○仁比聡平君 十二月六日の審査会に引き続き、憲法九条について述べます。

安倍総理は、この間、憲法九条に自衛隊を明文で書き込むとする憲法改悪を強引に推し進める一方で、それによって自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないなどと繰り返しています。しかし、総理は、今の自衛隊の任務や権限を正面から説明しているでしょうか。逆に、安倍政権は、日米軍事一体化の下、現在の自衛隊が何をしているか、これから何をしようとしているか、国民にまともな説明さえせず、国会にもかたくなに隠し続けています。

特定秘密法案の強行に対し、沖縄返還密約を明らかにした元毎日新聞記者の西山太吉参考人は、秘密は権力の集中をもたらし、それは戦争につながると指摘しました。実態は隠し、けれど変わらないと言い張って国民をごまかし、憲法九条を変え、制約を取り払おうなど、断じて許されません。

現実には何が起こっているでしょうか。昨日、今度は青森県で、米空軍三沢基地のF16戦闘機がシジミ漁最盛期の小川原湖に燃料タンク二本を投棄する重大事故が起こりました。沖縄県米海兵隊普天間基地のオスプレイや大型輸送ヘリの墜落、大破、相次ぐ部品落下、攻撃ヘリの不時着事故、山口県米軍岩国基地における夜間離発着の強行を始め、在日米軍は今や日米合意や米軍基地周辺自治体との協定、確認事項をも公然と破って、横暴勝手な訓練、運用を強化し、耐え難い被害を国民に広げるとともに、我が国の主権を踏みにじっています。

安保条約と日米地位協定の下、米軍の運用に物は言えないと言い、米軍には安全運航義務を適用除外にしている航空法特例法などにより、幾ら事故が起きても自らは立入調査も検証もできず、米軍言いなりに運用再開を認めてきた政府の対米追随の積み重ねがこの事態をもたらしていることを安倍政権は猛省すべきであります。

NPR、核態勢の見直しで、核先制攻撃を辞さない、核兵器の前進配備を進めようとする米トランプ政権と一〇〇%共にあると言ってはばからず、二〇一四年閣議決定と日米新ガイドライン、安保法制、戦争法の具体化を推し進める安倍政権の下で、今自衛隊はこうした米軍との一体化を深め、海外での武力行使を含む体制を増強しています。

政府は、今国会冒頭の安倍総理の施政方針演説で初めて米艦艇と航空機の防護の任務に当たったことを宣言しながら、その中身を全く明らかにしようとしていません。

安保法制による米艦防護、武器等防護は、元々、先制攻撃を辞さないとする米軍と平時から一体となり、現場部隊の判断で国民の知らない間に武力行使へエスカレートする危険をはらむ明白な憲法九条違反です。その発動を宣言しながら、中身を説明しようともしない安倍政権の下で、自衛隊は、専守防衛から懸け離れた、米軍と肩を並べて戦う自衛隊に変貌させられているのです。憲法九条を改悪し、安倍政権の下で大きく変貌する自衛隊を書き込むなら、憲法九条二項の戦力不保持、交戦権否認の意味は変わらないどころか百八十度覆され、際限のない海外における武力行使に道を開くことになるのです。

国民の多数は改憲を求めていないのに自民党が憲法改定の動きをいよいよ加速する下でこの憲法審査会を動かすことは、勢い、改憲項目をすり合わせ発議への地ならしとなる重大な危険をはらんでいます。審査会は動かすべきではないことを改めて強調し、意見表明といたします。