○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、政府が検討している更なる外国人労働力、労働者受入れについてお尋ねをしたいと思います。

報道では、皆さんには朝日新聞の四月十八日付けをお配りしましたが、「技能実習後も五年就労」、あるいは「技能実習を経験していなくても、実習修了者と同水準の技能を身につけている人らにも道を開く。」と、こういう報道がされているわけです。これは二月二十日の経済財政諮問会議における総理指示に基づくものだとお伺いをいたしました。

二枚目に法務省提出の資料をお配りをしていますが、まずお尋ねをしたいのは、この総理指示というのがどのようなものか、そして、現在の技能実習制度に指摘をされている低賃金や劣悪な労働環境について、政府としてどういう検証を行った上でこの総理指示に至ったのか、ここをまず御説明いただけますか。

○政府参考人(大島一博君) お答えいたします。

我が国の有効求人倍率は四十三年ぶりの高い水準になりまして、分野によっては深刻な人手不足が生じています。こうした中、この五年間で我が国の雇用者数は三百万人程度増加しておりまして、うち二割の六十万人が外国人です。しかし、その内訳を見ますと、就労目的の在留資格でない留学生のアルバイトなどの資格外活動、そして技能実習生が半分以上を占めている状況にあります。こうしたことを踏まえ、内閣府として外国人労働力を経済財政諮問会議の議題として取り上げることと至っております。

その議題を取り上げました二月二十日の経済財政諮問会議におきましては、我が国の外国人人材の受入れにつきまして、民間議員から、真に必要な分野に限った新しい制度について政府として真剣に考える時期に来ているですとか、技能労働者に対する現在の入国管理の制度が適切かどうか再検討する時期に来ているといった議論がありました。

こうした議論を踏まえて、会議の最後に総理から、専門的、技術的な外国人受入れの制度の在り方について早急に検討を進める必要があると御発言があったものでございます。

○仁比聡平君 深刻な人手不足状況というのは、それはそうなんだろうと思うわけですけれども、その下で、今年の夏に方向性を示すためと、この時期の目途が法務省の資料にも出ていますが、これは骨太方針に反映させるというような、こういう目標で行っているわけですか。

○政府参考人(大島一博君) 総理の御発言の中では、制度改正の具体的な検討を進め、今年の夏に方向性を示したいと考えているとございます。骨太方針は例年六月頃に策定をしていまして、状況次第ということで考えております。

○仁比聡平君 という極めて性急な指示がされ、この資料に以降開かれているタスクフォースの開催状況がありますけれども、矢継ぎ早に九回という回数を重ねているわけなんですが。

先ほど御答弁の中に、民間議員から現在の制度が適切かどうかという発言があったということですが、改めて確認をしますけれども、これまでの技能実習制度が抱えている人権侵害あるいは劣悪な労働環境、その下で極めて深刻な失踪というような状況がこの委員会でも度々繰り返し問題になってきましたが、この検証というのは、この総理指示の前に、総理指示が行われるまでにこれ検討されたんですか。

○政府参考人(大島一博君) 諮問会議におきましてはないと承知しております。

○仁比聡平君 重大な問題だと思うんですよ。重大な人権侵害があり、失踪状況は、皆さん、平成二十九年で七千人を超えるんですよ。そこにまともな検証もなく、とにかく人手不足だから入れろ入れろと、それは乱暴でしょう。

この設置目的のところにあるように、一定の専門性、技能を有する外国人材の受入れを進めるという観点が示されていますが、これ法務省にお尋ねしますけれども、これ、一定の専門性、技能というのは、この報道などでも指摘をされていますけれども、技能実習の修了だとか、あるいはそれと同水準の技能ということとこれ無関係なんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。

外国人材の受入れにつきまして御指摘のような報道がなされているということは承知しておりますが、現在議論を行っておりますタスクフォースにおきまして、受入れ対象者に求める専門性や技能の程度など様々な検討が行われているところでございます。具体的な受入れ対象者については検討中でございますが、技能実習を修了した者を対象とすることの適否も含めて検討を行っているところでございます。

○仁比聡平君 適否も含めて検討を行っていると。つまり、技能実習修了生ということが、あるいはそれと同水準ということがテーブルに上っているわけでしょう。ワン・オブ・ゼムというお言葉も担当者から昨夜伺いましたけれども、局長、そういうことですね。

○政府参考人(和田雅樹君) 検討の対象には上っております。

○仁比聡平君 大臣、おかしいと思いませんか。

大臣、二月十五日の御答弁で、外国人労働者の受入れは技能実習制度とは別に議論をされるべきものであるというふうに、これまでも繰り返してこられた建前を御答弁されているんですが、けれども、実際、人手不足で苦しんでいる中小企業関係とか、あるいは後ほど議論したいと思いますが建設や農業、介護、こうしたところでは、とにかく人手不足状態に対する、これを解消するための労働力確保策としてこれを求められている、それが実際と。実際、これまで建設分野で技能実習の修了者、これを二〇二〇年のオリンピック、パラリンピックなどの建設需要に対応するための特定活動ということで受け入れてきたという現実もあるわけなんですね。

技能実習で技能を獲得しているとか、せっかく育てた戦力だというような言葉も飛び交っているわけですけれども、これ、技能実習を含めてこういうタスクフォースで具体化をしようと、夏までには結論を出そうと言いながら、これ検証しないと、これまでの技能実習制度が抱えている重大問題について。これ、おかしいと思いませんか。

○国務大臣(上川陽子君) 技能実習生の問題につきましては、失踪者数、これが増加傾向にあるということでございまして、法務省としてもこうした事態を重く受け止めているところでございます。

昨年、新しい新制度が施行されまして、送り出し国との政府間の取決めによりまして、手数料等を不当に徴収する送り出し機関を排除することとしております。また、いわゆる技能実習法におきましては、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制によりまして団体や事業者を直接規制することができる枠組みを構築しているほか、人権侵害の禁止規定や罰則、相談受付体制の整備等を規定しておりまして、これらにより制度の適正化を図り、失踪の防止に努めていかなければならないというふうに考えております。

今回のタスクフォースにおきましては、現在生じている深刻な人手不足に対応するため、専門的、技術的分野における外国人受入れ制度の在り方につきまして制度改正の具体的な検討を早急に進めるということでございまして、先ほど来の答弁がございましたとおり、本年の夏に基本的な方向性につきまして結論を得るべく、現在、関係省庁とともに議論を行っているところでございます。

今回のタスクフォースでの新たな外国人材の受入れの検討に当たりましては、当然のことながら、技能実習制度において課題とされている失踪の発生等に係る防止策を講ずる必要があるというふうにも考えているところでございます。タスクフォースにおきましては、受け入れる外国人材の保護のため、外国人材から保証金を徴収する等の悪質な仲介業者等の介在を防止するための方策につきまして議論されているほか、外国人材の円滑な受入れと活動を可能とするための適切な在留管理、また支援体制を構築することなどが議論されていると承知をしております。

今回の新しい受入れ制度におきましては、技能実習制度において課題とされた失踪あるいは人権侵害、こうしたことが生じないよう、しっかりとした対応策につきまして講じてまいる所存でございます。

○仁比聡平君 ちょっとびっくりする御答弁なんですね。

今大臣がお話になったような適正化の取組、この御指摘になったような要素は、これまでずうっと議論されてきましたよ。実際、技能実習機構をつくるという法改正も行われて、実際に動き始めているでしょう。ところが、その下で現実に異様な急増をしているというのが技能実習生の失踪者じゃありませんか。

先ほど重く認識しているというような御趣旨ありましたけれども、ちょっとそれなら数字確認しますけど、失踪者は平成二十四年、ここでも大変でしたけど二千五人ですよ。ところが、昨年、平成二十九年は七千八十九人ですよ。これ、増え方が異常でしょう。しかも、七千人を超えるという失踪者って、これ、数が膨大でしょう。この中で、失踪した技能実習生がなぜ失踪したのかと、これ網羅的とは私思いませんけれども、法務省が退去強制手続において聞き取りをしたという調査がありますけれども、これ、契約賃金以下、あるいは最低賃金以下、指導が厳しい、帰国を強制されたとか暴行を受けた、こういうような実態が現実に起こっているわけですよね。

これを正そうと、それはもちろんしてきましたよ。ところが、現実には失踪者が急増しているという下で、今年の夏までにですよ、これを生じないような防止策を図るって、それ本当にそんなことできるんですか。ちょっと私は信じられないんだけれども。

ちょっと個別伺いますが、三枚目の資料に、お分かりのように、この失踪者がぬきんでて多いのが農業の関係千二百七人、それから建設関係二千五百八十二人です。これらの分野では、人手不足だからということで、先ほど御紹介をしたように、受入れを拡大しようという政策が次々と行われてきました。その下で、こういう失踪ということに象徴される事態が起こっている。これをどう認識して、これ取り組んでいくというのか。

これは国土交通省にまず伺いたいと思いますけれども、ここまで来たら、建設業法を始めとした業法に基づく実施機関あるいは監理団体の監督指導をこれ行うべきじゃないんですか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) 建設分野におきまして技能実習の失踪者が多数出ておるというような問題が生じておることについては、これは誠に遺憾なことだと考えてございます。

これに対しましては、昨年十一月に施行されました技能実習法におきまして、国土交通大臣は事業所管大臣として関与できるということに制度が変わりました。具体的には、建設分野などの特定の業種に係る事業協議会を組織しまして、技能実習生の保護に関する取組についての協議を行うことができるということになったわけでございます。

これに基づきまして、さきの三月二十六日に国土交通省におきまして第一回の建設分野技能実習に関する事業協議会を開催いたしまして、関係します元請団体、専門工事業団体、それから外国人技能実習機構などに参加いただきまして、母国語相談の実施状況を始めとします技能実習生に対します支援や保護に関する取組の紹介、それから失踪の発生状況を踏まえた注意喚起を行うなど、制度の現状や課題を共有したところでございます。

国土交通省といたしましては、引き続き、法務省などの関係省庁と連携いたしまして、建設業法を所管する立場から適正な技能実習の実施に協力してまいりたいと考えてございます。

○仁比聡平君 会議をやっとやりましたというだけの話なんですよ。

農水省、どうなんですか。

○政府参考人(山北幸泰君) お答えをいたします。

農業分野の技能実習におきまして、実習生の失踪あるいは技能実習生に対する賃金未払等の不正行為といった問題が生じていることは極めて遺憾だというふうに考えております。

このため、農林水産省といたしましては、農業分野でこうした問題が発生することのないよう、パンフレットを作成、配付して、農業経営者に対し、不法就労や人権侵害行為等を行った事業主は処罰の対象であることについて周知をする、あるいは、農林水産省が所管する団体が監理団体として受け入れた技能実習生に関して不正行為等が発生した場合には、監理団体に対する指導を行うなどの対応を行ってきたところでございます。

また、実習生を受け入れるですとかあるいは日本人を雇用するということにかかわらず、農業における労働環境の改善といったことが極めて重要な課題だというふうに認識しておりまして、昨年十二月から今年の三月まで農業の「働き方改革」検討会を開催いたしまして、農業経営者が、今後多様な人材にとって働きやすい環境整備を進めていくよう推進しているところでございます。

このような措置と併せまして、技能実習制度の適正な運用について、引き続き、法務省等関係省庁と連携しながら、現場への周知徹底、図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 結局、パンフを作りました、周知しますというだけなんですよ。それが現状なんですよ、大臣。

その下で、今年の夏までにと、骨太に反映させるなんて言って、先ほどおっしゃった防止策、これをこの短期間の間に本当に達成するということは私は無理だと思いますけれども、少なくとも、そうした先ほどおっしゃったような防止策が達成されない限り、新たな受入れ策の拡大ということは、これはあり得ないと。

今後、また機会を見て議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。