幹部自衛官の養成機関である防衛大学校(神奈川県横須賀市)で上級生によるいじめや暴行などで退学に追い込まれた元防大生が、加害行為を防止できなかったのは国の同学生への安全配慮義務違反にあるとして合計約2297万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10月3日、福岡地裁でありました。足立正佳裁判長は原告の主張する、国の安全配慮義務違反について「予見可能性がない」として棄却しました。原告弁護団の赤松秀岳団長は「国の主張に沿った不当な判決だ」と批判しました。

 上級生ら加害学生には、2月の分離裁判で被告8人中7人に対し原告への賠償の支払いを命じた判決が確定しています。

 今回の判決は、原告の受けた暴行などについて「抽象的には暴力や不適切な学生間指導あるいはいじめが発生しえるとしても当時、他になにかしら端緒もない場合に、これらの事情からただちに本件各行為が発生する具体的な危険性があったということはできない」と国の主張を採用、予見可能性がないと判断。そのうえで、いじめを防止する安全配慮義務違反は認められないと原告の主張を退けました。

 原告弁護団員からは「安全配慮義務違反のハードルをかってに高く設定し、原告の主張を棄却した」「事実をあげていじめや暴行を立証したにもかかわらず、学校の責任を問わないことは、市民の感覚、正義に反する」など怒りの声が相次ぎました。

 原告の元防大生は「事実を認めない、防衛大学に責任がないといわんばかりの判決は納得できるものではない」と怒りを表明。原告の母は「予見可能性がないというが、私は教官に加害学生たちの言動を伝えてきた。司法は国に忖度(そんたく)して、なぜ家族の声を無視したのか納得できない」と声を震わせました。

 日本共産党の仁比聡平前参院議員が裁判を傍聴し、報告集会に参加しました。(しんぶん赤旗 2019年10月4日)