仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 裁判所定員法の改正案につきましては、実質四十五人増員ということで賛成をするんですけれども、率直に言いまして、判事補は定員減らさずに抜本的に増やせばよかったじゃないかと。今日のこれまでの御答弁を伺っていましても、裁判所は何をやせ我慢をしているんだと。
 抜本的な裁判官の増員が私はいよいよ国民的課題だと思っておりまして、日弁連のお話を伺いますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスそして我が国という先進諸国の裁判官の国民一人当たりの数を比較をすると、我が国以外の四か国のうちで一番裁判官の数が少ないのはイギリスだそうでございまして、裁判官一人に対しての国民の数は約一万四千人だそうです。我が国では一人当たり約四万六千人程度だということで、大変我が国の裁判官というのは少ないんですね。ドイツに至っては裁判官一人当たり国民は約四千人ということで、我が国の十倍以上の裁判官が対国民の数でいえばいるんだという、そういう規模の話なんですよ。
 今日も、これまでの質疑の中でもっと大きな話をしようじゃないかという意見が議場に出ましたけれども、臨時国会で我が国の裁判所予算がわずか〇・四%にとどまっていると、これ抜本的に増額をするべきだという点について、千葉大臣にもそのとおりだという趣旨の御答弁をいただいたと思うんですけれども。
 こうした今の日本の、裁判官の数の話を今日させていただきたいと思いますが、国民の裁判を受ける権利に本当にこたえる上で抜本的増員が必要なんじゃないかと私は思うわけです。
 最近新設されてきた制度についてちょっとお尋ねをしますが、労働審判事件が開始をされています。二〇〇六年に始まったかと思うんですけれども、実際に始まってみましたら、申立ての件数というのは全国的に見て大変急増をしています。
 その中で、山口県の県労連、ここにはこの間の派遣切りあるいはリーマン・ショック以降の状況の中で、寄せられている相談は、二〇〇六年に対して二〇〇九年、二・七倍に激増しているんです。これは連合山口に寄せられた相談も同じ時期に一・八四倍に増えているという読売新聞の記事があるんですけれども。
 ところが、山口県下では、この労働審判の申立て件数というのは増えていないんですね。これはなぜかと。この県労連の役員さんがお話しになっているのは、労働審判が県都の山口市の地裁本庁でしか行えないことも一因なんだというんですね。
 私も別の委員会で、国会で取り上げてきましたマツダ自動車の派遣切りは防府という町で行われましたが、その町に住む派遣切りに遭った当事者は、寮も追い出されて、所持金もないわけでしょう。
で、地位確認の審判を求めたいんですよ。だけれども、山口本庁まで行くそのお金もない、時間もないと。遠方の山口地裁にまで行けずに泣き寝入りした仲間も多いという、そういうお話があるわけです。
 県内の弁護士さんは、迅速な解決を図る労働者にとって使い勝手が良い制度なだけに、交通費や移動時間が大きな制約になっているのは残念だというふうに言っておられまして、この労働審判制度は今度の四月から実施する庁が増えるんですが、増えるといっても、北九州の福岡地裁小倉支部と東京の立川支部、この二つだけなんですよね。なぜ二庁だけなのかと。その理由をお聞かせいただきたい。

○最高裁判所長官代理者(林道晴君) 今議員から御指摘ありましたように、今年四月から東京地方裁判所の立川支部と福岡地方裁判所の小倉支部において労働審判に関する事務を取り扱うこととしたところでありますが、その際の検討に当たっては、個々の支部において申立てが予想される労働審判事件の事件数と裁判所へのアクセス、この二つを基本的な考慮要素としまして、各庁ごとの事務処理体制などの個別事情を総合的に考慮して、これらの二支部が相当と考えたところであります。
 今後、どの支部で労働審判事件を取り扱うかについては、今申し上げました考慮要素のほか、労働審判事件全体の動向や、立川支部、小倉支部における労働審判事件の運用状況などを勘案しながら検討していくことになると考えております。

○仁比聡平君 今のお話も大変おかしくて、山口の県下でいいますと、下関支部は県下の支部でいえば大きな支部でございまして、労働事件、いわゆる地位確認などの労働関係訴訟の申立て件数というのは、山口地裁本庁六件に対して地裁下関支部の方が十七件、大幅に上回っているんですよ、〇七年から〇九年の三年間で。
 だから、本庁だけでしかやらないというその発想、私は、その背景には裁判官の人員がそもそも抜本的に足りないのではないかと。だから、本庁に、例えば医療過誤事件だとか、今度は破産管財事件だとか何だとか集約していこうという発想になるでしょう。遠いんですよ、本庁というのは。
 裁判官は官舎から本庁に移動をしておられて、その県下の隅々からすると本庁が遠いという実感がないのかもしれませんけど、それ、ちょっと世間からずれていますよ。
 私、今、今度労働審判事件が始まる小倉が地元ですけど、この小倉で、市民運動で行政事件を弁護士活動していた時代数々申し立ててきました。行政事件は、目の前にある小倉支部には申立てができずに、わざわざ博多の福岡地裁本庁に行かなきゃいけないんですね。これ、なぜですかという問題が、規則で決まっているからというのがこれまでの最高裁の御説明で、それは専門性が理由にされてきたんです。私は、小倉支部のあれだけの裁判官たちが行政事件を裁く専門性がないのかと、おかしくないかと。
 もう一つ同じ問題で、地裁の支部には簡易裁判所の控訴事件の管轄がありません。これも規則で決まっているからとおっしゃるんですよ。なんだけれども、簡裁そのものは小倉にあるわけですよ。その控訴事件は何で博多まで行かなきゃいけないんですか。専門性なんて理由には絶対ならないですよね。
 先ほど来お話になっている過払い訴訟なんかだってあるかもしれない。逆に、サラ金なんかから申し立てる貸金訴訟があります。これ、市民がそれに応訴をし損なって、慌てて弁護士に例えば相談してきたときに、いや、これはもう控訴すれば十分いろんな闘いはできるけれども、だけれども裁判所は福岡になっちゃうから、交通費だとか日当だとか掛かりますよと。そんなにお金が掛かるんだったらもうどうしましょうってみたいな話になっている。
 それは、裁判所がそういう事件を受け付けない、そんな変なことをやっていることによって市民の裁判を受ける権利は阻害さ