○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 所有者不明土地問題によって不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するという不動産登記の機能が問われているという問題において、登記簿から真の所有者が探索できない実態を適切に解消していく、その任務を新たに登記官に担ってもらおうということが今回の法案の大きな柱ということになるんだと思うんです。
 そこで大切になるのが、探索の対象にする土地の選定をどうするのかというプロセス、手順と基準、これを明確にするということだと思うんですね。言い換えると、透明性、公平性を確保するということだと思います。これは、今日も議論があっているような公共事業だったり、あるいは災害復旧だったり、今ほど民民の関係でもそういうのはあるんじゃないかというニーズのお話ありました。
 ですから、その事業を推進しようという人にとって当然強い求めがあるんでしょうが、国民一般にとって、そして登記官が独任制の行政庁として自信を持って、誇りを持って探索作業を進めていくという上では、この土地を探索をするということが必要であるし大切なんだということが国民的に支えられていないと、膨大にある所有者不明土地、ほかもいっぱいあるのになぜそこだけやるんだというような話になってしまうと問題がまた出てくるのではないかなと思うんですが、この透明性の確保、公平性の確保という点について、大臣、どんなお考えでしょうか。
○国務大臣(山下貴司君) 表題部所有者不明土地は相当数に上るわけですが、その解消については、必要性、緊急性が高い地域から優先順位を付けて順次解消していくことが相当であると考えられるところでございます。
 そして、そうした対象土地の選定に当たっては、委員御指摘のとおり、公平性及び透明性を確保する観点から、あらかじめ選定の基準を定めておくことが重要と考えております。そのため、本法律案が成立した暁には、施行までの間に対象土地の選定の基準を定めることを検討しております。
 私の所見といたしましては、こうした選定基準の策定、こうした公平性及び透明性の確保に資するものでございますし、それだけでなく、委員御指摘のとおり、登記官が探索作業に集中する環境を整備することになるものと考えておりますので、これらについては鋭意検討したいと考えております。
○仁比聡平君 具体的に局長にお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほど来、個々の事件、ケースにおいて登記官が判断するのだという御答弁が行われているわけですが、まず条文の三条を見ていただきますと、主語は登記官なんですね。その探索を行おうとするときにあらかじめ公告しますということになっていますが、そうした探索の必要があると認めるときという登記官の判断要素として挙げられているのは、土地の利用の現況、不明土地の周辺の地域の自然的社会的諸条件及び当該地域における他の表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情というふうに極めて抽象的に書いてあるだけであって、探索が例えば始まったと、そうすると、そのすぐ近く、同じ自治体の中に先般の大規模災害で復旧が急がれている地域がある、そこの所有者不明土地はどうして調査してくれないのかと、何を必要性だとか緊急性だとかということで判断したのかという、そういう疑問が生まれかねないわけですよね。
 これはどんな手順で、あるいはどういう基準で、今大臣がおっしゃったような方向性を具体化していくわけですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 今委員御指摘の法律案におきまして、様々なその考慮要素というものを御指摘いただきました。
 例えば、土地の利用の現況としましては山林であるか宅地であるか、地域の自然的状況としては自然災害のおそれのある地域であるかどうか等々、あるいは社会的条件としては地域の実情を知る者が減少しているかどうか、あるいはその周辺にこういう表題部所有者不明土地が複数存在しているかどうか、それをまとめて解消するのが合理的かどうか、こういったところが一つの判断基準になるところでございます。
 この選定基準につきましては、先ほど大臣からの答弁がありましたとおり、この選定基準につきましては、まずは全国的に同一の基準とするのが適切であると考えられるために、法務本省において所要の検討の上でこれを定めることを予定しているものでございます。
○仁比聡平君 本省において定めると、個々の登記官任せになどはしないという御答弁だと思うんですけれども、この基準、そうやって定める基準に基づいて具体的に定めていくというときには様々な手順というのもあるんだと思うんですよ。
 例えば大規模災害という場合であれば、一つの自治体の中でたくさんの対象箇所がある、あるいはほかの自治体からもそういう声が上がる、これを例えばその地域を所管する支局で判断していくということになれば予算の限度というのもあるでしょうし、どんなふうに定めていくのかということで登記官が大変悩まなきゃいけないということになってしまうと思うんですが、これはどこが主体になって、どんな関係者の意見を聞いて定めていくということになるんですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 先ほど申し上げました法務本省におきまして作成した選定の基準に基づいて具体的にどう土地を選定していくかということでございますが、まずは各地の法務局におきまして地域の実情を知る、地方自治体から要望等を聴取していくということが想定されるところでございます。
 そういった地方自治体からの要望等を踏まえて対象土地の選定を行うことを想定しているものでございまして、この選定の際には、個々の登記官ではなくて、当該法務局の単位で対象土地の選定をすることを想定しているものでございます。
○仁比聡平君 当該法務局ということになれば、各県にそれぞれ法務局がありますが、そういう単位で行うということでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) 御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 先ほど、伊藤理事の質問の中でも、作業要領を作ることも検討しているというような御趣旨の御発言ありました。これらはつまり施行までに作ると、そういうことですね。
○政府参考人(小野瀬厚君) 御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 もう一問お尋ねをしたいのは、先ほども質問がありましたけれども、探索委員を選ぶかどうか、指定するかどうかという問題について、典型的な探索委員を指定する対象土地として記名共有地を挙げておられて、逆に、登記官のみで探索委員を指定せずに行うものの典型として住所なく所有者の名のある土地を挙げておられるわけです。
 資料を御覧いただければお分かりのとおり、そうした住所の記載がない土地というのは八五%に上るというのが推計調査なわけですね。これ、膨大なものがあるわけです。この膨大な土地について、仮に登記官が自らで探索をするということになったときに現地に調査に臨む。そうすると、それぞれ歴史的な経緯があって所有者不明土地ということになっている。ですから、所有者の特定に相当困難を伴うという事案はこれ当然あり得て、そういう事件の担当になった現場の登記官というのは、もちろん相当の時間も必要とするということになるし、複雑困難だと。そうした中で、他の一般登記事件に重大な、重大なというか、その仕事をする時間が取れなくなってしまうというようなことにもできないわけですから、登記の申請があれば必ず登記はしなければならないわけですから、本当に大変だと思うんですよ。
 これ、探索委員を、登記官のみというふうに局長答弁しておられる想定の分野でも探索委員を選ぶということは、これ当然必要があればあり得ると思いますが、いかがですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、先ほど申し上げましたのは一般的な傾向を申し上げたものでございますので、実際にその所有者等の探索が非常に困難だというような事情がございますれば、これは具体的なケース・バイ・ケースで所有者等探索委員にお願いするということは十分にあり得るものでございます。
○仁比聡平君 それが十一条の必要があると認めるときの趣旨だということだと思います。うなずいていらっしゃいます。
 そうした探索をどこまでしなければならないのか、ここが先ほども議論になりました。改めて、十四条に則した形で御答弁をいただければと思うんですけれども、登記官が探索を始めたと、けれどもなかなか分からない。これ、どこまで調べる言ってみれば責務があるんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 まず、探索の方法につきましては、登記所内にある客観的な資料、不動産登記簿、閉鎖登記簿、旧土地台帳を調査するということ、あるいは、登記所外にある客観的な資料として、例えば戸籍謄本等々の各種台帳を調査すること、またさらには、関係者等の証言などを関係資料として集めるといったこともあり得るわけでございますが、そういった具体的な調査の方法につきましては、今後、通達ですとか事務連絡等により標準的な作業手順等を定めた要領を定めることを予定しております。
 その上で、この調査の結果、過去から現在までの所有者のいずれかを特定できた場合には、そのうち表題部所有者として登記することが適当である者を表題部所有者として登記すべき者として登記することとしております。ただ、この際、過去の一時点における所有者を特定することはできたけれども、その法定相続人が極めて多数に上るといったことはあり得ますが、こういったケースにおきまして、必ず現在の所有者を探索しなければいけないということにいたしますと、これは、それぞれの法定相続人から、遺産分割ですとか遺言ですとか相続放棄等の有無の調査、ここまで要することとなってしまいます。そこで、こういったケースにつきましては、解消作業の効率性の観点から、過去の一時点における所有者をその時点における表題部所有者として登記するにとどめて、法定相続に関する情報は別途保管しておくといったことを予定しております。
 したがいまして、個々の事案に応じて、余りに非効率、無限定な探索にならないように実際の運用を行うことを想定しておるところでございまして、登記官に過度な負担が生じないように今後も運用に配意してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 十四条の二項を見ますと、判断の理由その他の政省令で定める事項を記載、記録した書面などをこれ作成をしなければならないというふうになっているわけですが、つまり、過去の所有者まではたどり着いたと、だけれども、その後は相続関係を調べるのでもう精いっぱいというようなことになれば、そういった記録を作って、その後どう利用するということですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 そういった記録の方は登記された場合の附属書類として保管することになりますので、それが一定の場合にその後は利用され得るということでございます。
○仁比聡平君 そういう仕事というのは本当に大変だと思うんですよ。
 それで、最後に、定員などの推移、法務局の定員などの推移について、全法務省労働組合に資料作っていただきました。
 大臣、これ二〇一七年、一八年、一九年と、法定相続情報証明制度の導入で百五十五人、長期相続登記未了土地の解消で二百二十三人、所有者不明土地の解消で今年度二百二十一人という増員を実現をしていただいているわけですね。この分、実際に定員が増えないと、新たな仕事だけが押し付けられるということに当然なると思うんです。けれども、一番右の年度末定員、つまり実際の人員を見れば、これどんどん減っていっている。やっとこさプラス・マイナス・ゼロになったと、今年度。それ、なぜかというと、定員削減が掛かっているからなんですよね。
 これ、もうこれ以上減らすなんてあり得ないし、こうした複雑な仕事をしっかり担っていただくために抜本的に増員を図っていくべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) 貴重なエールをいただいたと感じております。
 近年においては、法務局職員の業務の重要性や負担を踏まえ、増員数は大幅に増加してきているところでございますが、これは政府全体における機構・定員管理に関する方針に基づいて、一定の合理化を政府全体で図る一環として、法務局においても定員の合理化を図っているところでございます。
 ただ、今後とも、政府の一員として業務改革による総人件費の抑制には努めつつ、表題部所有者不明土地の解消を含め、いわゆる所有者不明土地問題の解決に向けた取組に対する様々な社会の期待に応えるため、法務局において必要となる人的体制の整備、確保に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 新たな仕事の、頑張ってもらう分増員しなければならないというのは当然だと強く求めて、質問を終わります。