○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、性暴力を根絶する上で緊急の課題として、アダルトビデオ、AV出演強要問題について伺いたいと思います。

この問題は、当事者の深刻な訴えと支援の広がりで被害が明るみに出る中で超党派の声が上がり、一歩一歩動かしてまいりました。ところが、今国会で、先日、与党議員から心ない、まるで言いがかりのような質問がされたこともございまして、そこでまず、男女共同参画局長においでいただきましたが、野田大臣はこの問題の性格について、若年層、若い女性たちを狙った性暴力は被害者の心身に深い傷を残しかねない重大な人権侵害であると、こういう認識を示されました。

この人権侵害の深刻さを政府としてどのように捉えておられるか、また政府はどんな構えで根絶に取り組んでいかれるのでしょうか、御紹介ください。

○政府参考人(武川恵子君) いわゆるアダルトビデオへの出演強要を始めとする女性に対する性的な暴力に関わる問題は、犯罪となる行為を含む重大な人権侵害でございます。特に、十代から二十代の若年層を狙った性的な暴力は、その未熟さに付け込んだ許し難いものと考えております。

また、そのような性暴力の被害者は、身体的な面のみならず、多くの場合、精神面でも長期にわたる傷痕を残す、そういうものでございまして、あってはならないものでございます。

女性活躍の前提となる安全、安心の基盤を揺るがす問題であるため、政府を挙げてその根絶に取り組む必要があると考えております。

○仁比聡平君 ありがとうございます。

未熟さに付け込んだ許し難い人権侵害という御答弁でもありましたが、そうした構えで、特にこの一年、関係府省において相談窓口の充実が取り組まれてまいりました。例えば、警察庁の相談窓口に二十五件という相談件数が上がったりしていますけれども、これで被害の全てを把握したとは、政府どの府省も思っていらっしゃらないと思います。

お手元の資料に、支援団体でありますポルノ被害と性暴力を考える会、PAPSの資料から抜粋してお配りをしましたが、一枚目にありますように、このPAPSとNPOライトハウスへの二〇一六年の新規相談件数というのは百件、一七年で八十九件、二〇一二年の一件などからするともう急増しているわけですね。

こうしたことを見ますと、被害は深く潜在化しているのではないかと思いますが、内閣府としては、あるいは政府としては、インターネット調査も踏まえてどんな御認識でしょうか。

○政府参考人(武川恵子君) アダルトビデオのあっせん強要問題は、被害者の多くが若年の女性でございますし、また性犯罪、性暴力は周囲に打ち明けにくいということがございまして、関係行政機関などで把握している相談件数はこうした問題を抱える被害のごく一部であるというふうに認識をしております。また、これまでに内閣府で実施しました若年層を対象とした性暴力被害の実態の把握のためのインターネット調査におきましても、被害に遭った方々がなかなか公的な相談窓口には相談していないという、そういう実態も明らかになっているところでございます。

今後、公的相談窓口の認知度を高めるための広報啓発の取組や相談員に対する研修の充実、さらには女性に対する暴力を容認しない社会環境の整備を進めることなどを通じまして、被害に遭われた方々が孤立してしまうことのないように努めてまいりたいと思います。

○仁比聡平君 政府のそうした取組を一層強化をしていくときだと思うんですけれども、その中で、今日大臣の認識も含めてお尋ねしたいと思いますのは、この手口の卑劣さなんですね。

このPAPSの資料の二枚目、御覧いただきますと、勧誘、スカウトに当たって、この上の方にホームページの写真がありますが、撮影会モデルあるいはパーツモデル、こういう紹介できるお仕事三十種以上といって、顔ばれ一切なしだから安心ですなどと若い女性を誘引するわけですね。女優や歌手あるいはモデルになりたいという気持ちに付け込んだだましのテクニックだと言うべきだと思います。

このAVというのは聞いていないわけです。けれども、ここに言わば引っかかっていくと抜けられなくなる強要の手口があります。スタジオに行くと大勢の男性スタッフに囲まれて、契約したんだからとか違約金が発生するよとか言われる。二枚目、もう一枚めくっていただくと、例えば交わされた契約書の例がありますが、被害の損害を請求するとか出演義務を怠った場合にはとか、こうした法律用語を振りかざして、社会経験のない若い女性たちをがんじがらめに拘束していくわけですね。

前のページにもありましたけれども、事前に身分証明書のコピーを取る。例えば、未成年でないことを確認するからなどと言って学生証などを取る、あるいは自宅の住所を取る。こうやって個人情報を握って、最後は親や学校にばらすというような脅しを掛ける例もあります。

こうした形で、契約だとか合意だとかそういう外形を取って、けれども、内実は強要。この形によって被害者が拘束されるという下で、顔がばれる、身ばれするということで就職が取り消されたり、会社を辞めざるを得なくなったり、あるいは自主的に退学をする、相談中に自ら命を絶たれると、そういうケースが相次いでいるわけです。これ、社会的経験がない、あるいは自己肯定感情も持てないでいる、そうした女性たちの弱みに付け込んだ極めて卑劣な手口だと思います。

この一年間の取組でこうした実態が随分明らかになってきたかと思うんですが、警察庁に、昨年五月二十四日の通達で、アダルトビデオの出演に関する契約などの相談を受けたときにどう適切な助言を行うかという留意事項を示しておられますが、その要点を教えてください。

○政府参考人(小田部耕治君) 警察では、アダルトビデオへの出演に関する契約等の相談を受理した際には、一般論で申し上げますと、民事上、錯誤に基づく契約は無効であるほか、詐欺や脅迫に基づく契約については承諾した意思表示を取り消すことができることなどを踏まえながら、個別具体的事案に応じて所要の助言を行ったり、法テラス等専門機関の紹介を行うなどしているところであります。

今後とも、こうした相談や被害申告があった場合には適切に対応してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 その通達には、そうした相談を受けたときに、女性が出演を拒否できる可能性は高いという基本認識に立って相談に当たらなければならないのだということが示されているわけですね。

この一年の取組で、契約だとかあるいは演出だとかと言いながら、AV業界の異常さがはっきりしたと思います。

大臣に、ターニングポイントになった二〇一五年の九月九日の東京地裁判決の趣旨をお伝えして認識を伺いたいんですが、この裁判判決は、アダルトビデオへの出演契約が、プロダクションが指定する男性と性行為等をするということを内容としている、これが出演者である被害者の意思に反して、意に反して従事させることが許されない性質のものだと述べているんですね。これ、当然だと思うんですよ。

不特定の誰か分からない相手との性行為を義務付けるという関係が合法化されてはならないと。誰と性行為をするのか、それが本人の同意なく、あるいは意思に反して、プロダクションなりメーカーなりに指定されて性行為を拒否できなくなる、それは性暴力そのものだと思いますが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(上川陽子君) 女性に対しまして、御本人の意に反してアダルトビデオに出演を強要すると、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題ということでございますが、被害者の心身に深い傷を残しかねない重大な人権侵害であると、また女性に対する暴力にも当たるものであるということでございます。

先ほど男女共同参画大臣の野田大臣も発言されたということでございますが、政府を挙げてその根絶に取り組む必要があるというふうに考えます。

○仁比聡平君 その決意で、今、もう一歩対策を充実をさせるということが求められていると思うんです。

実際、現に起こっていることは何かと。その性暴力を契約、合意だと言って強要する中で、PAPSの配付した資料の四枚目にありますが、契約書に例えばこんな同意をさせている。私は、本件コンテンツの出演に当たっては、貴社が本件コンテンツ撮影のために選定したスタッフの指示に従うものとし、演出、撮影方法について一切申立てを行いません。その下の同意書には、妊娠、性感染症への感染について一切の補償や責任を求めないものとしますというふうにあります。つまり、妊娠や性感染症のリスクが高い、そうしたありとあらゆることを演出だと言ってやらせる。これはあり得ないことだと思います。

私、お一人の元AV女優であった被害者の方にお話を直接伺いましたけれども、実際そういう強要をされて、フリーズして抵抗などできない。それはまさに強制性交の被害ですよ。そうしたことが一旦行われ、絶望します。その絶望感の中で囲い込まれて、撮影が繰り返されたりもします。でき上がったAVビデオは、仮に笑顔が見えたとしても、それは支配されて、演技という外形が編集されている。問題は、嫌なものは嫌なんだと、ノー・ミーンズ・ノーという観点からこのアダルトビデオの出演強要問題を捉え直して、あるいは見方を根本から転換して取組を強化しなければならないというところにあると思うんですね。

そのようにしてでき上がったアダルトビデオがインターネット上で販売される。これは拡散されますから、永遠に消えない、第二の人生を歩めない、人生そのものに係る人権侵害になっていると、ここが重大な問題になっています。

こうした動画を回収し、販売を停止し、削除してほしい、これは切迫した要望なんですが、これ、インターネットに流出すると、被害者が完全に削除することは今、極めて困難です。そのことをこのPAPSさんはデジタル性暴力と表現をしておられますが、男女共同参画局長、こうした広範に流通、拡散するというインターネット上の被害の重大さについてはどんな御認識でしょうか。

○政府参考人(武川恵子君) 昨年の三月に女性に対する暴力に関する専門調査会から報告書が出ておりまして、その報告書によりますと、アダルトビデオへの出演強要の危険性として挙げられているものとして、撮影された映像が繰り返し使用、流通され、インターネットなどにも掲載されることによる二次被害に悩み、苦しみ続ける、また、家族、友人、学校、職場などにアダルトビデオへの出演が知られないかとおびえ続ける、さらに、アダルトビデオへの出演が知られることにより、家族や友人との人間関係が壊れる、職場にいづらくなり職を失うといったことが挙げられております。

一度画像が流出してしまいますと完全に削除することがほぼ不可能となり、これが本人の同意なく撮影された性的な画像であれば本人の名誉や私生活の平穏を侵害することとなり、決して許すことのできない人権侵害だと考えております。

○仁比聡平君 ところが、被害者が求めても削除がされないというのが今の仕組みなんです。

時間がないので、警察庁と総務省、端的に結論だけ伺いたいんですが、警察庁が削除要請をしているのは刑法違反のわいせつ物、児童ポルノ違反という違法情報であって、私が申し上げている被害者の意に反したAVの流通は対象になりません。総務省には有害情報の窓口というのがありますが、プロバイダーに削除申出ができますよという案内はしてくれるんだけれども、その後実際に削除されたかという実態も今は把握をするようなふうにはなっていません。そのとおりですね。

○政府参考人(小田部耕治君) 警察におきましては、インターネットに掲載された情報が、情報の掲載が犯罪に当たるような場合には、プロバイダー、サイト管理者等に対して当該情報の削除の要請を行っているところでございます。

○政府参考人(古市裕久君) お答えいたします。

御指摘のありました違法・有害情報センターでは、相談者に対して迅速かつ的確な助言を行うことに注力をしておりまして、現時点では、実際に相談対象となった情報が削除されているかどうかを把握する運用は行っていないところでございます。

○仁比聡平君 インターネットあるいはコンピューターの拡大によるこうした被害を、これまでの仕組みでは被害を回復する対応はできないんですよ。

法務大臣にお願いをしたいと思うんですけれども、どれだけの削除請求がかなっていないか、支援団体や弁護士からも実情を聞くなどして実態の把握を行って、インターネット上の画像を嫌なものは嫌だと速やかに削除する、これを組織化するということが私はどうしても必要だと思うんですね。野田大臣を始めとして、関係の閣僚の皆さんと是非御相談をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 先ほど申し上げましたけれども、アダルトビデオ出演強要問題ということで、政府が一丸となって取り組むべき重大な問題であるというふうに認識をしております。

野田大臣、また関係省庁ともしっかりと連携をし、一丸となった対策に努めてまいりたいというふうに思っております。

○仁比聡平君 切迫した要求として、自らが映っているこの映像、これが公開されているということと、それから、これがどんどんどんどん拡散されていくということ、この映像が一次情報として使われて、オムニバスなんて言うんですけど、新たな作品と称するものが作られて、これがまた拡散をしていく。これ、世界中に広がっていく。これは、嫌だと言っている女性にとって、これほど耐え難い人権侵害というのはないと思うんですよ。

私たちが声を上げ、政府が取り組んでいただいて以来、実際削除をメーカーや販売店に求めながら、プロバイダーに求めながら、これが削除されないという現実というのが日々進行しているんですね。

これ、連携して抜本的に対策取り組んでいただくという決意をいただきました。このインターネット情報、この削除について是非特段御努力をいただきたいと思いますが、大臣、もう一度いかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) この問題につきましての重大な人権侵害であるということについては、私どももしっかりと認識をしております。また、大変緊急な要請ということにつきましても理解をしているところでございます。

関係省庁、また野田大臣とともに、この問題について取り組んでまいります。

○仁比聡平君 ありがとうございます。是非頑張っていただきたいと思います。

この女性たちの言わば人生と尊厳を食い物にしてもうけをあさる、そうしたやからをどうするのかと。これ、これまで所管省庁はないわけです。市場規模で年間四、五千億円というような関係者の本なんかもありますが、それをはるかに超えるものなのではないか、これが海外の違法サイトなども使って巨額の利益を手にしているのではないか。そうした問題について、是非政府が挙げて取り組む、これを厳しくただしていく所管あるいは監督という省庁も私は設けていく必要があるのではないかと思います。

もうその御答弁を伺う時間がなくなりましたので、今日はここで質問を終わりますけれども、政府を挙げての取組を強く求めて、今日は質問を終わらせていただきます。

ありがとうございました。