5月26日 決算委員会

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 私は、今や深刻な政治課題となっております諫早湾干拓事業をめぐる開門問題の解決の道はどこにあるか、今日、関係大臣と議論させていただきたいと思っております。

 昨年秋から今年正月にかけてノリ養殖被害は有明海全域に及んで、二月の初頭には網を引き揚げざるを得なくなりました。二〇〇〇年大凶作以来と呼ばれています。タイラギは全く捕れずに、漁船漁業も瀕死の状態なのですが、よく知られておりますとおり、福岡高等裁判所は、二〇一〇年の十二月、こうした漁業被害、有明海異変とギロチンと呼ばれた諫早湾干拓事業、潮受け堤防閉め切りとの因果関係を認めて、三年の対策工事期間を置いた二〇一三年十二月までの開門を国に命じたわけです。

 政府は、自らの上告断念によって確定したこの開門義務を誠実に履行し、有明海漁業の深刻な被害を解決する責任を負っているにもかかわらず、昨年十二月の期限が過ぎても、開門もその対策工事も行わず、国が確定判決を守らないという史上初めての事態をもたらしました。深刻化する漁業被害を放置し、拡大し続けているその責任は重大だと思います。

 そうした下で、この四月十一日、佐賀地方裁判所は、国に対する強制執行として二か月以内、つまり六月十一日までの開門、それがなされないなら開門まで漁民一人当たり一日一万円の支払を命じました。ところが、国は、一方で開門の確定判決の効力を奪おうと裁判を起こし、他方で開門阻止仮処分決定の取消しを裁判上求めているわけです。開けたくないのか、開けたいのか、裁判上の態度だけを見ると、どんな解決を求めているか、よく分からないですね。

 そこで、法務大臣にまず伺いたいと思うんですけれども、どう争っても確定した国の開門義務が消滅するということはないと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 確定判決には、もう委員よく御承知ですけれども、判断された事項について、当事者を拘束する効力、既判力などの法的効力が認められるところであります。そして、この既判力を奪うためには、つまり、既判力を消滅させてしまうためには、民事判決に関しても再審の訴えがございますが、極めて限定された要件でなければ再審は認められません。したがいまして、その再審がない限りは既判力は消滅することはないということでございます。

○仁比聡平君 伺っておきたいと思いますけれども、法務省、国が自ら上告断念をして確定した判決のいわゆる執行力を失わせようと請求異議の裁判を起こした例はないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(都築政則君) 法務省といたしまして、これまでにお尋ねのようなケースがあったとは承知しておりません。

○仁比聡平君 つまり、今、確定判決に対して、その執行力を奪おうという、請求異議というんですけれども、裁判を起こす、一方で開門をしてはならないという地裁の仮処分決定について取消しを求めるという、このちぐはぐといいますか、この態度というのは、我が国の、国が当事者として行われている裁判の歴史から見ても極めて異常な状況なんですね。

 国の開門義務が消滅をすることはないと。それはつまり、有明漁民の開門を求める権利が消滅することはあり得ないということです。一方で、干拓営農者は、旧干拓地の昭和三十年代の入植以来、例えば農業用水の確保などの問題で、私は国に裏切られ続けてきたという声が上がるのは当然だと思っております。

 今日、極めて複雑になっている裁判上の争点は争点として、それはそれとして、今や司法に対する国民の信頼を壊しかねない事態にもなっているこの社会的紛争を、国が相反する義務に板挟みになっていると、手をこまねくような、そういう姿勢でいいのか。今何より大事なことは、利害関係者が問題解決のための協議のテーブルに着くことだと私は思うんですね。

 関係者が全て裁判当事者となっているのが福岡高等裁判所の裁判があります。ここで裁判所は裁判上の協議を呼びかけているわけですが、いまだに、今これはかなっておりません。これが行えるように力を尽くすのが国の、裁判を担当する法務省の役割だと思いますが、法務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、いろんな主張が入り乱れまして、いろんな訴訟が行われております。

 それで、これをどうほぐしていくかというのは容易ではございません。一般論として、和解にふさわしい事件について裁判上の協議が行われるように力を尽くすべきという点は、私は委員御指摘のとおりだろうと思います。

 しかしながら、今、この諫早湾の干拓事業に係る訴訟の裁判上の協議に関して言えば、いろんな訴訟がございますが、いずれの関係訴訟においても、開門に反対する方々を含めた協議でなければ全体的な問題の解決に結び付くとは思われないわけでございます。したがって、開門に反対する方々が協議に応ずる見込みに乏しい現状では、法務省としては、裁判上の協議が行われるようにすることは極めて見通しは難しいと申し上げざるを得ない現状でございます。

○仁比聡平君 私は、それぞれの立場が深刻に対立しているからこそ、協議が開始されるためには、その協議のテーマがどのように設定をされるかということが極めて大事だと思います。もとより国が国営事業として進めた事業であり、開門は、国が上告を断念したことによって確定した義務なんですね。解決の最大の責任があるのは国であるにもかかわらず、私は、これまで解決に向けた、あるいは協議を行える環境を整える上での国のイニシアチブが示されているとは思えないんです。

 確定判決の権利者である有明漁民の開門しないという選択肢はあり得ないという意思は踏まえつつ、干拓営農者の営農に関する要求、住民も含めた洪水や湛水被害解決の要求をテーブルの上にのせて、どうすればそれらの要求が解決できるのか、出される要求に国はどう応えるのかといった協議のテーマを私は国が責任を持って示すことが必要だと思います。

 そうしたテーマが国から責任を持って示されるように、法務大臣としても努力をされるべきではありませんか。

○国務大臣(谷垣禎一君) この開門をめぐる紛争を解決するためには、まさに委員のおっしゃったように、対立している関係者の錯綜した利害を踏まえた上で協議により解決していくということでなければなりませんが、先ほど申し上げたように、現状では、開門に反対する方々が開門を前提とした裁判上の協議に応ずる見込みは極めて乏しいと言わざるを得ない、非常に困難な状況にあると思います。

 しかしながら、法務省としては、引き続き、農水省を始めとする関係省庁とよく協議しながら、解決に向けて努力をしなければいけないと思っております。

○仁比聡平君 私は、そうしたテーマとしてふさわしいのではないかと思っておりますのは、調整池に頼らない利水と防災はどうすれば実現できるかという議論なのではないかと思うんです。早急にそうした協議が開始され、当事者が要求を出し合って、国が責任を持って漁業と営農、防災が共存する地域全体の再生の道を示すなら問題解決の道は開けていくと、そう考えます。

 代替水源の問題について少し伺いたいと思うんですが、干拓営農を考えたときに、安定した、そして将来にわたって安心できる農業用水の確保というのは、これは要の問題だと思います。

 お手元にこの地域の図面を国土交通省の資料からお配りしましたけれども、中央干拓地という新しく造られた干拓地の南側に、旧干拓地というふうに呼ばれている旧森山町の共栄干拓地や、愛野、吾妻の干拓地があります。これも国営事業として干拓をされたわけですね。

 ここで伺いますと、昭和三十年代に入植をされた当時、農業用水は、小ケ倉ため池という図面の左下の方にダムがありますが、このため池や、あるいは地図の中に幾つか小さなため池があると思いますが、そうした名前も挙がっていたようですけれども、そうしたところから旧干拓地に導水するという話だったと。だが、入植をした後に、水利権の調整が調わずに、結果、入植者は水の確保のためにとてつもない苦労を強いられてきているわけですね。干拓地の売主であるはずの国は水源確保の責任を果たさずに、ですから、干ばつのときなどは入植者は水をもらうために水利権者に土下座までしたと伺いました。結局、その後、この干拓地の中の地下水をくみ上げてかんがいをするようになったわけですけれども、そのために地盤沈下がどんどん進行して、元々建っている建物の基礎部分まで地盤が沈んでしまっているという地点に私も案内もよくされます。

 にもかかわらず、農水省がアセスの結論だというふうに言って地下水案を押し付ける、代替水源としてということになれば、これは猛反発されるのは当然ではありませんか。昨年来、海水を淡水化するという事業を示しておられるわけですけれども、私は、こういう海の水を淡水化して農業用水に使おうというようなやり方を提案されても、不安定ではないのかとか、将来にわたってコストの負担は一体どうなるのかとか心配の声が上がるのはよく分かるんです。

 それで、林農水大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、元々この諫早湾には本明川という一級河川が流れ込んでいます。皆さんのお手元の資料で、中央干拓地、中央揚水機場というふうに印をしてある元々の川の形の河口の部分ですね。ここから今この中央干拓地の農業用水というのはくみ上げられているわけです。

 この辺りに、つまり、本明川の河口域にいわゆる洗い堰を設けて、開門すれば潮の満ち引きが入りますけれども、それでも潮が上がらないように防いで、その上で川の水を取水して、中央干拓地は今の水路で回していく。そして、その中央干拓地の西側になる小野という地区には、既にこれまでの事業によってかんがいや排水のパイプラインがきちんと整備をされているわけですね。

 この本明川の河口部分から取水した水を小野地区に、地下、既に埋設されているそうしたかんがいの水路に流すようにして、今はその更に南側のところに仁反田川というのがありますが、ここまででそのかんがいの水路というのは切られ、切られるというか止まっているわけですけれども、ここは川を越えて、例えば導水のパイプラインを敷くなどして、旧森山町や愛野、吾妻の方にもこれ水を回していくと、引いていくというふうにはできないんでしょうか。

 もちろん、洗い堰の高さがどれぐらい必要かとか、この下流には、河口域ですからもう下流には既得の水利権者はいないわけですけれども、それでも、取水の必要量がどれぐらいなのかとか、季節ごとにどう違うのかとか、水の多い時期には不足する時期のためにため池にためるようにしてはどうかとか、パイプラインの高低差の関係でポンプで圧を掛ける必要はないかとか、そうした調査あるいは設計というのは当然必要だし、もちろん、関係者の皆さんの、長崎県やあるいは土地改良区の皆さんの同意がもちろん必要なんですよ。

 ですから、これは、申し上げているのは私の全くの私案なんですけど、ですが、川から取水して、安定した、将来も安心できる、そういう水を旧干拓地にも回していくという、そういう案は、林大臣、あり得ないんでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この福岡高裁が確定しまして、判決が、五年間の開門義務ということになりました。環境アセスメントの手続を経て、開門した場合の防災上、農業上、漁業上の影響に対して必要な対策工事を長崎県の地元関係者に提案してきたところでございますが、具体的には、今委員がおっしゃったような、この本明川、これに河口堰を設けて取水するということについては、代替水源、水を代わりにどうするかということの検討を行う初期の段階で一つの方法として検討を行った経緯がございます。

 この検討過程において、五年間の開門を行うためには、本明川への治水への影響、それから、上流域への塩水遡上、要するに塩水が上っていってしまうと、こういうことの防止の観点から強固な構造の河口堰というものが必要になるために、調査、設計、それから工事の実施に大変長い期間を要するということ等が想定されましたので、結局、代替水源案としての比較検討案には採用がされなかったということでございます。

 それ以外にも、近傍の中小河川とか下水処理水、地下水、海水淡水化というものの課題や適用可能性を検討しまして、特に地下水につきましては、今委員がおっしゃったように、地盤沈下等を危惧する地元自治体等の反対がございまして、最終的に海水淡水化ということになったところでございます。

○仁比聡平君 アセスの初期には一応検討したということですから、つまり、あり得るということなんだと思うんですよ。ですが、残念なことに、裁判上も、それから裁判外の協議でも、その是非についてといいますか、それの基礎資料なども開示された協議や議論というのは行われてきていないんですね。農水省が、いや、これは駄目だというふうに初期の段階で案として省いてしまった。その後は一切関係者のところでの議論というのは行われていないし、情報も開示されていないというのが経過だと思います。

 私は、諫早湾干拓事業を国が進めてきて、けれども、裁判の中で開けるという、そういう義務を負うことになったと。となれば、代替水源の確保はどうしたって必要なわけで、この問題の解決と併せて、旧干拓地でいいますと、入植以来半世紀にわたる水問題を根本的に解決をできるなら、私は本当に幸いなことだと思うんですよ。

 実際には、入植をされた後、離農せざるを得なくなった方々もいらっしゃいますし、中央干拓地でも、決して入植をした当時に想定をされていたような順調な経営にはいっていなくてリース料を滞納せざるを得ないと、そうした営農者の皆さんもいらっしゃる。調整池で見ますと、水質の汚濁化は閉め切り後、一向に改善されなくて、国の基準も満たさないですよね。新干拓地でも、かんがい用水を井戸を掘って地下水に求めるという農家も出てきているわけです。加えて、毎年一面に発生していくアオコ、これはミクロシスチンという毒性を持ったものではないのかという、そうした心配も広がっていると。

 こうした様々な懸念や不安が閉め切られた調整池の中にある中で、本当に安心できる、安定した利水を確保できるという道があるなら、これによって代替水源を確保して地域の農業を真剣に良くしていく、本当に良くしていくという基盤をこの際つくるべきなんじゃないのか、そうした観点で現場の営農者の皆さんや地元の自治体の皆さんに本当に真剣に知恵を借りるべきなんじゃないのか、伺うべきなんじゃないのか。

 そういう意味で、アセスの結論を押し付けようとするのではなくて、調整池に頼らない利水と防災はどうすれば実現できるか、その地元関係者の要求を私は、大臣、まず虚心坦懐に聞くべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、この福岡高裁の確定判決が出た後、検討をしてきた今お話のあったものについても、初期の段階で一つの方法として検討を行ったということがございます。で、いろんな経緯があって、最終的には地元の方の反対に遭った地下水案等々も落ちていってこの海水淡水化になったということで、防災上の対策等も併せてやってきたところでございます。

 今後も、地元関係者の御理解と協力がいただけるように、地元関係者の御意見、御提案を反映して対策を充実強化していきたいという考えも常に申し上げておるところでございます。

 現在は、先ほど法務大臣からも少しお触れになっていただきましたけれども、長崎県の方の地元の関係者の強い反発でなかなかこういう話合いというものが難しい状況でございまして、そのまま現在に至っているということでございます。

○仁比聡平君 私、開門を求める側の立場で農水省の現場の皆さんと協議に参加をすることがありますけれども、その際も農水省の中での結論を一方的に繰り返すばかりで、原告あるいは権利者の真剣な提案や声を聞く耳は実際にはお持ちになっていないということを痛感してきました。これは、半世紀も苦しみ続けてきたそうした旧干拓地の営農者の方々や、あるいはこの事業に様々な利害関係も持ってこられたそうした自治体の皆さんに、結論ありきといいますか、とりわけこの代替水源やあるいは防災というような問題で、こう決めたんだからそれをのめというようなことでは、幾ら頭を下げたって話合いに応じてもらえるはずがないと思うんですよ。

 例えば湛水被害の問題でも、私、かねて、湛水被害を防ぐためには樋門をきちんと整備して排水機場をちゃんと整備するということが必要だと。何しろ海面より低い低平地なんですから、干拓地は。だから、水が入ったときには、これ強制排水しないことには、それは問題は解決しないんですよね。だけれども、例えばこの旧森山町においては、もうずっと前から、この一番出口のところにある釜ノ鼻というところでぼろぼろの排水機や樋門というのが改修されずにきた。私も国会で取り上げさせていただいて、最近、これ改修が実現をしましたけれども、こうした言わば干拓地において当たり前の対策を国がちゃんと責任を持ってやると、元々それが必要なんですけど、このように国の開門義務が消滅することはないという、そういう状況になっている下で、本当に真剣に国がその責任を果たすということが、林大臣、必要なんじゃないですか。

○国務大臣(林芳正君) 我々、まさにそういう開門義務と、それからもう一つの方の開門してはならないという義務、両方を負っているということでございますから、今委員がおっしゃったように、いろんなお話合いをするということは大変大事なことだろうと、こういうふうに思っておりますが、長崎側の皆様の御理解というものがやっぱり得られると、双方が納得できるということをやっぱり検討していくと、このことがありませんとなかなか先に進めないところがございまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたように、いろんな御意見、御提案を反映していこうというところはあるわけでございますけれども、結果としてそれが解決策になり得るという意味では、双方の皆様の御理解を得る努力というのが欠かせないと、こういうふうに思っております。

○仁比聡平君 双方の理解をしっかり整えていくためには、要求がきちんと届く、聞いてもらえる、聞かれる状況にあるということがまず大前提であって、それが全て一〇〇%かなうかどうかはいろんな議論があるでしょうけれども、その調整池によらない利水とそして防災という課題をどう進めるのか、まず関係者の要求を虚心坦懐に聞いていただきたいと思います。

 そこで、国土交通省にお尋ねしますが、今私が申し上げているような河口部分に洗い堰を造るということは、河川管理上許されないということではありませんね。

○政府参考人(森北佳昭君) お答え申し上げます。

 利水、治水上の観点から、河口付近に堰を設けているというのは実際上ございます。そういうことで、委員御指摘のように、許されないことではないというふうに考えておりますが、ここの本明川につきましては、平成二十二年、福岡高裁の確定判決以降、農水省から委員御指摘のような協議の求めは私どもございません。

○仁比聡平君 ですから、農水省が案を作りながら、河川管理者の国土交通省ともちゃんと協議するということが僕は求められていると思うんですね。

 もう一点、国土交通省、この小ケ倉川と半造川、これは国管理ですが、の合流点、あるいは埋津橋という橋があるんですが、そこの辺りで洪水被害が度々起こってきました。国直轄の部分そして県管理の部分も併せて河川整備を急いで進めていくことが住民から切望されていますし、私もそう思うんですが、今後の見通しを端的に御紹介ください。

○政府参考人(森北佳昭君) 委員御指摘のとおり、本明川の支川、半造川、小ケ倉川におきましては、これまで浸水被害、発生をいたしております。

 現在、半造川の国が管理する区間におきましては、河川の拡幅とそれに伴います島原鉄道の鉄道橋の架け替え等を実施しているところでございますし、県が管理します小ケ倉川につきましては、河川改修のための用地調査等を実施しているというふうに長崎県から聞いております。

 いずれにいたしましても、今後とも、長崎県、地元諫早市と調整を図りつつ、計画的に河川整備を進めてまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 そこで、国土交通大臣にお尋ねする一問だけのためにおいでいただいて恐縮なんですけれど、洪水被害の防止のためには、今一つのエリアについてのお話聞きましたけれども、築堤だとか河道をしっかり確保するだとか、そうした河川整備を急ぐ必要があると、これが王道だと思います。

 加えて、諫早湾干拓事業をめぐる開門と代替水源の確保が重要な政治課題となる中で、既に、かつては国土交通省、本明川だけを川として管理をしておられたわけですが、この閉め切られた調整池も含めて河川指定がなされ、南側の部分は農水省が所管をしておると伺ってはいますけれども、やはりこの河川の管理という立場で問題解決の道筋をどう付けていくのか、あるいはどう知恵を貸していただくのかということが大切だと思うんですよ。

 仕組み上、農水省からの協議がないと国土交通省として何か物を言うということにはなっていないのだろうとは思うんですけれども、そうした協議があった場合には本当に力を尽くしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(太田昭宏君) 一級河川の防災とか地域の防災等々については、これは取り組むことが我々としては任務だというふうに思っておりますが、今お話のこれまでありました諫早湾干拓事業をめぐる代替水源の確保として、海水淡水化施設以外の具体的方策については、平成二十二年の福岡高裁での開門義務履行の確定判決以降、これまで農林水産省より協議を受けてはおらない、先ほど申し上げたとおりでございます。

 国土交通省としましては、一級河川本明川を管理する立場といたしまして、農林水産省から協議の求めがあれば適切に対応してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 どうぞよろしくお願いいたします。

 財務大臣、よろしいでしょうか。確定した開門義務の履行のために行われる対策工事の財源の在り方についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、これ今受け入れられていないんですが、農水省から示されている対策工事というのは、これは地元負担は発生しないという仕組みになっています。これは国が確定判決によって行う工事なんですから、そうした国に言わば責任のある工事を、そうでない場合には例えば受益者負担と、土地改良事業として受益者負担というような形が一般にはあるとしても、だけれども、この確定判決の履行として国が行う場合にはそういうふうにするのは筋が通らないということだと私は思うんですけれども。

 そうした考え方、つまり地元負担はゼロと、開門の対策工事に関しては、こうした考え方というのは、今後関係者との協議の中で今農水省が提案している手法とは変わったとしても、基本的な考え方は変わらないと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(麻生太郎君) 開門に必要ないわゆる対策工事、また、それに関連しますいわゆる施設の管理などにつきまして、これは農林水産省からも答弁がありましたように、地元農家の負担は求めないということを聞いておりますので、二十六年度の関連予算もその前提で計上されているものと考えております。

○仁比聡平君 その御答弁は私が申し上げた趣旨ではないかというふうに今日のところは受け止めておきたいと思います。

 そこで、官房長官、今日の議論を聞いていただいて、国の開門義務というのは、これは内閣の意思によって確定したものなんですね。しかしながら、訴訟を含めて問題が複雑化して重大な社会的、政治的問題となっているということはもう明らかだと思います。その解決のために、内閣として、国として、責任を持った方向性をより明確に示していくべきではないかと思うんですが、官房長官やあるいは総理のイニシアチブを私は是非求めたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 今回のこの干拓事業、排水門をめぐっては、国は、開門義務と開門禁止義務のこの相反する二つの義務を負っておりまして、いずれか一方の立場に立つことはできない状況になっております。

 政府としては、関係訴訟において国として主張を申し述べる等、適切に対応するとともに、問題の解決に向けて、関係者に対して粘り強く話合いを呼びかけ、接点を探る努力を続けてまいりたいというふうに思っています。

○仁比聡平君 これまでこの問題について政府として御答弁があってきたとおりの、従来どおりの御答弁なんですけれど。

 私、今日、関係大臣に様々御提案を申し上げました。今官房長官がお述べになったような問題解決のための話合いということが行われるためには、これまで農水省が主務庁として例えば長崎県側の皆さんに示してきた提案の中身はそのまんまでいいのかと。あるいは、裁判上の対応が、いや、相反する義務がと、なぜならば何法のこれこれによってといって分厚い書面の応酬ばかりがされている、そんなことで解決ができるのかと。だからこそ政治的な問題にもなっているのであって、ここにリーダーシップも発揮してもらいたいというのが私の願いですけれども、御感想はいかがですか。

○国務大臣(菅義偉君) 先ほど来、それぞれ所管の大臣に対して委員から質問がありました。そういう中で、国として全体を取りまとめる立場の私どもの方でも、裁判によって相反する結果が出る中で国として対応していく、それは極めて厳しいということも委員は十分承知の上だろうというふうに思います。

 何回となく私のところで関係省庁から話を聞いておりますけれども、なかなかいい知恵が見出すことができないというのが現状でありますことを是非御理解をいただきたいと思います。

○仁比聡平君 だからこそ、いい知恵をみんなで考えようということです。

 最後になって恐縮ですが、石原環境大臣、近く韓国でCOP12が開かれます。名古屋で開催されたCOP10、生物多様性条約の締約国会議は日本が議長国で、その日本の提案で国連生物多様性の十年という決議も国連で採択をされるということになりました。

 この諫早湾干拓事業は、韓国のセマングム干拓事業とともに東アジアで湿地や干潟の問題では大問題になっていたところで、ここに開門義務と併せて干潟再生あるいは有明海再生、環境再生という方向が出されるなら、私はこの国際的な目標に大きく貢献できると思うんですよ。

 ちょっと時間がなくなって申し訳ないですけれども、御感想をお聞かせください。

○国務大臣(石原伸晃君) 今、仁比委員と政府の大臣が議論をしてきたこの有明海の問題あるいは八代海の問題、そして韓国の順天湾ですか、釜山の西側のところの大変有名な干潟の再生、やはりラムサール条約にも両方とも指定されているような大変、日本だけではなくて世界全体で保全をしていかなければならない、そういうものを再生させるということで、しっかりと国連の場でも、また国際的にも協力をしていかなければならないということを、問題の解決は難しいですが、やっていかなきゃならないということを強く感じたところでございます。

○仁比聡平君 ありがとうございました。