193通常国会2017年5月26日参議院運営委員会『共謀罪法案は審議の前提を欠く』

 

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、ただいまの提案、すなわち二十九日月曜日に本会議を開いて共謀罪法案の審議入りを強行しようとする与党の提案に断固反対の立場を表明をいたします。

その最大の理由は、加計学園疑惑をめぐって、首相の進退に関わる根本問題が国民と国会の前に提起をされているからです。

総理は、この問題について、関与が明らかになるならば、辞任をする、責任を取る、こうした趣旨の発言をしてこられました。政府・与党は、挙げてこの疑惑を隠蔽を図ってこられました。

ところが、どうですか。文科省の前次官が週刊誌や新聞あるいはテレビの報道に続いて、昨日四時から記者会見を行い、総理の意向という一連の文書が確実に存在したものであると、衝撃的な証言をしたその直後ではありませんか。

文科省は、調査をしたが確認できなかったなどと言ってきましたが、これは真っ赤なうそだったんですか。それとも、極めて不十分な調査をやったことにして、総理の疑惑を権力ずくで隠蔽しようとしているのですか。怪文書などという菅官房長官の引き続いての発言は、私は断じて許すことはできないと思うんです。

御存じのとおり、前川前文科次官は、自分が次官として共有していた文書である、あったものをなかったことにはできない、そう述べました。加えて、加計学園の今治市における獣医学部の新設について、極めて薄弱な根拠で、公平公正であるべき行政がゆがめられた、そう述べているわけですね。

事は国政の根本に関わる大問題であり、政府の最高責任者、自民党の総裁である安倍総理自身の進退に関わる大問題です。

私は、イタリアなどの一連の外遊日程から総理がどんなつもりで帰国をされるのか、国民が政治を私物化する政治を許して温かく迎えるとでも思ったら大間違いだということを、この問題を横に置いてでも共謀罪の審議入りをあくまで強行しようとする与党、この委員会の皆さんに警鐘を鳴らし、本当にそんなことでいいのかと強く申し上げたいと思うんです。

格差が大きく広がる中で、政治や行政を私物化し、これが発覚すると権力ずくで隠蔽する、そんな安倍政治に国民はほとほとあきれ果て、もううんざりしていたところに、決定的な証拠が、証言が提出をされているんですから、与党、野党、立場を超えて、前川次官の証人喚問、総理出席の予算委員会の集中質疑、まずは徹底してこの問題の真相解明を図るというのが私たち国会議員のやるべき仕事ではありませんか。これを差しおいて共謀罪の法案審議入りの強行など、もってのほかだと言わざるを得ません。

もちろん、共謀罪法案について、我が党は、皆さんが言うようなテロ等準備罪などではなく、紛れもなく過去三度廃案になった憲法違反の共謀罪にほかならない、断固反対をしてまいりました。

その立場に違いはあるでしょう。けれども、皆さん、この国会で、あと会期末まで僅かしかない、何が何でも強行するような状況にありますか。国民は、皆さんが推進しようとする、推し進めようとする法案を本当に理解していますか。

衆議院法務委員会での強行採決が行われた直後の週末に、共同通信が世論調査を行いました。御存じのとおり、説明不十分と答えた方が七七%に上ります。その不安や怒りの声は、その後、日を追うごとに急速に広がり、国会前の行動はもちろんですが、今朝ほどの朝日新聞の世論調査でも、より強い方向が、結果が表れているではありませんか。

私は、この世論を一体どう受け止めているのか、この間の火曜日、参議院法務委員会の質疑で金田大臣に問いました。大臣がどう答弁したか御存じですか。これまでどおり丁寧な答弁に努め、理解を得ていきたい、そうおっしゃる姿にはあきれるばかりです。これまでどおりの答弁と言うけれど、質疑をすればするほど国民の懸念が広がる。大臣が答弁をすればするほど、そのたびに新しい論点が生まれる。それは、法案そのものがどんな行為を処罰の対象とするのか、全く不明確だからです。

人の生命や身体、財産など法益を侵害する客観的な危険がない合意や実行準備行為があれば処罰するという。そうすれば限りなく内心の処罰に近づいていくし、内心に踏み込んだ捜査が行われることになるのではないか。捜査機関によるそうした内心に迫る捜査は、恣意的濫用のおそれに歯止めを掛けることなんてできないということが戦前の治安維持法体制下の我が国の歴史が証明している。

だからこそ、そんな刑法や刑事捜査を許さないために、私たちの憲法は、思想、良心の自由、表現や言論の自由、結社の自由、そして適正手続の、世界で本当に誇るべき刑事手続における人権保障の規定を定めている。その理由についての認識を問われた金田大臣は、私はお答えする立場にありませんなんと言っている、そんな国会なんですよ。

その下で、最高責任者であるはずの総理がその進退を迫られているような状況で、どうしてこの共謀罪の法案審議を、国民に開かれた、私たち国民代表の国会の任務にふさわしく、しっかり行っていくことができるというんですか。まずは総理に掛かっている疑惑の真相を明らかにする、全てはそれから。それが与党、野党を超えて当たり前の立場ではありませんか。

断固として二十九日月曜日の法案審議入りには反対を申し上げて、私の意見表明といたします。