○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

まず、三か月がたとうとしております広島の土石流災害の復旧復興についてお尋ねをしたいと思います。

現地で聞きますと、住民説明会では国、県、市の担当者が今後の宅地の安全性について絶対安全という保証はないと説明せざるを得ない状況が続いておりまして、住民の皆さんからは、最低でも砂防ダムができなければ気持ちの上でも戻れない、それまでは避難先確保の公の支援がどうしても必要だという声が次々上がっております。一方で、ダムができても帰れないと気持ちを吐露される方々も出てきておりまして、三か月がたとうとする中で生活再建の見通しが立たずに焦燥感が大きく広がっていると、そういうふうに言っても過言ではないかと思うんですね。

ハードの面でいいますと、国交省がワイヤーネットというのを設置を今急いでおられますけれども、これも鉄でできていて腐食しますから、有効なのは十年程度というようなことが住民説明会で聞かされる、あるいは土石流のセンサーも動物が引っかかって誤作動なども起こっておりまして、本当にこれで安心できるのかと、到底できないという気持ちなんですよね。

その下で、瓦れきを撤去して、今後の復旧復興を考えていく上での基本理念を改めてはっきりさせることが今大事かなと思って大臣に伺いたいんですけれども、東日本大震災を受けまして災害対策基本法が改正をされました。その際に、基本理念として被災者の援護を図るのだということが明記をされましたし、大規模災害からの復興に関する法律においても、地域住民の意向を尊重する、あるいは生活の再建を図るといった文言が記されているわけです。これ、災害からの復旧復興に当たって、一人一人の生活再建、とりわけ、基盤となる住まい、あるいはその宅地の安全性、あるいはなりわい、こうした被災者お一人お一人の生活の再建というのがこれ復旧復興の理念なんだと。

これ、当然、広島の被災地においても、一人一人の皆さんの安心できる、そうした住まいを取り戻す上で、やっぱりみんなが力を合わせて頑張るんだということかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(山谷えり子君) 昨年の災害対策基本法の改正及び大規模災害からの復興に関する法律案の審議において、古屋前大臣から基本理念について、大規模災害からの復興に関する法律案の被災地域における生活の再建とは、大規模災害から地域住民の生活を立て直し、安定させることであり、被災者一人一人の生活再建を図ることを意味しており、一方、災害対策基本法においても、基本理念規定の一つとして、被災者一人一人の生活再建を図ることを含めて、被災者の援護を図り、災害からの復興を図る旨を規定したと答弁したと承知しております。

災害対策基本法及び大規模災害からの復興に関する法律の基本理念については、私も、古屋前大臣が答弁したとおりだと思っております。

○仁比聡平君 そうした一人一人の生活再建を実際に具体的に図っていく、その上で、今その広島の被災地における復興に向けた全体像、ここを、被災者お一人お一人がしっかりと腰を据えて、語るべきことを御自身で本当にじっくり語り合って言える場をつくるということがすごく大切になっていると思うんです。

といいますのも、例えばハード一つ取ってみても、砂防ダムを造るのに重機を山に入れる必要があるわけですが、これには四メートル幅の道路が必要だということで、けれど、皆さん御存じのように、例えば八木や緑井の地域というのは大変道幅が狭いんですね、二メートルあるかないかと。どうするんだということになって、現実に民家を次々と重機が入っていくとか土砂を出すとかいうことは現実的に不可能なんじゃないかということが隣近所でわんわん話題になる。そのことが住民説明会で話になると、その作業用道路は供出ですと、無償での提供ですというような説明がなされたりとかして、なおこれは難しいぞというようなことが現場で問題になっているんですね。今のこの問題については、昨日、国土交通委員会で太田大臣に前向きな解決に向けた御答弁もいただきましたのでここで繰り返すことはしないんですけれども、現地で出ていますのは、そうした下で、恒久的な道路用地として国が用地買収したらよいのにというような声もあるわけですね。私もそれは十分あり得ると思うわけです。

そういう意味で、ダムができても帰れないというふうに感じていらっしゃる方々もある。今後、レッドゾーンの指定があって、その外にある皆さんも、いや、もうここにはいられないとおっしゃる方もあるかもしれない。そういう中で、この復興の全体像をそれぞれの町内で住民がじっくり議論ができる、本音で話せるという場をしっかりとつくっていく必要がある。これ、災害の直後から一貫して求めてきたんですけれども、必ずしもそうなっていないというのが現実で、やっぱり事業ごとの上からの説明みたいな形になってしまって、だから一般的には、例えば道路工事をするときには道路は無償で、ある道路は使うということでしょうから、そんなようなことが住民の耳に入ってしまうというか、説明されてしまうということになっているのではないのかなと思うんですよ。
ですから、安心できる住まいとコミュニティーを取り戻す、それは一人一人の住民が本音で話せる場をつくってこそなんだと、そういう場をつくるべきだと私は思うんですが、大臣、いかがでしょう。

○政府参考人(日原洋文君) 広島市につきましては、今回の土砂災害の教訓を踏まえまして、災害に強い町づくりを目指しまして、国、県が実施する砂防事業と併せ、避難路として活用できる道路の整備、それから被災住宅の再建や移転に関する支援策を検討し、将来の町づくりに向けた復興まちづくりビジョンを策定するというふうに伺っております。

このため、広島市において、十月七日に市長を本部長とする復興まちづくり本部を立ち上げまして、事業化に向けた課題などについて関係する国や県と調整を行っているということでございまして、地元の住民の方とお話しするにしても、県の中の、市の中の考え方をある程度整理する必要もございますので、年内にはその案を整理した上で、年明けから市民の御意見を聞いて年度内には確定していきたいというような予定であるというふうに伺っているところでございます。

○仁比聡平君 広島市の主に七か所というふうにも言われている、七地区というふうに言われているようですけれども、その復興ビジョンの段取りというのは今統括官が紹介されたようなことなんですが、これが固めて説明するというみたいなことになってしまったら、やっぱりじっくり本音でこの町内のこと、住まいのことというのを言い出せなくなってしまう方々も出てくるかもしれない。

本当に十分な説明が、説明といいますか、そういう場がつくられるためには、どうしても自治体は国や県の制度や予算とか支援策との関係を気にしながらのお話になるじゃないですか。だから、被災者にとってみると、どこが所管かは関係なく、こういうことが必要だというふうに思って発言したら、いや、それはできませんというみたいなことが現場で起こってしまうと、もう本当に一人一人の生活を再建していくべき場がそうではなくなってしまうと。何だか固まったものを押し付けるような場になってしまってはいけないというのが私の思いなんですよ。大臣、いかがですか。

○国務大臣(山谷えり子君) 基本理念であります一人一人の生活の再建を図ること、そしてコミュニティーを取り戻すという考え方は大変に大切だと考えております。

災害からの復興は、地元である市において被災地域の住民の意向を踏まえつつ進めていくことが重要であると認識しております。広島市においては、年内に復興ビジョン案を策定する、そして市の復旧復興に向けた考え方、十分に説明すると思いますが、国としてもしっかりと対応してまいりたいと思います。

○仁比聡平君 そうした方向で是非よろしくお願いしたいと思うんです。

そのときに、大臣、これはもうちょっとどの事業がというふうに個別に申し上げるわけじゃないんですけれども、実際にその被災者の生活を再建する、コミュニティーを取り戻すといったときに、既存の制度だとか予算だとか支援策ではこれはうまくいかないということがあり得ますよね。

広島でも、これまでこの三か月近くの間に次々とそれがありましたし、皆さんに御提案もして乗り越えてきたと思うんですけれども、今後そうやって復興を考えていく上で起こってくる住民の皆さんから出されるニーズ、これは正面から受け止めて、是非、国としても検討していく、その姿勢で臨んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(山谷えり子君) 柔軟に、きめ細かく、いろいろ連携しながら考えていきたいと思います。

○仁比聡平君 そこで、資料をお手元にお配りをしています。表裏ありまして、ちょっと裏から入りたいと思うんですけれども、これ、広島市にお願いして私どもの市会議員団に提供をいただいた資料なんですけれども、広島県が公表した土砂災害危険区域内に立地している避難場所がどれだけあるかということなんですね。

広島市がもちろん指定することになるわけですが、このエリアの中にあった避難場所は除外したと。これは危ないからということですよね、今度の災害を受けて。その災害を受けて避難場所あるいは候補施設から除外した数が、御覧のように二百七十八施設あるということなわけです。

逆に言いますと、これまで、この災害が起こるまでこの二百七十八施設が避難場所として指定をされていたということになるわけで、同じような危険な箇所に避難場所があるという、あるいはそれを前提とした避難訓練などの計画があるという地域が日本中にあるのではないかとも思うんですけれども、この数字について、大臣の御感想いかがでしょう。

○政府参考人(日原洋文君) 済みません、先に避難所と避難場所についての考え方、説明させていただきます。

東日本大震災におきまして、切迫した災害の危険から逃れるためのいわゆる避難場所と、それから切迫した災害の危険が一定過ぎた後、しばらくの間避難生活を送るための避難所というものが従来は区別がされておりませんで、避難所に逃げ込んだ結果、そこで津波に巻き込まれて命を落とされたケースございました。今回の広島の土砂災害におきましても、高潮、洪水用の避難場所として定められていた集会所に避難した住民が土砂災害に遭われたというケースもあったというような報道もございます。

このような東日本大震災の経験を教訓といたしまして、昨年行われました災害対策基本法の改正によりましては、市町村長は、避難所と区別して避難場所というものを指定することとされております。この避難場所につきましては、想定される災害に対して安全な区域にある、あるいは想定される災害に対して安全な構造であるということを指定の要件といたしておるところでございます。

これを受けまして、現在、各市町村におきまして指定緊急避難場所の指定作業、今申しましたその避難場所を指定したものを指定緊急避難場所と呼ぶんですけれども、その指定緊急避難場所の指定作業を進めている最中であるというふうに承知しておりまして、その指定状況につきまして、現在消防庁において調査を行っているところでございます。

内閣府といたしましては、そうした指定状況を踏まえまして、関係省庁と連携しながら制度の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 いや、それはそういうことで取り組んでおられるんだろうけれども、だけれども、現に広島市でこういう状況にあるということなんですね。

反対側の面を見ていただきますと、その避難場所というのは大方公共施設が想定されますけれども、御覧のとおり、例えば集会所とか公民館で百十三施設、福祉センターだとか保育園、あるいは市営住宅や学校など、公共施設がこの危険なエリア内に九百七施設あるというのが広島市の現状なんですよ。

これは、開発の後追いになってきたこれまでの政治の結果だと思います。だからこそ、どう解決するのか。そう簡単にいかないと思うんですよね。だけれども、例えば土石流が現実に襲ってきたというところであれば、そこに復旧するのかという問題ももちろんあるでしょうし、そうでない、今回災害から免れた日本中の地域でも、ここの場所のままでいいのかという総点検を、住民の皆さんの気持ちや不安にしっかり応えながら、科学的な安全性もはっきりさせながら進めていくというのがどうしても必要だと思うんですね。

これは土石流だけの話ではありませんで、八月に京都府の福知山市で豪雨災害における大水害がありました。あのときには、先ほど来議論になっている災害拠点病院の周りの道路が冠水して、救急車が六時間入れなかったという事態が起こったんですね。このときは、搬送した救急患者さん三人のために高台に救急車を止めてボートで病院に運ぶと。だから、通報があってから病院に到着まで一時間以上掛かったケースもあったと。幸い命に別状がなかったわけですけれども、というような事態が災害拠点病院で起こっているわけですよ。
避難所、避難場所だったり災害拠点病院だったり、そうしたところがどんなリスクを抱えているのか、これ総点検をしっかり行って、住民の皆さんの合意の中で解決していくということが、大臣、必要だと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(山谷えり子君) 災害対策についてでございますけれども、一般的に不断の見直しが必要でありまして、総点検という委員の御指摘でございますけれども、様々な観点から意識を向けていけるように、関係省庁と連絡しながら、地方公共団体とも連携しながら働きかけを進めてまいりたいと思います。
○仁比聡平君 是非お願いしたいと思います。

ちょっと時間なくなりましたが、法案に関して一問。

今度の広島の土石流でも、車両が救助活動のために移動しなきゃいけないということが大問題になりまして、広島市によりますと七十二台の移動を行っています。これ、救助に支障があるということで消防局が行ったものが三十六台、そのほか道路にあるものについて、あるいは民地にあるもの、こうしたものを合わせて七十二台なんですが、災害ですから、ナンバープレートが外れていて特定できないとか、あるいはナンバー登録されている住民の方の家が流されているとか所有者の所在が不明だということで、まだいまだに山積みになっているものもある。

この広島においては同意を得ながらの作業で、そこに大きな困難もあったと思うし、御努力されたと思うんですけれども、今回の改正で、その移動に関する手続というのは一定負担が減るということがあるかもしれないが、その分、損失補償においては、同意を得て移動されているわけでもないわけですし、ここの作業にとりわけ道路管理者、例えば市町村が相当な苦労をするということも私は想定されると思うんです。その自治体の負担、これを軽減するために必要な人的、財政的な支援を私は是非これはやるべきだと、急いで道路を啓開するけれども、その後起こることはやっぱりこれきちんと支援するべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(山谷えり子君) 人的また財政面含めた国の支援ということでございますけれども、議員御指摘のように、大規模災害の発生時には、地方公共団体における道路管理者のみの人員、資機材では実際の啓開が行い得ない状況が発生することが想定されます。このような場合には、市町村が都道府県や国に要請するなど、本来道路管理者以外の者により道路啓開を行うことで人的な支援を行ってきたところであり、例えば八月の広島の豪雨災害においても、広島市からの要請を受けて、広島市道の土砂撤去等を国土交通省において実施したという例がございます。

また、道路啓開に必要な経費につきましては、原則として通常の維持管理経費の範囲内で各地方公共団体において負担することとしておりますが、大規模な災害により当該経費の範囲を超え地方公共団体の負担が大きなものとなる場合には、地方公共団体の対応状況等をよく伺った上で国として適切な対応を検討してまいりたいと思います。

○仁比聡平君 よろしくお願いします。

終わります。