諫早湾干拓事業をめぐる「漁民と農民の対立」などの疑問にこたえ、民主党政権の「自民党返り」と「農漁共存の段階的開門」の展望を、小論「有明海問題の現局面―開門義務は揺らがない」(『議会と自治体』10月号)にまとめました。

8月下旬の豪雨で、また諫早市森山地区に深刻な湛水(たんすい)被害が起こりました。国と県は「防災も農業用水も潮受け堤防で解決する」といって事業を押しつけましたが、実際には大雨のたびに被害が繰り返されています。国がいうのとは逆に、洪水時には調整機能を失った調整池からの逆流で低平地に被害が集中するのではないか、とも考えられるのです。

今月13日、直接実情を聞こうと現地を訪ねたところ、一貫して事業推進と開門阻止の先頭に立ってきた高橋徳男さん(諌早干拓土地改良区理事長)たちから、思わぬ出迎えをしていただきました。テレビでも法廷でもない、現場での開門反対派と私たち開門派との初めての出会いでした。

森山地区のご先祖が祭られ、明治以来3度の干拓地を一望できる五穀公園にまず私たちを案内した高橋さんは、ほとばしるように「農水省は間違っている」「旧干拓地は置き去りにされてきた」と、昭和38年入植以来の干拓営農者の苦闘を語り続けました。

「近くのため池から水を引く」と約束しながらほごにし、代わりの水の手当てもせずに入植者を置き去りにした国。大干ばつ時、1週間水を貸してもらうのにどれほど頭を下げたか。狭い排水路が古い堤防でさえぎられている国の設計のずさんざ。かつて地下水くみあげで70センチ以上地盤沈下したのに、なお300メートルの深井戸をいう国への怒り…。

排水路整備とポンプ増強を迫った私の国会質問(2009年5月)も喜ばれました。無責任で不誠実な国の姿勢こそが問題解決の桎梏(しっこく)となっています。農水大臣こそ直接現地に立っで苦闘の歴史と経験に学び、事業の具体化を指示すべきなのです。

人間同士。対話の土台は十分にあります。誠実な対話の発展を心から願っています。(しんぶん赤旗 2011年10月19日)