2018年11月29日法務委員会配付資料

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

資料をお配りをいたしました。入管法改定案に関わって政府から提出をされているいわゆる受入れ見込み数の関係で、国土交通省の建設業という、あの十四分野の中の一つですね、ここについての資料ですけれども、三ポツ、初年度及び五年後の受入れ見込み数の考え方として、技能実習及び特定活動(外国人建設就労者受入事業)修了者について、これまでの移行実績等を踏まえ、一定割合が特定技能一号に移行すると推計(初年度五千から六千人、五年後三万人強)ということなんですが、この技能実習修了者の技能実習というのは、これは二ということなんですか。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

建設業については、特定技能一号外国人に求める技能として、技能実習二号修了程度の技能を想定しております。このため、現在、建設分野における技能実習二号修了者が技能実習三号ですとか、あと外国人技能就労者受入事業に移行する実績を踏まえてこの試算を行っているところでございます。

○仁比聡平君 先にその修了者ということについて伺いますけれども、技能実習二号を終えて、終えてというか三年たって、技能実習三号の試験を受けるというのがありますけれども、これ不合格になるということもあります。修了の、試験そのものを受けるのかというのもあるんですけれども、この修了者の修了というのはどういう考え方なんですか。

○政府参考人(北村知久君) これは、こちらの技能実習から特定技能一号への移行に際して外国人に求める要件については、業種横断の枠組みにおいて検討されるというふうに承知しております。私どもの試算では、今、とにかく技能実習二号が修了した方ということで数字ははじいてございますけれども、この要件につきましては、法務省を始め関係省庁と一緒に検討してまいりたいと思います。

○仁比聡平君 また一緒に検討してまいりたいと言っているんですけど。

そうすると、それは法案審議で伺いたいと思いますが、この見込みについて、修了というのは、つまり、技能実習の二号から三号の試験を受けたけれども不合格になった人もこれ含んでいるわけですね。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

試算としては、そういった方も含めて二号を修了された方全てをベースに計算をはじいております。

○仁比聡平君 それで、その上で、これまでの移行実績等を踏まえ、一定割合というふうになっているわけですが、これは中身はどういうことなんでしょう。

○政府参考人(北村知久君) 現在、その技能実習の二号の修了者から三号に移る方、また私どもの方で独自にやっております外国人建設就労者受入事業に移行する方、両方おられますけれども、平成三十一年には、技能実習二号を修了する方のうちの八割が技能実習を修了し、そのうち四割に当たる方が特定技能一号に移行すると、こういった前提で、こういった見込みで試算をしているところでございます。

○仁比聡平君 つまり、その八割のうち四割という一定割合は、これまで技能実習三号や特定活動としての建設の受入れ事業に入ってきてくれているから、だから特定技能一にも入ってくれるだろうと、くれるのではないかと、そういう推計だということですね。

○政府参考人(北村知久君) 今の四割のところでございますけれども、私ども、建設分野におけるその技能実習修了者のうちに、今年度、外国人建設就労者受入事業に移行する割合が現時点の見込みだと大体約三割から四割になるだろうというふうに見込んでおりますので、この新しい技能実習、失礼しました、特定技能一号ができたときにも大体同じような割合ということで、四割ということで計算をしているものでございます。

○仁比聡平君 ということなのですけれども、資料の二枚目は、失踪技能実習生の、平成二十九年で七千八十九人というものについての分野別の内訳なんですが、皆さんも御存じかと思いますけれども、建設関係というのがこれ四割を占める、その失踪者は急増しているわけですけれども、その中で、今年前半期、上半期の数字でも四割を占め続けているということで、この建設産業分野がいかに厳しい状況にあるかということが表れているわけですが。

その上で、これからの特定技能一の受入れ見込み数を考える上で、建設分野の失踪者が全体の四〇%に上っているということをこれどんなふうに評価して見込み数に積算をしたのでしょうか。

○政府参考人(北村知久君) 法務省さんの調査によりますと、建設分野の技能実習生については、昨年、二〇一七年に二千五百八十二名の失踪者が発生しているということで、委員御指摘のように、これは非常に大きな問題であるというふうに認識しております。

このような技能実習制度に関する状況に対応するために、昨年十一月より技能実習法が施行されまして、外国人技能実習機構による実地検査や、法令違反等があれば監理団体の許可や技能実習計画の認定が取り消される仕組みが導入されたということでございます。また、特に建設分野におきましても、この技能実習法に基づき、本年三月から国土交通省におきまして建設分野技能実習に関する事業協議会というものを開催しまして、技能実習制度の現状や課題等を共有したところでございます。

引き続き、建設業を所管する立場から、国土交通省としても、この技能実習の適正な実施、こちらについてもしっかりとした適正化を図ってまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 いや、私が伺っているのは、技能実習制度の適正化の問題ではないんですよ。技能実習制度を適正化するというのは、それは御努力始めていらっしゃる、それを何としてもやってもらいたいと思うけれども、劣悪な状態の下で失踪にまで至っている方々が全体の四〇%建設分野にいるわけですよね。で、それは大きな問題だと今もおっしゃったわけです。その技能実習制度の下で実習をしてきた人たちの中から先ほどの八割のうち四割と、それが特定技能一への移行の見積りなわけでしょう、見込みなわけでしょう。

そうすると、この全体の四〇%の失踪者を生み出してしまっている技能実習生の制度の中からこの特定技能一の見込みをするわけですけど、これどういう考え方になるんですかね。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

技能実習制度につきましては、これは今申し上げましたように、これは法務省さんの方の法律改正ということでございますけれども、昨年の改正により改善が行われているというふうに理解しております。

一方で、この試算につきましては、これまでの技能実習生から私どもの特定活動に移行する数字が、先ほど申し上げましたように、その三割から四割という数字がございますので、今後の特定技能一号についての試算についても今までの実績を、この特定活動に関する実績がほぼ同じような移行率になるだろうというふうに想定してこの数字を積算しているところでございます。

○仁比聡平君 結局、おっしゃっておられるのは、深刻な技能実習制度の下で、三年前に入ってきて、たくさんの人がここから失踪したり、あるいは追い詰められてうつや自殺未遂に追い込まれたりという状況が起こっているんだけれども、そういう、その下で三年を修了するに至った人の中から移行していただきますと。その失踪した人たち、苦しんでいる人たち、行方不明になっている人たちというようなですね、この人たちを結局セレクションしてきて、そこで残った人たちの中から特定技能一を考えますと、そんなことをおっしゃっているわけですか。そういうことになりませんか。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

特にそのセレクションとかなんとか、そういうことかどうかは、実態のところ何とも申し上げられませんけれども、とにかく試算としては過去の傾向を、ある程度使えるであろうという数字を試算において使っているということの、それ以上のものではないというふうに承知しております。

○仁比聡平君 ちょっと聞き方を変えますけれども、つまり、技能実習の三年間においてどういう実態に技能実習生が置かれているか、あるいはいたか、それから、その下で失踪までに至った方々がどれだけいるかということは考慮の外に置いて、三年の修了生が何万人ぐらいいて、その中でこれまで特定活動や技能実習三に移ってきた実績がどれぐらいあるかということで見積りをしたと、そういうことですね。

○政府参考人(北村知久君) 同じお答えに一部なりまして大変恐縮でございますけれども、この技能実習制度自体はその悪い状況をそのまま置いているということではなくて、これについてはその法律が昨年施行されていろいろ改善されているというふうに私どもは理解しておりまして、それはそういうものとして、試算においては過去の傾向を使って試算をしていると、そういうところでございます。

○仁比聡平君 はっきり認めてくださいよ。つまり、実習制度を適正化していくという取組はそれはそれでしているでしょうと。けれども、この見込み数の、受入れ見込み数の前提になっている移行実績というのは、三年を経て現に実習をしていた人、つまり修了した人、この人の中から特定活動や技能実習三に移行してきた人の実績を見てこれを考えているわけでしょう。

○政府参考人(北村知久君) それについては、おっしゃるとおり、今までの技能実習制度の中で実習されていた方をベースとして計算をしております。

○仁比聡平君 それは結局、技能実習制度を、この特定技能一に向かうセレクションプロセスになってしまうということになりませんか。昨日、報道では、技能実習制度が特定技能ゼロという制度になる、ゼロ、一、二ということになるではないかという指摘もあって、なるほどと思いました。

ちょっともう一問、国土交通省に伺いたいんですが、その今あっている外国人建設就労者受入事業、ここに関わってこの委員会で私明らかにしてきましたけれども、お手元にお配りをしている資料の五枚目なんですが、母国語相談の中で、七十四の例ですね。三年間の技能実習後、帰国せず二年契約を結んだ。ビザ申請は企業と監理団体がしたが、送り出し機関に、伏せてありますけれども、幾らドル支払うよう言われた。この金額は適切か。技能実習で来日前に幾らドル支払い、家の赤帳は預かられたまま。脱退一時金は三年分を請求するということかという相談があるんですが、これに対して、相談を受けた側は、ベトナム側のことなので、監理団体が送り出し機関と交渉するといった事例は聞いたことがあるといってベトナムの話にしてしまっているのですけれども、これについては国土交通省はどんなふうに、この事案についてはどんなふうに評価していますか。

○政府参考人(北村知久君) お答え申します。

外国人建設就労者受入事業におきましては、その特定監理団体の認定に当たりまして、外国人建設就労者がその者の建設特定活動に関連して、送り出し機関から保証金を徴収されないことなどを要件としてございます。

御指摘の事例につきましては、こうした制度が適切に、必ずしも適切に運用されていないという疑いがあるというふうに認識しておりますが、制度の実効性の確保を図り、引き続き受入れの適正化を進めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 いや、ちょっと曖昧にしてはならぬのじゃないですか。これ、技能実習制度でこの保証金などのこういう金銭の授受というのはこれ禁止されているでしょう。これ、大臣、いかがです。

○国務大臣(山下貴司君) 今御指摘の例につきましては、これはベトナム側の送り出し機関が要求したというこの事例でございますよね。

これにつきまして、今、これ技能実習をそもそも送り出して、その後、二年特定活動にやっていたということで、技能実習の送り出し機関ということになるんだろうというふうに思いますが、これにつきまして、今、日本とベトナムの間では技能実習の関係で二国間取決めというものをしております。こういった二国間取決めの枠組みの中で両国で情報共有をしっかりやると、そうした中で、違法なといいますか、不当な保証金を取っているような送り出し機関があれば、これはもう両国で共有して排除するということはしっかりとやらせていただきたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 いや、やらせていただきたいというか、といっても、現にそういう相談が寄せられているけれども、そうした毅然とした対処というのは、これされていないのではないかと思われるんですね。

これ、国土交通省が認定した特定監理団体と、それから適正監理計画の下で行っている特定活動ですよ。それなのに何で、そのベトナムとの二国間取決め、あるいは省のガイドラインそのものの中でも、保証金の徴収等については技能実習制度において禁止されていると。これは特定活動についても同じであると決めておられるでしょう。何でこんな実態が起こってしまうわけですか。

○政府参考人(北村知久君) こちらの制度におきまして、特定監理団体は、受入れ企業に対しての指導監督を始め、外国人建設就労者のあっせん、送り出し機関との調整、外国人からの相談対応等を行う能力を有するものとして国土交通大臣において認定をしておりますので、基本的には適切に業務を実施する体制等を備えているものと認識しております。

他方、特定監理団体が受入れ企業による適正な、例えば賃金の支払ですとか労働条件についての確認、指導ということを的確に行うためには、給与、手当、社会保険その他の複雑な労働基準関係法令など、十分な理解が必要でございます。このため、国としても、専門的知識を備えた制度推進事業実施機関に委託をして、受入れ企業に加えて特定監理団体にも巡回指導を行い、適正さを欠く場合にはそれぞれに対して改善指導等を行っているところでございます。

こうした取組を通じて特定監理団体がその役割を遂行できるように取り組むとともに、受入れ企業に対しても改善指導等を行いながら、外国人建設就労者の適切な受入れを図っているところでございます。

○仁比聡平君 特定監理団体が役割を果たせてないでしょうと。

これ、二十七日の国土交通委員会で、我が党山添議員がこの制度の問題についてただしていますけれども、特定監理団体が自らの監査で不正を見抜いたという事例というのは、これ実は一件もないんですよ。そういう下で、国土交通省、業所管省庁として国土交通省が認定をしている制度の下でこういう事態になっている。これ、特定技能一になって、こういう事態が続いたり、あるいはもっと大きくなったりしないという保証はどこにもないんじゃないんですか。国土交通省の認識はどうなんですか。

○政府参考人(北村知久君) 現行のこの特定活動の制度におきましては、こういった外国人に対する適正な賃金の支払といったことを担保するために、まず国土交通省が、国土交通省の立場で受入れ企業が作成する外国人の報酬予定額を明記した計画を審査、認定するとか、また、当該計画が適正に履行されているというようなことの継続的な確認、これは制度実施機関に委託して行っていただいているわけですけれども、これによりまして、委員御指摘のように、一部その特定監理団体の能力が不十分な点もあろうかと思いますけれども、制度全体としては適正な事業遂行が図られていると認識しております。

したがいまして、新しい特定技能制度におきましても、現行の制度の仕組みなども参考としながら、また制度所管省庁とも連携しながら、外国人の適切な就労環境を確保する方策についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 制度全体はうまくいっているなどという、そういう政府答弁の下で年間に昨年で七千人を超えるというその失踪者を生み出してきたのがこれまで政府が推し進めてきた外国人受入れ制度なんですよ。その実態、矛盾というものを徹底して審議をすることなしに前に進むことはできないということを申し上げて、あとは午後に質問いたします。