○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

先ほどの有田議員に続きまして、大分県警別府署による別府地区労働福祉会館の隠し撮り捜査についてお尋ねしたいと思います。

資料をお手元にお配りをしておりますが、一枚目は、この問題についての警察庁の認識と取組について提供を受けたものです。一言で言いまして、これで幕引きを図ろうなどとんでもないと厳しく指摘をしなければなりません。

先ほど有田議員の質問にもありましたけれども、侵入行為は七回なんですね。三枚目の大分合同新聞、八月二十七日付けの記事を御覧いただきますと、別府署の隠しカメラ事件をめぐる主な経過として、先ほど有田議員が確認をされたその七回の侵入行為が簡潔にまとめられております。

ところが、この警察庁のまとめ資料にもあるように、九月の二十一日に警察官四名が略式起訴をされた。九月二十七日付けで罰金、阿南刑事官十万円、以下五万円などの略式命令が下されましたが、この略式命令の中身というのは一体どうなっているかと。

そこで、最高裁刑事局長おいでいただきましたけれども、確定した有罪判決の罪となるべき事実を御紹介ください。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 罪となるべき事実は起訴状記載の公訴事実を引用するとなっておりまして、公訴事実について個人名を仮名とさせていただいた上で読み上げますと、被告人A、同B、同C及び同Dは、共謀の上、正当な理由がないのに、別表記載のとおり、平成二十八年六月十八日午後十一時十四分頃から同月二十一日午後九時四分頃までの間、五回にわたり、別府・杵築・速見・国東地区労働者福祉協議会会長Eが看守する大分県別府市大字別府三千八十八番地の七十二所在の別府地区労働福祉会館敷地内に侵入したものであると記載されております。

そして、別表には、番号一、犯行年月日、平成二十八年六月十八日午後十一時十四分頃、番号二、犯行年月日、平成二十八年六月十九日午後十時四分頃、番号三、犯行年月日、平成二十八年六月十九日午後十時三十二分頃、番号四、犯行年月日、平成二十八年六月二十日午後十時三十八分頃、番号五、犯行年月日、平成二十八年六月二十一日午後九時四分頃と記載されております。

○仁比聡平君 その新聞記事の経過にまとめられている行為というのは、侵入行為としてはそういうことで特定されていると。ところが、その目的は、正当な理由がないのにというふうにくくられているだけなんですね。

警察庁に伺いますけれども、この確定有罪判決を受けている五つの侵入行為の目的はそれぞれ何ですか。簡潔にお答えください。

○政府参考人(高木勇人君) お尋ねの行為は、本年七月施行の参議院議員通常選挙の違反取締りに当たっていた大分県別府警察署において、公示日より前に、公職選挙法で選挙運動が禁止されている特定の人物がこれに反して選挙運動をしていると疑われる複数の情報を入手したことから、この特定の人物の違反行為に関する証拠を採取するため、ビデオカメラを設置して同敷地内の駐車場及び会館への出入口を撮影し、その映像を確認するために立ち入ったものでございます。

○仁比聡平君 私が問うているのは、具体的に一回一回何を目的にして入ったんですかと聞いているんです。

私の方で端的に聞きますが、この起訴された一個目の行為は、二台目のカメラを設置した行為。二個目の行為は、チェーンを乗り越えて二回にわたって侵入した行為。それは、記録媒体や画像の確認のためが目的ですね、二回目、三回目は。そして、その次の行為は、記録媒体を持ち帰った行為、持ち帰るための侵入。そして、最後、記録媒体をカメラに入れるための侵入。そうでしょう。

○政府参考人(高木勇人君) 合計七回の侵入行為について御説明をいたしますと、一回目は、六月十八日、会館の西側のり面から雑草地に入ったものでありますが、このときはビデオカメラを設置をしておらないものでございます。二回目は、同日、再び西側のり面から立ち入って、一台目のビデオカメラを雑草地に設置をしたもの。三回目は、同日、会館駐車場を通って雑草地に至り、二台目のカメラを設置したもの。四回目及び五回目は、六月十九日、会館駐車場を通って雑草地に立ち入ったもの。六回目は六月二十日、七回目は六月二十一日に、それぞれ会館駐車場を通って雑草地に立ち入ったものでございます。

○仁比聡平君 私は、何のために立ち入ったのかを聞いているんです。

記録媒体や画像確認、あるいはその記録媒体の持ち帰り、そして記録媒体をカメラに入れる、つまり、一遍持ち帰っちゃっているわけだからSDカードが入っていない、そこに入れに行かなきゃいけないということで入ったんでしょうということです。

○政府参考人(高木勇人君) ビデオカメラを設置した後の立入りにつきましては、SDカードを交換するため及び設置したビデオカメラの撮影内容を確認するために立ち入ったものでございます。

○仁比聡平君 この一回目の行為、つまり起訴されていない十八日午後七時台の立入りですけれども、これ、設置できなかったというのはなぜですか。

○政府参考人(高木勇人君) 設置場所として適切に設置をすることができなかったというふうに現場の警察官がその当時判断したものと承知をしております。

○仁比聡平君 そう言い訳をしているということでしょう。先ほど有田議員の質問にもあったように、その時間帯にはこの労働福祉会館に人がいたんですよ。だから、こうこうと電気も付いているわけですよ。ここで設置をしてごそごそやっていたら見付かるから、だからこの一回目は設置できなかった。で、十時過ぎにもう一回やり直してカメラを設置したというのが二回目の行為じゃないですか。ところが、これを起訴もしないと。

大臣にちょっとここでお尋ねしておきたいと思うんですけれども、別府の夜というのは本当に静かでございまして、夏に掛かってきているとはいえ、七時台というのももう随分静かなんですよ。まして、夜十時過ぎということになるとひっそりしているという、そういう様子なんですけれども、大臣は、そういう中で警察官が十時過ぎとか十一時過ぎとかこういう時間帯に何で入ったのか、何でこんな時間帯なのか、どう思われますか。

○国務大臣(金田勝年君) 委員の御質問に対しましては、お尋ねは、既に確定しました個別具体的な事件における証拠の内容や裁判所の判断に関わる事柄でございまして、お答えは差し控えたいと思います。

○仁比聡平君 やはり政治家として、本当にそれでいいのかと思われませんか。大臣だって選挙を戦ってこられている。

カメラを設置して、夜陰に乗じてですよね。これは、これまで警察が弁解をしてきたような、公有地と勘違いをしただとかいうお話もありましたけれども、そういうことではなくて、つまり、管理者の承諾を求めようとするどころか、逆に絶対に知られずに人目がなくなるときを狙って隠し撮りカメラを付ける、そのことによって隠し撮り行為を行うという断じて許されない権力犯罪、卑劣な権力犯罪だと私は言うべきだと思うんですね。

これ、法務省刑事局長、何で最初の二回の行為、起訴していないんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の最初の二回の侵入行為につきましては、検察当局において、最終的にその関係各証拠を総合して検討した結果、この犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分であると判断したものと承知しております。

○仁比聡平君 つまり、この一回目、二回目の行為、とりわけ二回目なんて、その後の隠し撮りのカメラを設置しているわけでしょう。その行為が適法だとでも言うのかと。

ここには、侵入は建造物侵入罪に該当する違法行為だが、隠し撮り捜査は不適正というふうに切り分けて、その違法性、違憲性を認めようとしない捜査当局とそして政府の立場が、私、顕著に現れていると思うんですよね。そうした言い訳をずっとしてきましたが、そんなことで幕引きなど絶対に通用しないと。

その下で、昨日、高木審議官が刑訴法百九十七条一項に抵触するということを初めてお認めになりました。これ、法務省刑事局も同じ認識ですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の捜査について、警察当局において、撮影する必要性、相当性が認められない不適正な捜査であって、刑事訴訟法百九十七条に抵触する旨答弁したものと承知しております。

刑事訴訟法百九十七条一項本文は任意捜査の原則を定めたものでありますが、法務当局といたしましても、この本件捜査が任意捜査として許容される範囲を逸脱したものであるという警察当局の考え方について異論はないものでございます。

○仁比聡平君 そのようなことを昨日になってやっとこさ認めるというようなていたらくなわけですよ。

私は、そもそも、こうした重大な権利侵害を伴う捜査手法を任意捜査だと言い、だから警察の判断でやっていいんだと言っている、そうした捜査当局と政府の大前提が間違っていると思います。

こうした重大な権利侵害をもたらす捜査手段というのは、これは強制処分というべきであって、強制処分の法定主義、そして事前に裁判所の令状審査を受けなければならないという令状主義、この憲法に基づく大原則の縛りが掛からないとおかしいわけですよ。しかも、侵害される人権は、プライバシーであり、思想、信条の自由であり、政治活動の自由、あるいは選挙運動の自由であるとともに、憲法二十八条に基づく労働組合の団結権を侵害しているわけですね。

警察庁は、高木審議官、昨日の御答弁の中で、公道上における違法行為を現認するなどの代替手段が考えられるから必要性、相当性はないみたいな御答弁をされましたけれども、今回の件もカメラの設置場所が公道上であればやっていいとおっしゃるんですか。

○政府参考人(高木勇人君) 捜査の目的でその対象者をカメラで撮影することは、最高裁判所の判例においても、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ、相当な方法によって行われる限り捜査活動として適法とされているものと承知をしております。

ビデオカメラでの撮影が捜査活動として適法となるかどうかは、個別具体の事案に基づいて判断すべきものではございますけれども、選挙違反取締りに当たっては、正当な選挙運動や政治活動への配意等の観点から、カメラの運用について特に慎重を期すべきものと認識しているところでございまして、人権侵害や選挙運動等に対する不当干渉との批判を受けることのないよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 いや、つまり、今皆さんお聞きになられたでしょうか。慎重を期すべきだと言うけれども、慎重を期せば、捜査機関の内部の判断だけで、選挙違反事件の取締りだと称して監視カメラを固定し、継続的に不特定多数のそうした人々を録画するということがあるということを今おっしゃっているわけです、この答弁は。

資料の二枚目に、八月二十六日付けの捜査用カメラの適正な使用の徹底についてという通達をお配りしていますけれども、これ、私、使用の徹底についてと読むべきなんではないですかと言いたいですね。

これ、一般的に、重大犯罪などについてこうして使うことがあるんだということを書いたものだと言っているんですけれども、これは、例えば殺人などの重大刑事犯罪に対して使うというだけじゃなくて、もう一回確認しますね、同じように、つまり、重大刑事犯罪と同じように、選挙違反取締りでも、労働組合や政党あるいは皆さん政治家の事務所でも、公道や承諾を得た他人の管理地に固定するのであれば、カメラをもって継続的に不特定多数の出入りを録画、できれば録音もする、その必要性、相当性は警察内部だけで判断するということに、これを読むとなるんでしょうか。事務所への出入りが犯罪だとでも警察庁はおっしゃるんですか。

○政府参考人(高木勇人君) お尋ねの通達は、捜査活動のために用いるビデオカメラの適正使用を徹底するためのものでありまして、捜査一般について当てはまるものでございますが、選挙違反取締りに当たっては、正当な選挙運動や政治活動への自由への配意等の観点から、カメラの運用について特に慎重を期すべきものと認識をしているところでございます。

○仁比聡平君 否定しないでしょう。つまり、慎重にやれば、私が申し上げているような、継続的な不特定多数の監視をやるんだということなんですよ。

そうした捜査が、本当に権利侵害の程度が高くない、捜査上の必要性があるなら比較考量してやっていいというような任意捜査のその範疇で許されるはずがないということがこの発覚した別府署の事件によって明らかになっている、私はそう思います。大体、先ほど判例がというお話ありましたけれども、警察庁の言い分のようなことを正面から認めた判例なんてありませんよ。

別府署は、隠し撮りを周到に準備をしてきました。今回使われたカメラについてですが、報道映像なんかを拝見すると、ブッシュネルというメーカーのトロフィーカムXLT HD MAXという機種だと思いますが、これ、警察庁、それでいいですか。

○政府参考人(高木勇人君) 大分県警察からは、本件のビデオカメラの機種についてはトロフィーカムXL HD MAXと聞いております。

○仁比聡平君 資料の五枚目、六枚目に、そのホームページのメーカーの資料をお配りをいたしました。御覧いただきますように、人感センサーが反応し、潜む出来事を自動で撮影、警戒心の強い対象にも威力を発揮すると記載されておりまして、音声記録機能だとかセンサーの有効距離だとか、あるいはSDメモリーカードの量だとか、電源なんかを、単三アルカリ電池を十二本で約百八十日から三百六十日間もつという、こうした能力を持っているわけですね。ですから、ニュース映像を見ても極めて解像度は高いわけです。有田先生聞かれた、顔とか車ナンバーとか、これはもう鮮明に映るわけですよね。つまり、根こそぎの人権侵害、この度合いが極めて高いということが既にはっきりしているわけですね。

これを、一台は駐車場を広く捉える、もう一台は会館出入口をしっかり録音、録画することができるようになっていた、これで間違いないですね。

○政府参考人(高木勇人君) 設置されたカメラの一台は駐車場、もう一台は労働福祉会館出入口を撮影していたと大分県警察から報告を受けております。

○仁比聡平君 つまり、このカメラによって、今回の隠し撮り行為によって撮られていたSDカード四枚、ここにどんなものが映っているのか。これは、警察が任意捜査だと言い張っている隠し撮りがですよ、カメラ捜査がですよ、本当に任意捜査だといって与党の皆さんだって許していいのかということを明らかにする極めて重要な証拠なんですよ。

私は、この委員会にこのSDカード四枚を提出し、みんなで共有すると、共有するって、ちゃんと中身にどんなものが映っているのかちゃんと見るということがこの法務委員会として極めて重要だと思いますが、警察庁、提出いただけますか。

○政府参考人(高木勇人君) 今回の事案で使用されましたビデオカメラに挿入されていたSDカードにつきましては、別府警察署員四名による建造物侵入事件の証拠品として大分地方検察庁に送致し、現在、検察当局が保管しているものと承知をしておりまして、警察としてはお答えを差し控えさせていただきます。

○仁比聡平君 検察、出してもらえますか。

○政府参考人(林眞琴君) 検察においては、個別事件の証拠として今保管しているわけでございますので、御要望に対しましては、やはりこれは、既にこの確定した個別事件における証拠の提出を求めるものでございまして、これに応ずることは刑事裁判以外の場で証拠の内容を明らかにすることとなりまして、当該事件の関係者の名誉、プライバシーの保護の観点から、あるいは今後の捜査機関の活動において関係者の協力を得ることが困難になるなどの重大な支障が生ずるおそれがございますので、そういった御要望には応じかねるということを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君 関係者の協力が困難になるって、一体隠し撮りしておいて何言っているんですか。

当の最大の被害者は、これ一体どうするのかということを懸念をしておられる中で、委員長、私は、是非委員会に提出させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○委員長(秋野公造君) ただいまの件は、後刻理事会において協議いたします。

○仁比聡平君 もう一つ求めたいと思うんですが、大分県警は、大分県議会の議論の中で、選挙の捜査においてカメラを使用したことがあるのではないかという我が党県議の質問に対して、事実、適正な方法によって使用したことはございますと答弁をしております。つまり、この八月二十六日の通達のずっと前から、警察庁と都道府県警が、選挙違反事件の取締りに当たってカメラ使用という方針を持って実際に使用をしてきたことは既に明らかなんですね。これ、全国的にやってきたわけですね。これ、どのような使用をしてきたのか、そのことを答弁いただくとともに、この全容を明らかにすべきです。

私は、この全容を、つまり、いつからどんな場合に必要性、相当性があるといって何件やってきたのか明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(高木勇人君) 繰り返しになりますけれども、捜査の目的でその対象者をカメラで撮影することについては、最高裁判所の判例によって、捜査目的を達成するため必要な範囲において、かつ相当な方法によって行われる限り捜査活動として適法と認められるものと承知をしておりますが、選挙違反取締りにおけるビデオカメラ撮影については、これまでもこうした過去の判例等に照らしてその必要性等を組織的に検討するよう指示してきたところでございます。

○仁比聡平君 答弁にさえなっていない。こうやって事の真相を隠し立てをして幕引きを図ろうといったって、絶対に通用しないですよ。

時間が来ましたからこれ以上の議論はもうできませんけれども、私は、全国で一体どんなカメラ使用の捜査が少なくとも選挙違反取締り事件について行われてきたのか、これを明らかにする責任があると思います。少なくとも、百歩譲っても、大分県警管轄において何が行われてきたのか、これは明らかにしなきゃいけないでしょう。

私は強く、この委員会にそうした資料の提供をいただくように強く求めたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

○委員長(秋野公造君) 後刻理事会において協議いたします。

○仁比聡平君 終わります。