○仁比聡平君
 私は、日本共産党を代表して、秘密国会法案、すなわち国会法及び参議院規則改定案、参議院情報監視審査会規程案をまたも多数を頼んで強行した自民、公明与党に満身の怒りをもって抗議をするとともに、断固反対の立場から討論を行います。
 本法案は、戦後初めて国会に秘密会を常設するという極めて重大な法案であり、国会の在り方の根本に関わるにもかかわらず、自民、公明両党が会期末ぎりぎりに提出し、実質会期前日の昨日、合意なく強行付託され、僅か七時間で強行採決されたものであります。
 国会法改正案はもちろんのこと、参議院規則、規程案をどう定めるかは、二院制の本旨と参議院の自律性が問われる大問題です。その議会の在り方に重い責任を負い、最も議事運営のルールを重んじねばならないのが議院運営委員会と議運理事会のはずであります。にもかかわらず、法案の内容の説明さえなしに提出され、もちろん、議運理事会での協議も全く行わないまま審議を強行したからこそ、発議者の答弁は支離滅裂となり、到底審議に堪えるものではありませんでした。その責任は、挙げて暴走する安倍政権と与党にあります。与党は、参議院の議会としての仕組みまで多数党がほしいままにできるとでも言うのですか。昨年の臨時国会に続き、解釈改憲の暴走と併せ、ここまでして憲法と議会制民主主義を壊して進もうとする与党の暴挙にはらわたが煮えくり返る思いであります。
 本法案は、第一に、昨年末、広範な国民の反対を押し切って安倍政権が成立を強行した秘密保護法を前提に、秘密保護法の規定に従って、国会の委員会や国会議員が秘密を漏らさない厳格な仕組みをつくり、国会を政府の秘密保全体制に組み込もうとするものであります。
 提案者は、政府の特定秘密を監視すると言いますが、情報監視審査会の勧告に法的拘束力はありません。元々、何を特定秘密にするかは秘密であり、たとえ監視審査会が個別秘密の提供を求めても、内閣が、特定秘密の指定と同様の、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断すれば、国会に提出されることはないのです。
 森担当大臣は、国会に秘密を提供するかどうかは国会の秘密保護措置の程度によると答弁をしましたが、その程度も政府の判断次第であります。結局、これのどこが監視だというのですか。国民の目をごまかし、秘密の共犯者に国会がなっては断じてなりません。
 第二に、情報監視審査会は、僅か八人による秘密会であり、委員でもメモさえ取れず、会議録も許可なく閲覧できません。国民には永久に公表をされません。
 例えば、時の政府が、我が国の存立が脅かされるおそれがあると判断して海外で武力を行使しようとしたとき、国民世論が沸騰する中で、その根拠となった情報の提出を、委員会の、あるいは院議をもって求めることもあるでしょう。そのときも、情報監視審査会が提出は求めないと決めてしまえば、国政調査権は阻まれてしまうのです。しかも、審査会が提出を求めないという結論を委員会には通知をするだけで、審査に出席した委員長や理事も、実質的な理由を知りながら同僚議員にさえ話すことはできなくなります。
 そのような国会の秘密体制のために、なお実態が明らかになっていない事務局を置き、その国会職員にプライバシーを洗いざらい調査する適性評価を持ち込むというのです。これは、憲法が求める国会の在り方を根本から壊すものにほかなりません。
 第三に、秘密の開示を受けた議員は、その内容を国会の外で漏らすなら刑罰に処せられ、国会質問で取り上げれば懲罰の対象とされ、除名処分まで受けかねないことになります。
 我が党の、懲罰事由の存否や重みの判断は何を根拠に行われることになるのかとの質問に、発議者は最後までまともな答弁をすることができませんでした。情報監視審査会長が懲罰すべきと報告をしただけで、どんな秘密を漏らしたのか、漏らしたのがその核心部分かほのめかしただけかも分からないまま、議員諸君はその議員が除名に値すると判断し、議決をするというのでしょうか。それは、議会政治の命である議員の発言、討論の権利を議会多数派が恣意的に奪う暗黒国会にほかなりません。
 審議を通じて明らかになったのは、本法案、そして規則、規程案は根本的欠陥を抱えているということです。このまま動かすことなど絶対に許すわけにはいかない、許されないということを厳しく申し上げておきたいと思います。
 国会は、主権者国民を代表する唯一の立法機関であり、国権の最高機関です。憲法は、国会に国政調査権を保障し、公開の原則、議員の発言権保障を明記しています。国会の第一の任務は政府を監視することであり、国政のあらゆる分野で国政調査権を行使し、中でも安全保障と軍事の秘密、その実態を国民に明らかにすることが求められているのであります。
 秘密保護法を前提に、政府、行政の行為を国会の上に置いたのでは、国会はその憲法上の役割を果たすことはできません。秘密保護法は、国民の知る権利を侵害し、日本国憲法の基本原則を根底から覆す希代の悪法であります。廃止を求める世論と運動は成立後も広がり続けています。秘密保護法の廃止こそ今なすべきであるということを改めて強く訴えて、反対討論を終わります。(拍手)