○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

熊本地震からもうすぐ半年になりますが、復興に懸命に取り組む住民、自治体を、お話もありましたけれども、八日、阿蘇山の爆発的噴火がまた襲いました。心からのお見舞いを申し上げますとともに、被災者支援に全力を挙げる決意を改めて申し上げたいと思います。

この法案で創設される熊本復興基金は、復興のために被災自治体の判断で運用されるものでありまして、賛成です。同時に、国の責任でやるべき支援は国が具体化すべきことは当然でありまして、熊本地震による被害の特徴、課題に応えて国の対策を前進させるということが今改めて問われていると思うんですね。

そこで、今日、絞って二つ伺いたいと思います。

まず、農地、農業用施設の甚大な被害は皆さん御存じのとおりです。農水省の方から、現時点の把握されている被害の箇所、面積、金額と、それから査定などの進捗に関わる資料をお出しいただきましたけれども、つまり、市町村は必死で頑張っているんだけれどもやっと査定の準備を整えてきたところというのが現実で、これからの発注や施工、そもそも査定ということを考えますと、来年の作付けに間に合わせるためには、これ国が相当乗り出して応援をすることが必要だと思っているんですね。

そこで、農水省、進捗状況がどうなっているか、そして今後どう取り組むか、お話を伺いたいと思います。

○政府参考人(奥田透君) 御指摘のとおり、熊本地震で被災した農地、農業用施設の災害復旧事業に係る災害査定については、八月より本格化し、現在鋭意進めているところでございます。

具体的には、災害査定を本年内に完了させることを目指し、地元九州農政局のみならず各地方農政局から災害査定の実務経験のある国の職員を査定官として派遣することにより、災害査定の加速化を図っているところであります。

こうした取組により、今後とも速やかな復旧の進捗を図り、できる限り来年の作付けに間に合うよう市町村等を支援してまいりたいと考えております。

以上です。

○仁比聡平君 全力で頑張ってもらいたいと思うんですけれども、特に中山間地の甚大な被害について伺っておきたいんですが、お手元の二枚目の資料に、御船町の元禄・嘉永井手、これ、井手というのは熊本の言葉で用水路、水路のことなんですけれども、「水送れず 田植え断念」という熊本日日新聞の六月の記事をお届けをしています。

私も現地を訪ねてきているんですが、江戸時代に先人が山を手掘りして、その後ずっと集落で維持されてきたこの用水路が、今度の地震で土石流、あるいは破壊をされて塞がれてしまって、流域の三百五十三人の受益農家が田植を見送ったという状況にあるわけです。この幹線になる用水路とともに、当然そこの支線になる水路だとか、それぞれの方の棚田だとか、道路だとか、それが全部山じゅう壊れているという状況で被害が甚大なんですが、先週、町の担当者に伺いました。そうしますと、復旧事業の査定がこれから始まるところだと。

そこで、生産者の方々から次々に問合せがあっているのは、国庫の補助になる限度額を超えてしまって自己負担になるのではないかという不安なんですね。これは、山なんかの傾斜度によって国が補助をする限度額が定められているわけですが、もしそれを超えて自己負担になるということになってしまえば、これはもう莫大な金額になって到底自己負担できないと。ということで、それが負担できずに農業をもう諦めるという方が出てしまうと、そこは耕作放棄地になり荒れ地になるわけで、鹿だとかイノシシの被害なんかも含めて集落の多面的機能がもう損なわれてしまう。これが現実の実情で、あっちこっちにこういう状況があると思うんですね。

そこで、農水省に、この問題について国が乗り出して実情をつかんで、県や市町村の相談に乗って、農家負担がなくなるようにしてほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(奥田透君) 農地の復旧限度額は、被災した農地に代わる農地を新たに造成するために必要な標準的な経費として定められています。そして、これを超えた部分については国庫補助の対象とならないため、地元自治体や農業者の負担となります。また、中山間地域においては、地形的な条件から工事費が大きくなってしまう傾向があることも御指摘のとおりでございます。

したがいまして、農林水産省としては、できる限り復旧限度額を超えないよう工夫する必要があると考えております。例えば、農地の復旧工事を復旧限度額のない水路等の農業用施設の復旧工事と適切に組み合わせること、あるいは農地の被災箇所が百五十メートル以内で連続している箇所をまとめて申請すること、あるいは農地のり面の復旧に当たっては簡易な土止め工といった経済的工法を選定することなどの工夫ができないか、災害査定官を含む国の職員を現地に派遣し、技術的な支援を行っているところであります。

農林水産省としては、今後とも、このような取組により熊本県、市町村等と密接に連携し、中山間地域における農地、農業用施設の復旧を推進してまいりたいと考えております。

以上です。

○仁比聡平君 NHKのニュースで熊本のある農家が、復旧費が四千五百万円に上って、そのうち三千万円以上が自己負担になるのではないかというインタビューに答えておられまして、そうした不安というのは、これ多くの被災農家のものなんですよね。これに対して、例えば先般台風の被害を受けました鹿児島県の垂水市などは、激甚指定をされたら農家負担はゼロにする覚悟でやっている、そうしないと生産者の意欲を励ますことができないとおっしゃっていて、私は、そうした自治体、そして国の構えが被災者を励ますんだと思うんです。

こうして地名も取り上げましたが、御船町、この七滝の地域ですね、中山間地の復興の言わばモデルとして、先ほど部長おっしゃったような負担を限りなくゼロにする、なくすという構えで取り組んでいただきたいと思いますが、もう一度、いかがですか。

○政府参考人(奥田透君) 先ほど申しましたとおりに、災害査定官も含めまして国の職員を更に現地に派遣するということで、今、市町村、熊本県と調整しております。

今後とも、しっかりと現地の実情を把握しながら災害復旧に取り組んでまいりたいと思います。

○仁比聡平君 是非よろしくお願いしたいと思います。

もう一問は、衆議院の総務委員会でも我が党の田村議員が大臣にも迫りました一部損壊の住宅に関する支援の問題なんですけれども、この問題は切迫した課題です。

そこで、内閣府副大臣に是非お尋ねをしたいと思うんですけれども、住まいは生活の基盤なわけです。この再建の支援のために行う住宅被害の認定とその基準というのが、支援しない切捨ての線引きになってしまっていると、それが熊本地震ではっきりしたわけですね。これは、応急修理、仮設住宅の入居、公費解体の適用、義援金の配分、いずれもこの認定が支援をしないという形で働いてしまう。

そこで、考えていただきたいのは、この基準というのはそもそも不動のものではないでしょうということなんですよ。二〇〇四年に新潟、福井の豪雨がありました。その後、中越、中越沖地震など相次ぐ災害の経験の中で、経済的、社会的に住み続けられるか否かという観点から、被災者の立場に立って弾力的かつ積極的に適用ができるようにとずっと運用し、積み重ねてきたものがこの基準ですよね。

翻って、熊本の現場で何が起こっているかというと、実際に修理費が百万円以上三百万円まで掛かるという方が、私どもの今取り組んでいるアンケートで三六・八%に上ります。中には、瓦が剥がれ落ちて内壁、外壁にもひびが入っている、つまり住み続けるためには屋根や壁の修理というのは絶対しなきゃいけないわけですね。その修理費が五百三十万円掛かるのに、一部損壊としてしか認定されないという現実があるわけですよ。にもかかわらず何の支援も受けられないと。これでいいとお考えなのか。

○副大臣(松本洋平君) お答えをいたします。

内閣府におきましては、市町村が被害認定を迅速かつ的確に実施できるように災害に係る住家の被害認定基準運用指針を定めておりまして、屋根、壁、柱などの住家の主要な構成要素の被害が住家全体に占める損害割合によって判定を行うこととしており、これによって客観的、公平に判定を行うことができるものと思っております。

なお、この運用指針による調査、判定の方法につきましては、これまでも被害の実態などを踏まえまして必要な見直しを行ってきております。今回の熊本地震では、その特徴に鑑みまして、地盤の沈下、斜面の崩壊などが多数発生している実情に鑑みまして、住宅の不同沈下や地盤面下への潜り込みが発生している場合には、主に地盤の液状化を念頭に置いた調査、判定方法を適用できることを改めて周知をさせていただいております。

また、被害程度の小さい一部損壊の被害を受けた方々に対しては、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資等の支援措置がございます。こうした制度をしっかりと活用していただくとともに、引き続き、関係省庁や地方公共団体などと連携をしながら、被災者の住まいの再建に努めてまいりたいと思います。

○仁比聡平君 とんでもない御認識なんですよね。現場の被災自治体の最大のと言ってもいい悩みなわけですよ。だって、今おっしゃるような認定がほぼ終えた段階で、三次判定までやって、今お話ししたような、つまり経済、社会的に言って支援が必要な被害は現にあるわけです。そこに何の支援策もなくていいのかということが被災住民から突き上げられているわけですね。

ところが、国は下で、自治体で判定された結論の数字だけしかつかんでおられない。自治体は、この国の基準に基づく判定に、被災者を目の前にしてもう格闘しているわけでしょう、必死の思いなわけでしょう。それでも、支援が必要だと思うような被害でも一部損壊としてしか判定できないというその実情、そして、実際そういう判定をされたおうちがどんな支援が必要なのか、県や自治体と協力して国がちゃんと調査すべきじゃありませんか、副大臣。

○副大臣(松本洋平君) 被害認定調査の実情につきましては、これまでも日々の業務の中で地方公共団体からの問合せをいただいております。また、地方公共団体向けの説明会やアンケート調査などを通じまして運用実態の把握に努めさせていただいております。今後とも、一部損壊と判定された方々を含めまして、地方公共団体向けのアンケート調査などによって被害認定調査の運用実態をしっかりと把握をしてまいりたいと思います。

また、先ほどお話がありましたように、過去の災害においてこの基準の設定の見直しというものも随時行ってきたというような実績もあるわけでありまして、今後とも、必要がある場合には、以降の災害に備えまして見直しを行ってまいりたいと存じます。

○仁比聡平君 いや、ちょっと答弁がそういうふうに前進したのかなと期待はしたいと思うんですけれども、時間がなくなっていて。

アンケート調査おやりになる、それを踏まえて今後の運用を考えるというやつを、上から目線になっちゃ駄目ですよ。それから、熊本地震と、それから現に今年も相次いでいる台風を始めとした被災者にちゃんと届くようになるものにしないと駄目ですよ。

そのことを申し上げた上で、最後に一点、感想を伺っておきますけれども、そうして被災者に向き合う自治体の中で、お手元に資料を配りました、別府市が復興建設券というのの発行事業を取り組んでいます。もう紹介ができませんが、つまり、熊本地震の被災者に対して、実質、一部損壊の方でも二五%、上限二十万円の補助を行うということなわけですね。建設券ですから、修理額に応じた支援が実現する。当然、地域経済の循環の力にもなるわけです。こういう取組について、副大臣、どう思いますか。

○委員長(横山信一君) 松本内閣府副大臣、時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

○副大臣(松本洋平君) 別府において行われている取組というものは我々としても承知をしているところであります。

別府市の事例でありますけれども、配付された資料を拝見させていただきますと、少し工夫が必要な部分はあるのかなとは思いますが、自治体独自の積極的な取組事案の一つであり、私としては評価できるものと考えております。

○仁比聡平君 であれば、国として実現すべきだと。大臣にお伺いする時間はなくなりましたが、是非そういう自治体を応援してもらいたいと強く求めて、質問を終わります。