○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

法案は、いずれも賛成をいたします。

最高裁判所に、警察や検察から夜間や休日に令状の請求が行われたときに、それにどう対応するかと、その裁判所職員の重い負担をどう軽減するかということについて今日はお尋ねをしたいと思います。

時間の関係で質問通告とちょっと一件変えますが、委員の皆さんも、逮捕だとかあるいは捜索、差押え、ガサですよね、こういうプライバシーや身柄に関わる重大な人権侵害の危険がある強制捜査について、令状の処理業務が適正迅速に行われなきゃいけないと、この重大性についてはおよそ言うまでもないことだと思うわけですね。

実際、この夜間や休日の令状処理というのがどういう体制で行われているかということについて最高裁判所に宿日直の状況の一覧表を作っていただきまして、お配りを皆さんにいたしました。

全国ほとんどの裁判所で、そうした宿日直やあるいは連絡員という体制がつくられているわけです。夜間に令状請求があると、これ捜査機関も一生懸命だろうけれども、裁判所、つまり裁判官も職員もこれ大変なわけですよね。

二枚目に、全司法労働組合の機関紙から私、少し引用させていただきましたけれども、これ、令状処理というのは、たとえ深夜であっても請求を受理して形式的なチェックを行う。もちろん、裁判官が記録をよく検討して判断をする。そこで、紙に令状を作って発付すると。ここに必要的な記載事項が漏れてはいないかと。例えば、裁判官の押印がされていないなんということになったら大変なことになるわけで、そうしたチェックも含めて裁判官と共同して裁判所職員が携わっていくという、そうした重みを持っていると思うんですね。

令状とはちょっと違うんですが、例えば保釈の決定がこれ夜になって行われると。お金、保釈金が納付されないと釈放はされません。その保釈金が納付されたということを関係機関に通知するというような仕事は、これは全部裁判所職員の仕事なわけですね。

令状あるいはこうした保釈の件も含めて、重要なこうした業務に携わる裁判所職員の業務の重みと、そしてここの負担というのを最高裁としてはどんなふうに認識しているんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

令状事件を適切かつ迅速に処理することは、令状主義や被疑者の人権保障等の見地から裁判所が負っております極めて重要な責務であると考えておりまして、休日や夜間においても令状事件を適切かつ迅速に処理するために宿日直等の体制を取ることにより、裁判官や職員に一定の負担が生じることは避けられないと考えているところでございます。

他方、裁判官や職員の健康面等への配慮ももとより重要であると考えておりまして、これまでも各庁の実情に応じてその負担を軽減するために様々な工夫を取ってきているというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 健康の負担に配慮しなきゃいけないのは当たり前のことでありまして、私、今日なぜここで取り上げているかといいますと、私が裁判所で司法修習経験したのはもう四半世紀前、一九九〇年代の初め頃なんですが、どうも現場の状況を伺うと、以来、さして変わっていないんじゃないのかと思うんですね。

先ほど、今御答弁があった様々な工夫を行っているという、おっしゃった到達点が一枚目の表にしていただいた今の現状だと思うわけですが。

まず、大規模庁と言われる東京地裁あるいは大阪地裁などの状況について伺いたいと思うんですが、全司法新聞の二〇一四年十一月五日付けにあるように、裁判所職員は、令状請求を受け付けたら、その必要なチェックをした上で、記録を持って裁判官の宿舎とか自宅とかというところにこれタクシーで持っていって往復する。その間、睡眠時間が確保されないというのは当たり前ですよね。寒い冬の時期に、まあ裁判官も大変だと思うんですよ、職員を外で待たせて記録検討しなきゃいけないわけだけれども、家の中に入れるわけにもいかないというので、ずっと外で長時間待機するというようなこともある。

そもそも、そうした一件記録をタクシーで持ち出すということ自体のリスク、例えば紛失が万が一ないかとか、あるいは毀損してしまわないかとか、そういうリスクをこれ裁判所職員に負わされてしまう、そうしたプレッシャーといいますか、精神的負担も含めた。

そして、拘束時間というのは、裁判官の判断をする時間だけではないわけですよね。ですから、東京や大阪などで平均でも三件から四件くらいの令状請求があるのではないかというふうに現場の皆さんから伺いましたが、そうすると、下の二〇一七年五月五日付けの全司法新聞にあるように、一睡もできないということになるわけです。しかも、一睡もできないだけじゃなくて、代休もないんですよね。翌日はそのまんま勤務に就く。

ですから、例えば書記官の方だったりすると、法廷で証人尋問が行われる、その尋問の記録、まあ証拠ですけれども、ここには書記官が責任を負っているわけで、事務官さんだって大変ですし、あるいは家裁調査官などがそうした令状の担当をするということに、宿日直するということになったときに、これは大変ですよね。そうした現状がこれさして変わっていないんじゃないのか。

そうした負担が今職員にやっぱりあるわけですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 御指摘の東京地裁あるいは大阪地裁につきましては、裁判官が庁舎に泊まりまして令状処理をするというような体制も取っておりまして、そういった体制を取りました結果、職員が夜間、裁判官の官舎に出向くというような負担は軽減されているというふうに認識はしておりますが、ただ、夜間の令状請求の処理に一定の時間が掛かるということは御指摘のとおりでございまして、その件数、その日によって異なりますため一概には言えないところがございますけれども、負担があるということは確かでございます。

そのようなことも踏まえまして、例えば、翌日の勤務については年次休暇等を取得しやすいように各職場で配慮するなど、各庁の実情に応じて職員の健康等に配慮した取組も行われているものと承知しております。

○仁比聡平君 皆さん、どう思われますか。最後におっしゃった年休というのは、これ元々職員の権利ですよね。朝から勤務して夜中宿直して一睡もできなかったと、そういう状況になり得るから翌日は年休を取りなさいなんというのは、これは代休代わりにするという話であって、裁判所がそんなことをしちゃならぬと私は思うんですね。実際、職場の体制からすると、そういう年休というのは取れないということが現実だから、裁判所の職員の皆さんはこういう声を強く上げておられるわけですね。しかも、東京、大阪などの庁をも含めて、時間外にどういう令状請求があっているのかという実態というのは、例えば件数とかいうのは最高裁としては把握はしておられないということで、日中と同じように令状請求の実務をやっているわけですね。つまり、通常業務だということなんです。

私の先ほどの聞き方が悪かったですから、東京、大阪は泊まり込みということになっています。だけれども、例えば私の地元の福岡の本庁は、泊まり込み体制も取っていないし、裁判官が令状請求があったときに裁判所に登庁するという体制も取っていないということでしょう。福岡というのは大きい庁ですよ。そこで、さっき申し上げたようにタクシーで記録持っていくという仕事を裁判所職員やっているわけですから。

これ、その泊まり込みの体制、あるいは登庁する、裁判官が裁判所に行くと、こういう体制を取ったら、負担が軽減されるし、裁判所らしい適正な、迅速な処理ができるじゃないかという、これは私、当然のことだと思うんですが、どう考えているんですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 夜間等の令状処理の体制については、様々な観点から検討する必要があると考えているところでございます。例えば、裁判官が庁舎に泊まって令状を処理する体制を実施するかどうかということにつきましては、各庁における夜間の令状請求数やその頻度、これに伴います職員の負担の程度のほか、裁判官の日中の執務への影響や健康面への配慮、裁判官の宿泊設備を設ける必要性等を総合的に検討する必要がございます。

各庁においては、これまでそのような事情をつぶさに把握しながらそのような体制を実施すべきか否かの検討が行われてきたものと承知しておりまして、現に実施に向けた検討が進められている庁もあると承知しているところでございます。

○仁比聡平君 いや、今の、裁判官の日中の執務への影響あるいは健康面などへの影響っておっしゃる。それは、裁判官が翌日の法廷で睡魔に襲われるというようなことはあってならないですから、だからそのことを配慮されるというのは、これは当然のことだと思うんですけど、それは裁判所職員も同じでしょうと私言っているんですよ。裁判官は眠くなったら駄目だけど、裁判所職員はもうずっと徹夜で仕事し続けなさいという、それはおかしいじゃないですか。

しかも、この問題が提起されてからもう随分時間がたっている。九〇年代から組合は声を上げている。その問題がさして変わらないというのはどういうことなのかと。

連絡員体制ということについてもちょっと聞いておきたいと思うんですが、この一覧表を見ればお分かりのとおり、東北、北海道、こうしたそれぞれの地裁や支部の所管がすごく広い、こういうところでは大方この連絡員体制が取られています、離島などもそうなりますけれども。

これ、例えば今からの寒冷の時期、これ、連絡員というのは、警察から連絡を受けたら裁判所に行ってまずやるのは雪かきですよ。凍ったり、もう本当に雪が積もった道を一時間例えば掛けて行って、まず雪かきしないと令状を受け付けることができない。実際受け付けてからは先ほどと同じような仕事を裁判官と共同してやるわけですが、この連絡員の例えば時間外手当は令状を受け付けてその仕事を始めてからしか出していないでしょう。それ、せめて警察から連絡があったら、そのときから勤務に、仕事、令状処理に入っているとこれ見るのは当たり前じゃないかと思うんですけど、違うんですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

連絡員体制は、裁判所として適切に令状を処理するための体制を構築しつつ、令状請求の件数が少ない庁において常時宿直を避けるために取っているものでございまして、それ自体は職員の負担を一定程度軽減するために行っているものと、そのような効果を持っているものと認識しているところでございます。

その勤務に伴う手当の支給等につきましては、その勤務の実態をきめ細かく見ました上で適切に支給しているものと承知しております。

○仁比聡平君 残念ですが質問時間が来てしまいましたので。今日は大きな問題提起をさせていただく質問というつもりですので、最高裁判所も各下級裁の実情をよくつかんでいただきながら、全体として、旧態依然といいますか、令状請求があったらそれはもう言ってみればあなた任せになってしまって、そのリスクが全部この職員に押し付けられてしまう。裁判官、担当の裁判官も大変なんですけれども、やっぱりそこを組織としてどう抜本的に改善するのか検討していただく時期なんだと思うんです。是非お願いをしたいし、下級裁にも御指導を願いたいと思いますし、根本的には裁判所職員の抜本的増員が必要だと思います。

是非強くお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。