○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、二〇一二年度決算について質問いたします。

 民主党野田政権による二〇一二年度予算は、その公約に反して、消費税の増税、米軍普天間基地の辺野古への移設、TPP推進などに踏み出し、国民からノーを突き付けられて下野することとなった予算であります。

 ところが、安倍政権は、その民主、自民、公明三党合意による増税と社会保障の改悪を一層推し進め、今、八%増税の四月一日が迫る中、国民の怒りと不安は渦を巻くように広がっています。

 世論調査でも、景気回復を実感していないという方が七七%、家計支出を減らすという方が五五%に上っています。つくられた円安と株高で一部の輸出大企業や大株主は大もうけしても、庶民や中小企業には生活物価や原材料の高騰だけ。賃金は減り続け、年金引下げや介護、医療の負担が、今でも苦しい生活に襲いかかっているのです。

 ある商店街の代表は、財布のひもが締まるのは避けられそうにない、みんな戦々恐々としていると悲鳴を上げています。総理は、所得が上がらない下で消費税増税が庶民の暮らしを直撃する、その認識がありますか。

 八%になれば、年収二百五十万円から三百万円未満の世帯の負担額は年十六万六千円にもなります。中小企業は、お客に転嫁できず、赤字でも身銭を切って払わされ、廃業や倒産に追い詰められます。もうかっている大企業には復興特別法人税を廃止しながら、暮らしと経済を破壊する消費税増税などもってのほかであり、増税などやめるべきであります。総理の答弁を求めます。

 消費税は福祉を良くするためだと言いながら、総理は、今でも暮らせない年金を更に減らし、高い介護や後期高齢者の保険料を天引きしておきながら、高齢者の病院窓口負担を二割に引き上げ、要介護度が要支援とされたらホームヘルパーやデイサービスも介護給付から外し、要介護度三以上でなければ特別養護老人ホームにも入れない、そんなお年寄りいじめを進めるというのですか。

 この十年以上、勤労者の賃金は下がり続け、今や年収が二百万円に届かない人々が千九十万人にも達しています。その最大の要因は非正規雇用の拡大です。非正規の平均賃金は正社員の三分の一にしかなりません。その非正規労働者が増え続け、今や千九百六十五万人、全雇用者の三七・四%と過去最高に上っているのです。にもかかわらず、総理、なぜ逆に非正規雇用を拡大する労働者派遣法の大改悪を推し進めようとするのですか。

 派遣は、一時的、臨時的業務に限る、常用代替は許さないとされ、派遣期間は業務ごとに最大三年と制限され、それを超えるなら派遣先への直接雇用が求められてきました。今度の改悪は、裁判で派遣労働者の権利救済の根拠となってきたその歯止めさえ取り払うものではありませんか。若者たちから、一生派遣、生涯派遣ではないかと怒りの声が上がるのは当然であります。派遣法改悪は撤回し、正社員こそ増やし、中小企業支援とセットで最低賃金を底上げして景気回復を図るべきです。総理の答弁を求めます。

 次に、二〇一二年度予算に真剣に問われた東日本大震災からの復興と原発問題について伺います。

 三・一一から三年がたったのに、二十七万人もの方が避難生活を余儀なくされ、十万人以上がプレハブの仮設住宅での生活を強いられる中、震災関連死は二千九百十六人に及んでいます。一方で、被災地の皆さんの復興への取組も歩み始めています。

 今必要なことは、住まいと生活、なりわいを取り戻すこと、被災地の努力に応えて支援策を被災地にとって使い勝手の良いものにすることではありませんか。総理の基本認識を伺います。

   〔副議長退席、議長着席〕

 福島で、政府は、旧警戒区域の解除を進めるとして、除染を曖昧にしたまま精神的賠償を一年で打ち切ろうとしていますが、断じて許されません。総理、こうした線引きと切捨てをやめ、継続的な健康調査を実施し、全ての被災者が生活となりわいを再建できるまで、国と東京電力が責任を持って賠償し、支援をすることこそ大原則に据えられなければならないのではありませんか。

 一たび過酷事故を起こせば、原発は取り返しの付かない被害を広げる、その深刻な現実を目の当たりにした国民の原発ゼロの声は広がり続けています。総理は、その声に背を向け、あくまで再稼働するというのですか。

 原子力規制委員会は、川内原発を優先的に審査するとしています。九州電力は、全電源喪失という条件の下では炉心損傷を防止するために取れる手段はない、原子炉下部に水をためて、炉心から溶け落ちてきた核燃料が格納容器を破壊しないようにするなどと説明をしていますが、それでは福島第一より大きな水蒸気爆発を引き起こす危険性があると専門家から厳しく指摘されているのです。原子力規制委員長、水蒸気爆発が起こらないという保証がありますか。

 川内原発の三十キロ圏内には二百四十か所もの病院と福祉施設があり、その患者や入所者だけで一万四千人に上ります。圏外への避難計画を策定したのは僅か四施設で、鹿児島県の担当者は、圏外の病院や施設はほぼ満員、会議室など空き部屋を使っても受入先を調整するのは難しいと語っています。総理、これでどうやって住民の命と安全を守るというのですか。再稼働などあり得ないではありませんか。

 次に、国営諫早湾干拓事業について、政府は、確定した開門義務を履行し、有明海漁業の深刻な被害を解決する責任を負っているにもかかわらず、開門もその対策工事もやろうとせず、深刻化する漁業被害を放置し続けています。国が確定判決を守らないという史上初めての事態をもたらし、国が被害を放置し、拡大し続けているその責任を、総理はどう考えているのですか。

 今期の漁業被害は有明海全域に及び、二〇〇〇年大凶作以来と言われます。総理はどう認識しているのですか。漁民からの聞き取りを始め、直ちに現地調査を行うべきではありませんか。

 干拓営農者は、昭和三十年代の入植以来、農業用水確保などで国に裏切られ続けてきました。汚濁化が進む調整池に頼らない農業と防災、有明海再生、共存の道を国が責任を持って示すなら、問題解決の道は開けるのです。総理の答弁を求めます。

 今、力ずくで辺野古移設を強行しようとする安倍政権に、沖縄県民の民意が突き付けられています。総理、戦後六十八年にわたって米軍基地に苦しめられてきた沖縄に新たな基地を押し付けるなどもってのほかではありませんか。あなたがすべきは、一月の名護市長選挙で稲嶺進市長勝利に示された、海にも陸にも新しい基地は造らせないという民意を受け止めることではありませんか。

 にもかかわらず、昨日、政府は、ジュゴンがすむ辺野古の美しい海にボーリング調査を行う入札公告を強行し、更に怒りに包まれています。民意を無視したこのようなやり方が民主主義の国で許されるはずがありません。総理、入札公告を撤回し、埋立て強行の一切をやめるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。

 総理、あなた自身の歴史認識や秘密保護法の強行、集団的自衛権の行使容認と憲法九条の解釈を一内閣の閣議決定で変えようなど、戦争をする国への暴走の一歩一歩が、国民の不安と怒りに包まれ、政権基盤を掘り崩していることを知るべきであります。

 日本共産党は、国民の皆さんと広く共同を広げ、暴走ストップ、政治の根本的転換に全力を挙げる決意を表明して、質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 仁比聡平議員にお答えをいたします。

 消費税増税についてお尋ねがありました。

 三本の矢の効果もあって、景気回復の裾野は着実に広がっており、今後、景気回復の実感を全国津々浦々にお届けしていくため、経済の好循環を実現していかなければなりません。

 今年の春闘の回答状況を見ると、給料アップ、賃上げの風が吹き始めたと感じています。今後も、経済の好循環実現に向けて、中小企業・小規模事業者で働く方々を含め、賃金上昇の動きが広がっていくことを強く期待しています。

 一方で、今般の消費税率の引上げは、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡すとともに、国の信認を維持していくためのものであり、増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てられます。こうした趣旨について国民の皆様に丁寧に説明してまいります。

 また、消費税率の引上げに当たっては、これに伴う影響を緩和し、その後の経済の成長力を底上げするため、経済政策パッケージを着実に実行してまいります。所得の低い方には影響を緩和するための簡素な給付措置など、直接的な家計支援策を講じるとともに、政府一丸となって万全の転嫁対策を講じてまいります。

 なお、消費税率の一〇%の引上げについては、税制抜本改革法にのっとって、経済状況等を総合的に勘案しながら本年中に適切に判断してまいります。

 社会保障制度改革についてお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化の下、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくためには、消費税の引上げにより安定財源を確保しつつ、受益と負担の均衡が取れた制度へと不断の改革を進めていく必要があります。

 年金額の見直しは、本来の給付水準に比べて高くなっていた特例水準について、段階的にその解消を図るもので、将来の年金額を確保するためには必要な改革です。

 七十歳から七十四歳の方々の医療保険の窓口負担の見直しは、新たに七十歳になる方々から二割負担とするものであり、現在一割負担の七十歳から七十四歳までの方々について二割負担とするものではありません。また、新たに七十歳になる方々については、それまでの三割負担から二割負担になるので、負担増とはなりません。

 介護保険制度の見直しは、住み慣れた地域での暮らしを継続できる体制の整備や、所得の低い方々の保険料の軽減などの制度の充実と重点化を同時に行うものです。要支援者への給付や特別養護老人ホームへの入所を含め、必要な人には適切な給付やサービスが提供される制度としてまいります。

 以上のことから、お年寄りいじめとの指摘は全く当たらないと考えます。

 労働者派遣制度の見直し、非正規雇用労働者の現状についてお尋ねがありました。

 労働者派遣法の改正案は、労働者派遣事業を全て許可制とし、事業の質の向上を図るとともに、派遣労働者のキャリアアップの支援や雇用の安定を図り、派遣期間の設定を労使双方にとって分かりやすい制度とする観点から行うものであります。正社員を希望する派遣労働者の方々には、このキャリアアップの支援や正社員化を推進するための措置を通じてしっかりと道が開かれるようにしてまいります。

 また、今回の改正案による派遣期間制限の見直しに伴い、派遣期間の上限等に違反して派遣労働者を受け入れた派遣先に課せられることとなる労働契約の申込義務は、労働契約の申込みを行ったとみなされる仕組みに改められるため、派遣労働者の保護は強化されると考えています。さらに、非正規雇用労働者については、賃金が低い、能力開発の機会が乏しい、セーフティーネットが不十分といった課題があることを踏まえ、キャリアアップ助成金の拡充などにより、雇用の安定や処遇の改善を進めてまいります。

 労働者派遣制度の見直し、最低賃金の引上げについてのお尋ねがありました。

 労働者派遣法の改正案は、ただいま申し上げたように、派遣労働者のキャリアアップ支援や雇用の安定を図るなどの観点から必要なものと考えています。もちろん、最低賃金の引上げに取り組むほか、企業収益を賃金上昇の実現につなげていくことも大変重要と考えています。

 最低賃金については、平成二十五年度において全国平均で対前年度十五円の引上げが行われたところでありますが、中小企業等の支援も工夫しつつ、労使と丁寧に調整するなど、引き続き引上げに向けて努力してまいります。

 東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。

 被災地における住まいや生活、なりわいの再建に向けて、政府としては、被災者生活再建支援金による支援や、中小企業等グループ補助金等による事業者の設備等の復旧を支援してまいりました。また、復興大臣の下にタスクフォースを設置し、住宅再建や商店街等の再生に向けた加速化措置を打ち出してまいりました。さらに、復興事業については、現場の実情に柔軟に対応できるように、復興交付金を創設し、その運用の改善を図ってまいりました。

 今後とも、現場の声にきめ細やかに対応し、被災地の復興に全力を尽くしてまいります。

 福島の被災者への支援についてお尋ねがありました。

 福島の再生については、政府として、昨年末に、早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支えるという方針を打ち出したところです。この方針を踏まえて、線量水準に応じた防護措置を具体化、強化し、帰還に伴う放射線による健康影響への不安に応えていくとともに、引き続き必要な県民健康管理調査を継続していきます。

 同時に、帰還する住民の方々の生活を支え、働く場を確保することを目指し、賠償や福島再生加速化交付金等の支援策も拡充していきます。あわせて、帰還困難区域を始めとした地域については、新しい生活を始めるために必要な追加賠償を行うとともに、復興拠点を整備していきます。

 こうした取組により、原発事故の避難者への支援を充実してまいります。

 原発の再稼働についてお尋ねがありました。

 エネルギー政策については、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何より重要です。

 原発については、福島の事故の教訓を踏まえ、安全を確保することが大前提です。その前提の下、独立した原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの規制基準に基づいて徹底的な審査を行い、これに適合すると認められない限り再稼働はありません。

 その上で、徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針であります。しかしながら、電力供給における海外からの化石燃料への依存度が第一次石油ショック当時よりも高くなっているという現実を考えると、そう簡単に原発はもうやめたというわけにはいきません。

 川内原発の再稼働についてお尋ねがありました。

 再稼働に当たっては地元の理解を得ることが重要であり、地域の防災・避難計画は、地域の状況に精通した自治体が策定するものであり、住民の安全、安心を高めるためにも継続的に改善、充実を図っていくべきものであります。できないという後ろ向きの発想ではなく、どうすれば地元の理解を得られる、より良いものにできるかが重要であります。

 国としても、これを全面的に支援しているところであり、その進捗状況などについて原子力防災会議において確認する方針です。また、万が一の事故の場合には、自衛隊の車両、船舶の活用を始め、住民の避難への対応に総力を挙げて取り組んでまいります。

 入院患者やお年寄りなど要援護者の方々の避難については、無理な避難をせず屋内退避できるよう、病院や福祉施設の建物に換気用エアフィルターなどを設置する放射線防護対策を財政支援しているほか、原発事故時に避難先や輸送手段などを確保できるよう、県、市町村、病院、福祉施設の関係者が、県外も含めて避難先や輸送手段を国の協力も受けつつ調整できるネットワーク組織を設置すべく支援しているところです。政府を挙げて自治体を力強く支え、地域の防災・避難計画の充実に向けてしっかりと取り組んでいます。

 国営諫早干拓事業と有明海の漁業被害についてお尋ねがありました。

 諫早干拓事業をめぐっては、国は、開門義務と開門禁止義務の事実上相反する二つの義務を負っており、いずれか一方の立場に立つことはできない状況にあります。この問題の解決に向けては関係者による話合いが重要と考えており、政府としては、関係者に対して粘り強く話合いを呼びかけ、接点を探る努力を続けてまいります。

 また、今期の有明海においては赤潮によるノリの被害が発生していると承知しており、政府としても関係各県と協力して情報収集に努めてまいります。

 名護市長選挙の結果の受け止めと普天間飛行場の移設に向けた取組についてお尋ねがありました。

 住宅や学校に囲まれ、住宅地の真ん中にある普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならない、これは安倍内閣の基本的な考え方であり、政府と地元の皆様の共通の認識であると思います。

 選挙の結果については真摯に受け止めたいと思いますが、地方自治体の首長選挙であり、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。

 政府としては、普天間飛行場の移設について引き続き丁寧に説明し、その危険性を除去し、基地負担を軽減するための取組について地元の皆様の御理解を求めながら、できることは全て行うとの姿勢で返還に向けて全力で取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、原子力規制委員会委員長から答弁させます。(拍手)

   〔政府特別補佐人田中俊一君登壇、拍手〕

○政府特別補佐人(田中俊一君) 原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査についてお尋ねがありました。

 新規制基準は、東京電力福島第一原発事故の教訓と国際的な最新の技術的知見を踏まえて策定したものであります。

 原子力規制委員会においては、現在、御指摘のありました水蒸気爆発の観点も含め、新規制基準への適合性審査を進めているところです。

 引き続き、科学的、技術的な観点から厳格に審査を行ってまいりたいと思います。(拍手)