○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 本法案の審議もいよいよ大詰めになっておりまして、今日は前回の質疑に続いて、改めて、本改正の上限年齢の引上げによってどのようなケースで特別養子縁組を成立させ得るということになるのかについてお尋ねをしていきたいと思います。
 前回、最高裁家庭局長との議論が少し時間が足りなかったところもありまして、まず家庭局長にお尋ねしたいと思うんですが、お手元にお配りいたしましたのは、前回の質疑の最後に御紹介した、最高裁が平成二十八年四月から平成二十九年の三月の特別養子縁組の成立の審判事件等の実情についてお調べになった資料です。
 この資料にありますとおり、養子となる者の平均年齢が、特別養子縁組の成立が認容された事件において一歳半というのが平均年齢ということになっているわけです。一方で、却下、取下げとなった子の年齢というのは四・三歳、それから取下げで四・二歳ということで比較的高く出ているわけですが、この調査を見ましても、これまでの特別養子縁組の審判の積み重ねというのが、わらの上からの養子を念頭に特別養子縁組の成立の可否が判断されてきたのではないかと思われるわけです。
 なぜ、こういう差が出てくるのかと。ここには、私などは、やっぱり四歳超えていくような子供たちの愛着形成の上でも難しさがあるのではないか、そんなこともうかがわれるんですが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 まず、この統計資料でございますが、本法案に関する検討が開始され、その検討上必要ということで、この平成二十八年四月から二十九年の三月の一年間について詳細な実情調査をしたものということでございまして、この中で、審判の申立てが却下され、また取り下げられた理由については調査をしていないために、認容事案と比べまして養子候補者の平均年齢に差異が生じる背景等については把握をしていないところでございます。
○仁比聡平君 最高裁としては今のようなお答えぶりになるのだろうと思うんです。裁判官としてのお考えを御答弁されるわけにもいかないということなのではないかなと思うんですけれども。
 一方で、その下の参考というグラフを見ていただきますと、現行法でも上限六歳という、例外規定がありまして、六歳、七歳、八歳でも特別養子縁組成立の認容例があるわけですね。もちろん、認容されない、申立てされて却下、取下げということに至る例もあると。この認容されている例についてなんですが、この年代の子供は普通、実親の存在や、あるいは実親がそもそもいないということや、養親になろうとする方との自分との関係だとかというのは、これは大体認識しているお年頃になると思うんです、もう小学校にも入っている年、ということなんですよね。
 この年代の子供の特別養子縁組の成立の可否を判断する上で、これは一般論で結構なんですけれども、どのような調査に基づいてどのような事実を裁判所は判断するんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 養子となる子の年齢が高い場合に、その実親との関係、養親との関係についてどこまで主観的に認識をしているかというところまでちょっとよく把握ができないところでございますけれども、一般的に申しまして、子の年齢が高い場合には、その子のそれまでの生育歴をまず十分に把握する必要があると考えております。また、子の意思を考慮するに当たっても、その子自身の発達状況ですとか置かれた環境などが様々であるということを十分に踏まえる必要があるというふうに考えられるところでございまして、そのような意味で、より慎重かつ多角的な観点からの審理が求められているというふうに言えるかと存じます。
 そこで、家庭裁判所におきましては、養子となる子の年齢が高い事案における調査を行うに当たりましては、子の生育歴ですとかその中での虐待の有無、生活状況、それから心身の状況などにつきまして実父母などから丁寧に聴取をするとともに、児童福祉機関、病院などの関係機関からも資料を取り寄せるなどして判断の資料としているところと認識をしております。
 また、家裁調査官、家庭裁判所調査官が子の意思を把握するために子と面接をする際には、子の発達などに応じました聴取方法を工夫し、子の表情やしぐさなど言葉以外の情報をも十分に観察しながら、子の意思を総合的に理解するよう努めているものと承知しております。
○仁比聡平君 今家庭局長がお答えいただいたことについて、衆議院の参考人質疑で、前回、別の法案、子の引渡しの関係の法案、民事執行法の改正について本院の当委員会の参考人としてお招きした元家裁調査官の伊藤さんが、この法案、本法案の衆議院参考人として意見をお述べになっておられまして、その中で、養子となる者の年齢、発達段階、性格や行動傾向などは多様であり、その言動は必ずしも安定したものではなく、それぞれ個性に応じた調査が必要となりますと。例えば、親に不当に叱られたとして家出の代わりに一時保護を求めてきた子供が、三日後にはおうちに帰りたいと泣いて暮らすといったことはよくあることです、すなわち、親子関係の中で、子供の気持ち、意思や意向は揺れ動く、同時にその父母の気持ちも揺れ動くと思いますと述べていらっしゃるんですが、こうした現場で、先ほど局長がおっしゃったような角度あるいは方法によって事実を見極めていく、その中で判断していくと、そういう理解でよろしいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) 御指摘のとおりと存じます。
○仁比聡平君 そのときに、実際にその子の、実際認容されている六、七、八歳という子の事例がどんな事例かというのはもちろんここでは分からないわけですけれども、前回の本委員会での参考人質疑の結果を踏まえても、実際には里親さんなどの委託を受けていて、実の親じゃないんだけれども、実際の親子関係といいますか、実質的な親子生活が安定的に継続しているという場合に学齢期の子供でも特別養子縁組を成立させようというようなことが多いのではないか、そういう場合は考えられるのではないか。逆に、全く見知らぬ養親候補の夫婦のところにそれまで全く縁がなかった子供が試験的な養育をいきなり始めて特別養子縁組の成立に至るというケースはちょっと考えにくいなと。
 つまり、実際の親子関係が継続している、家庭生活が安定している、そういうケースがこの特に年代の上の子ということでは大事になってくるのではないかなと思うんですが、家庭局長、何らか御感想がいただけますか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) 本法案成立後にどのような事件が申立てがされることになるのかについては、施行後、成立しますれば、施行後の状況をよく見させていただきたいというふうに思っております。
○仁比聡平君 裁判所としては今はそういうお立場になるんだろうと思います。
 通告していたのか、通告されていないとおっしゃるか分かりませんけど、厚生労働省にちょっと今の問題意識でお尋ねしたいと思うんですけれども、現行法の下でも特別養子縁組の成立というのはとても複雑で、慎重なんだと思うんです。この角度からいいますと、先ほどもちょっと議論にあった悪意の遺棄の場合、あるいは虐待としてネグレクトをずっと受けてきた、あるいは性虐待を受けてきたという子の発達とか人格形成、その下での心理状態には、これは深い影響がその虐待によって及ぼされているということが当然想定されると思います。
 ですから、例えば児童相談所のケースワーカーが対応する中で、明るく楽しそうに振る舞っていても実は深いところに葛藤があり、その表で見える言動、行動というのは生きていく上での子供の自己防衛と、そういうふうに振る舞わなければ御飯も食べられない、寝るところもないというような深層心理ということがあり得て、そのことが、少し長じての学齢期だとかあるいは思春期だとかいう時期に、虞犯だったり触法だったり、少年法に言う非行というような意味での要保護性となって爆発的に現れるということだってあるのではないかと私は思うんです。
 潜在的に虐待あるいは悪意の遺棄を受けてきた子が抱えさせられてしまっているそういう状態をしっかりと見極めて、特別養子縁組の成立との関係でいいますと、著しい、監護の著しい不能などのこの要件だったり、特に特別養子縁組を成立させる必要性だったり、ここを判断するというのはちょっとなかなか大変なことなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、様々なケースがあるかと思います。例えば、施設の中で比較的長い間養育されている子供の中にも、養子縁組を選択することが適当であろうというふうに考えられる子供もおられるでしょうし、まだ実親との親子関係を修復する可能性が残っていて、家族再統合に向けた支援を模索すべきお子さんもいるでしょうし、あるいは、今委員がおっしゃったみたいに、子供自体が非常に、虐待を受けた傷によってかえって、表面的に出てきたものは問題行動であったり非行だったりということで一見外側から見えるのは非行だけれども、実は内面では非常に心の傷を負っているようなケースに対する処遇をどうするのかとか、様々なケースがある中で、その子供に応じて、施設入所がいいのか、里親という選択肢がいいのか、あるいは養子縁組という選択肢があるのか、どういう対応を取るのがその子供にとって最もいいのかということを、家庭養育優先原則の下で個々に十分に調査をしながら、アセスメントをしながら決定をしていくということではないかというふうに考えております。
○仁比聡平君 児童相談所を中心にした児童福祉の現場の児童福祉司の皆さんも、あるいは心理判定に関わる専門家の皆さんも、うんとそれを総合的に取り組みながら、近年でいうと市町村とも力を合わせながら、この福祉を本当に最善の利益を実現していくと。この児童相談所の役割というのは、今、本当に極めて重要になっていると思うんです。
 今回の改正で、その児童相談所長が特別養子適格を求める審判を申し立てることができるようになるわけなんですが、ちょっとそこの問題に入る前に、もう一度厚生労働省にお尋ねしたいと思うんですけれども、現行法でも、民法の規定による親権喪失だったり親権停止などの親権を制限するという制度があります。加えて、児童福祉法二十八条、よく言われますけれども、一時保護という、つまり、親子関係というか家庭生活から、例えば虐待を受けている子を離してケースワークに臨んでいくというその一時保護には、原則といいますか、徹底して親に同意してもらって任意で行うというふうにしてきているんだけれども、どうしてもそれに応じないという場合があり得て、そうした際に、家庭裁判所の承認を求めるという審判事件を児童相談所が申し立てるという場合があるわけですよね。
 そうした親権の制限という申立てを、あるいはその事件への関与を児童相談所が行うときというのは、当然、極めて慎重な検討を重ねて行われるべきでもあるし、現にそう行われていると思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 まず、児童福祉法の第二十八条、委員最初に御指摘いただいた二十八条でございますけれども、裁判所の承認を求める申立てにつきましては、厚生労働省において各児童相談所に示している子ども虐待対応の手引きにおきまして、家庭養育優先の原則を踏まえてもなお早急に親子分離が必要である場合であって、親権者が施設入所の措置に同意をしない場合にこの申立てを行うべきであるというふうに示しているところでございます。
 またさらに、この二十八条による措置では不十分である場合、例えば、子供が親権者から物理的に離れるだけでは安定した生活を送ることができないような、そういった心理状態にあるような場合ですとか、親権者が子供の進学や就職等に関して強く干渉してくるというようなことが予想される場合には、親権停止の申立てを選択すべき場合として検討しなさいということを手引で規定をしているところでございます。
 またさらに、親権喪失の申立てを選択すべき場合といたしまして、親権停止では目的が実現できないという場合にその利用を検討するというふうなことを手引でこれも明らかにしておりまして、相当慎重に判断をしていただくということをお願いをしているところでございます。
 児童相談所において、このようなことを考慮しながら、こうした申立てを行うべきか否かについて適切に個々に判断をしていただくということだと思っております。
○仁比聡平君 今御紹介いただいたような考え方を的確に行っていく上での様々な体制づくりという問題については、これ別の大きな問題ですから、本法案の話にちょっともう一回戻りたいと思うんですけれども。
 そのように慎重に行っている親権制限などの事件を、言ってみれば質的に超えるのが特別養子縁組の適格があるという、児童相談所が申し立てるという場面だと思うんですよ。つまり、実の親子との関係を、親権は停止するにしたって家族の統合の可能性というのはまだ残る、再統合の可能性は残るわけだけれども、実の親子関係を断絶すべきであると行政が裁判所に求めるという、この申立てというのを今度設けることになったわけですが、厚生労働省としてはどのようなケースが念頭にあるんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 御承知のとおり、現行ではこの申立てをできるのは養親候補者に限られているわけですが、今回のこの改正法案によりまして、第一段階の適格の審判の申立てにつきましては児相長も行えるということになり、ある意味、そういう意味では児相長としての新たな業務ということになるわけでございます。
 この改正の趣旨からいいますと、まだ前例がありませんので、想定されるケースということでの御説明になってしまいますけれども、児相長が申立てを行うということが想定されるケースとしては、例えば、養親候補者がいて、養親候補者が申立てをするということはもちろん理論上はできるんだけれども、主張や立証について負担を軽減をするために、例えば実親の養育状況をよく把握しているのがやっぱり児相長でもございますので、そういった意味で児相長が申立てをするということが一つはあり得るんだろうというふうに思います。
 それからもう一点は、実親が同意をしていない場合で、児相長が、そうはいってもやっぱり特別養子縁組が適当であろうというふうに判断をされるケースですとか、あるいは、実親が同意はしているんだけれども撤回のおそれがあるということで、養親候補者の方が試験養育の開始をためらっているようなケース、そういったケースはあるんじゃないかということ。
 それから、三点目としてまた考えられ得るのは、先に特別養子適格の審判を確定をさせて、そのことによって養親候補者を確保をすることに資するようなケース、こういったことが考えられるのではないかと現時点では想定をしております。
○仁比聡平君 今のようなケースを想定をしておられるということなんですけれども、大前提としては、対象の子の実親との家庭的な安定した生活を取り戻すとか、そういう意味での再統合を図るということは、これはもう断念せざるを得ないと、全く無理という判断が大前提としてはあるということでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 特別養子縁組の実施に当たって、この支援の業務を行うのが児童相談所であったりあるいは民間のあっせん機関だったりするわけですけれども、私どもの児童相談所の運営指針ですとかあっせん機関の指針の中で、この辺りの手続、丁寧に支援をするようにということを求めているところでございます。
 具体的に申し上げますと、そもそも実親に対する支援というもの、まず重要であるということで、養子縁組に関する意思決定に向けて、自ら養育することの可能性をきちんと模索をしなさいということで、自ら養育することの可能性の説明をしっかりすると、そのために、様々な公的な支援があり得ると、経済的な問題ですとか子育ての問題ですとか、様々自治体、福祉事務所からの公的な支援を受けるということもあり得るというふうなことをしっかり説明をして、その上で、本当に養子縁組について同意をされるのかどうかということを丁寧にカウンセリングをして手続を進めるようにということでお願いをしているところでございます。
○仁比聡平君 今の御答弁の流れとの関係で、先に厚労省にお尋ねしたいと思いますけれども、前回の参考人質疑で、早川参考人が紹介された国連児童の代替的養護に関する指針について、林参考人も、子供の喪失感をできるだけ緩和する上で、子供にとってどういう選択肢をどういう優先順位でもってまず考えていかなければならないかという順位を、ある意味グローバルなスタンダードとして提示してくれているものという評価をされ、まず生みの親、それが無理ならば身近なところでの親族、それが無理なとき社会的養護というそうした大きなお話をされて。
 そこに関してちょっと紹介して御認識を伺いたいんですが、早川参考人がお配りになった資料に基づいて紹介をしますと、この指針の百六十六パラグラフには、家庭復帰の妨げを禁止するという理念が掲げられている。それは、児童とその家族との関係の有効性及び再び一つになりたいという希望の確認というのは、これそれぞれの児童について検証しなければならないと。あらゆる追跡の努力、これは家庭復帰への努力ということですが、失敗に終わるまで、養子縁組を含めて最終的な家族への復帰を妨げるような行為を行うべきでないと。これは再統合を目指すんだということかと私は受け止めました。
 十五パラグラフには、貧困のみによる家族からの離脱禁止という理念があって、貧困によってのみ生じた状態が児童を親の擁護から離脱させ、児童を代替的養護下に置き、又は児童の家族への復帰を妨げる唯一の正当化事由であるべきではないと。いわゆる家庭と子供の貧困だけが家庭から子供が引き離されなければならない理由になっちゃいけないんだということだと思います。
 最後、十一パラグラフで、子供の主体性についてというふうに捉えて私はいるんですけれども、地域生活の継続という理念が掲げられていて、原則として児童の通常の居住地のできるだけ近くで養護を行うのが望ましいと。この件について早川参考人は、家庭、学校、地域という三つの柱を挙げられまして、子供にも人生があるので、その地域で培ってきたアイデンティティあるいは友人関係あるいは学校というような基盤というのはとても大事なのであって、これを引き離すというのはこれもうよほどのことなんだとお話ありましたけれども、厚生労働省の児童福祉の現場での取組というのは、おおむね私こういう理念で行われていると思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、児童福祉法の三条の二、これは平成二十八年の児童福祉法改正で規定が盛り込まれておりますけれども、家庭養育原則の規定を三条の二の規定として盛り込んだところでございまして、その趣旨は家庭を第一に検討し、それができない場合には、できるだけ家庭的で暖かな環境の下で暮らせるようにするということで、里親の推進ですとか施設の小規模化や地域分散化を進めていくというふうな大きな考え方で現在社会的養護の施策を推進しているところでございます。
 また、貧困のみによるその家族の関係の離脱を認めてはいけないのだというふうな指針の御指摘については、先ほど私御答弁申し上げましたとおり、やはりこの特別養子縁組の検討に当たっては、実親に丁寧に説明をして、どうしても自分で育てるかできないかどうか、あるいは経済的な問題だけであれば、様々な公的な支援を受けて、そういった支援につなげて、それでもなお自分で養育することができないのかどうかということを模索をしなさいということをお願いをしていると、こういった点を踏まえまして、丁寧に個別のケースに寄り添いながら支援をしていくということが重要なんだろうというふうに考えております。
○仁比聡平君 そこで、民事局長に法改正についてお尋ねしたいと思うんですが、児童福祉の現場の実情というのは、今、少し可能な限り御答弁いただいたつもりなんですけれども、それから、これまでの現行法の下における家庭裁判所での様子ということは先ほど少し議論させていただいたわけですが、そこに例外も含めれば十八歳までというこの上限年齢を引き上げて特別養子縁組を成立させ得るという法改正の下で、一体どんな、せめて理念だとかこういうニーズなんだとかいうことがないと、八百十七条のこれまでの法的な意義と随分変わるというよりも質的にちょっと変わるんだと思うんですよ。
 言ってみれば、わらの上の養子が中心の法制度から、もちろんわらの上の養子もこれからもある、続くんですけれども、それに対して子の養護のための特別養子縁組ということが判断の対象になっていくということになると思うんですが、法改正後のこの特別養子縁組の趣旨なり、その判断の基準、判断の基準というと裁判所みたいになりますが、法の趣旨というのはこれどうなるんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 現行法の下で特別養子縁組を成立させるかどうか、これは実親の存否ですとか実親による虐待等の有無、実親の養育の意欲及び能力の有無、実親子の関係等といった事情を総合的に考慮して、実親子関係の終了が子供の利益に合致するか否かといった観点から判断されているものと認識しておりまして、この点につきましては養子となる者の年齢の上限を引き上げた後も変わるものではないというふうに考えております。
 年長児童について想定されるケースといたしましては、例えば実親から虐待を受けているなど、子供の養育のために実親との法的関係を終了させた上で養親との安定的な関係を築くことが必要であると認められるもの、こういったものにつきましては、普通養子縁組ではなく特別養子縁組を利用することが想定されるものでございます。確かに、零歳、一歳のような子供と、年長の子供という観点からしますと、実の親に対する認識といいますか、そういうものは違うところがございます。
 ただ、その安定的な関係を築く、心理学的に、本当にこれが、どんなことがあっても最終的には受け入れてもらえる、そういったような安定的な親子関係を築く、こういったことが、やはり実親子と同じような関係、そういうことがこの特別養子縁組の特徴だといたしますと、そういった観点から年長の養親におきましても、この特別養子縁組を利用するという点では、現代の考え方と基本的には変わらない、そういったものについてニーズがあるというのであれば、そういった選択肢を広げていこうというのが今回の改正の狙いだというふうに考えております。
○仁比聡平君 局長も、えらくまた慎重に提案理由をそのままお述べになっているなという感じなんですけれども。
 大臣、ちょっとこれまでの議論聞かれた上で、私、特に年長といいますか、例えば分かりやすい年代層でいうと小学校の高学年とか中学生とかいう年代の、深刻な虐待で実親との家庭生活はもう望めないということで児童養護施設から学校に通っているというような子、長くその時間もわたっているというような子ということを想定したときに、そうした子ほど安定した家庭的環境における社会的養育を保障してあげたいという思いはすごく強くあるわけなんですね。
 けれども、一方で、その子が抱えている葛藤、あるいは養親になろうとする者が将来本当に温かい親子関係を継続していくことができるかどうか、これは極めて難しい判断で、葛藤を抱えている子ほど愛着関係も、それから新しい家庭生活も、途中で何か大きく損なわれてしまう可能性も、あるいは懸念もあるじゃないですか。だから、マッチングというのは極めて大きなジレンマを抱えている。わらの上からの養子という赤ちゃんと違うジレンマを抱えていると。その子たちの利益を保障していくための法改正ということであれば、先ほど少しだけ紹介した国連のガイドラインにも掲げられているような理念を、法の趣旨としても、それから裁判所のこれからの運用に当たっても期待すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(山下貴司君) 御指摘のとおり、特に虐待を受けた子というのは非常に、心理的にも余り、人間的な不信感であるとか、一番最も守ってもらえるべき人にそういった虐待を受けたということであればなおさらでございます。そういった意味で、特別養子縁組におきましても、そのマッチングについてなかなかセンシティブなところはあろうかというふうに考えております。
 先ほど委員御紹介の、これ早川参考人御紹介の国連の児童の代替的養護に関する指針というのは、その趣旨については、例えば児童福祉法であるとか子の特別養子制度においてもしっかりと念頭に置いた上で運用されるべきものであると考えておりますが、なお具体的に妥当な結論が得られるよう、家庭裁判所等によるこの第二段階のマッチングにおける審理においても、そういったところの委員御指摘のようなところ、心理状態も踏まえた判断をしていただけることを強く期待しているところでございます。
○仁比聡平君 何にせよ、動き始めたら本当に子の福祉のためになるように関係の皆さん頑張ってもらいたいと思いますけれども、最高裁の村田総務局長、おいでいただきながら御答弁いただけないんですけど、もうずっとうなずいて聞いていただいていたんですけど、これ担う家裁職員、とりわけ調査官をずっと増員しないというのはもうあり得ないと。そこでうなずかれたらまずいと思うんですけど、やっぱりこれはもう抜本的に増員をしなければ駄目ですよということを強く申し上げまして、今日は質問を終わります。