○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

この国会職員の適性評価について、強行された秘密保護法十条やあるいはその附則十条、そして秘密国会法というべき国会法、あるいは参議院規則や審査会規程、国会職員法二十四条を見ても、制定されている法が定めているのは、両院議長が協議して定めるところによる、適性評価の中身は、ありようは、両院議長の協議して定めるところによるとしているのみなんですね。

このありようについても、後に検討する、基本的には議運委員会等の議論を踏まえて決するということになると、昨年の六月、この委員会で発議者は繰り返し、適性評価の実施に関しても立法者意思は定まらないまま強行採決をされました。今日がその後初めての委員会質疑であります。

発議者ないしそれに見合う与党議員が仮にこの国会職員の適性評価の実施に関する件の制定を求めるのであるなら、与党議員自らが本案の趣旨説明に立ち、答弁に立って、事務総長に押し付けるのではなく、徹底した十分な委員会質疑を尽くすことこそが当然だと冒頭申し上げたいと思います。

そうした意味では聞く相手が違うわけですけれども、事務総長にお尋ねせざるを得ないと思うんですが、申し上げたように、後に検討すると繰り返されながら、この実施に関する件(案)や、この案の中で八条、本件に定めるもののほか、適性評価の実施に関し必要な事項は各本属長、つまり本院においては事務総長が定めるものとされている実施規程案、あるいはそこには質問票を始めとして詳細な様式が準備をされていると思いますが、審議においては後に検討するということがあれほど繰り返されたにもかかわらず、どうしてこれほど詳細な規定を具体化できるのか、その根拠についてお尋ねしたいと思います。

○事務総長(中村剛君) 参議院事務局といたしましては、昨年の六月に衆議院と参議院で行われました国会法等改正案の質疑の中で示されたいわゆる発議者答弁が立法趣旨であろうと思い、それをそんたくして作ったのが両院議長協議決定案でございます。また、適性評価の実施に関する詳細な事項については、議長の監督の下に、実際の事務を行う事務総長において詳細な手続、その内容を定めたものでございます。

なお、衆議院も同様の定めをしていると存じ上げております。

以上です。

○仁比聡平君 私が会議録を振り返る限りでは、適性評価の在り方について事務総長がそんたくされたとおっしゃる発議者答弁というのは、例えば、行政職員の適性評価に準じたレベルという発言や、あるいは適性評価の項目について七項目などという答弁にとどまるものだと思います。

そこでお尋ねしたいんですけれども、この政府に準ずるという発議者の答弁の意味なんですけれども、その準ずる相手、対象ですね、これは特定秘密保護法でいえばどの条項で行われる適性評価に準じるというのでしょうか。どんな御理解でしょうか。

○事務総長(中村剛君) 先生御指摘の点でありますから少し引用をさせていただきますけれども、昨年の六月十一日の衆議院の議院運営委員会で、大口先生の御答弁でありますけれども、適性評価については、特定秘密保護法十二条の二項で、適性評価の項目として、特定有害活動、それから犯罪・懲戒歴、情報の取扱いに係る非違、薬物、精神疾患、飲酒、信用状態の七つの規定がされております、国会職員につきましてもこれに準じてやっていきたいと思いますという答弁がございます。

また、六月二十日の参議院の議院運営委員会の答弁で、長谷川先生でございますけれども、提案者としては、国会職員又は国会職員になることが見込まれる者に対する適性評価というのは、行政機関の職員に対する適性評価と同程度のものを想定しておりますという答弁がございます。

私どもも、政府が行っている適性評価、それ以上のものでもそれ以下のものでもないものを目指して規程を整備させていただいているということでございます。

○仁比聡平君 その大口議員の答弁も、適性評価の項目について指摘をしているだけであって、その発議者の答弁の時点で、その法十二条に基づく適性評価の基準、いわゆる運用基準は存在をしませんでした。その後、運用基準が具体化をされ、特定秘密保護法の施行令として定められていますけれども、葉梨副大臣に伺いますが、この施行令を定められたのはいつですか。

○副大臣(葉梨康弘君) 施行令を定めましたのが、法律が通りましてから後、昨年の十月の十四日でございます。

○仁比聡平君 その施行令の十八条を見ますと、特定秘密保護法の十条に基づいて特定秘密の提供を受け得る、例えば裁判所やあるいは情報公開・個人情報保護審査会などに対して適性評価は求めないということが明確にされていると思いますが、そのとおりですか。

○副大臣(葉梨康弘君) 政府における適性評価につきましては、仁比先生御案内のとおり、特定秘密保護法の十二条で、我が国の安全保障に関する事務について特定秘密の取扱業務を行う者について適性評価を行う旨、規定しております。

ですから、我が国の安全保障に関する事務に関してその取扱業務を行う者に当たらない者、具体的に言いますと、特定秘密保護法第十条に基づき特定秘密を提供する場合において、その相手方は適性評価の対象とはなっておりません。

○仁比聡平君 つまり、秘密法十二条で適性評価を行うとされる者と、秘密法十条を根拠としてそれぞれの業務の必要において提供を受け得る者というのは、これは秘密保護体制の下でも全く違う区別がされているわけです。

改めて確認をしますが、事務総長、申し訳ないが事務総長に伺うしかありません。発議者は、昨年六月のその答弁の中で、国家安全保障に関わる業務を担う職員に対する秘密法十二条に基づく適性評価と、そうではない機関に対する秘密保護法十条に基づく提供、しかもその提供を受ける者に対しては適性評価は求められないということを区別しての答弁というのはされていますか。

○事務総長(中村剛君) 先生のお尋ねは、国会法と国会職員法になぜ適性評価が盛り込まれたのかという意味のお尋ねなのかと思いますが、昨年六月に行われました国会法等の一部を改正する法律案の議論の際に、情報監視審査会の職員については、十分な保護措置を講ずるという観点からあえて適性評価をすることにした旨の発議者答弁はあったと思います。それに基づいて、私ども、法改正がなされたのだろうと思います。

○仁比聡平君 あえて行うこととしたというような趣旨だったり、あるいは手厚く保護するとか、そういうニュアンスめいた発言はあったかもしれませんが、秘密法十条の趣旨を踏まえた議論というのは行われていませんよね。

裁判所に対してその裁判上の必要があって提供される場合、あるいは情報公開などの関係でその審査会に必要があって提供される場合に加えて、その後政府が定めた重層的なチェック機関とされる内閣に置かれる公文書管理監と情報保全監察室の職員、この職員たちに対しては適性評価は行われるんですか。

○副大臣(葉梨康弘君) いわゆる監察室の方ですけれども、これはインテリジェンスコミュニティーということですから、相当安全保障に関する職員とダブってくる者が出てくるだろうと思いますが、独立公文書管理監の職員については、十条提供ということでございますので、これは適性評価は行われません。

○仁比聡平君 つまり、国家安全保障を業とする者以外で適性評価を行うんだというのは国会職員のみなんですよ。どうして国会職員にだけこんな適性評価、人権侵害に当たる適性評価を行うというのか。例えば裁判所に特定秘密が提供されるときに、その漏えいのおそれも考えた上で提供するわけですよね、政府は。裁判所だったりほかのところ、しかも、特定秘密をチェックする、個別秘密の是非をチェックするというその独立公文書管理監にも適性評価を行わずに提供するといっているのに、同じ根拠条文である秘密法十条を根拠にして提供を受け得る国会のみがどうしてこんな人権侵害に当たる適性評価を行わなければならないのか。これはどういう考えになるんでしょうか。

○事務総長(中村剛君) 今の先生の御質問には、私、お答えする立場にはないと思うのですが。

○仁比聡平君 事務総長のおっしゃるとおりです。総長が答えられるものでもないし、そうした議論はもし承知の上で手厚い保護をするんだというふうに発議者が答弁しておられたのであれば、それは重大な問題に口を拭っていたということにほかならないですよ。発議者ないし与党の議員がきちんと答弁に立って引き続き議論をすべきだと思います。

手厚く保護をすることによって個別秘密の提供が国会にもなされるようになるのだというのがおおむねその監視とおっしゃる自民、公明のこの問題での理由だったわけですけれども、その提供を受け得るということになるのかという点をちょっと政府に伺いたいと思いますが、それだけ厳格な保護措置を国会が仮に講じたとしたときに、それによって秘密法の三条や十条から出てくる国会への提供の要件というのは、これは変わりますか。

○副大臣(葉梨康弘君) まさに御指摘のように、特定秘密の提供が国会から求められた場合には、政府としてはそれに尊重して適切に対応するということでございます。

ただ、ここで、やはり我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められるかどうかということを総合的に判断する場合に、その保護措置の度合いということを勘案することは十分あり得るものと考えています。

○仁比聡平君 元々提供する要件は、おっしゃった安保上の必要ということで、これは変わらないわけでしょう。国会が講じている保護措置が提供に足るかどうかという判断は、これは先ほど議論もありましたけれども、改めて森大臣の私に対する答弁を引けば、その特定秘密を提供するに足るだけのものになっているという判断は政府が行うのではないのかという私の問いに、はい、そのとおりですとお答えになっているわけです。

どんなに適性評価を始めとした保護措置を講じたとしても、出すか出さないかは政府次第ということでしょう、副大臣。

○副大臣(葉梨康弘君) まさに先ほども御議論になりましたけど、国会で決めていただいたもの、これを私どもとして判断をさせていただきまして、その判断要素になり得るものと考えます。

○仁比聡平君 その答弁も含めて、徹底した議論が必要だというのは先ほど福山議員が指摘をされたとおりだと思います。

そこまでして、提供されないにもかかわらず適性評価が現実に実施をされると。これが、この制度が廃止されない以上、将来にわたってずっと継続するということになれば、国会職員に対するプライバシー侵害というのが極めて重大な形で進行するんですよ。しかも、これを公私の団体に対しての照会を行うのかとか、あるいは重大なプライバシー侵害に対して大問題だということで苦情申出の制度がつくられていますが、これが本当に職員の救済の制度になり得るのか、そうした点で徹底した議論が私は必要だと思います。

時間が参ったと思いますので、今日はこれで質問を終わりたいと思います。