日本共産党の市田忠義書記局長は12月9日、諫早湾干拓事業潮受け堤防(長崎県)の開門を命じた福岡高裁判決を受け、古川元久内閣官房副長官と会い、「上告を断念し、直ちに開門の政治決断をおこなう」ことなどを要求した菅直人首相への申し入れ書を手渡しました。穀田恵二国対委員長、吉井英勝衆院議員、仁比聡平前参院議員が同行しました。

 古川官房副長官は「開門調査のための条件整備を政府として検討している」と表明し、上告断念については「判決全文をよく精査して考えたい」と答えました。

 党国会議員団として提出した申し入れ書は「一日も早い開門によって真の有明海再生にふみだすべき政府の責務はもはや待ったなし」と指摘しています。開門しても防災機能は確保できるなど、国の言い分を明確にしりぞけた判決は、「農漁共存」の道にこそ道理があることを示していると強調。(1)上告を断念し、直ちに開門の政治決断をおこなう(2)来春とされるアセスメント中間報告を待たず、開門準備作業にすみやかに着手する(3)原告団・弁護団が参加する継続的協議の場を設けて、代替水源の確保など開門の方法・時期を検討する――の3項目を求めています。

 申し入れ後、国会内で会見した市田書記局長は「有明海の漁業被害と水門の閉め切りとの因果関係を正面から認めた画期的で重要な判決がでました。一日も早く開門を決断し、有明海再生に踏み出すべきだ。菅首相自身が現地にいって無駄な公共事業の最たるものだとのべ、選挙公約でも開門をいっていたわけだから、上告を断念し、開門を決断すべきだ」と強調しました。(しんぶん赤旗 2010年12月10日)



2010年12月9日
内閣総理大臣 菅直人殿

日本共産党国会議員団
諫早湾潮受け堤防排水門の開門を求める申し入れ

 諫早湾干拓事業について、福岡高裁は今月6日、佐賀地裁に続きふたたび国に対して潮受け堤防排水門の開門を命じました。閉め切りから13年、いっそう深
刻になっている有明海漁業の被害と閉め切りの因果関係を正面から認めた重要な判決です。一日も早い開門によって真の有明海再生にふみだすべき政府の責務は
もはやまったなしです。

 福岡高裁は、「排水門を常時開放しても、防災上やむを得ない場合にこれを閉じることによって防災機能は相当程度確保することができる」と私たちも求めて
きた段階的開門の合理性を認めました。また「常時開放によって過大な費用を要することとなる事実は認められない」と国の言い分を明確に退けました。取水実
績が国の計画のわずか8.7%にすぎないかんがい用水の代替水源の確保は可能であり、塩害の危険性は証明されていないことを示して「干拓地における営農に
とって潮受け堤防の締切りが必要不可欠であるなどともいえない」とした判決は、「農漁共存」の道にこそ道理があることを明らかにしています。いたずらに争
い続けるべきではありません。

 有明漁民は遅くとも来春の開門実施を強く求めています。2002年の短期開門調査の経験は開門すれば有明海はよみがえることを示しています。2009年
総選挙「INDEX2009」でも開門を公約した民主党政権が、この判決とその重みを正面から受けとめて臨まれることを強く求め、次のとおり申し入れま
す。

一 上告を断念し、直ちに開門の政治決断をおこなうこと。

二 来春とされる「アセスメント」の中間報告をまつのではなく、開門を前提として、必要な代替水源の確保など開門準備作業にすみやかに着手すること。

三 開門の具体的方法・時期の検討は、原告団・弁護団が参加する継続的協議の場をもうけておこなうこと。