○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今回の両法の改正は長い間の関係者の皆さんの要望が実ったものでありまして、関係の皆さんに心から敬意をまず申し上げたいと思います。
 まず大臣にお尋ねをしたいと思うんですけれども、今日も様々出ておりますけれども、司法書士さんは登記や相続の専門家と。ですが、それにとどまらず、広くホームローヤーとして大変重要な役割を果たしておられると思います。そのことが、簡裁代理権だったり、あるいは成年後見人就任の最も大きな担い手という形で表れているのだと思うんですね。特に司法過疎と言われるような地域で、もう町の唯一の法律家というような方々に私も随分出会ってまいりました。
 また、土地家屋調査士さんたちのお仕事が、例えば字図が混乱していて、実際の土地の境界だったり地籍だったりというのを、これもうよく分からないと紛争になる、そうしたときの判定というのには決定的な役割を果たしておられることを始めとして、そうしたそれぞれの専門職あるいは専門職能の社会的役割の重要性について、大臣はどんな御認識でしょうか。
○国務大臣(山下貴司君) まず、司法書士の先生方につきましては、司法書士法の定めるところにより、その業務とする各種の法律事務の専門家として、不動産取引の場面のみならず民事紛争の場面など、国民生活の様々な場面において、国民に身近な法律家として、国民の権利を実現し、これを擁護する役割を果たしておられるものと承知しております。
 また、土地家屋調査士の先生方は、不動産の表示に関する登記の専門家であって、また土地の筆界に関する専門家として、不動産取引の場面のほか、法務局における筆界特定の手続の円滑な運用や登記所備付け地図の整備にも尽力し、我が国における不動産に関する権利の明確化に寄与してもらえるものと承知しております。
 そうした認識から、今回の改正案、出させていただいたものでございます。
○仁比聡平君 今日、特に司法書士の皆さんの基本的人権を擁護する様々な多様な活動についてちょっと御紹介をして、大臣の認識をお尋ねしたいと思うんですが。
 お配りをした資料のまず一つ目は、全国青年司法書士協議会の皆さんに作っていただいた資料なんですけれども、御覧のとおり、二〇〇五年度より、生活保護一一〇番、これ年一回開催して、憲法二十五条に則した生活保護実現のために様々な努力が続けられています。
 また、全国一斉養育費相談会、これ日本司法書士会連合会とともに行っていらっしゃるわけですけれども、ちょっとめくっていただきますと、その報告書を二つ目の資料としてお配りしております。
 昨年九月の実績でいいますと、相談件数百四十二件で、養育費について悩みを抱えている当事者の状況や、貧困に苦しんでいる家庭、お子さんの切実な状況が浮き彫りとなりましたということで、その代表的な相談事例が続けてありますけれども、元夫のクレジットカードで子供に掛かる費用と学資保険などを毎月払うということになっているけれども、だけども元夫の収入状況が悪化したと、送金に変えてもらいたいけれども、これ協議が調わないとか、離婚した場合に、破産した場合に養育費が請求できるのか、養育費の相場だとか、不倫を相手がしていたときにその金額はどうなるのかなどに始まって、公正証書にした場合とそうでない場合の効果、あるいは養育費の減額の調停の申立てというのがあったけれどもどう対応したらいいかなどなど、一番最後の十番目の事例でいうと、上の子が今度受験、奨学金制度はあるけれども有利子、返済不要の奨学金があると知人に聞いたけれども、養育費は実際は払ってもらえていないと。そうした養育費をめぐる国民の皆さんの本当に最も身近な相談相手として努力を続けておられるということが浮き彫りになっていると思うんですね。
 全青司の皆さんのその活動でいいますと、さらに、労働トラブルの一一〇番を二〇〇六年から開催しておられて、貧困問題を解決するためには、労働問題を解決しなければ生活の再建はできないと、そのとおりだと思います。
 また、法律教室という事業がありまして、児童養護施設、これ原則十八歳で退所しなければならないということになるわけですが、生きていく力を身に付けてもらうために身近な法律ハンドブックの教材も作って、そうした事業を続けておられる。
 また、外国人学校、例えば朝鮮高級学校のそうした取組や、また入管法の改定で増加が見込まれる外国人労働者が被害に遭ったり貧困に陥ったりすることがないように今後取組を強めていきたい、あるいはLGBTの問題で初の相談会、それから、今日はちょっと具体的にはお伺いする時間がありませんが、破産者マップという、過去に破産手続を受けた方の個人情報がグーグルマップ上に表示されるというサイトが公開をされて、これは大問題になっているわけですけれども、この問題でのホットラインなど、本当に人権擁護という観点で実に多様な活動を司法書士の皆さんが取り組まれていると思うんですね。
 大臣、どんな御感想でしょうか。
○国務大臣(山下貴司君) もう本当に日頃から、先ほど仁比議員がおっしゃったこの全国青年司法書士協議会における人権擁護活動として、全国一斉生活保護一一〇番、あるいは全国一斉養育費相談会、全国一斉労働トラブル一一〇番、法律教室事業、あるいはその他の人権擁護活動、これはもう本当に関係者の皆様に対して深い敬意と謝意を表する次第でございますし、また、日本司法書士会連合会においても、もちろん市民の権利擁護推進室を設置して、経済的困窮者や高齢者の権利擁護などに関する様々な事業を行っておられるということでございます。
 こうした様々な人権擁護活動を行っているその背景には、司法書士の皆様が国民にとって身近な法律家であり、そうした方々がその専門性を生かしておられるということで、そうした人権擁護活動の一翼を担っていただくこと、これは非常に重要なことであると考えております。
○仁比聡平君 大臣のしっかりした御答弁いただいて、本当にありがとうございます。
 そうしたことを踏まえて今回の改正案があるのだと思うんですけれども、司法書士法の第一条、この司法書士の使命を明確にして使命規定を置くということはやっぱり極めて重要だなということを改めて思うんですね。ここに言う権利を擁護し、つまり、司法書士は「権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」という部分については、これ憲法上保障される人権擁護の担い手であるということを明確にしようとするものであると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) 改正法案の第一条は司法書士の使命を規律するものでありますが、主語が司法書士を主体としたということでございます。そして、国民の権利を擁護することをその使命として明確にしたものでございます。そして、司法書士が国民に身近な法律家として幅広く国民の権利を擁護することが期待されていることに照らせば、ここで言う権利の内容として当然憲法上の基本的人権も含まれると考えております。
○仁比聡平君 今の御答弁はとても大切なことだと思うんです。司法書士制度の目的として権利保護というのがこれまで掲げられてきたわけですけれども、今回の改正によって、一人一人の司法書士の方々がお一人お一人依頼者や相談者の権利を実現する、憲法上の人権を保障する、その主体として専門職としてのプライドを持って活動をするものなのだと、その主体性を明確にしたというものだと思うんですが、そういう理解でいいですか。
○国務大臣(山下貴司君) もうまさにおっしゃるとおり、この法律の定めるところにより、主体性を持って「国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」ということで、その活動について期待しているところでございます。
○仁比聡平君 今も期待しているという御発言があったわけですけれども、ちょっと念のための確認ですが、この法文は国民の権利というふうになっておりまして、これが様々な外国籍の方々の権利を擁護するというその司法書士の使命を排除するものではこれは全くないだろうと、当然のことですが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) これも、委員の御資料にもあります全国青年司法書士協議会における人権擁護活動として、例えば外国人学校法律教室であるとか外国人のための法律ハンドブックという外国人への支援、これは大変評価しているところでございまして、この国民という言葉によって外国人の権利の擁護を除く趣旨のものでは全くないということでございます。
○仁比聡平君 当然のことですよね。
 それで、今日もちょっと議論がありました懲戒に関してお尋ねしておきたいと思いますが、法案の四十七条は、全国的な統一性や、それから成年後見や財産管理の広範な業務ということを鑑みて、懲戒権者を大臣にしているわけですけれども、七十一条の二によって法務局又は地方法務局への委任という規定があります。
 そこで、局長にお尋ねしますが、その懲戒事案が起こったときの事実関係の調査というのは、これは従来、司法書士会に委嘱して行われてきたものと思います。これは、今後も同じように、司法書士会の自律性などに鑑みて同様にすべきだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 改正法案では、御指摘のとおり、この懲戒については法務大臣が行うこととしておりますが、その権限を、法務省令で定めるところにより、法務局又は地方法務局の長に委任することができるものとしております。これは、懲戒事由の存否の判断に係る事実面の調査などについては、対象となる司法書士や土地家屋調査士の活動範囲に近接した各法務局等の長が行うのが合理的であることが少なくないと考えられることから、その権限の一部を委任することを可能にしたものでございます。
 そこで、改正法案の施行後においても、懲戒に係る手続のうち、事実の調査等については法務省令に規定を設けることで全国の法務局、地方法務局の長に委ねることを予定しておりまして、この法務局又は地方法務局の長が行う事実の調査については、引き続き必要に応じて各司法書士会にも委嘱することを想定しております。
○仁比聡平君 法務大臣が全国の一人一人の司法書士に目を光らせるみたいな、そんな話では全然ないわけですから、お一人お一人の司法書士の方々が権利擁護の担い手として活躍をできるようにという運用を心掛けていただきたいと思います。大臣もうなずいていらっしゃいますが。
 最後に、七年の除斥期間が定められていますが、これまで扱った事件の、二十三年もたって懲戒事案になったとか、十年以上前の事案というのは案外たくさんあるというようなことで、不安定な地位に置かれてしまうということがあったわけですが、今後はそういうことはなくなるということですね。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 現行法には、その懲戒処分について除斥期間に関する規定が設けられておりませんので、業務を行ってから相当程度長期間を経過した後に懲戒に関する調査が実施された際、その資料が廃棄されたり、あるいはその記憶がもうなくなっているということで十分な防御をすることができなかった事案があるとの指摘がされておりますし、また、このような事態を避けるために、業務に関する資料等の保存について相当な負担をしなければいけないといったような指摘がされているところでございます。
 こうした指摘を踏まえまして、改正法案については新たに七年の除斥期間を設けることとしておりますので、改正法案の下では、懲戒事由があったときからこの除斥期間を経過したものについては、例えばそういうものが蒸し返されて、調査されて、懲戒処分がされるといったような事態は生じないこととなります。
○仁比聡平君 不当な蒸し返しなどはもう絶対にあり得ないということで、今回の改正法を契機に、ホームローヤーとしての、あるいは人権擁護の担い手としての司法書士の皆さんが一層活躍をしていかれることを、私も大臣とともに期待をいたしまして、質問を終わります。