長崎県大村市の長崎空港に2本ある滑走路のうち市街地に近いA滑走路の所管をめぐって国土交通省から防衛省への移管が進められています。同空港は米軍機の民間空港使用回数が全国で最多。同所で海上を埋め立てて格納庫や車両整備場を設置する事業も進められています。本格的基地化で住民の騒音被害が増す危険性をはらんでいるだけに今後、問題となりそうです。(藤川良太)

 長崎空港は、前身である大村空港が旧海軍飛行場を使用して発足。その後、騒音を理由に大村空港の沖合約2キロに浮かぶ箕島を埋め立てて新たに海上空港を設置し1975年に供用を開始しました。これまで使用していた陸側をA滑走路、新たにつくった海側をB滑走路として国交省が所管していました。

国交省所管の滑走路でホバリングする自衛隊ヘリ=2009.11.17長崎県大村市
(写真)国交省所管の滑走路でホバリングする自衛隊ヘリ=11月17日、長崎県大村市

環境基準超える

 A滑走路は現在、県の防災ヘリなどが使うほかは、ほぼ海上自衛隊大村航空基地が利用。国交省が2001年から約1年かけて行った騒音実態調査で、騒音の環境基準(うるささ指数75以上)を超えている地域があることが明らかになっています。原因は自衛隊機でした。

 日本共産党長崎県委員会は11月12、13日に国土交通省に対して移管は基地強化になるとしてやめるよう求めました。防衛省にも現状をただしました。それぞれ日本共産党の赤嶺政賢衆院議員と仁比聡平参院議員が同席しました。

 それによると、移管は、大村航空基地のヘリの離着陸の騒音に対して住宅防音工事等の対策を原因者の防衛省が実施するために行うもの。防衛省は来年度予算の概算要求で調査のため8000万円を要求しています。

 一方、A滑走路と同じ場所に置かれる大村航空基地は、海を埋め立て、格納庫、航空需品倉庫、車両整備工場等の施設整備事業を進めています。事業規模は6年の工事期間で、約14ヘクタール(うち埋め立ては約11ヘクタール)を整備します。

仁比議員が追及

 長崎空港は米軍機の民間空港利用回数が07年97回など、全国で最多です。現在、進んでいる在日米軍再編では日米軍事一体化が行われており、自衛隊基地となれば米軍もまた利用する危険な状態に道を開くことになります。

 移管中止を求めた要望で防衛省、国交省の両担当者は「移管に伴い自衛隊の航空機の運用を変更する予定はない」と繰り返しました。

 これに対し日本共産党の久野正義大村市議は「防音対策も大事だが、騒音をなくせというのが、本来住民が求めてきたこと。国交省が騒音対策を逃げてはいけない。騒音が野放しになってしまう」と迫りました。

 仁比参院議員は「防衛省に移管したら法的には基地になる。基地で訓練するのは当たり前として運用を拡大するという話になり騒音の度合いはひどくなっても何もできない。騒音をなくす根本的な解決にならない」と突き付けました。

 防衛省は来年度から、騒音調査など実施。その後、周辺の住宅の防音工事を進めていくとしています。(2009年11月18日(水)「しんぶん赤旗」)