○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は急な質問ということになりまして、ふだんにも増してストレートな質問になるかもしれませんけれども、そこは御勘弁をいただいて、選択的夫婦別姓と通称使用の拡大という問題についてお尋ねをしたいと思っております。

この問題に関しては、先ほども小川委員からお話がありましたが、夫婦同姓を強制をしている今の法制度、そして待婚期間を規定している制度について、その合憲性が争われて、最高裁が大法廷に回付をした、十一月には弁論が開かれるという事態が注目を浴びています。事態と申し上げたのは、言わば堪忍袋の緒が切れたという最高裁の思いではないかと私は拝察をしているんですね。

そうした中で、この国会に、私ども、他の野党の皆さんと御一緒に、九六年の法制審答申の内容を実現をするべきであると民法改正案を提案をさせていただいております。この審議入りも是非進めていただきたいと思うんですが、そうした中で、まず内閣府にお尋ねをしたいと思うんです。

男女共同参画の基本計画、これが今第三次ということになっておりまして、家族法制の整備等について、「夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正について、引き続き検討を進める。」と記載をされているわけですね。

この第三次基本計画の検討のプロセスでは、民法改正が必要であるとはっきり明記すべきだという議論もあったことも踏まえつつ、国際人権機関からの最終見解なども踏まえ引き続き検討を進めるという、つまり推進するんだという趣旨の規定がされているわけです。

この第三次基本計画が今年度末に期限を迎える。すると、来年四月からの第四次になるべき基本計画をどうするのかということが今検討中だと思います。この第四次の基本計画には、この件についてはどうお書きになるんでしょうか。

○政府参考人(久保田治君) お答えをいたします。

第四次の男女共同参画基本計画につきましては、委員御指摘のとおり、現在審議を行っているところでございまして、現在、男女共同参画会議の下に計画策定の専門調査会を置きまして、基本的考え方として、計画の前提になります答申を御審議いただいているところでございます。

政府といたしましては、この男女共同参画会議からの基本的考え方の答申を踏まえて第四次計画を策定する予定としておりまして、現時点で家族に関する法制についての記載内容は決まっていないところでございます。

○仁比聡平君 冒頭に申し上げたようなこの問題をめぐる状況の下で、決まっていないとか、あるいは方向性もお話しになれないというのはどんなものなんだろうと思うんですけれども、この第四次の基本計画で、第三次基本計画以降の状況の下でこれだけの憲法問題、あるいは家族の多様化というのがいろんなアンケートなどからも明らかな中で、まさか第三次の記載の水準から後退するなんというのはあり得ないと思うんですけれども、内閣府、いかがですか。

○政府参考人(久保田治君) お答えいたします。

現在審議中の案件でございますので予断を持ってお答えすることはいたしかねますが、最高裁に家族法制に関する案件が係属中ということもございまして、それを踏まえた記載をしていくということで委員間では話し合われております。

○仁比聡平君 最高裁がどういう判断をするのかを見ながら記載していくという、その話合いが理解できないんですね、私。

今週ですか、六日にお話のあっている専門調査会の会合があって、その場でも、委員の中から最高裁を注視していくと。先ほどの上川大臣の小川委員への御答弁と同じ趣旨の発言もあったように聞くんですけれども、まず最高裁の判決でいうと、十一月に弁論なんですから、だったらいつ出るのかと、判決が。

基本計画の期限は年度末に来るわけで、当然、四月一日からは責任を持って施行しなきゃいけないわけでしょう。計画を始めなきゃいけないわけでしょう。すると、そのためにどんな政策を掲げるのかという計画と、それに必要な予算を始めとした体制、これは年内に定めなかったらば、あるいは通常国会でそうした議論ができなかったらば四月からやれないじゃないですか。だから、第三次基本計画だって、その前の計画だって、年末十二月に閣議決定がされていると思います。

最高裁を注視していたら十二月には閣議決定できませんけれども、そんなことで男女共同参画の事業が責任を持って行えると内閣府はお考えですか。

○政府参考人(久保田治君) 第四次基本計画に関しましては、現在、委員御指摘のとおり、年内の策定を目途に作業を進めておるところでございます。最高裁の判決がどうなるかということは別途注視しつつ、その他の事業が滞りなく行われていくように計画の策定時期を考えていきたいと思っております。

○仁比聡平君 元々、最高裁判決待ちになっていると、注視する、最高裁判決待ちというその政治姿勢そのものがこの二十年近くにわたって弾劾され続けているわけですね。

ちょっと別の角度、国際人権の角度から外務省にお尋ねをしますけれども、女性差別撤廃委員会から、今申し上げているテーマについて度々条約違反であるという勧告を受け続けてきました。そして、フォローアップの対象に挙げられて、今月、日本政府から委員会に出されているレポートに対する審査が、予備審査というんでしょうか、七月の二十七日に行われる。そして、来年二月には、二〇一六年二月には本審査が行われるという状況にあるわけです。ここに日本政府はどのように臨もうとしているんですか。

○政府参考人(山上信吾君) お答えいたします。

まず、委員の方から条約違反という御指摘がございましたが、この女子差別撤廃条約十六条の一項の(g)でございます。ここは、姓の選択等につき男女同一の権利を確保することを求めているというものでございまして、日本の民法七百五十条におきましては、御案内のとおり、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する旨規定しており、この条約の十六条一項(g)号の要請は担保されていると。したがいまして、条約上直ちに問題となるものではないと理解しております。その上で、委員御指摘のとおり、委員会の方からはこの日本の規定に対して一定の懸念が表されておるというところでございます。

お尋ねの、来年二月の審査に対する対応でございましたが、そこは、昨年九月に政府から報告書を提出しておりますので、その内容に基づきまして、選択的夫婦別氏制度を含む民法改正についての我が国の状況についてしっかり説明をしてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 条約違反ではないという御主張は、僕はへ理屈だと思うので、これ後ほどちょっと議論しますが、そのおっしゃる政府のレポートは、国民の理解を得て行う必要があるとの認識の下、引き続き、国民意識の動向の把握に努め、また国民の議論が深まるよう情報提供等に努めている、なお、九六年の法制審答申を受け、同年及び二〇一〇年に婚姻適齢の男女統一などを内容とする民法等の改正法案を国会に提出すべく準備をしたが、同法案については政府部内及び国民の間に様々な意見があり、国会に提出することができなかったと書いてあるんですよ。

国会に提出することができなかったというこの経過が国内の最高裁判所において憲法判断を今迫られようとしている、そのことを女性差別撤廃委員会の林陽子委員長はもちろんよくよく御承知である。そうした下で、七月には、日本の女性運動を始めとしたNGOがつまびらかにこの日本の今の現状についてレポートされると思います。そうした中で、今お話しになったような日本政府の対応が国際社会において通用するとお考えですか。

○政府参考人(山上信吾君) お答えいたします。

私ども外交当局としましては、国内で様々な意見がある問題につきましては、その国内の現状、立場といったものについて、国際社会の理解を得るべく説明を尽くしてまいるということかと存じます。

○仁比聡平君 そうした態度は絶対に通用しない、国際社会でと私は思うんですけれども。

そこで、上川大臣、大臣は法務大臣であり、かつこの男女共同参画のメンバーでもあるわけですけれども、申し上げているように、問われているのは政治の不作為なんですね。九六年の法制審答申から考えたってもう二十年になろうとしているんですよ。その間、問題の解決ができないということが憲法判断を迫られようとしている。

大臣は、法制審に諮問をしたお立場であり、その法制審の検討を踏まえて答申を受けた立場であり、そして法案を作成した立場なんですね。ほかの政治家とは存在の重みが違う。その大臣にとって、こうした状況というのをどうお考えになっているんですか。

○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘をいただきましたとおり、平成八年の二月に答申が出されたわけでございますが、民法の一部を改正する法律案要綱につきましては、民法の研究者を始めといたしまして、法制審議会の委員であります様々な有識者の皆さんの御意見を踏まえて取りまとめられたというものでございます。

法務省といたしましても、平成八年、平成二十二年、この二回にわたりまして、この答申に基づく法案につきましては国会に提出すべく準備をしてきたところでございますけれども、各方面からこの法制審議会の答申にいろんな疑問を呈する御意見もございまして、様々な意見が出されたということでございます。国民の意識に十分に配慮しながら更に慎重な検討を行う必要があるというふうなことを考えて、法案の国会への提出を見送ってきたところでございます。

この選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、我が国におきましての家族の在り方に深く深く関わる問題であるということでございまして、国民の皆さんからの大方の理解をいただくべきものというふうに考えているところでございます。

また、直近の世論調査、平成二十四年でございますけれども、通称使用、先ほど委員からもお触れになっていただきましたが、通称使用の選択肢も含めまして、この間、世論調査を継続して実施してきているところでございますが、この世論調査を見てみましても、国民の皆さんの意見が大きく分かれているという状況でございます。

今後とも、引き続き、各層の御意見を幅広く聞きながら、また様々な問題提起をしながら、また関連する訴訟については、特に最高裁判所が今まさに審議していくということでございますので、そうした観点で、その判断につきましての行方ということにつきましては注視すべきものというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 様々な意見があるから慎重な検討が必要だというふうにこの間おっしゃるようになっていて、それは一体、この民法改正をやらないという理由になるのかということが私、大きな疑問なんですね。

ちょっと先に、どんな方々の問題なのかということについて、厚労省においでいただいていまして、人口動態調査で、二〇一三年に法律婚の届出をされたカップルの総数、そのうち、夫の氏を名のることとしたカップルの数、妻の氏を名のることとしたカップルの数、総数と割合を御答弁ください。

○政府参考人(姉崎猛君) お答えをいたします。

私どもの人口動態統計によりますと、平成二十五年、二〇一三年の婚姻数は合計で六十六万六百十三組というふうになっておりまして、そのうち、夫の氏を選択した御夫婦は六十三万五千四百三十二組、割合として九六・二%、妻の氏を選択した御夫婦は二万五千百八十一組で、割合は三・八%というふうになっております。

○仁比聡平君 つまり、一年間に六十六万を超えるカップルが法律婚をし、その九六・二%は夫の氏を称することになっている。先ほど条約違反ではないと外務省のお答えがありましたけれども、同一だという形式上の平等があっても、現実はこうなんですよ。毎年毎年、六十数万の、あるいは七十万のカップルが誕生し、女性の六十三万五千四百三十二人ですよね、二〇一三年においては、が、望んでの方ももちろんおありでしょうけれども、旧姓のままがいいというふうに思いながらも、こうした法律上の強制をされている方々がいらっしゃる。

その下で、働く女性の意識についての、三月に日経新聞が発表した調査がこれ話題になっています。働く既婚女性の七七%の方が選択的別姓に賛成、四十代の方は八割の方が賛成だと。実際、職場で通称の使用については相当な苦労があるわけですよね。旧姓で仕事をしているという方が四人に一人に上る。その中で、二つの名前を使い分けるのが面倒だ、あるいは判こが二つ必要だ、こうした声が大きく上がっているわけですよね。

大臣、様々な意見がある、それは賛成の人も反対の人もいるでしょう。だけれども、そうした賛成の人も反対の人もいることも含めた様々な意見を踏まえて法制審の答申は出されているのであって、それをやらない理由、つまり法制審の答申をやらない理由に様々な意見があるというのを持ち出すのは、これは背理じゃないですか。様々な意見を経て、検討して出されている答申をこれ実現するというのが大臣の責任じゃありませんか。

○委員長(魚住裕一郎君) 上川法務大臣、時間ですので、答弁は簡潔に願います。

○国務大臣(上川陽子君) はい。

様々な意見ということでございますが、家族の在り方に深く関わる問題であるということで、今、世論調査も含めまして、平成二十四年の事例を紹介させていただきましたが、夫婦別氏に賛成の者が三五・五%、また通称使用のみ容認、二四・〇%、反対が三六・四%、分からないが四・一%ということでございます。世論調査のこうした動向を見てみましても、様々な意見があるということにつきまして申し上げてきたところでございます。

○仁比聡平君 時間がなくなりましたから、本当に残念ですけれども、その内閣府の世論調査によっても、性別を問わず五十代以下の世代は、みんな選択的別姓をやるべきだといいますか、構わないという声が四割、あるいは四七%になるわけですよ。女性を見れば、例えば二十代の女性は五三・三%がやるべきだと言っているわけですよね。その声を、何だか賛成も反対もあるみたいなことで、やってはならないという人だけの声を何か代弁するような姿勢というのは、これは法務大臣としていかがなものですかと厳しく申し上げなければならないと思います。

今日、銀行口座を作るについても、あるいは国民健康保険、あるいは健康保険に当たっても通称では作れないということも金融庁、厚労省に確認したいと思っておりましたけれども、時間がなくなりました。できないんですよ。通称使用には限界があるし、その二重の管理、通称と戸籍名の管理にはもう極めて膨大なコストが掛かる。

そうした実態をしっかり見て、実現のために全力を尽くしていただきたいと願って、今日は質問を終わります。