193通常国会2017年5月10日参議院運営委員会『人事院も責任を持って官制ワーキングプアの改善を』

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。一宮参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

そもそも憲法二十八条と公務員の労働基本権の回復問題について参考人がどうお考えか、まずお尋ねしたいと思うんですけれども、憲法二十八条に照らしても、また、ILOの度重なる勧告など国際労働基準に照らしても、労働基本権を奪われた状態にある我が国の国家公務員の地位には重大な問題があると私は思っております。

私は、労働基本権の早期かつ完全な回復が必要だと思うわけですけれども、この問題について、また人事院の役割についてどのようにお考えでしょうか。

○参考人(一宮なほみ君) 労働基本権回復ということは一つのお考えかとは思いますけれども、公務部門の労使交渉においては、やはり民間と異なって給与決定に市場の抑制力が働かないということ、また、勤務条件が法定主義ということで、国家公務員の給与は国会のコントロールの下に置かれていることによって使用者側の当事者能力に限界があるのではないかという難しい論点が指摘されているということでございますので、これらの論点について十分な議論を行った上で国民の理解と納得を得る必要があるわけですけれども、いまだそのような議論が尽くされたという状態にはないと思いますので、引き続き人事院において労働基本権制約の代償機能を果たしていくということが必要であるというふうに考えております。

また、ILOの方からの勧告については承知しておりますけれども、我が国においては、人事院がしっかりと労働基本権の代償機能を適切に果たしているということについてILOに説明していただき、理解を求めていくことが重要であるというふうに考えております。

○仁比聡平君 そうしたお考えの下での人事院の代償機能と参考人がおっしゃっている関連になるんですが、御案内のように、参考人がまだ人事官になられる前ではありましたけれども、マイナス勧告が行われましたし、その後、人勧水準をはるかに超える平均七・八%の給与削減という公務員労働者にとっての不利益が言わば政府によって強要されたという経過もあります。

参考人が人事院総裁となられた後に、二〇一四年の人勧に基づくいわゆる給与制度の総合的見直し、これ現実に具体化されてきて、私からすれば、労働基本権を回復しないまま不利益を強要するということになってはいないのか、職務給原則を損なって勤務地による地域間格差が拡大をする、年齢による賃金格差がつくられるということになっているのではないのか、これは現場の公務員労働者の皆さんからも強い声が上がっているわけですね。

参考人は、これがどうして労働基本権制約の代償機能と言えるとお考えなんですか。

○参考人(一宮なほみ君) まず、マイナス勧告とか二年間の給与削減の点についてでございますが、これについては、やはり労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告は最大限尊重されるべきであるので、これを実現していただくということが基本であるというふうに考えております。政府も現実にそのような立場に立っておられると思いますけれども、給与削減の特例措置につきましては、東日本大震災に対する復興という目的のために、二年間に限った臨時的な措置として政府及び国会において判断なされたということだというふうに理解しております。

また、給与の総合的見直しの関係でございますけれども、やはり民間給与の低い地域を中心として、国家公務員の給与は高いのではないかという声がございますので、その辺りに考慮して、そしてそういう形で給与の地域配分見直しをしたというようなことでございます。また、そのときに、高齢者の方の給与を抑えて若い人たちの方に主にやるということで、給与カーブをフラット化したり、そういう形をしたものでございますので、決してこれが人事院の労働基本権制約の代償機能を損なうものであるというふうには考えておりません。

○仁比聡平君 先ほど、公務員の労働関係において市場抑制力が働かないという点を特におっしゃったわけですけれども、市場抑制力ではない何だか別の力がこの公務員の賃金体系などの問題について働いていやしないかということもちょっと私、思うわけですが、ちょっとそれは感想にとどめまして。

もう一点、国家公務員の職場で非常勤、非正規の職員さんがどんどん増えているということを私、随分懸念をしているんですが、その下で、均等待遇だとかあるいは期間の定めのない雇用への転換といいますか、こうした課題というのをどんなふうに認識され、取り組もうとしておられるか、伺いたいと思います。

○参考人(一宮なほみ君) 非常勤職員の給与に関しましては、人事院は平成二十年八月に各府省に対して指針を発出して、その後も運用状況の調査をしております。それによると、おおむね指針どおり運用されているということが確認されております。

また、非常勤職員の処遇についてでございますが、これ、非常勤職員は業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が定められて任用されるという性質がございますので、それを踏まえまして、民間の同様の労働者の状況との均衡等を考慮した必要な措置をするということを行っております。ただ、現在は、民間においても、また公務においても同一労働同一賃金というようなことで問題が指摘されているところでございますので、この点についてはよく注視していきたいと思います。

また、非常勤の職員から正規職員へ移すことはできないかという点でございますが、国家公務員は試験において採用するということが原則となっておりますので、この辺りは試験を受けていただいて、経験者試験というものもございますので、そういう形で採用するということになっておりますので、その辺りについては御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君 官製ワーキングプアと呼ばれるような実態はしっかり正していく責任が人事院にはあるということを私は強く申し上げて、質問を終わります。