憲法9条の旗を掲げ、現場でたたかう2人の弁護士が〝憲法こそ希望〟と語り合いました。シリーズ参院比例候補の対談。今回は、弁護士の白神優理子さんと、弁護士で日本共産党参院比例予定候補の、にひそうへいさんです。

憲法9条を持つ国としてロシアの侵略をどう止めるか問われています(にひ)
政府や維新は〝攻める話〟ばかりですね(白神)



にひ
 初めてお会いしたのは、国会で開かれたノー・モア・ヒバクシャ訴訟の集会でしたね。

白神
 にひさんには国会で原爆症認定問題を何度も取り上げてもらいました。被爆者一人ひとりに寄り添う質問で、人権弁護士として以前から尊敬していました。

にひ
 ありがとうございます。ロシア・プーチン政権は核兵器で世界中を脅してウクライナを侵略し惨状を広げてきました。絶対に許せませんね。被爆者のみなさんも怒りにかられ、〝広島・長崎を最後の被爆地に〟と懸命に声をあげています。

  日本は唯一の戦争被爆国として、プーチン政権はもとより世界中に向けて「人類と核兵器は共存できない」と訴える特別の役割と責任があると思うんです。ところが戦後の自民党政治は、米国に従って、核兵器の被害を小さく見せようと被爆者を線引きし、苦しめてきました。

白神
 被爆者は、核兵器の残虐性・非人道性を認めさせ、必ず核廃絶をさせるという一心で提訴しました。国際的にも訴えて世論をつくり、核兵器禁止条約を実らせました。

にひ
 被爆者を先頭にした「核兵器廃絶」の運動こそ世界の本流です。禁止条約も国連加盟国の3分の2、122カ国もの賛成で成立(17年7月)したのに、批准もしなければ締約国会議へのオブザーバー参加もしない。日本政府は本当に異常です。

 唯一の戦争被爆国、憲法9条を持つ国としてロシアの侵略をどう止めるのかが問われているときに〝国連は無力〟〝9条は空想的〟とあざ笑うのが自民党や日本維新の会です。

白神
 〝軍事力の強化で抑止すべきだ〟という発想ですが、周辺国に緊張と恐怖が広がり軍拡競争を招くだけです。自衛の名による戦争も始まる。人類は同じ悲劇を何度も経験してきたはずです。

にひ
 国会議員になる前、米国の侵略を受け戦場となったアフガニスタンに調査に行ったんです。1000㌔の道のりを40日かけて逃げてきた難民の方たちのキャンプを訪ねました。14歳の少年に「いま一番欲しいものは何?」と聞きました。甘いものが欲しいとか、サッカーボールが欲しいとか、そんな答えが返ってくるかと思ったら違った。「世界中の人たちにアメリカの戦争に反対してほしい」と。少年の母親はポツリと「人間の尊厳を取り戻したい」と言いました。頭を殴られたような衝撃を受けました。戦争というのはそういうことなんだと。戦争はすべての人間の尊厳を奪い、そこに勝者はいない。戦争は政治の敗北にほかなりません。「どんな紛争も戦争にしない」という国連憲章に基づく平和を何としても取り戻さなければなりません。

白神
 政府や自民党、維新は、ロシアの侵略を利用して、国民の恐怖心や不安感に付け込んでいます。「敵基地攻撃能力の保有」、集団的自衛権行使、9条改憲…。全部〝攻める〟話ばかりです。いま日本が直面しているのは攻撃される危険ではなく、他国に攻め込む危険だと思います。

にひ
 テレビの画面越しに圧倒的な暴力があふれ、戦況報道ばかりが流される中で国民が不安を抱く気持ちはよくわかります。そうした不安に付け込む〝軍事信奉者〟たちの声が、国民の思いかと言えば、全く違う。〝攻められていないのに攻め込み、相手をせん滅するのはプーチンと同じだよね。じゃあどうしようか〟って、みんなで語り合って考えていくことがとても大事だと思うんです。

疑心暗鬼ではなく積極的な対話で信頼関係を築く(白神)
それが9条の意味ですよね(にひ)

白神
 私が好きな一節が憲法前文にあります。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」。疑心暗鬼になるのではなく、積極的に相手国と対話を重ね、協力と信頼関係を築く。憲法はそうした平和の方向を示しています。

にひ
 それが憲法9条の意味ですよね。かつてベトナム戦争をはじめ軍事紛争が絶えなかったASEAN(東南アジア諸国連合)の国ぐにが対話を重ね、もめごとを絶対に戦争にしない努力を深めています。このASEANの取り組みに学んだ日本共産党の「外交ビジョン」を参院選でも大いに語っていきたい。

白神
 憲法の平和主義に立脚した、現実的な道だと思います。

にひ
 憲法9条は戦没者の遺言です。04年に結成された「九条の会」のアピール文にこうあります。「紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるか…国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です」と。ロシアのウクライナ侵略のもと、参院選でそこが改めて問われているんじゃないかな。

白神
 憲法は前の世代がたたかい勝ち取ってきた平和と人権が凝縮された〝バトン〟だと思うんです。私たちはそのバトンをさらに発展させて次につなぐ責任がある。弾圧に屈しないで戦前から国民主権と反戦平和を掲げてきた日本共産党に「歴史のリレーランナー」の役割を期待します。

法律相談ではコロナ解雇で
「水しか飲んでいない」という女性に出会います(白神)
基本的人権が尊重される政治を取り戻したいです(にひ)

にひ
 2年を超えたコロナ危機は、憲法をないがしろにしてきた政治のむごさと、もろさをあらわにしました。先日、集いでお会いした女性は最愛の夫をみとれずに亡くしました。「コロナじゃなかったのに最後に会えなくても仕方がなかったの」って私に聞くんです。それは絶対に違います。

 万全の感染対策で家族がみとれるよう懸命に努力している病院もあります。それを難しくしているのは、長年、医療や介護に人減らしをおしつけ、現場の使命感に寄り掛かって、検査やワクチンもおろそかにしてきた成り行きまかせの自公政治です。

 効率優先の市場原理で保健や医療を抑え込んできた新自由主義は、生存権をはじめ基本的人権を脅かす憲法違反です。

白神
 相談会などで法律相談を受けると、コロナ解雇や雇い止めで路上生活をおくり、「何日も水しか飲んでない」という女性たちと出会います。憲法に立脚した政治が実現しないと国民の命がもう、もちません。

にひ
 「何でも自己責任」の政治は〝どうせ変わらない〟という国民の閉塞(へいそく)感を生み出し、民主主義を傷つけてきました。大企業・超富裕層優遇の格差をただして、ケアに手厚い社会、8時間働けばふつうに暮らせる社会をつくる。基本的人権が尊重され、憲法が生きる政治を取り戻したいですね。

白神
 いまの政治は1%の富裕層を代表し、99%の国民が被害を被っています。

にひ
 その1%は〝声の大きな少数者〟にすぎません。生活苦や生きづらさは自己責任じゃない。大本にむごい社会のしくみがあって、それは声をあげれば変えられます。憲法は施行75年。そうしたプロセスを通じて人権や民主主義、平和という憲法の価値が、国民みんなのものになってきたと思うんです。

改憲勢力に3分の2の議席を握らせるわけには絶対にいきません(にひ)
憲法を一番大事にしている政党が日本共産党です(白神)

白神
 岸田政権は安倍・菅政権よりソフトな印象を持たれがちですが、違いますよね。国民生活お構いなしに軍事費を倍加し11兆円規模にしようとしたり、9条をかえようとしたり、憲法破壊の危険な政権です。

にひ
 今度の参院選は、戦争か平和か―憲法をめぐる進路がはげしくぶつかり合う歴史的な選挙です。自公や維新、国民民主党の改憲勢力に、参議院でも改憲の発議に必要な3分の2の議席を握らせるわけには絶対にいきません。

白神
 世論調査でも国民が政治に求めているのは景気・雇用対策やコロナ対策、福祉・医療の充実です。改憲ではありません。憲法を一番大事にしている政党が日本共産党です。改憲を止めるためにも弁護士として憲法に立脚し現場でたたかってきた、にひさんの議席がどうしても必要です。

にひ
 必ず議席をとり戻して、憲法が生きる日本へ力いっぱい働きます。「憲法こそ希望」です。比例代表は全国が一つ。「650万票、共産党5議席」の先頭に立って頑張りぬきます。力を貸してください。

「憲法との出合い」
高校生平和ゼミナールで(白神)
父の過酷な労働を見て(にひ)

白神
 中学生までは〝人間の歴史は過ちの繰り返しだ〟と思っていました。高校生時代に平和ゼミナールに入り、戦争体験者のみなさんから、戦争の残酷さ、憲法は自由で平和な社会をつくる希望だと教わりました。憲法は戦争の反省から、徹底的に戦争を否定し、徹底的に権力者の手足を縛り、私たち国民の命と権利を最高の価値として保障しているものだと初めて知りました。〝人間の歴史はちゃんと前に進んでいる〟ことがわかり、希望を見つけることができました。

にひ
 ぼくの父は三交代勤務の労働者でした。誇りを持って働いていましたが、賃金は安いし、常に労災と隣り合わせでした。そこに労働者と家族の生活なんかお構いなしの大合理化と、むごい公害が人々を苦しめるのを目の当たりにして育ち、〝なぜ人を使い捨てる社会なのか〟と考え詰めました。

 自分が大きく変わったのは大学で日本共産党と出合ってからです。先輩から「世界をあれこれ評論するのでなく、力を合わせて変えよう」という言葉を聞いて〝そうだ〟と共産党に入り、「法を武器に社会を変えたい」と弁護士を志したんです。

 憲法は、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって…」(97条)とうたっていますよね。私自身そうありたいと思います。

白神
 本当にその通りだと思います。憲法には、人類の先輩たちが声をあげ、勝ち取ったものが凝縮されていますね。まさに希望です。


しらが・ゆりこ:弁護士、
=>神奈川県生まれ。高校生平和ゼミナールを中心に平和活動に参加。中央大学法科大学院卒

仁比聡平:前参院議員(2期)、
=>1963年福岡県生まれ。京都大学卒、党中央委員、弁護士
【活動地域】中国、四国、九州・沖縄

( 2022年05月22日 日曜18面掲載 18頁) 紙面表示