193通常国会2017年8月10日参災害対策特別委員会『被災者一人ひとりの生活再建を』

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

この夏の梅雨前線と台風三号、また台風五号は全国で甚大な被害をもたらしております。お亡くなりになった方々、また御遺族に心からお悔やみを申し上げます。また、懸命に頑張っておられる被災者の皆さんに心からのお見舞いを、また、自ら被災されながら奮闘しておられる被災自治体の職員、首長の皆さん、猛暑の中、全力で行方不明者の捜索救助、現場の復旧に当たっておられる関係機関、業者の皆さん、またボランティアの皆さんに心から敬意を申し上げたいと思います。

日本共産党も、直ちに対策本部を立ち上げ、救援、復旧に全力を挙げてまいりました。今日は、七月五日の発災から一か月、なお全容がつかめない九州北部災害について伺いたいと思います。

お手元に資料を配らせていただきました。写真の一枚目から六枚目をまず御覧いただきたいと思うんですけれども、甚大な土石流に襲われた赤谷川流域です。

松末の郷という松末地域コミュニティ協議会の案内板にあるように、棚田や果樹園の生産者、一軒一軒の商工業者、小学校や保育所、公民館など、何百年と積み重ねられてきた山合いの暮らしが地獄のようなむごい土砂災害に襲われました。

二枚目は、七月九日に筑後川への合流点近くの左岸、立という地区から見た赤谷川の様子ですが、ふだんは幅十メートルもないという川が水田、護岸、道路までえぐって、御覧のとおり、目の前まで泥と流木に埋め尽くされて、その中を懸命の捜索救助が行われております。

次の写真はその近くの市営住宅ですけれども、襲った泥の深さ、住宅を突き破った流木のすさまじさが見て取れると思います。

次の写真は、七割方埋まってしまった自動販売機ですね。このときはまだ車では入れませんでしたけれども、右岸を一時間ほど歩いて松末小学校まで上がりましたが、それが五枚目の写真ですけれども、松末の中心部は土砂に埋まってしまって、交差点に樋口モータースという自動車屋さんが見えますけれども、車が何台も泥で埋まってしまっている。

六枚目は松末小学校の校庭ですが、これ現在も、大臣、ここまでしか車両では入れないわけです。

七枚目の写真が朝倉の森田市長から我々に提供いただいた航空写真ですけれども、西側の乙石川、そして東峰村に続く赤谷川の上流、東側の小河内という、この三つの谷の真ん中にさっき御覧いただいた松末小学校がありますが、この全てが土砂で埋め尽くされていると。九州大学の研究グループの分析によりますと、この流域だけでおよそ四百五十か所の土砂崩れが確認され、流出した土砂は乙石川を含めると少なくとも百二十万立方メートルに達する、三年前の広島の土石流の二倍を超えると言われております。

〔理事山田俊男君退席、委員長着席〕

八枚目の写真は、この赤谷川から西側に山一つ越えた北側流域の志波地区ですが、至る所に山腹崩壊が起こっている。こうした様子は、朝倉、東峰、添田、日田、中津、どこでも共通をしているわけですね。

そこで、大臣にまず基本認識をお尋ねしたいと思うんですが、今回の豪雨がもたらしたかつてない膨大な土砂と流木が中下流域の河川や道路、ため池を壊し、住宅や敷地、田畑やハウスになだれ込んで埋め尽くして、甚大な被害を広げているわけです。一部には限定的という言い方もあるんですが、そうではなくて、地域が丸ごと、朝倉でいいますと、合併前の旧杷木町、旧朝倉町のほぼ全域、旧甘木市も山間部は今も入れないという壊滅的な打撃を受けている。

この被害を政府はどのように捉えておられるんでしょうか。

○国務大臣(小此木八郎君) 今委員が御指摘になられましたお話、写真も見せていただきながら、今朝、朝倉市長にもじかにお会いをいたしましてお話を伺いました。今回の九州北部豪雨は、地域においてこれまで経験したことのない異常な事態であり、河川の氾濫や土砂災害、これらに伴う大量の流木などにより、多数の人的被害や住家の全壊、交通網の寸断など、甚大な被害が発生したものと改めて認識をしております。そして、そのようなお話も聞いたところでございます。

内閣府といたしましても、発災直後に政府調査団として松本純前防災担当大臣、また松本洋平前内閣府副大臣が自ら被害状況の調査を行い、その結果を関係省庁災害対策会議において報告することなどにより、政府一体となって対策を講じてきたところでございます。

私といたしましても、台風第五号への対応の必要性から、今週までに、本日までに本来であれば現地を訪れなきゃならないという思いがございましたが、それがかないませんでした。できる限り速やかに、福岡、大分、被災地を訪問して、その被害の甚大さや現在の取組を自らの目で確認した上で、今日も実際に行かれました皆様方のお話を聞いたところであります、私といたしましても、被災地の復旧復興に向け全力で取り組んでまいりたいと思います。

○仁比聡平君 大臣から全力で取り組んでいきたいという決意も語っていただいたわけですけれども、これだけの、これだけの被害だからこそ、被災者の自力ではどうにもならないんです。悲しみ、怒り、恐怖に暮れる、生活の基盤を失って、どうしても希望を失いかけてしまう被災者を励まして生活を取り戻していく支援は、小さい自治体だけではどうしようもないんですね。そこをしっかり捉えて国が復旧復興に全力を挙げるということがどうしても必要だと思います。

この災害があったからと一人たりとも諦めさせない、離農や廃業をさせない、そうした決意を持った国の支援が必要だと考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(小此木八郎君) おっしゃるとおりであると思います。私たちの使命は、今ある力を最大限に活用をして、そして、被災地の皆さんがやはり私たちの考えられないようなそれ以上の不安を抱えている、この不安を少しでも、一つでも多く除去する。先生方とも協力をしながら、繰り返しになりますけれども、全力を挙げて事に当たってまいりたいと思います。

○仁比聡平君 東日本大震災を受けた大規模災害復興法や改正災害対策基本法も一人一人の生活再建を支援するということを我々の対策の目的として掲げているわけですから、政府一丸となって全力を挙げていただきたいと思います。

続けて、九枚目以降の写真御覧いただきますと、これ、我々が視察した山田地区の決壊した山の神ため池の一キロ足らず上流のところで、先週土曜日に私が行って撮ってきた写真ですが、御覧のように、ふだんは水が引けば小川のようなんですよ。ここは一面見事な柿畑でした。これが今回の豪雨で川ごと園地が持っていかれてしまっている。

二枚目は、その中で残された柿ですけれども、瓦れきが入り込んで、三枚目、流木を取り払っても、土砂が根や幹を覆って首まで埋まってしまっているわけです。このままでは柿の木が酸欠で枯れてしまう、実は腐り落ちてしまう。果樹そのものは助かっているところももちろんあるんですが、先ほどもお話あったように、農道が塞がっていて急がなきゃいけない消毒もできないし、このまま収穫が始まる九月、十月まで通れないということになると、出荷できずに腐り落ちてしまうわけですね。生産者にとってこれほどつらいことはありません。

次の写真は、あちらこちらで多くのハウスが押し倒されているところ、そして倒壊を免れたハウスも大量の泥が入り込んで、必死で生産者はかき出していますけれども、これ容易でないんです。これ、乾いて、もう今はかちんかちんにコンクリートのように固まっていまして、大臣行かれたら分かりますけれども、スコップも立たないような固さなんですよ。

農水省にお尋ねしたいと思いますけれども、この地域での志波柿を特産にしていくために生産者も行政も知恵と力を投入してきました。三連水車に象徴される水田はもちろんですけれども、ハウスの博多ネギだとかタデなど有数の特産地を育ててきたわけですね。その主要な産地が甚大な被害を受けている。だからこそ、JAあさくらの緊急要請書でも生産者が生産意欲を失うのではないかと危惧するという切迫した声が上がっているわけです。

こうした深刻な被害を正面から捉えて、生産者が立ち上がれるような支援、これを急がなきゃいけないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(奥田透君) お答えいたします。

農地、農業用施設の復旧が何よりも大切だと認識しております。農林水産省といたしましては、県や市町村に対する技術的支援、これを積極的に行いながら、詳細に被害状況を調査いたしまして、被害の程度に応じて適切な復旧方針を決定していきたいと思っています。

また、それに当たりましては、農家の方でありますとかJAの方でありますとか、意見を詳細に聞きながら進めていきたいというふうに思っています。

○仁比聡平君 早期復旧をどう進めるかと、現場で。例えば、先ほどの柿の根元を息ができるようにするためには丸く掘り上げなきゃいけないんですね。ハウスの固まった泥を除去する、これも急がれるんだけれども、重機は入らない、ボランティア任せでできるような仕事ではないわけですね。一方で、地元業者は道路や河川の復旧事業でいっぱいいっぱいになっているわけですね。

そうした下で、災害復旧事業の査定前着工として例えばJAあさくらなどに発注することができたら、今年営農ができなくなっている生産者の力を復旧に集中、結集することができるし、正規の日当を出せますから被災者の収入をつないでいくということもできると思うんですが、これいかがですか。

○政府参考人(奥田透君) 農地、農業用施設の災害復旧事業につきましては、市町村だけではなくJAも事業実施主体として査定前着工を含む事業実施が可能でございます。

また、委員御指摘のように、市町村がJAに対して請負を発注するということにつきましては、まず市町村の方がJAにそういうような施工管理能力でありますとか技術者の有無などを勘案して、それが認められれば可能であると考えています。

もう一つ、事業実施主体であります市町村が、直営施工として農家や住民、JA等と人力施工の労務作業委託を締結しまして災害復旧を行うことも可能でございます。

○仁比聡平君 そのいずれの形でも、本当に有効な形で力を結集できると思いますので、是非積極的に進めていただきたいと思うんです。

十四ページからは、東峰村を中心に棚田の被害の写真を紹介をしています。

人口二千人余りですけれども、小さくても輝く自治体と。移住者も多く、NHKの地域発ドラマの舞台にもなってきたところなんですね。ところが、裏山が崩落して何百年という棚田がむごい姿になっている、河川が土石流となって棚田を一緒に押し流していっている、そういうことになっているわけです。

これ、復旧するかどうか、盆明けに意向聴取が始まるというふうに聞いているんですが、誰の目から見ても復旧事業費全体が大きな額になることは、これは明らかなわけですね。ですから、地元を歩きますと、これだけ被害が大きいともう国は見放すんじゃないか、もう山に戻ってしまうんじゃないか、そういう絶望に近い声が聞こえてくるわけです。

これ、農家負担をなくすというふうにしなかったらば意欲が失われると思うんですが、これはいかがですか。

○政府参考人(奥田透君) お答えいたします。

農地、農業用施設の災害復旧事業につきましては、先般八日に激甚災害に指定されましたものですから、補助率のかさ上げがされる見込みでございます。近年の実績によりますれば、農地で九五%、農業用施設で九八%までのかさ上げがされる見込みでございます。

また、農地のり面の復旧に当たりまして、例えば、簡易な土止め工を採用するなど現場条件に合わせた施工方法を取ることによって事業費の削減も図っていきたいと思いますので、国としても必要な技術的な支援をしてまいりたいと思います。

もう一つ、本年の災害から農地復旧限度額が改定されまして、中山間地域の棚田等の被災面積が小さい農地ほど災害復旧事業の補助の対象となる上限額が拡大されたところでございます。

このような取組を通じまして、できる限り農家を始めとした地元の負担が軽減されるよう支援してまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 是非よろしくお願いしたいと思います。

お尋ねの通告をしておりましたけれども、改良復旧に関わる事項についてはこれまでお尋ねもありました。地域の再生にとって、再建にとって、作業のしやすい農地の改良や後継者の意欲を促進する、そういう復旧をしてもらいたいという声に是非応えて、国交省も含めて御一緒に頑張っていただきたいと要望しておきたいと思います。

時間が迫ってまいりまして、次の写真、損壊家屋の解体撤去の支援について、こうした家屋の解体撤去を自力でということはもう到底不可能です。だからこそ公費解体をという要求が出ておりまして、随分御努力をいただいているんですが、まだ地元自治体の負担が残るのではないか、大変なのではないか、この懸念に是非応えていただきたいと、これもまた要望させていただいておきたいと思います。

最後に、中小企業の直接支援を、これをもう強く求めたいと思うんですね。

二十二枚目の西日本の「再開見通せず 廃業の懸念」という記事、ここに出てくる柿あんの人気商品を年間百二十万個、大分や佐賀、熊本まで販売しているという業者さんは、機械で一億円、資材で一億円、トラック百台分の災害廃棄物を出して、もう途方に暮れているわけです。私が写っている、金型・金属加工の業者さんありますけれども、これ、機械だけで一億近く、運転資金のローンを合わせれば一億三千万もの損害、三十年掛けて培ってきたなりわいの再建をする希望が見えないわけですね。これ、金融支援だけでは立ち直れないわけです。

この一軒一軒の業者さんたちが地域経済、またコミュニティーを再建していく上でかけがえのない役割を果たしているわけですから、東日本や、そして熊本で踏み出していったグループ補助金のような直接支援を是非この災害で踏み出していくべきではありませんか。中小企業庁、いかがです。

○政府参考人(高島竜祐君) 今般の大雨で被災されました全ての皆様へ、改めて心からお見舞いを申し上げたいと思います。

今委員から御指摘のありました直接支援についてでございますけれども、今回、特定の地域において甚大な被害が発生しておることを踏まえまして、八日の日に、新しく小規模事業者持続化補助金及び商店街補助金に新しい枠を設けまして被災事業者の販路開拓や商店街の復旧を支援することといたしまして、八日の日に発表をしたところでございます。

これらの措置などを通じまして、引き続き、被災された中小企業・小規模事業者の復旧復興に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 小規模の持続化補助金を決定したことは大きな一歩だと思います。私、これ県が、例えば大分なんかは具体化しているものと併せて積極的に活用できるように取り組んでもらいたいと思いますが、けれども、それにとどまらず、グループ補助金のような直接支援を是非実現をしようという声は、これはもう商工団体からも、それから自治体首長からもどんどん上がっているわけですね。これ収まらないですよ、絶対に。

こうした地元からの国が支援すべきだという声を是非受け止めてしっかり検討していただきたいと思いますが、時間が来てしまいましたので、最後に、総務省においでいただいていると思いますが、県や自治体が地域の実情に鑑みて被災者支援を充実する施策を行ったときは、特別交付税を始めとして十分な財政支援を行っていただきたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(境勉君) お答えいたします。

災害の発生時には、被災自治体におきまして応急対策あるいは被災者支援などに様々な財政負担が生じることが見込まれるところでございます。こうした多岐にわたる経費につきましては、なかなか個別の財政需要を見積もることが困難であるということもございまして、罹災世帯数あるいは全壊、半壊戸数などの被害の規模を示す客観的な数値に基づきまして特別交付税により包括的な財政措置を講じることといたしております。

その上で、被災自治体の実情を丁寧にお伺いをしながら、特別交付税措置を含めまして地方交付税や地方債による地方財政措置を講じまして、その財政運営に支障が生じることがないよう適切に対応してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 九州北部豪雨で経験した土砂、流木の甚大な被害に照らせば、これまでのやり方、既存の制度の組合せだけでは到底被災者は立ち上がれません。一人たりとも諦めさせない、そしてコミュニティーを基礎になりわいと住まいの再建支援、その復興に当たる国の支援を強く求めて、我が党はこれからも全力を尽くしていきたいと思います。

今日は質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。