○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

外国人技能実習生の失踪問題について今日はお尋ねをしたいと思います。

技能実習生が劣悪な労働条件でも従順に働く労働力として使い続けられて、その下で深刻な人権侵害が引き起こされてきたということは、昨年の入管法改定案の衆参国会審議、あるいは国会内外のメディアも含めた実態が報じられるという中で、多くの国民の皆さんの共通する認識になってきていると思います。

今日午前中、大臣も、外国人の方々が増えているという趣旨の御答弁をされましたが、国民の体感、実感としても、技能実習生やあるいは出稼ぎ留学の外国人の皆さんと日常の生活の中で触れ合うという機会はたくさん増えていて、このありようが日本社会の働き方、労働と、そして社会のありように大きな影響を及ぼすという、そうした認識が強まっている中で、四月に特定技能一を始めとした受入れ拡大を、これ政府は押し通そうとしているわけです。

私は、その下で、深刻な人権侵害がこの国会で指摘をされてきた失踪実習生の実態をしっかり明らかにして、踏みにじられてきた権利を回復すること、繰り返してこういうことが起こらないような外国人受入れの在り方ということを真剣に検討する、そのことが政府とそして国会の重大な責務だと思います。

そこで、大臣に伺いますが、この失踪実習生は、二〇一七年に七千八十九人、二〇一八年の上半期、昨年の上半期には何と四千二百七十九人ということで、過去最高に膨れ上がったわけですね。これ合わせて一万千三百六十八人ということになるんでしょうけれども、下半期はどうなっているんでしょうか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 二〇一八年下半期の技能実習生の失踪者数につきましては、現在精査中でございまして、近日中にお示しできるよう、鋭意作業を進めているところでございます。

○仁比聡平君 近日中って、今日、三月十二日ですからね。

山下大臣は先ほどの質問に三月には示すというような趣旨の発言されましたが、四月のつまり特定技能一の手続を受け始めるというときまでもう半月しかないわけです。現在技能実習生として実習あるいは働いている人たちが三年を修了すればここに移行すると、特定技能一に、という仕組みをそもそもつくっておられるのは政府なわけですから、この技能実習制度の実態、なぜこうした失踪が生み出されるのかということを明らかにするのは皆さんの責任なのであって、今日、近日中にとおっしゃいました、もう速やかに明らかにされたいと思いますけれども、今日の時点で示せないということ自体が極めて重大だと思うんですね。

昨年の法案の審議のときに、例えば大臣こうおっしゃいました。より高い賃金を求めて失踪する者が八七%、これ十一月七日の参議院の予算委員会での答弁ですけれども。その認識というのは、つまり一部の不心得者だと、九割はうまくいっているという、そういう認識で今回の受入れ拡大の法案を準備して国会審議に臨まれたわけで、それが野党の質問の中でとうとう隠し通せなくなって、閲覧は許すということになった二千八百七十人の聴き取り票の分析によって全くの捏造ではないかということが明らかになったわけです。

より高い賃金を求めて失踪する者が八七%なんていうようなものではなくて、七割は最賃違反ではないか、一割は過労死水準を超える深刻な労働時間の実態ではないかということが明らかになったわけですよね。そうした議論が半ばのまま、国民の皆さんは六割、八割が、この国会で、つまりさきの国会で押し通すべきではないという民意を踏みにじってこの委員会室で強行採決をされたのが、政府・自民、公明の与党でございます。

そこで伺いたいのは、大臣、このより高い賃金を求めて失踪する者が多いなどというような認識、これは今はどんな認識なんですか。

○国務大臣(山下貴司君) 技能実習について、一部の受入れ機関において賃金不払や長時間労働といった労働関係法令違反等の問題や技能実習生の失踪といった問題が生じていることは重く受け止めております。

その上で、より高い賃金を求めてという取りまとめの記載でございますが、これは、聴取票による聴取結果を含め、この聴取結果のみならず、入管当局が有する様々な情報を総合的に評価して判断したものでございます。

また、九割という割合につきましては、これは、御指摘の去年十一月七日の参議院予算委員会において、私が制度全体のファクトの問題として、二十九年において技能実習で在留していた在留外国人の数、それと失踪された方の数、これから割り出されることからして、少なくとも九割をはるかに超える技能実習生の方々が技能実習計画に基づいて日本での実習にいそしみ、これを見守る方々がいる制度であるということを御指摘申し上げたというところであり、その認識は変わっておりません。

○仁比聡平君 その認識は変わっておらないとおっしゃったんですが、今の大臣の答弁は、十二月の五日、昨年の十二月五日に、この法務委員会での法案審議、それから総理入りの審議もありましたが、そのときに大臣、総理が答弁をされたことと変わらないんだと、その答弁のときのまんまなんですよ。

私は、少なくとも二千八百七十人の聴き取りをした、その中で最賃違反が七割などという指摘がされている、先ほどのお話しになっている死亡事案というのもある、この人権侵害を脇に置くというのは民主主義の政府として絶対に許されないではないかとまず一つ申し上げました。もう一つは、そうした下で失踪したというのはごく一部の氷山の一角なのであって、失踪できずに苦しんでいる実習生がいるということに思いが及ばないのかと指摘を申し上げました。

その上で、私、指摘をしたいのが、大臣がその失踪実習生の問題について反面調査を指示したと。ちょっと議事録を読み直してみましたら、大臣が徹底した反面調査を指示したというのは昨年十一月十六日のことです。そして、三月末までに取りまとめを公表するというふうに政務官が指示をされたんでしょうか。それは、十二月五日のプロジェクトチームの検討の会合、検討会でのことなんですね。大臣が十一月に指示をされてから既に四か月なんですよ。この間、一体何をやって、何が明らかになったんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 大臣の御指示を受けて、門山政務官のプロジェクトチームの下、入国管理局で調査を行っている状況につきまして御報告を申し上げます。

まず、どういう調査をしているかというお問いでございますけれども、まず第一に、平成二十九年及び平成三十年一月から九月までの間に聴取票が作成された失踪技能実習生約五千二百人につきまして、受入れ機関側の不正行為の有無などを調査をしております。

調査対象であります四千二百以上の受入れ機関につきまして、雇用契約書の確認などの基礎調査、電話等による事実確認や関係資料の送付要請、加えまして必要に応じた現地調査などを進めた結果、大部分の受入れ機関につきましてこれらの調査作業を了しておりまして、現在、取りまとめに向けた調査結果の集計、分析を中心に作業を行っています。

それからもう一つ、平成二十四年以降の技能実習生の死亡事案につきまして、死亡事故報告書や死体検案書などを精査し、実習との関連の有無や関係機関による対応状況などについて調査をしてまいりました。

このほか、厚生労働省や外国人技能実習機構から御意見をいただくなどしながら、失踪技能実習生に対する聴取票の様式や聴取方法の見直し、技能実習法の運用状況の把握、運用の改善に向けた方策の検討などを行ってまいりました。

これらの調査検討につきまして、今月末に結果を公表する予定でございます。

○仁比聡平君 今おっしゃったような五千二百とか四千二百とか、そういう調査をしてきて、取りまとめ中だと。だから、これは今月中に公表するんだというのが局長の答弁なんですね。

私は、今の時点でその程度しか明らかにできないのかと。あと半月で新制度の実施をするという下で、今明確な総括が必要ではないかと、当然ではないかと思いますけれども、取りまとめは月内に公表するとおっしゃる。それはこれ以上議論してもしようがないでしょう。私は、今の時点で答えがそれ以上ないというのはとんでもないことだと申し上げておきたいんですが。

その上で、つまり五千二百とか四千二百の大部分の調査は終わっているわけでしょう。あとは取りまとめをしているわけですよ。その下で、最賃以下というのが七割あるんではないかという我々野党の指摘というのはどうだったんですか。それ、大臣、どう認識しているんですか。つまり、公表とか取りまとめの結果はこれからにしたって、これまでそうやって調べたんだったら何か明らかになっているはずじゃないですか。どうなんです、大臣。

○政府参考人(佐々木聖子君) 先ほども申し上げましたけれども、これまで調査を行ってまいりました結果、それから、今後の技能実習の制度のより適正な運用に向けて今回の調査から生かすべきことなど、全部まとめて月内に発表をいたします。

○仁比聡平君 そうやって繰り返すだけで、大臣、先ほど、十二月五日のこの答弁と認識変わらないと言ったじゃないですか。それ、あれですか、最賃以下が七割というのは違っていたんですか。

お手元に十二月二十五日に関係閣僚会議決定になっている外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策から抜粋したものをお配りしました。

政府は、聴取票の記載から明らかに違法又は不正な行為を行っていないと認められる場合を除き、調査を行い、公表すると言ってきたわけですよね。この明らかに違法、不正がないものばかりだったなんということ、あり得ないでしょう。実際に違反があったでしょう。どうなんです、大臣、それ。

○国務大臣(山下貴司君) まず、私の認識につきましては、ファクトに基づいて、二十九年の技能実習生として在留されていた方、そして、その中において失踪された方の数値から客観的に割り出したものであり、このファクトとして申し上げたという意味において認識は変わらないというふうに申し上げたところでございます。

そして、その後、今、門山政務官の下でプロジェクトチームが検証しておる、これもやはりファクトに基づいてこれをやはりしっかりと取りまとめて検討した上で御報告するのが適当であろうというふうに考えておりますので、三月末までにこれは公表させていただくということで御理解賜りたいと思います。そして、その上でしっかりと対応を取っていきたいと考えております。

○仁比聡平君 だったらば、その取りまとめが公表された上で徹底した審議が必要ですよ。四月の実施、このままなんてあり得ないですよ。

それで、伺いますけれども、全ての実習実施者をこれ調査するとおっしゃっていて、その内数なんでしょう、五千二百とか四千二百という数字がさっきありました。この中で、実習実施者が、労働関係法令違反だと、あるいは入管法や技能実習法違反だということで処分をされた、あるいは関係機関に通報したという件数というのは、これ、どれぐらいあるんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 御指摘のもの、もちろんございまして、既に不正行為の手続をしていたものもございますし、今回の調査によりまして新たに判明した事実から関係機関に通報したものもございます。

その結果につきましては、先ほど来申し上げておりますように、結果として全部取りまとめて公表をいたします。

○仁比聡平君 厚生労働省にもおいでいただいているんですけれども、総合的対応策から抜粋した二つ目の項目、賃金不払等の労働関係法令違反などの場合に、連携して更なる調査を進めると。あるいは、労基法に基づく監督指導などを行って、賃金不払等の違反があらば是正を図らせると。

これ、賃確法の取組なども含まれるものだろうと思いますけれども、現実に失踪実習生に対するそうした違法が確認をされて現実に実習生の権利が回復された、未払の賃金が払われたとか、あるいは、実習実施者なり監理団体なり、あるいは送り出し機関なり、その不正がしっかりと正されて、失踪した実習生たちの思いが遂げられた、そうしたケースというのはどれぐらいあるんですか。

○政府参考人(田中誠二君) お答えいたします。

今回の法務省のプロジェクトチームで行う実態調査の結果、失踪した技能実習生について最低賃金を下回る支払や割増し賃金の不払など労働基準関係法令違反の疑いがある事案が認められた場合には、出入国管理機関等が都道府県労働局に通報いたしまして、その通報を受けた事案については労働基準監督機関において全数監督を実施して、法違反については適切な是正指導等を行うことといたしております。

厚労省では、出入国管理機関等から都道府県労働局に通報があった段階での状況については把握しておりませんが、通報があった全数について監督を実施した後、その結果を厚生労働省本省に報告させることといたしております。その段階で把握することといたしておりますけれども、現段階ではまだ把握をしていないという状況でございます。

○仁比聡平君 というような状況なんですよ。本当にとんでもないと言わなければなりません。

現場から、実際の実習とか、外国人労働者の賃金、あるいはそこで働いている人手不足分野の低単価構造ががらっと良くなったというような声は全く聞こえてきません。逆に、そうした低賃金や低単価を改善することがどれほど大変かということが、この三、四か月、いよいよ深刻になってきているというもとだと思うんですね。

引き続き議論をしていきたいと思いますけれども、そのうち、もう一つその調査に関わって伺います。

母国の送り出し機関、これは調査をしたのかということなんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 調査の対象でございますけれども、基本的には実習実施者を対象としてまいりました。

今御指摘の送り出し機関につきましては、外国に所在するために直接の調査というのは困難でございますけれども、これにつきましても、今般の失踪事案に関する実習実施者等への調査により不正行為への関与等が認められました送り出し機関につきましては、今後、二国間取決めに基づいて送り出し国に通報するなど、必要な対応を行ってまいります。

○仁比聡平君 その答弁も十二月五日と変わらない。

皆さん覚えておいででしょうけれども、あの聴き取り票には送り出し機関についてという項目があって、送り出し機関に払った金額という聴き取り項目もあって、ここに例えば百万円という金額が書き込まれているわけですね。私、あの審議の中で分析をしてお伝えをしましたけれども、ベトナム人、ベトナムから来た実習生がおよそ四割、失踪者全体の中にいます、聴き取り票を取られた人たちの中に四割います。その八五%が母国で禁じられている日本円でおよそ四十万円を超える手数料ないし保証金などを払わされている、六五%は百万円を超えている。それはベトナムにおいて違法なんですよ。それは我が国の法制においてだって違法なのであって、これ法務省は、あるいは入管当局は、個別の失踪実習生は特定をできているわけです、私たちには明らかにしないけれども。その実習生を送り出してきている機関がどこなのかも特定できているわけです。だったらば、百万とか書いてあるところは、こう本人たち言っているけどという調査をする、正すというのはこれ当たり前だと思うんですけど、それやらない、やっていないわけですよ。そんな調査で実習生を縛り付けてきた構造というのを明らかにできますか。

私、十二月の五日に大臣にこう求めました。反面調査の対象、これについて母国でどれだけの不当な、あるいは不正な、違法なお金を取られているのか、その仕組みの下でどんな形で実習生が縛り付けられているのか、その不正あるいは違法ということがはっきりすれば、これは正すものは正す、我が方でも正すしベトナムにも正してもらうと、そういう調査、その結果の公表というのがあって初めてこれ次に進めるということになるんじゃないですか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、技能実習生をめぐる状況につきましては、国内におけるそういった例えば違反の状況、あるいは国外における例えば保証金徴収の状況ということがございます。いずれも取り組んでいかなければならないのですが、まずは国内における違法あるいは不当なものがあるのかないのか、これを徹底した調査を行うということを行っているところでございます。

そして、もとより、海外におけるそうした不適当な送り出し機関というものが把握できた段階であれば、それについては二国間協議の枠組みの中でしっかりと情報共有して是正を求めていくということをしっかりとやっていきたいと考えております。

○仁比聡平君 大臣が今おっしゃった二国間協議について、次の機会にしっかり議論をしたいと思っております。

一個だけ確認をしておきたいんですが、外務省か法務省か、ベトナムとの間では二国間覚書が取り決められています。その協議、それに基づく協議の中で、私が今日問題にしています失踪実習生の実態について情報を共有して協議をしたということがありますか。あるならいつですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) ベトナムとの間の二国間取決めにつきましては、平成二十九年六月六日に締結をしており、これまで、同年十月、平成三十年十二月及び本年三月の三回にわたって法務省、厚労省、外務省及び外国人技能実習機構の担当者がベトナムを訪問し、ベトナムの労働・傷病兵・社会問題省の担当者との間で協議を実施をしております。

これまでの協議におきましては、失踪技能実習生の問題等、我が国における技能実習制度の状況を説明するとともに、送り出し機関の認定基準や悪質な事案に係る通報の方法、実習先変更に係る送り出し機関側の対応等、様々な事項について協議を行っております。また、個別具体的な不適正事案に係る通報を行い、ベトナム政府による調査の依頼も行っているところでございます。

今回の総合的調査につきましても、結果がまとまりましたところでこうしたチャネルを使って確実に相手国に伝達をしてまいりまして、適正化の協力を求めてまいります。

○仁比聡平君 もうちょっと時間がなくなりましたから、あと一問、これだけ聞いておきますけど、その協議をこれ初めてやったんだと思います。その初めてやった協議の次の協議、これいつまでにどんなふうな進捗を図っていこうと双方でなっているんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) これまでもそうでございますけれども、適時のタイミングでお互いに課題を通報し合って準備をして協議を行うということでございます。

○仁比聡平君 のんびりした話していたら駄目ですよ。実際、特定技能一の手続を今現実に、業者といいますか、その送り出し機関の側も、あるいは日本側で登録支援機関や受入れ企業になる側もどんどんどんどん進めているわけじゃないですか。政府を挙げて皆さん分野別に説明会なんて各地でやっておられるじゃないですか。その説明会の中で、とんでもない中身だと、このままでできるのかと疑問が大きく広がっているという状況の下で、根幹のこの土台になる技能実習生の失踪問題について、今のようなお話では到底四月実施というのは認められない、強くそのことを申し上げて、あとは次回に譲りたいと思います。