○仁比聡平君

日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、前回、六月五日の質疑に続きまして、建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置について、国土交通省の認識をお尋ねした上で大臣に伺いたいと思うんですが、前回、四月四日の関係閣僚会議の取りまとめについて、特に国土交通省の今の準備の状況について伺って、やっぱり、報道では来年四月からの受入れが決まったかのように報道されているんですけれども、せいぜい検討の課題なりあるいは基本的な考え方なりを示した程度にとどまっているんじゃないのか、この取りまとめでこのまま到底制度化するということは私できないんじゃないのか、そんな感想を持っているんですね。
前回幾つか伺った中で、新たな特別の監理体制をつくると、優良な監理団体や優良な受入れ企業に任せるのであるといった点について国土交通省の設計に委ねられているという趣旨の議論をしたわけですが、であれば、現在の技能実習生について国土交通省がどれほど把握をしているのか。建設産業に、技能実習生というのは今実習を行っているわけです。だったらば、その建設関係で受け入れている企業、あるいはその企業の適正を監理しているそういう監理団体というのはどれだけあるのか。あるいは、オリンピックだとか震災復興だというニーズが目標として言われているわけですから、であれば、地域別にそうした建設の技能実習生を受け入れている企業や監理団体がどれほどあるのかと資料を求めましたら、建設関係の団体数、都道府県別の団体数については国土交通省では把握しておりませんので御了承くださいというペーパーが私のところに届けられました。
結局、技能実習生が建設分野でどのような活動をしているかということについて、あるいは、その技能実習を終えた人が即戦力と皆さんが言われるそういう人材なのかどうかについて、国土交通省は実情をつかんでおられないんじゃないんですか。

○政府参考人(吉田光市君)
お答え申し上げます。
建設分野における現行の技能実習に関しての監理団体数を含む実態についてでございますけれども、これまで関係省庁等での情報共有に努めてきているところでございますが、国土交通省としての調査、把握は現時点では行っていないということでございます。

○仁比聡平君
いや、そんなことでどうやって優良な監理団体だとか優良な受入れ企業というのをまず国土交通省の方で制度設計するのかと。国土交通省が制度設計しなかったらば、入管当局が、例えば今言われている特定活動のその告示を定めていくとか、適正な在留管理を行うとかって、あるいは入国審査を行うってできないじゃないですか。
前回の質疑で、具体的なニーズについても初めて、十五万人の人手不足があって、国内人材で八万人にとどまる、だから差引き七万人の技能実習生が必要なんだという趣旨の御答弁がありました。けれども、その八万人程度にしか国内人材の確保がならないということはおかしいじゃないか、本気で若手やあるいは女性という国内の人材の担い手の待遇改善に取り組むなら、もっと超えて、これから将来の建設産業を担っていく、そういう人材をつくることは可能じゃないかと私が尋ねましたら、国土交通省は、しっかりと取り組んでまいりたいと思いますとお答えになっただけで、なぜそれをやっても八万人にとどまるのかという答えはなかったわけですね。
入管当局に国土交通省の言う即戦力というのが入国審査で明らかにできるかと尋ねましたら、いや、それは受入れ企業が判断するものだと考えますという趣旨の答弁がありました。
優良な監理団体だというけれども、その中身というのは、到達点というのは今ほどの御答弁のとおりなんですね。
今度の設計では自発的な転職を認めると。これは、受け入れた企業で大変な労働条件、低い労働条件だというようなことがあって、そこに縛られ続けるということになれば深刻な外国人労働の温床になりますから、私は自発的な転職を認めるという方向はあり得るかとは思いますけれども、ただ、そうとなれば、転職する先の労働条件がどんな条件だと明示されているのか、実際に転職したらその労働条件が守られるのか、そこの言わば新たにできる労働市場の適正さについての監理をどうするのかということも明らかになっていません。
ちなみに、この新たな特別の監理体制において、取りまとめによると、制度推進事業実施機関というものが巡回指導などを行うということになっているんですが、これがどんな機構になるのかということについて伺います。国土交通省、具体的な制度設計が示せますか。

○政府参考人(吉田光市君)
お答え申し上げます。
今回の措置につきましては、現在、関係省庁と制度の詳細について協議、調整をしているところでございます。ただ、これまでの技能実習制度自体に適正化が求められているといったようなことを踏まえまして、これを上回る監理体制をしっかりと構築してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君
つまり、今示せないわけですよ。
大臣、今、国土交通省はこれまでの技能実習制度を上回る監理体制を構築すると言うんですけれども、今の現在の技能実習制度そのものが、研修制度が導入されて以来の、もう繰り返しませんけれども、深刻な人権侵害やあるいは行方不明、失踪などといった、研修生を食い物にする、そうしたビジネスの下での深刻な実態が次々と告発されて、それを政府も踏まえた上で厳しい監理体制などということを構築してきたわけでしょう。それが今、別表の技能実習という、そういう在留資格に定められているわけです。これはさらに重要な部分で変更が起こっていく建設分野での緊急措置ということを言いながら、だけれども、制度の設計については国土交通省は今のような御答弁にとどまっていると。これを来年の四月に間に合うように特定活動の告示を定めるなんて私はできないと思うんですよね。
今度の入管法の改正でも、従来の特定活動で挙げられていた高度人材関係の在留活動が、これ削除されて、特定活動というのは法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動のみに別表上はなるわけですけれども、これ、大臣がまさか自由勝手に、どんなことでもいいよといって定めるなんていうことはあり得ないわけで、入国審査や在留管理の適正ということを考えれば、あるいは外国人労働者に対する人権の保障ということを考えれば、特定活動の一つとして今言われているような建設業における緊急措置というのを入れていくというのは私はできないと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君)
今回は、今委員が御議論されたように、技能実習制度自体様々な問題を抱えているということを指摘されておりますから、確かに緊急措置で復興であるとかオリンピックに対する対応で人が足らないならそれを何とか工夫しなきゃいけない。しかし、問題とされている技能実習制度をそのまま転用していくのはやはり問題があるだろうということで、今おっしゃったような在留資格を利用したわけでございますが、いずれにせよ、今、国土交通省から御答弁がありましたように、今の技能実習制度を上回る監理体制をつくっていかなきゃならない。それは、法務省も協力しながら、国土交通省を中心として、いろいろな優良な監理団体あるいは優良な受入れ企業の要件も含めまして、緊急措置を実施するための新しい監理体制の内容に関する告示、通知等、今議論を進めているところでございます。それを受けて、法務省においても法務省告示の改正等、必要な措置を整えていかなければならないと思います。
それで、委員の論点は、今まで監理団体の実態も十分把握できていないのではないかというようなことが下地になっておられるんだろうと思います。
これまでも、不正がある、不正行為を行った疑いのある監理団体については調査を行って、その結果、不正行為が行われたことが判明した場合には受入れ停止措置、その旨を通知して受入れ停止措置もとってきたと。こういう問題のある監理団体については、今回の緊急措置においては確実に排除することにしなければならないと考えております。

○仁比聡平君
私は、人権侵害に対して後追いで何か是正するようにするというようなやり方は、もうやめるべきだと思うんですよね。
現在の技能実習制度が廃止まで求められていると。例えば日弁連などはそういうふうに要求をしていますが、その下で新たなそうした特定活動という在留資格をとにかくつくって、緊急だからと、で、受け入れてみたら様々な大問題が起こって、後追いで対策を入管が強いられていくという、そんなやり方には絶対してはならないと思うんですね。
私、そうならないようにするためには、少なくとも、この特定活動の一つとしてと言うんだが、現在の技能実習制度は別表に定められているわけですから、特定活動で国会の審議さえなく告示のみで定めるというのではなくて、技能実習の在留資格とせめて同様に法律改正によって議論をするべきなのではないんですか。大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(谷垣禎一君)
これは、特定活動というのは、ある意味でそのときの経済情勢あるいは国際情勢に対応しながら弾力的に運用するように作った条項でありますので、今回のような緊急事態への対応、もちろん今議論がありましたように、今までの監理システムよりもきちっとしたものを組み立ててやっていくことが前提でありますが、特定活動がこういう場合に使われるというのは、私は本来の、今までの法が狙っていたところではないかと考えております。

○仁比聡平君
私は、そうしたやり方はこれまで政府が言ってきた国民的なコンセンサスを得られるものでは絶対にないと思います。この問題については引き続き次の機会に議論していきたいと思うんですが。
今回の入管法そのものについてお尋ねをしますけれども、高度人材に関して高度専門職一、二の新たな在留資格をつくるわけですね。これは、これまで行われてきた高度人材ポイント制とリンクをするものになりますが、年収要件なんですよね。専門・技術の分野、それから経営・管理の分野、この二つの分野についてはそれまで三百四十万円という年収の基準があったんだけれども、これを年収三百万円ということに引き下げた。そして、学術研究の分野については、これ年収要件を撤廃をしたわけですね。だから、三百万円にも届かない高度学術研究分野の人材というのがあるということになっているわけですけれども、これ、そうした年収要件を撤廃ないし引き下げたというのはなぜなんでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君)
今の引下げの点でございますが、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会からの報告書であるとかあるいは日本再興戦略の内容を踏まえて、関係省庁と協議の上、見直したわけでございますが、今の年収要件を下げた点ですが、高度学術研究分野で活動する高度人材の最低年収基準については、大学などでは研究等の活動に従事する特に若手の研究者、その報酬額は一般的に余り高くありません。
そこで、優秀な人材であっても年収基準によって高度人材として認定されないという問題があると指摘を受けまして、学術研究活動に従事する外国人の資質、能力は、むしろ年収よりも、一応こういう今の下げたラインはございますが、その年収よりも研究実績などによって、あっ、年収は撤廃されておりますが、研究実績などによって評価すべきだという意見が示されましたので、こういう最低年収基準を撤廃するなどの見直しを行ったわけです。
それから、高度専門・技術あるいは高度経営・管理分野で活動する高度人材につきましても、中小企業などで比較的報酬額が少ないことがあるのを踏まえまして、高度な人材であるけれどもより広範囲な企業で活躍できるようにするために最低年収基準を引き下げることとしたものでございます。
ただ、例えば三百万にしたと、だから三百万にしたから今まで三百四十万では入れなかった人がすぐに入れるというわけではございません。そのほかのやはり高度人材としてのポイントがなければ入れませんので、そういう意味ではこれだけで判断するわけではないということは申し上げておきたいと思います。

○仁比聡平君
法務省が高度人材ポイント制の導入後十一か月間の実施状況に係る統計分析を行っておられますけれども、これ見ると、確かに専門・技術などで最高の報酬を受ける方というのは六千七百万円を超えるとか平均値は一千万円を超えるというので、これなかなか高いんですよね、報酬。けれども、最低値は三百九十万円と。学術研究の分野で、私が今申し上げている分野でいうと、平均値は六百十三万円で最低値は三百五十四万円だと。
私、この年収だけで高度かどうかをポイント制やこれからの在留資格で判断しているじゃないかと言っているつもりはないんですよ。なんですが、高度人材という概念が極めて多義的になっていて、幅が広くて、例えば日産のカルロス・ゴーンさんのような、そういう方をぽっとイメージしたりする向きがあるかもしれませんけれど、実際には年収三百万円そこそこという方々をも包摂する在留資格ということになるということなんですよね。
もう一点、そうした高度専門職一、二を、五年間その資格で在留をすると、在留資格、永住者の申請が可能になります。永住者としての在留資格を得れば、その後の活動についてはこれは制限がないと思うんです。
例えば、企業の側の様々な事情で、高度人材としては受け入れたけれども、だけれども五年間でうちの企業にはもう勤めていただかなくて結構ですというような話になって、日本に在留しておられる間に例えば家族ができる、いろんな社会関係ができるという中で永住をするということを希望される方あると思うんですよね、高度人材ポイントの間は永住資格は取れますから。そうすると、その後、単純労働などの就労もあり得るということになるんですが、こうした問題意識というか、これは何か議論がされましたか。

○政府参考人(榊原一夫君)
高度人材につきましては、平成二十四年五月から運用を開始している高度人材ポイント制により優遇措置を実施しているところでありまして、その一環として、委員御指摘のとおり、一般に十年以上の本邦における在留が求められる永住許可要件について、その期間を五年に緩和しているところでございます。
高度人材は、高度の専門的な能力を有する研究者や技術者、経営者等の人材でありまして、そのような能力を企業や研究機関等から請われて我が国に来る方々でありますから、そうした方々が高度人材としての役割を果たさず、例えば専ら単純労働に従事したり、生活保護の対象となりながら我が国に居続けるということは一般的にはそう多く想定されるものではなく、これまでにもそのような事態は把握しておりません。こうした事情も踏まえました上で、高度人材の受入れと定着を促進するため、永住者の許可要件を緩和しているものでございます。
他方、在留資格、高度専門職で在留する方からの永住許可申請につきましては、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有することという永住許可の要件に照らしまして、継続的な独立生計維持能力等の点についても慎重に審査をしまして、永住を許可した後に直ちに生活保護を受給するようなことなどがないように適切に対応してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君
ポイント制の導入に関わる検討会の座長を務められた慶応大学の後藤純一教授は、ポイント制は並の人材の受入れが目的であってはならない、不可逆的な優遇策である永住権付与などは特に慎重にというふうにも述べられているんですが、こうした点について議論が尽くされていると私ちょっと思えないんですね。
最後に、もう一点伺っておきます。
警察庁においでいただきました。今回、利用拡大が提案されている自動化ゲートも含めて、入国審査の際に提供される指紋と併せて、入管には指紋や出入国の履歴を始めとした情報というのが蓄積されるわけですが、これについて警察としてはどんな手続で取得をされるんでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君)
お答え申し上げます。
お尋ねにつきましては、刑事訴訟法の規定に基づきまして、警察から法務省入国管理局に対しまして個別の事案ごとに捜査関係事項照会書を発しまして、例えば指紋の保有の有無等を照会し、回答をいただくというものでございます。

○仁比聡平君
つまり、照会を掛けるということであって、裁判所の令状を取るといった第三者のチェックは働かないわけですね。
これ、入管当局はそうした警察からの照会があったときに、例えば、捜査上の必要だとか、この情報を提供することが当該外国人のプライバシーを侵害しないかとか、どんな判断をするんですか。

○政府参考人(榊原一夫君)
自動化ゲートの利用登録に際して提供される指紋につきましても行政機関個人情報保護法の規律を受けることでありますけれども、上陸審査時に取得します指紋とは異なりまして、自動化ゲートの利用登録希望者が全く任意に提供するものでありますので、捜査関係事項照会に基づく提供に当たりましては慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

○仁比聡平君
時間が参りましたので終えなければなりませんけれども、入管の出入国審査に係る個人識別情報の取扱い及び個人識別情報取扱機器の運用管理の要領というのがありますけれども、他の行政機関から、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で利用すること、及びその利用について相当な理由があることを示して照会があった場合には、これ受理し、基本的には答えていくという運用になっていると思うんですよね。
お尋ねしている警察あるいは捜査機関からの照会というのは、つまり捜査上の必要があるということなんだと思いますが、だけれども、その捜査上の必要というのが、どういう事案で、実際にその犯罪が起こっているのかとか、あるいはそのおそれがあるという話なのか、相手をテロリストだというふうに言うのかどうなのかなども含めて様々な場合があって、これ一々入管当局で判断をしておられるのかというと、私はそうではないのではないか。だって、問い合わせてきた、照会掛けてきた捜査機関に対して、あんたのところの言う捜査上の必要というのはどんなものですかといって、一々証拠まで問い合わせるなんというのはちょっと考えられない。
そういう下で、こうやって個人識別情報が蓄積され続けていくということについては、この制度が始まったときから大問題として議論があるということを指摘して、この質問を終わります。