参議院 法務委員会 4月23日  仁比聡平

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

立憲民主党の有田理事に続きまして、特定技能外国人の原発労働についてお尋ねをいたします。

先ほども御紹介がありましたけれども、四月十八日の朝日新聞の記事をお手元にお配りいたしました。原発に特定技能外国人と。東京電力が廃炉作業の続く福島第一原発などの現場作業に受け入れることを決めたことが分かった、三月二十八日の会議で元請など数十社に周知したという報道に、大変怒りと、そして驚きを覚えたわけですね。この記事を見て、恐らく多くの方々が福島の収束、そして廃炉の作業の困難さ、そして被曝労働の実態ということを思い浮かべられたのではないかと思います。

質問に当たりまして、現場で頑張っておられる労働者の皆さんに心から敬意を申し上げたいと思うんですが、被曝労働の実態について、我が国で極めてずさんな安全管理ということが厳しく言われて、問われてきました。原発内の放射線量が高い汚染区域では、労働者は、皆さん御存じのように、放射性物質が付着したりしないようにと手袋、靴下を重ね着をし、全身を覆う防護服を着て長靴を履く、全面マスクを付けると、そして一定量被曝するとアラームが鳴るアラームメーターを装着し、ポケット線量計あるいはフィルムバッジを身に着けて現場に入っていくわけですね。

実際には、高汚染区域では被曝線量が高いためにすぐアラームが鳴ってしまうと。ごく短時間しか作業ができないので、構内の作業というのは数分刻みでの交代ということになり、ですから、下請労働者を中心にした人海戦術が行われています。この記事の中にも、今、福島の収束、廃炉の作業のために一日四千人という労働者が働いているという紹介があるとおりなんですよね。

そうした中で、現実にはノルマも達成しなきゃいけないと。だから、アラームが鳴っても、すぐ交代したら効率が悪いから、アラームが鳴っているのを無視して作業を続けざるを得ない場合もあるとか、あるいはアラームメーターをそもそも他人に預けて作業に臨むというようなことも実際に告発をされてきまして、つまり記録上の被曝線量と実際の線量が違うという場合も頻繁に指摘をされてきたわけですね。

そもそもこの放射線というのはこれ五感で感じられるものではありませんから、だから、労働者が本当に安全に働いていくためには、危険性を事業者においてしっかりと労働者に徹底しなきゃいけないと、けれども、危険を警告すると労働者が逃げてしまうので、情報を隠蔽して被曝労働に従事させるという事態も続いてきました。そうした下で、大量の原発労働者が大量の放射線に被曝をする、その中で労災、あるいはその労災が認められないということで争いになる事件も生まれてきたわけですね。

そこで、まず厚生労働省にお尋ねしたいと思いますが、先ほども労働安全衛生法上特別の危険とそこへの配慮が必要だという御答弁ありましたけれども、二枚目にお配りしたのが、平成二十七年八月二十六日に出された東京電力福島第一原発における安全衛生管理のためのガイドラインです。これ、中身はもう御覧になっていただいたとおりなんですが、つまり、私が聞きたいのは、東電の責任なんですよ。被曝労働というのはそうした厳しさがあるわけだから、これ一般に安全管理の基準が厳しく求められ、ガイドラインがあると。これをしっかり確立していく、安全管理体制を確立していくというのは、これ元方事業者と一体になった東電の責任だと。これ、東電に責任があるんでしょう。

○政府参考人(厚生労働省労働基準局安全衛生部長 椎葉茂樹君) お答えさせていただきます。

我が国におきましては、労働者の安全と健康を確保するために労働安全衛生法が定められておりまして、同法に基づく安全衛生規則等によりまして具体的な安全基準が定められているところでございます。これらは、福島第一原発における構内作業に従事する労働者を使用する事業者に対しましても当然適用されるものでございます。

上乗せといたしまして、厚生労働省といたしましては、廃炉作業等に従事する労働者の安全と健康を確保するために、東京電力福島第一原子力発電所における安全衛生管理のためのガイドラインを作成しているところでございます。この中で、委員御指摘の東京電力と元方事業者が一体となった安全衛生管理体制の確立や、リスクアセスメントやその結果に基づく措置の実施や安全衛生教育の実施、また工事の発注段階からの効果的な被曝低減対策の検討や実施などにつきまして、東京電力の第一義的な責任の下に、東京電力本社、発電所、元方事業者等が実施する事項を明確にした安全衛生管理体制の構築や安全衛生対策の実施につきまして徹底を図っているところでございます。

以上でございます。

○仁比聡平君 もう一点確認をしますが、朝日の記事の左の方に、日本で実効性のある、国境を越えた一元管理の制度を早急につくるべきだと。つまり、被曝線量は労働者が自己申告することになっていると、国外の原発で働いた場合ですね。これ、自己申告ということになっていると。一元的管理ができないと駄目じゃないかという識者の指摘があります。

つまり、現在においては、国境を越えて働く原発労働者に一元管理の仕組みというのはこれはないんですね。

○政府参考人(椎葉茂樹君) お答えさせていただきます。

電離放射線障害防止規則におきましては、事業者に対しまして、管理区域における被曝線量を測定するとともに、その線量記録を労働者に遅滞なくお知らせすることを義務付けているところでございます。

委員御指摘のように、帰国後、労働者がこの情報を新たな雇用主に知らせるという、そういう仕組みで線量限度を超えないよう管理をしていただくというふうになっておりまして、国際的なそういう一元的な仕組みはございません。

○仁比聡平君 そうした下で、東電は、三月二十八日の会議で、放射線管理対象区域に特定技能外国人を入れるんだと周知するという方針を示しているわけですよ。これ、極めて重大じゃありませんか。この協力会社というのは、ゼネコン、大手も含めてということだと思いますが、ここにそうした周知を行っている。しかも、記事の一番下の段を御覧いただくと、広報担当者は、日本語能力の確認は元請や雇用企業に求めているという説明をしているわけです。

先ほど、入国在留管理庁の長官は、個別の問合せ等について答弁を差し控えるというふうにおっしゃいましたけれども、それでは駄目でしょう。それは、こうした報道を含めた東電の方針を既成事実化することになる、実際に容認していくということになる。

そこで、個別お尋ねをしますが、東電が廃炉作業に当たる建設が主になるというふうに言っている建設、これについて、私、秋の国会から、それから十二月の閣議決定で示された十四分野ですね、これの建設、我々には全く説明しないまま原発労働をこれ積算していたのかと。とんでもない話だと思って昨日伺いましたら、どうやら様子が違うようなんですが、国土交通省、この建設について、原発構内での作業というのはどんな考えになるんですか。

○政府参考人(国土交通大臣官房建設流通政策審議官 北村知久君) お答え申し上げます。

建設分野において特定技能外国人が従事できる業務につきましては、分野別運用方針におきまして、型枠施工、左官等の十一の職種と定められております。

この廃炉作業というものがどういった作業であるかということ、現時点では定かではございませんけれども、少なくとも、例えば廃炉内部に留置されている汚染物質の除去とか、そういったものの放射線の排除と、そういったような作業につきましてはこれら建設分野のこの十一の職種に当てはまらないため、特定技能外国人を従事させるということは原則としてはないものだというふうに考えてございます。

○仁比聡平君 確認をしますけれども、つまり、核物質などを除去するなんというのはこれは建設業ではない、分野別でいう建設業ではないと。

これ、それ取り出した後で建物を解体するというのはできないんですか。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

一般的に、建築物の解体ということでございますれば建設業に該当いたします。ただ、今回、この外国人の受入れにつきましては建設業全てではございませんで、分野別運用方針で定められた十一の職種に該当しておりますので、この中に解体は含まれてございませんので、現時点ではそういったものも対象にならないというふうに承知しております。

○仁比聡平君 あと、端的に答えていただきたいと思いますが、経済産業省、産業機械製造業や電気・電子情報関連産業、これについて受入れ可能なんですか。

○政府参考人(経済産業大臣官房審議官 大内聡君) お答え申し上げます。

一般論として、具体的な申請がなされた場合には、製造三分野においては、特定技能外国人の生活サポートなどの共通の規定に加え、特定技能外国人を受け入れる事業者の事業活動が製造三業種いずれかに当てはまること、それから、特定技能外国人の従事する内容が、それぞれの分野ごとに定めるメッキ、塗装、溶接といった業務区分に当てはまること、さらに、雇用形態が派遣でないことなど、分野別運用方針に規定される条件を満たすかどうかといった観点から、出入国在留管理庁において審査が行われるものと承知しております。

現時点で福島第一原子力発電所における製造三分野に該当する具体的な事業活動は承知しておりませんが、申請があった場合、個々の事案については法令に従って対応されるものと承知しております。

○仁比聡平君 昨日の説明と違うじゃないですか。なら、原発構内であり得るわけですね。原発構内でそうした関連産業などの、経済産業省の言う三業種の、これはあり得ない、想定されない、構内ではそういう作業はないんじゃないんですか。違うんですか、あり得るわけですね。

○政府参考人(大内聡君) お答え申し上げます。

現時点で具体的な事業活動は承知しておりませんので、申請があった場合、出入国在留管理庁を主として……(発言する者あり)

○仁比聡平君 そうですか、だったらあり得るんだ。だったら隠していたんだ。

先にほかの業種聞きますが、自動車整備はどうですか。

○政府参考人(国土交通省自動車局次長 島雅之君) お答え申し上げます。

自動車整備分野の特定技能外国人が行う業務につきましては、道路運送車両法に基づきます自動車の日常点検整備、定期点検整備及び分解整備としておりまして、廃炉作業はこれに含まれません。

したがいまして、自動車整備分野の特定技能外国人につきまして、東京電力福島第一原発での廃炉作業に従事させることは認められないものと認識しております。

○仁比聡平君 原発構内はどうですか。ちょっと時間もなくなってきたんだけど。

○政府参考人(島雅之君) お答え申し上げます。

同様に、原発構内につきましても、今申し上げた自動車の日常点検整備等の、廃炉作業は含まれておりませんので、これは認められないものと認識してございます。

以上でございます。

○仁比聡平君 厚労、ビルクリーニングはいかがですか。

○政府参考人(厚生労働大臣官房審議官 吉永和生君) お答え申し上げます。

ビルクリーニング分野での特定技能外国人の受入れが認められますのは、通常の建築物内部の清掃業務に従事する場合であって、かつ出入国管理法令、労働関係法令に関する不正行為がない場合でございます。

実際に特定技能外国人がビルクリーニング業務を行えるか否かにつきましては具体的業務内容によって判断されるものでございますけれども、委員御指摘のような、福島第一原子力発電所内の建築物内部の清掃を行うに当たって、通常の建築物内部の清掃業務の範囲を超えた原発特有の事情に応じた特殊業務がある場合につきましては、特定技能外国人が従事できる業務範囲を超えていることとなり、そのような業務への従事は認められないものと考えてございます。

○仁比聡平君 農水、外食はいかがですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房輸出促進審議官 渡邊厚夫君) お答え申し上げます。

東京電力がどのような内容で廃炉作業で受け入れる特定技能外国人対象業種に外食業が含まれると判断したのかは承知しておりません。

外食業分野の特定技能在留資格を持つ外国人が従事できる業務は、昨年暮れにお示しした分野別運用要領等にもあるとおり、飲食物調理、接客、店舗管理となっており、いわゆる原発内部における廃棄物の除去等の作業はその中に含まれないというふうに考えております。

○仁比聡平君 時間が来てしまいましたから、あとちょっと次回に議論するしかないですけど、経済産業省が昨日の私への説明をひっくり返して、あり得ないと答弁をしなかったというのは、これ極めて重大なんですよね。

これ、東電が、それ以外の業種はこれないんですよ。にもかかわらず、そうした分野を挙げて、あたかも特定外国人が受入れ可能であるような、そうした周知をしたというのはこれ極めて重大なのであって、これは誤った理解に基づいて協力企業に周知したこと自体を謝罪し、撤回をさせ、そして協力会社へのできないという徹底をすべきですよ。経済産業省は、これ考え改めるべきですよ。

そのことを強く申し上げて、事柄、ちょっとはっきりさせなければなりません。次回また質問させていただきます。