○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 大久保参考人から本当につらい思いが語られました。そのお話の中で、何が起こっているか分からないままの意見陳述、その後になって最後の克明な残酷な非行事実を知ったときの大きな衝撃というお話がありました。

 この点について、これまでもお尋ねがあっていますけれども、私は、これまでの被害者が事件の当事者でありながら証拠扱いされてしまったり、お客さんとされてしまったりということに対して、被害者の尊厳を本当に尊重した扱いがされていくように、先ほど最後にお話がありましたけれども、民事事件における弁護士を始めとした援助だとか、あるいは犯罪被害者の補償制度の充実なども求めてきたわけですけれども。

 そこで、ちょっと岡本参考人に、そうした被害者の皆さんの心情を恐らく調査官としてたくさん受け止めてこられたのだろうと思うんです。今の努力の中で、これからどういう改善が少年司法の目的を維持する範囲の中で行っていけるかというお話も先ほどありましたが、修復的司法という言葉も少し出されました。アメリカの例も踏まえて、被害者が事件が発生してずっと続く苦しみの中で、どのように司法手続は向き合っていけるのか、その中で特に送致をされてから処分が決まるまでの家庭裁判所の機能ということでお考えの点があれば、まずお尋ねしたいと思います。

○参考人(岡本潤子君) 大きな事柄ですので簡単に申しにくいのですけれども、家庭裁判所における審議の期間というのは短い期間だと思います。そのような短い期間の中で、大きな体験をなさっている被害者の方の何か思いが果たされるといいますか、そういうことを迎えるというのは難しいと思っています。

 ただ、そのことには時間が掛かりますけれども、アメリカにおける修復的司法で被害者・加害者メディエーションが成立するというのも大変準備が長く掛かってようやく実現するような事柄ですので、例えば少年が鑑別所にいる間にそのようなことを行うとか、そういうことは全く考えられないことだと思います。

 私どもができることは、少年に対して、やはり今起こっていないから、終わったんじゃないんだと、被害者に対する、向き合っていくこと、謝罪をし続けることというのは長い時間が掛かるんだということを教えていくことというのは一つはあると思います。

 そのような大きな事件でなくてでも、少年には被害というのが分かりにくいという、そういうことがあります。例えば、ひったくりをして被害者が倒れて腕を折ったという、そういう事件があったとします。鑑別所にいる少年に被害者についての想像を聞くと、痛かったと思うし、怖かったと思う、嫌な思いだったと思う、そういうことは言えます。だけれども、それ以上に、自分の行った行為によって被害者の人生にどういう変化があったかということは具体的でないと分からないというところがあります。

 私どもが今行っている被害者配慮制度とは別の被害者調査という、そういう活動がございますけれども、それによって具体的に何の被害を受けたかということを伺うことができます。そのことによって、例えば今の例ですと、例えばその方はギプスを何週間かしていて、その間、例えば二歳のお子さんがいて毎日だっこしてお風呂に入れていたのにそれができなかった、そういうことが具体的に分かったとします。それを少年に伝えることで少年の方が考察が進む、自分の起こした非行について何が悪かったかということをより真剣に向き合えるようになる、そういうことはあると思います。

 そういうことも含めて、私どもが制度の中でできるのは、長く掛かっていく被害者に向き合っていく作業のスタートラインを引いてあげるという、そういうことではないかというふうに思います。

○仁比聡平君 大久保参考人、先ほどの他の議員でのお答えの中で、加害少年が事件と向き合えていない、やったことが認識できていないという、そうした加害少年のことをお話がありましたけれども、そうした加害少年がそうした事件に向き合うために、やったことを認識するために、家庭裁判所や私たちに何か期待をされることというのがありますか。

○参考人(大久保巌君) そこは非常に難しいところなんですけれどもね。というのが、少年がやっぱり現実と向き合うというところなんですけれども、ここは、何というんですかね、私ら刑事裁判の中でも少年、裁判中も笑っていましたから、親もちゃんと更生に向けて動いていないという状態でしたので、とにかくまず親も巻き込んで、やっぱり少年に自覚させる。そこが非常に難しいんですけれども。結局、自分のことと考えていないのか、自分の身になって考えられないのか、とにかくそこを分からせるのはどうやったらいいかと思うんですけれども、やっぱりそういった少年院とか家庭裁判所にそこは頼らざるを得ないと思うんですけれども、そこは被害者からは非常に見えにくいところなんですね、詳細はなかなか教えてくれないですから。

 ただ、現実的に、真摯に現実と受け止めている少年というのはまあまあ余り見たことがないですね。少ないですとしか言いようがないです。私もほかの少年事件の傍聴とかも行きましたけれども、なかなかやっぱり本当に真剣に受け止めている方というのは余りおられないですね。

○仁比聡平君 ありがとうございます。

 そうした下で、少年刑、それから保護処分を通じてどう少年の更生を図るのか、法は健全育成ということを目的の言葉として掲げているわけですけれども。

 そこで、ちょっと川出参考人にお尋ねをしたいんですが、先ほど冒頭のお話の中で、少年刑の考え方、これについて責任に見合った刑であるというお話がありました。この責任に見合った刑というお話というのは、そうなると、不定期刑という日本のこの少年刑の在り方そのものが、そもそもその存在意義をどう考えればいいのかということにもつながるお話かと思うんですけれども、ここは川出参考人、どうお考えでしょう。

○参考人(川出敏裕君) 不定期刑の捉え方ですが、今回の法制審での議論の中で大体共通の理解ができたかなというふうに思っておりますのは、不定期刑の長期の部分、これが責任に対応するということで、その短期の部分というのは、少年が非常に可塑性に富んでいて教育によって改善更生がより多く期待されるということから、その処遇に弾力性を持たせるという点から言わば特別予防のことを考慮して短期を定めるということですので、それは、責任は長期のところで定まるという前提で考えた上で少年については特別な扱いをするという、そういう理解ですので、必ずしも不定期刑の意味がなくなるということではないと思うんですが。

○仁比聡平君 そこで、検察官の関与拡大の問題についてお尋ねしたいと思うんですけれども、岡本参考人、先ほど、検察官関与が果たして事実の精度を上げることになるのかという問題提起をされまして、アメリカの実際の中で検察官の事実というのは真実ではなかったというお話がありました。

 日本の二〇〇〇年改正以降の運用の中で、例えば五年見直しの時点での全司法労働組合の調査と提言の中では、事実認定のためという枠を超えかねない運用も見られた、重大事件であるということによって非行事実に争いがない場合でも関与の申出がなされた例もある、あるいは、事実認定審理の場面に引き続いて要保護性の審理の場面にまで検察官が立ち会い続けた場面もあったなどの指摘もあります。あるいは、社会記録を検察官が閲覧をしたといったようなケースも指摘をされているんですけれども、何かそうした御懸念というようなものを感じているところがあればお話をいただければと思います。

○参考人(岡本潤子君) 具体的に、二〇〇〇年改正以降、このように不具合になったという体験を私自身がしたわけではありません。ですので、今御紹介いただいたそういう事案はあったんだと思いますけれども、具体的に私として、検察官が関与するとこう困るだろう、ああなるだろうという、そういう不安があるわけではないんです。それは、今まで審判廷に入ってこなかったそういう立場の人がたくさん入るようになれば、やはりわきまえをしていただかないといけないという、そういうことは思います。

 それともう一つ、意見の中で言わせていただいたことと重複しますけれども、やはりそういう目の前に見える小さなことの工夫で積み重ねてきたつもりであるのに、振り返ってみると最初の理念から遠く離れてしまったという、そういう実例が他の国にはあるということをわきまえて審理していただきたいというふうには思うんです。

○仁比聡平君 国選付添人の対象事件の拡大について川出参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほど被疑者国選と一致させるという必要が、これが合理的であるというお話がありました。

 この付添人の件について、身柄拘束をされた事件について付すことがやっぱりいろんな面から望ましいという考え方があるかと思うんですけれども、そうしますと、虞犯ですね、鑑別措置率が非常に高い、要保護性が極めて高いということの中で、付添人による様々な調整も意味があることかと、大変大きな意義があるのではないかと思うんですが、この点については、川出参考人、どうお考えでしょうか。

○参考人(川出敏裕君) 御指摘の点、おっしゃるとおりだと思います。

 ですから、虞犯について必要性があるというのはそのとおりだと思います。その上で、ただ今回、それをそこまで範囲を拡大するかどうかという点については、恐らくはといいますか、国費を投入するという観点からより必要性が高いというふうに考えられる死刑又は無期ですか、それと三年以上の懲役、禁錮に当たる罪ということに限定したということでして、ここに限らなきゃ駄目な必然性は全然ないと思うんですね。ですから、今後、恐らくまた更に拡大する余地というのは出てくると思いますし、それはこれからの検討課題として残っているんではないかというふうに思います。

○仁比聡平君 そうした方向が国連子どもの権利委員会からの勧告などにも沿った方向かなと私は思うんですが、最後一言、川出参考人、いかがでしょう。

○委員長(荒木清寛君) じゃ、川出参考人、簡潔にお願いします。

○参考人(川出敏裕君) ですから、方向性としては恐らくそうで、今の時点ではその必要性があるということは認めた上で、今、日弁連がやっている補助付添人ですか、援助付添人ですか、あれで対応されているわけで、それの実績また積み重なっていって、いずれ方向として拡大していくということは、それは十分あり得るというふうに思います。

○仁比聡平君 ありがとうございました。