

○仁比聡平君 あと、具体的な中身については、各党協議の中で更に詰めた上で、こうした委員会の場で確認をできるように議論していきたいなと思います。

そうした中で、私どもとしては、前回に指摘をさせていただいた、例えばアイヌ民族に対するヘイトスピーチ、あるいは難民認定や在留資格が争われている外国人に対するヘイトスピーチ、これが許されないということは当然であって、まずここ確認しましょう。

自民党、公明党、それぞれ発議者、許されないと、規定の仕方をどうするかはおいておいて、アイヌ民族や難民認定、在留資格が争われている外国人に対するヘイトスピーチが許されないと、この認識は同じですね。

○西田昌司君 そのとおりであります。許されるものではありません。

○矢倉克夫君 全く許されるものではありません。

○仁比聡平君 そのことを明確にする必要がやっぱりあるんですよ。適法に居住するという要件を法律上の文言にしてしまうと、つまり適法に居住するという要件が在留資格をめぐって争われているときにはその者に対するヘイトスピーチは許されるのではないか、この許されないという対象に入らないのではないかというような議論が現にあるわけですよね。

ですから、この適法に居住するというこの文言そのものは、これは私は削除すべきだと思うんですが、それは私の提案であって、日本共産党の提案であって、与党はお立場がいろいろあるんだ、これから協議をされるんだと思うんですけれども、ここはやっぱり議論をしていく課題だという御認識ではあるんですか。

○西田昌司君 今、仁比委員がお示しになったような議論がインターネット上でされていると。つまり、適法に住んでいない人ですね、いわゆる不正に入国されたとか、そういう方だったらヘイトスピーチをしてもいいんだというようなことをインターネット上で情報が蔓延していることを私も承知しております。しかし、当然のことでありますけれども、それを我々は認めるものではありません。要するに、適法であるかないかというのは、適法でない場合には入国管理法違反ですから、そのことはそのこととしてその法律でしっかりとした措置をされるというのは、これ当然だと思っております。

しかし、だからといって、その方々にヘイトスピーチを浴びせかけて、それがいいのかというとそれはまた別の話でして、これは禁止規定ではありませんから禁止はしておりませんけれども、当然そういうことは許されるものではないと。要するに、これはモラルの話なんですよね。日本人としてのモラルをこの理念法で掲げているわけであります。

したがいまして、今おっしゃいましたように、我々が立法事実として想定していたことのほかにも、今おっしゃっているような様々な、アイヌの方々の話もそうでありましょう、そういう事実があることは私も事実だと思います。ですから、ここは、この法律は理念法でありますから、今私が発議者として申し上げているこの答弁も含め、この法律の運用の仕方、これを理念法として運用していくときに、様々な皆さん方からの意見も踏まえて、例えばこの法律の運用に対する附帯決議を付けていただくなり、また今我々が発議者として申し上げていることを踏まえて運用していただければ、私は法律のその隙間は埋まっていくものと期待しております。

○仁比聡平君 協議を続けたいと思うんですけれども、つまり西田議員がおっしゃらんとするモラルの問題というこの言葉なんですけれども、私なりに翻訳しますと、民主主義社会、市民社会の根底である互いの人格を尊重するというこのモラルなり、あるいは憲法用語で言えば人格権ということにもなるでしょうし、あるいは良心、あるいは倫理というふうに置き換えてもいいんだと思うんですけれども、これを踏みにじって、社会から排除しよう、排斥しようとするヘイトスピーチに対して我々がどう根絶のために力を尽くすのかということが問われている下で、法の規定ぶりということはこれは極めて重要だと。

ですから、いや、この部分は許されるんじゃないか、これは大丈夫じゃないかというふうに抜け穴だとかを探そうとするような、そういうやからに対して駄目だということをこれははっきりさせると、そういう規定に仕上げようじゃないかと私呼びかけたいと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君 おっしゃることは全く私も賛成であります。また、そういうつもりでこの法律を提案させていただいております。

つまり、立法事実は、先ほど言いましたように、元々はいわゆる在日の方々に対するヘイトスピーチであったわけですけれども、それ以外にもあることは事実であります。それをやっていく場合に我々が一番感じましたのは、要するにモラルでありますから、モラルだから理念法にしておりますが、モラルを法律の規制にしたり、それを行政府側が、ここから外側は駄目だという禁止規定を作ったり、それを排除するような措置をつくったりするのは、今度は逆に公権力が個人の生活を縛ったり規制したりする、そういう表現の自由に関わることになってくる。

ですから、そこはあえてしていないわけでありますけれども、今言われたような様々な我々が想定していなかったことも含め、それは広くこの理念法の中で包み込んで解釈していくべきだと思っておりますし、そういう形の解釈は当然ここから私は読み取っていけるものだと思っております。

○仁比聡平君 その今の後段の部分がいろんな議論になっているところなんだと思うんですよ。

例えば、西田議員が繰り返しておっしゃるような戦前の治安維持法体制というのはどんなものだったかと。最高刑死刑と、極刑をもって、しかも特高警察が私ども日本共産党を始めとした国民の思想、そして結社そのものを弾圧すると。予防拘禁含めて身柄を拘束して絶対に外に出さないという弾圧体制なんですよね。これをイコール言論統制になってはならないというふうに引っ張ってこられると、この規制のありようの問題がちょっと議論がしにくいんじゃないのかなと思ったりもするんです。

というのは、この法案も前提にしている教育あるいは啓発というのも、教育でいいますと、例えば子供たちが中心でしょうけれども、子供たちの人格に直接働きかけるというとてもデリケートで大切な営みなのであって、この教育の場面で例えば教師が子供たちに、何を許されない、なぜ許されない、それをなくすためにはどうしたらいいという、そうしたことを語りかけ、そしてその子たち一人一人のものに本当にしていく、これは教室の中で教えればいいというものではないですよね。教科書に書いてあるのを覚えればいいということじゃないじゃないですか。そうではないということを私たち桜本の取組でも学んできていると思うんですけれども、そういう意味では、教育というのはとても深い取組ですよね。

これを例えば地方公共団体立の、市町村立の学校などで行っていくことということになる、私立だって求めることになるでしょうと。というときに、何が許されないのかということを定義を明確にするということは、この教育においても、あるいは啓発においてもですけれども、これは大事なのであって、罰則の構成要件の明確性というのとは意味合いの違うものとして、私は、ヘイトスピーチの明確性、何が許されないのかをはっきりさせるということは大事だと思うんですよね。そこはいかがですか。

○西田昌司君 非常に大事な御指摘だと思います。しかし、そこを定義してとやったところで、私はこれは本当に外側、外側が出てくると思っています。

しかし、一番私は大事なのは、教育の話、啓発の話もそうですけれども、もう少しこれかいつまんで言うと、やっぱり思いやりだと思うんですね。自分がその相手の立場になったときにどうかということですよ。だから、ヘイトをしている人に私は申し上げたいのは、もしあなた方がヘイトをされる側にいた場合、何を感じるかですよね。何もしていない、平穏な、そして合法的に、適法に暮らしておられる方に向かってそういう言葉が浴びせかけられたときに、普通の人間ではやっぱり耐えられないですよね。そういうことは許されない。それを彼らやっている方が感じていただくべきなんですね。それを我々教育とか啓発という言葉で表しておりますけれども、だから、その相手の立場になって考える思いやりですよね、そういうところがやっぱり大事なことだと思うんです。

だから、それはまさにモラルの問題であり理念の問題であり、そして国民全体がそういう差別のない社会をつくらなければならないという、国民全体がそういう努力義務があるという、そういう意味でここに書かせていただいたのは、私が言いましたように、そういう思いやりの心、お互いさまなんですから、我々のこの日本の国で、地域社会で平穏に暮らしている、それはどなたにもあるわけですよ、そういう暮らすことができる権利は。それをしっかり守っていくというのを我々は目指しているわけであります。

したがいまして、余り細かい規定で、このヘイトの定義というのは私はこの法律の趣旨からすると小さな問題で、むしろ思いやりの心という方を我々は訴えるべきではないでしょうか。その方がより理解ができるんだと思うんです。

○仁比聡平君 法とは何かという、これ、委員長、是非我々の中でよく議論して定めていかなきゃいけないんじゃないでしょうかと御提案をしておきます。

私どもが与党の皆さんに御提案をしている定義というのを改めて申し上げると、ヘイトスピーチとは、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団、例えば民族などというふうに呼ぶとして、その民族などの社会からの排除、権利、自由の制限、民族などに対する憎悪又は差別の意識若しくは暴力の扇動を目的として、不特定多数の者がそれを知り得る状態に置くような場所又は方法で行われる言動であって、その対応が民族等を著しく侮辱、誹謗中傷し、脅威を感じさせるものをいうといった定義、この一字一句こだわるわけじゃないんですが、こうしたものに置き換えてはどうかなという提起をしております。

それは、人種、民族による差別という人種差別撤廃条約にも通ずる理念を折り合える形でこの法文の中に盛り込むということ、それから、社会からの排斥、権利、自由の制限、憎悪又は差別の意識若しくは暴力の扇動という、こうした要素を明記することによって、人間の尊厳の根底にあるアイデンティティーを排斥しようとするもの、攻撃し排斥しようとするものであるというヘイトスピーチの本質をきちんと明らかにできるからだと私は考えているんですね、是非御検討いただきたいと思うのですが。

最後に、そうした定義を明確にしながら、行政機関が直接言論の違法性を認定するという仕組みは取らないという理念法なわけで、教育、啓発についても、これやっぱり違法であると。与党の皆さんの案でも、前文において、あってはならず、あるいは許されないことを宣言するというふうにおっしゃっているのであって、それはつまり違法だと、この法には反するよと言っていることと私はほぼもう同義なんじゃないかと思うんですけれども、先ほど来の議論のように禁止規定は置かないとおっしゃるんですが、これは、そのようにおっしゃって門前払いするつもりではないと思うんですが、これから行われる協議でもきちんと議論をするべき大きなテーマだと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君 このところは我々も一番公明党との間で、二党協議で一番実は詰めてきたところであります。禁止規定を置かない、あくまで理念法であると。それはなぜかといえば、法律で言論の自由を規定して禁止するということをやってしまうというのは、この法律に限らず、全ての法律において私たち問題だと思っております。

今、日本には、かつてはそういう治安維持法があったかもしれませんが、今そういう法律はありません。これからも作るべきではないと思っています。ですから、この法律においてもあえて禁止規定に係るようなものは作らなかったというところで、このところだけは我々譲ることができないと思っています。

しかし、かといって、禁止規定を設けていないからといってヘイトを許しているわけではない。これは、理念においてしっかり駄目だということを宣言して、そして教育、啓発、先ほど言ったように思いやりの心ですよね、そういうことをみんなが持ち合えば、結果としてこのヘイトを根絶できるのではないかと、そういう思いで作っているというところを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君 禁止規定を置かない、あくまで理念法であると西田議員が繰り返されるんですけれども、野党案、民進党さんたちを中心にした案にあるように、理念法で禁止規定を置くというようなこと、当然あるんですよ。これ、だから、理念法だから禁止規定を置かないという理屈にはならない。それは論理必然ではない。やっぱりそのことを前提として、ここの点は本当に極めて重要な点ですから、大いに議論をしていかなきゃいけないと思っています。

私たち日本共産党は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて政治が断固たる立場に立つことが必要であると政府にも求め、私たち自身も政治家としてその先頭に立つべきだと、議論と運動を求めてまいりました。

今回、与党案が提出をされ、こうやって実質審議に入る中で、いわゆる野党案、そして与党案とともに刑訴法案がこの委員会で並行審議をされるという状況になっているのは極めて異例のことだと思うんですけれども、それは、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さとその根絶を求める当事者、国民の皆さんの強い声によって動かされてきた大きな一歩だと思います。

だからこそ、私たちは、このヘイトスピーチ根絶に向けた第一歩、一歩前進を実らせるために、今国会でより良い法律案をできる限り全会一致で成立をさせるという立場で、深い協議をしっかり行っていくべきだという立場でこれから臨んでいきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げて、質問を終わります。


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