○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。
 自民、公明の福田内閣による〇八年度予算は、生活者、消費者が主役と言いながら、あくまで構造改革路線を強行するものでした。自公政権は、大企業のもうけがいずれ家計に波及すると強弁してきましたが、その誤りはもはや最悪の形で証明されたと言うべきです。総理はどうお考えですか。
 家計への波及どころか、新政権の貧困率調査によっても、既に〇六年には国民の六分の一、およそ二千万人の国民が貧困ライン以下の生活を強いられていました。
 暮らしは今、一層深刻な危機に立たされています。その根源にある世界でも異常な大企業の横暴を規制し、暮らしと権利を守るルールある経済社会への転換を図ってこそ、生活苦を打開し、我が国経済を内需主導の健全な発展の軌道に乗せることができます。総理の基本認識をお尋ねします。
 今度の春卒業する高校生の就職内定率は、九月末でわずか三七・六%と過去最悪、大学生も同様の深刻さです。授業料が払えず中退せざるを得なかった友人を思いながら、何とか卒業だけはとバイトで一生懸命頑張っている学生たち、学費で親に迷惑を掛けられないと進学を断念し働こうと決めた多くの高校生たちが、就職面接すら受けられず社会に出る第一歩から失業、こんな悲しいことはありません。
 大企業が、かつては物づくりと企業の将来を考え、景気が悪くても正社員を育ててきたのに、内部留保はそのまま、労働力は非正規を必要なとき安上がりに調達すればよいと開き直っていることは許せません。
 総理、大企業の新卒採用を積極的に進めさせることを始め、学生の就職を保障するあらゆる手だてを今すぐ打つべきではありませんか。
 キヤノンやパナソニックを始め名立たる大企業が、今のひどい派遣法さえ踏み破って労働者を使い捨てにしてきました。その違法を告発して闘う若者たちの、だれも同じ目に遭わせたくないとの声を正面から受け止めてこそ政治です。
 派遣法の抜本改正を急ぐとともに、現行法の下でも雇入れ勧告、企業名の公表など、自ら乗り出して大企業の社会的責任を果たさせるべきです。総理は、具体的にどう取り組むのですか。
 深刻な雇用情勢の中、失業保険が切れるのに再就職できないのは自己責任ではありません。来年度末で四兆四千億円もある積立金を今活用し、失業給付期間の全国延長を決断すべきです。
 今日、全国七十七のハローワークで、福祉事務所や社会福祉協議会も連携したワンストップサービスが試行されていますが、再び派遣村の事態を招かないためには、仕事と住まいを失った労働者への生活保護の活用がどうしても必要です。生活保護の申請は原則認めないという方針を改めるべきではありませんか。また、生活保護世帯が急増する中、保護費の四分の一負担が自治体財政を圧迫し、ケースワーカーの過重負担は深刻です。国の負担を引き上げるべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
 また、厚生労働大臣、生活保護水準以下の収入にもかかわらず生活保護を受けられずにいる実態と捕捉率を調査し、老齢加算の速やかな復活を始め、生存権の実質的保障を図るべきではありませんか。
 〇八年四月に強行された後期高齢者医療制度で、年齢まで差別して医療費を抑制せよと迫ったのも財界でした。廃止は四年後に先送りというのでは、七十五歳という喜ぶべき誕生日を迎える方々が新たに差別医療の対象とされ、来年四月には保険料が平均一三・八%も上がって暮らしていけません。改めて伺います。後期高齢者医療制度は直ちに廃止せよ、この声にこたえるべきです。
 国民健康保険証の取上げも深刻です。滞納世帯への短期保険証を受け取れていない人が、茨城県だけで二万二千人、そのうち二千八十六人は中学生以下の子供たちです。熊本市では、事情も聴かずに納付率だけを見て機械的に短期証に切り替え、取りに行けば滞納の解消ばかり迫られるために、短期証世帯の四割、八千世帯以上が保険証を受け取れない事態が常態化しています。
 元々、国保は多くの加入者の収入が不安定で、国が支えなければ成り立たないのに、元は半分あった国の負担を今や二七・一%にまで減らし、その分を加入者に押し付けてきた自民、公明政治の結果が、高過ぎる、払えない国保料です。どうしても払えないのに保険証を取り上げ、収納率が低いからと国の負担を更に減らすペナルティーが、更なる国保財政の悪化と保険料引上げという最悪の悪循環をもたらしています。
 厚生労働大臣、この実態を調査し、国の負担を元に戻して悪循環を断ち、国保証取上げと自治体へのペナルティーはやめるべきではありませんか。
 総理は、米軍嘉手納基地一つの滑走路の夜間照明や運動施設のナイター設備など、水光熱費が一日幾らか御存じでしょうか。何と一千万円です。思いやる相手が間違っていると思いませんか。思いやり予算こそ削って、暮らし、福祉に回すべきです。
 前政権の対米追従をただし、世界一危険な普天間基地の即時閉鎖、辺野古への新基地建設反対という沖縄県民の怒りを我が物として対米交渉に臨むことを強く求めます。総理は、県内移設反対の声が高まっていることをお認めになりました。県内移設は絶対にしないと約束すべきではありませんか。
 最後に、総理、あなたの政治献金の偽装問題は、秘書や、まして鳩山ファミリー内部の問題ではありません。事は一国の総理の信頼にかかわる問題であり、知らなかったでは済まされません。先ほど来の答弁では全く納得できるものではありません。偽装は何のためですか。巨額の資金は一体何に使ったのですか。自ら国民と国会に真相を説明すべきです。我が党は今国会での集中審議を強く求めます。
 総理の明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇、拍手〕



○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 仁比議員の御質問にお答えいたします。
 まず、家計の状況についての御質問でございました。
 家計の状況につきましては、御指摘の点を反面教師といたしまして、新政権といたしましては、子ども手当や雇用対策など家計や雇用を直接支援する政策を実施をして、国民の暮らしに重点を置いた政治を行ってまいりたい、そのように考えております。
 また、ルールある経済社会への転換についてのお尋ねがございました。
 新政権としては、市場万能主義ではなく、人間のための経済というものを目指してまいります。弱い立場の方々の視点というものを尊重し、国民の命と生活を守っていくという政治を行ってまいりたいと考えております。
 学生の就職についてのお尋ねがございました。
 極めて深刻な雇用環境の中で、学生の就職内定率は悪化をしております。新卒者の就職支援を強化することは大変重要だと、そのような認識をしております。私どもといたしましても、十一月二十五日に開催をされました雇用戦略対話の中で、来春以降の新卒者について、学校、労働、産業関係者が連携をして就職支援の強化に取り組むということについて政労使間で合意をしたところでございまして、現在政府において検討を進めております経済対策の中でも、新卒者の支援の強化に取り組んでまいります。
 労働者派遣制度についてのお尋ねでございます。
 労働者派遣法違反については、都道府県労働局において厳正な是正指導を実施しているところでございます。先日、開催をいたしました雇用戦略対話の中で、私の方から、不安定な雇用の方々について正社員化が望ましい、できる限りそのような待遇がなされるように配慮をお願いをしたところでございます。
 雇用保険制度についての御質問がございました。
 平成二十一年の改正雇用保険法によって、特に再就職が困難な方を個別に判断をして給付日数を六十日分延長したことは御案内のとおりでございまして、それによって、この十月までで約三十四万人の受給者に対して延長を行っております。今後とも、こうした延長給付の活用などによって雇用のセーフティーネットを整備をしたい、そのように思っております。なお、現状の受給状況を踏まえれば、全国延長給付の発動にまでは至っていない、そのように考えているところでございます。
 ワンストップサービスでの生活保護の申請についての御質問でございます。
 生活保護の申請を希望する方々には、現場の自治体の意見も踏まえて、急迫の場合は申請を受理するということにしておりますが、一般的には、相談を行って、その内容を管轄の福祉事務所に円滑に取り次ぐことにしておりますことで御理解を願いたいと存じます。
 生活保護費の自治体負担についての御質問がございました。
 生活保護費は、国が四分の三、そして地方自治体が四分の一を負担するということになっておりますが、地方負担分については地方財政措置がなされておりまして、そこで所要額が措置をされております。
 また、後期高齢者医療制度についての御質問がありました。
 後期高齢者、いわゆる高齢者の方々を年齢で差別をするこの後期高齢者医療制度は、私どもも廃止をいたします。今後、高齢者を始め様々な関係者の御意見をいただきながら、具体的な制度設計の議論を急いで新たな制度を創設をしてまいることもお約束をいたします。
 在日米軍駐留費の負担の削減についての御質問でございます。
 在日米軍駐留経費については、我が国の負担をより効率的、更に効果的なものにするために包括的な見直しが必要だと、そのように理解をしております。今後とも、在日米軍駐留経費の負担については、極力日米関係に影響が生じないように配慮をしながら、透明性を確保して包括的な見直しに取り組んで国民の皆様方の御理解をいただきたいと思っておりますが、暮らしや福祉などの予算を十分に確保しなければならないということは言うまでもございません。
 普天間飛行場の移設に関しての御質問でございますが、沖縄県民の皆様方の今日までの大変なお苦しみを考えれば、沖縄の県民の皆さんの御負担を少しでも減らしていきたい、軽減をするような解決策が求められていることは当然であります。現在、日米のハイレベルの協議が行われております。普天間飛行場の危険性を考えていけば、当然時間的な余裕も余りないということも、これも理解をしております。
 したがいまして、できる限り早く、国民、特に沖縄県民の皆様方が理解をしていただけるような解決策を何としても見出してまいりたい、そのように思っております。
 私自身の献金問題の報道に関する説明と集中審議を求めるというお尋ねがございました。
 これは先ほどお答えを申し上げたところでありますが、まずは検察による真相と事実関係の解明が進んでいると、そのように承知をしております。それが終了いたし、私に対する司法判断というものが下りました暁には、改めて事実を踏まえて国民の皆様方に御説明をしたい、そのように考えております。このことを前提といたしまして、国会のことに関しましては国会の皆様方で御議論してお決めをいただければと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣長妻昭君登壇、拍手〕



○国務大臣(長妻昭君) お答えをいたします。
 生活保護制度に関する実態調査及び老齢加算についてのお尋ねがございました。
 生活保護は、申請に基づく制度であり、保護の要否は収入や資産、親族の扶養、御本人の就労意欲など総合的に勘案して判断するものです。したがって、生活保護の要件を満たす世帯数を正確に把握することは困難ですが、一定の仮定を置いて、生活保護水準以下の世帯数の推計作業を現在実施をしております。これは今月着手いたしましたので、今年度中、来年三月を目標に取りまとめております。
 生活保護を受けるべき方が受けられるように、自治体の担当者の方々にも申請権を侵害することのないよう周知徹底を図っております。
 また、老齢加算については現在復活する状況にはありませんが、今後ナショナルミニマムの考え方を整理する中で、生活保護基準の在り方についても多角的な視野に立って検討を進めることとしております。
 次に、国民健康保険の短期被保険者証が手元に届いていないというお尋ねがございました。
 国民健康保険の短期被保険者証は、通常の被保険者証と比べて有効期間を短くすることで市町村と保険料滞納者との直接の接触の機会を増やし、保険料の納付をお願いすることを目的としております。市町村が被保険者に対し短期被保険者証の交付の案内をしても被保険者が窓口に取りに来られない場合など、手元に届かないという状況が発生するものと考えております。
 私も、この留め置きが長期間にわたり、被保険者が短期被保険者証を持てない状況が続くことは望ましくないと考えておりまして、電話連絡や家庭訪問を実施することなどによってできるだけ速やかに被保険者の手元に届くよう、市町村を指導してまいりたいというふうに考えております。
 次に、国民健康保険の保険料の納付水準に応じた国の交付金の削減に関するお尋ねがございました。
 国民健康保険制度は、構造的に平均年齢が高く所得も低いなど、財政的に厳しい状況にございます。被保険者の負担軽減については、医療給付費等のおおむね五〇%を都道府県や市町村を含め公費負担をしているほか、所得の低い方に関しては所得に応じて最大七割の保険料軽減を行うなど、実行をしているところであります。
 また、国の交付金の削減に関する御指摘については、国民健康保険制度は地域住民の相互扶助で成り立つものであり、その財源となる保険料の収納を確保することは極めて重要な課題であることから、保険者の適切な収納努力を促すための仕組みを設けることは必要であるというふうに考えております。
 厚生労働省としては、今後とも市町村における国民健康保険の安定的な運営が図られるよう努めてまいります。
 以上でございます。(拍手)