○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、古田参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、冒頭、自民党の佐藤さんからも、昨日投開票の韓国の大統領選挙について工藤参考人宛てに御質問がありました。ディープフェイクも含めて膨大な偽情報が拡散をされて、残念ながら、ファクトチェックだとかあるいは候補者陣営の削除要請だとか、こうした取組も全く追い付かなかったという報道があったところなんですけれども、古田さんの方で御存じの実情とか、あるいはそうした取組をやっている現場の苦労とか、こうした事態が、先ほど来お話のあるトランプ一期目のとき以降これだけ問題意識が語られながら、今日なおやっぱりこういう状態が起こっていると、その深刻さなどについて御認識を伺えればと思います。
○参考人(古田大輔君) ありがとうございます。
私、この分野でもう十年やっておりまして、その世界的な会議にも毎年のように出ているんですけれども、そのファクトチェックにしろメディアリテラシーにしろ生成AIの開発にしろ、対策は広がっています。ただし、状況悪化のスピードの方が圧倒的に速い。なので、状況は十年間悪くなり続けているというふうに言えるかと思います。
韓国の事例でいいますと、韓国でも、もちろんその生成AIもそうですし、生成AI以外のフェイクも大量に拡散していました。韓国で一つ課題になっていたのは、韓国で最も大きかったファクトチェック団体は、ソウル大学ファクトチェックセンターというところが一番大きい組織だったんですけれども、去年活動停止になっていたんですよね。その理由というのが、活動資金の大幅な部分を出していたそのネイバーからの資金提供が止まった、それによって僅か半年でもう活動停止に追い込まれた。
実はファクトチェック団体ってそれぐらいもう資金がもう危うい。なので、例えば、メタがこの度アメリカで第三者ファクトチェックプログラムというものを停止しました。それによって、そこからお金を得ていたアメリカの団体の中では、もうかなりもう存亡の危機に出ているところもあります。
それぐらい、この偽情報、誤情報問題の最前線で闘っている我々ファクトチェック団体というのは非常に体力が弱い。なので、状況は悪化している割に対策は全然広がっていないというのが現状なのかなと思います。
○仁比聡平君 そこで、山本参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、つまり深刻な事態だと思うんですよ。
国民投票に限る話じゃなくて、そもそもこうした巨大なデジタル言論空間みたいなものが生まれ、その中でプラットフォーマーだったりそのフェイクをつくる人だったりというのが、先ほど来議論のあっているようなその収益システムなんかも含めてですね、という、そういう空間になっているという下で、二年半前なんですけれども、衆議院の憲法審査会に山本龍彦さんが参考人においでになって、このデジタルデータの利活用と個人情報保護という観点でこうおっしゃっているんですね。自分のパーソナルデータがどの範囲で共有されて誰に共有されているのかを明確に知っている方というのは少ないのではないかと、そういう意味で、データに関する個人の主体性というのが失われつつあると、そういう世界になっているのではないかと。
私、もっともだと思うんですよ。個人情報の保護、あるいは自分のパーソナルデータが知らないうちにそのターゲティングだとかあるいはそうしたアルゴリズムだとかというところに活用されてしまっているという状況そのものを変えないといけないんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。
○参考人(山本健人君) ありがとうございます。
これは非常に難しい問題かと思います。
というのは、このパーソナルデータといいましても、どこに焦点を当てるかによってはかなり違ってくるということでして、例えば機微情報ですとか、まさに今回のようにプロファイリングをされてターゲティングに使われるといったような意味では、基本的にはこれは望ましくない方向性に行くわけですけれど、一方で、圧倒的な情報過多になっている状態において、ある種、情報のレコメンデーションがされなければ、今我々は望ましい情報摂取行動をするのも難しいというような状況に陥っているかと思います。
そういった中で、どの部分が悪性な利用であって、対処すべきであって、どの部分が現在のデジタル社会の恩恵であって、我々が得ている利益というものを守るべきなのか、この線引きを考えていかなければいけないということで、何というか、大上段の議論をしづらくなっているのが現状だというふうに認識しております。
済みません、雑駁ではありますけれど、以上になります。
○仁比聡平君 そこで、工藤参考人に、先ほど御意見の中でもEUの取組などが紹介をされたんですけれども、今のお話のようなプロファイリングで他人から自己決定されてしまってとかいうみたいなことにならないように、問題意識とそれから取組がEUでは行われてきていると思うんですよ、成功しているかどうかはこれからだとしても。日本でそうした議論が極めて貧しいのではないかなと。むしろ、デジタルデータの利活用だとかビッグデータをどう経済活動に使うかとかみたいな議論の方が強くなっているかなと僕は思うんですけれども、その辺りは、工藤さん、いかがでしょう。
○参考人(工藤郁子君) 御質問いただき、ありがとうございます。
私も御指摘あるいは御理解をすごい共感するところ大でございまして、なぜかと申しますと、欧州の方々、政府関係者もそうですし学術関係者とも話していると、それこそ憲法的価値についてすごくたくさんしゃべった上で、でも、その上で、AIやデータをどう利活用しつつ、人間の尊厳や憲法的価値、民主主義的な価値をどうやって守っていくのかというのを、政府当局もそうですし、あと技術者の方もよく考えておしゃべりになっているという印象を受けておりまして、そういったいわゆる理念のお話ですとか大文字の憲法論みたいなところが確かに日本においては活発ではない、少なくとも欧州と比べてというところが、現状のその対策の少なさであったりとか議論の薄さというところに反映されている可能性があると思いますので、このような場が非常に貴重だというふうに感じております。
以上です。
○仁比聡平君 終わります。