○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

特定秘密保護法につきまして、秘密の恣意的な指定を防止する、適正な運用を確保するという重層的な仕組みをつくったと政府は説明をしてこられました。そのうち、実際に個々の秘密の提供を受けてチェックし得るとしたら、そうした機関は二つだけであると。お手元に資料をお配りをしておりますけれども、内閣官房に置かれる内閣保全監視委員会、それから内閣府に置かれる独立公文書管理監とその事務局としての情報保全監察室である、個々の秘密の提供を受け得るとしたらこの二つであると。このことは先週十一月四日の予算委員会において確認をできたと思っております。

この内閣保全監視委員会は、秘密保護法十八条に基づく内閣総理大臣の権限を、秘密を指定する官庁のトップ、事務次官級で構成される、つまり仲間内のこの委員会が補佐するというものです。

だったら、内閣官房の秘密、例えばNSCの秘密ということになれば、総理がその秘密を指定する権利者ですから、総理が指定して、総理がチェックするということになるではないか。そうした自分で自分をチェックするというのは何のチェックにもならないではないかという大きな批判の中で、昨年、強行採決の間際に持ち出されたのが、今、閣議決定でこうやって確立をした仕組みとおっしゃっているのは、右の独立公文書管理監なんですね。ですが、この管理監の任命権者、指揮監督者は誰かというと、これは内閣総理大臣です。総理の秘密指定を総理の任命した人がチェックする。保全監視委員会は、総理自身が指定した秘密を総理自身がチェックをするときに、仲間内が補佐する。

これが、例えば、総理が情報保全諮問会議の最初の会合のときに、しっかりとした外部のチェック体制を導入すると発言をしているんですけれども、これが外部のチェック体制などと言えるのかという問題なんですね。

そうなりますと、大臣、総理が、仮にですよ、仮にですよというか、仮にでもいいですよなんですけど、恣意的な秘密指定をした場合、あるいは都合の悪い情報を特定秘密に指定して隠そうとした場合、仕組みの上では誰もチェックできないということになるのではありませんか。

大臣、大臣、大臣に聞いている、大臣。

○政府参考人(北村博文君) お答え申し上げます。

特定秘密の指定……

○仁比聡平君 短く。

○政府参考人(北村博文君) 承知いたしました。

内閣総理大臣が指定をする特定秘密というものもございますけれども、多くの秘密というものは防衛省あるいは外務省といったような役所によって指定されるところでございまして、全て内閣総理大臣が指定をする立場とチェックを行う立場を兼ねているということではないというふうに考えております。

また、独立公文書管理監の事務あるいは各行政機関との関係というものにつきましては、運用基準におきまして適切に規定をし、検証、監察が厳正に行うことができるようにしてきたところでございまして、これらの規定によりまして適切な検証、監察がなされるというふうに考えております。

○仁比聡平君 大臣、今の審議官の答弁も、私の問題提起を否定できないじゃないですか。

総理が指定する秘密というのは現にあるわけです。それは、NSCに集中する国家安全保障に関わる情報の中で極めて重要なものだということが想定をされるわけです。総理は、自らこれを全てチェックして適正に判断するんだと言っていますけれども、そうやって総理が指定するという、そこに恣意性が入り込んだときに、仕組みの上では誰もチェックできないということになりはしませんかと、違いますか。

○国務大臣(上川陽子君) 先生からの御指摘の、結局のところ、チェックのとどまるところは内閣総理大臣ではないかという中での御指摘でございますが、このチェックの機能、チェックについては二重、三重の様々なレベルでの対応をしていくということの、そのことがきっちりと行われるということが非常に大事であって、そして、最終的にそうした一人の人がチェックするのではないかということについては、こういうところについて行き着かないまでにしっかりと対応していくということがこの運用の中で大変大事な視点だというふうに思っております。

その意味でいくと、この内閣官房内閣保全監視委員会、こちらについては適正な情報の指定がなされ、そして解除がなされ、そして適性評価がなされということについて、それぞれの行政機関に対して指揮監督をしっかりとしていくということでございまして、そのことができるような仕組みということで、それがうまく機能するようにというふうなことでございます。

もちろん、NSCにおきましての長につきましては、内閣総理大臣が指名を、指名というか指定をするということでございますので、そのことを論理的に動かしていけば最終的には総理大臣ということになりますが、そこのところについては、いろいろな形で仕組みの中にチェック機能を持たせていくということで対応するということだというふうに思っております。

また、内閣府の中に独立公文書管理監と情報保全監察室を設けるということでございますけれども、特に特定秘密の指定等の検証、監察を行うという独立した機関という形で、これは四党合意の中で、踏まえました上で内閣府に置くというような形になっていたものというふうに理解をしているところでございます。

内閣官房と内閣府ということで分離をし、なおかつ先ほど答弁いたしたところの防衛省とかあるいは外務省という行政機関と独立したところで対応していくということが本意であるというふうに思っておりまして、この指定を行う立場、それでチェックを行う立場、こうしたことについてしっかりとその機能を果たしていく、これをしっかりと内閣総理大臣がチェックをしていくと、こういう関係になっているというふうに思っております。

○仁比聡平君 先ほどその四党合意の当事者の会派の真山理事から、いや、独立した立場になっていないじゃないかと批判があったところじゃないですか。論理的にはそういうことになると、私の問題提起をどうも受け止めておられるようにも思うんですけれども。

二重、三重のチェックと言いますけれど、独立公文書管理監について聞きます。

これ、管理監が、秘密を指定する行政機関の長、これが総理であることもあるわけですが、その指定が正しいかどうかを判断するために提供を求めると、秘密の。それに対して、いやいや、これは提供できませんと理由を疎明して断ることができる仕組みですよね。管理監がどこに対してどんな秘密の提供を求めたのかという件数や、それに対してどんな対応になったのかと、理由を疎明して提出できないとなったのだったらばその経過、これは国会に報告がありますか。

○国務大臣(上川陽子君) この先生の提示されていらっしゃるチェック体制も見ても、国会というところに行政府の方から年に一度運用状況の報告をすると、こういうことでございまして、政府は毎年特定秘密の指定状況につきまして国会に報告をし公表するというふうにされているところでございます。

そして、御指摘の独立公文書管理監の報告、公表ということでございますけれども、これにつきましては、運用基準ということにおきまして、独立公文書管理監が年一回、独立公文書管理監及び行政機関の長がとった措置の概要につきまして内閣総理大臣に報告をし公表すると、こういう手続になっているところでございます。したがって、この報告とか公表につきましても適切に対応するということでございます。

○仁比聡平君 何で繰り返して本当にそんな答弁をやりますかね。

適切に対応してまいりますと言うけれども、公文書管理監が報告の内容についてどうするか、これについて、そうしたらルールが決まっていますか。

○国務大臣(上川陽子君) 政府から国会への報告あるいは独立公文書管理監の報告等をどのような内容とすべきかにつきましては、法の運用状況も見ながら検討していくべきものというふうに考えておりまして、独立公文書管理監が行政機関の長に対して特定秘密の提供を求め、また行政機関の長が理由を疎明してその求めに応じないというようなことがございましたならば、その報告や公表につきましてもしっかりと適切に対応していくということでございます。

○仁比聡平君 いや、つまり、独立公文書管理監がどういう報告をするかをこれから決めるということなんでしょう。決まっていないという、そういうことなんでしょう。

総理は、この問題について、私の質問の中で、我々がこうした体制でチェックをしていくということであります、この仕事自体を根本から全く悪意によって運用されるというふうに考えられてしまえば、これはもうお答えのしようがないわけでありますと言っているんですよ。

悪意という例は、核密約、つまり核搭載米艦船の事前協議なしの立入りを行っているのではないかというこの問題について、繰り返し日本の戦後政治において問われてきましたよね。明らかになっている文書を目の前で突き付けられても、歴代の総理はこれはないと言ってうそをつき続けてきた。つまり、総理大臣が悪意によって重要な情報を隠し立てする、これ現実に起こってきたわけです。

そういう悪意によって運用されるということになったら、それはもうチェックと言われてもお答えのしようがないと総理が言っているように思うんですけど、つまり、そういう場合には仕組みの上で防ぎようがないということになるんじゃないですか。大臣。

○国務大臣(上川陽子君) この今御指摘がございました悪意による運用ということでございまして、このことについて総理が言及されたということでございますが、一般論、そもそもということでありますけれども、総理を含むこの法律の施行に関わる公務員が、国会の定めた法律あるいは閣議の決定に従うことがおよそ期待されないことを前提としてこの制度そのものが、良しあしを論ずることは適当ではないというような御発言だというふうに思っております。

私もそのように理解しているところでございます。

○仁比聡平君 何を言っているんですか。私が核密約のようなという問いに対して総理がそう言っている、答えているんですよ。

外務省の有識者委員会報告書、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書で、もう時間がないですから端的に一文だけ紹介しますけど、何より問題は、歴代の政府答弁が安保条約の事前協議に関して日米間には交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解しかないとする、事実に反する明白なうそをつき続けたことであると述べているくだりがあります。これ、討議の記録という、密約かと言われている文書が存在しているからなんですね。明白なうそをつき続けたと有識者委員会の報告書でも言われている。そうした事態が起こったときに一体どうなるのかと。

総理は、私の質問に対してこうも答弁されたんです。

○委員長(魚住裕一郎君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。

○仁比聡平君 過ぎていないんじゃないでしょうか。

○委員長(魚住裕一郎君) 過ぎています。

○仁比聡平君 政権が交代をしていく中において、後の政権によってそれは十分にチェックされるのであると。つまり、秘密保護法の仕組みの中では恣意的な秘密指定、とりわけて総理による指定がチェックされないということをお認めになっているのと同様ですよね。

こんな法律は廃止するほかないということを改めて強く申し上げて、質問を終わります。