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自民、公明、民進3党は、「部落差別」永久化法案(部落差別解消推進法案)を12月8日の参院法務委員会で採決する構えです。主要な同和関係団体が出席した、画期的で重要な参考人質疑が12月6日に行われ、差別解消に逆行し差別を固定化するという法案の危険性が鮮明となり、廃案を迫る声が上がりました。

 

国が2002年3月に同和対策特別事業を終結させ、14年が過ぎるもと、部落問題の現状・到達点はどうなっているか―。

全国地域人権運動総連合(全国人権連)の新井直樹事務局長は、「社会問題としての部落問題は基本的に解決された」、「国民の多くが日常生活で部落問題に直面することはほとんどなくなった」と述べました。

 

「解同」(部落解放同盟)中央本部の西島藤彦書記長は、「部落差別が存在し厳しい実態」だとし、「部落問題の議論が希薄化している。今回(の法案は)そこに焦点をあてる」と法案の成立を要求しました。

 

これに対し、石川元也弁護士は、「西島氏の言う『希薄化』がされ、部落差別の解消が進み、国民の間に大きな問題としては残っていない」と指摘し、さらに自民党の友誼(ゆうぎ)団体である自由同和会推薦の灘本昌久・京都産業大学教授も、「日本は(差別を)うまくなくしてきている。西島氏の現状認識は差別の過大評価」と述べました。

 

有害な「実態調査」

 

法案は「差別解消」の「施策」として、「実態調査」などを国・自治体に義務付けています。ところが、「差別」の定義はなく、「何が部落差別にあたるかの判断を、誰がやり、どうやるのか」(石川氏)という根本問題があります。

 

日本共産党の仁比聡平議員は、大分県宇佐市による差別意識の調査を取り上げて質問。全国人権連の新井氏は国民の内心に介入する意識調査は「有害」だとして、「差別意識を拾い出そうとすることは即刻やめるべきだ」と述べました。

 

さらに法案は、「教育および啓発を行う」と規定しています。

 

「解同」の西島氏は、法務省人権擁護委員が「人種間題に精通していく研修」などを要求。また、人権擁護委員の役割に「制約がある」として、「われわれが(差別を受けた人と)一緒に、行政(との)話し合いをもったり、いろんなことをやってきている」と述べました。

 

石川氏は「社員教育と称して解放同盟役員が社内教育をやって自分たちの考え(の押しつけ)をやる。そういう研修もある」と述べ、「解同」が介入してきた歴史を告発しました。「差別」に対する「解同」の無法な私的制裁「確認・糾弾」について、「著しい介入が行政の主体性を奪った」と指摘しました。

 

「糾弾」復活の危険

 

仁比氏は、「解同」が15年7月に宇佐市に出した「基本要求書」のなかで、「同和教育のカリキュラム化」や「市の職員の研修強化」を迫っていると指摘。西島氏は「そういう要求書は聞いていない」と答え、否定しませんでした。

 

「確認・糾弾」をめぐっては、各会派が相次いで懸念を示し、与党からも「この法律によって、また同じようなことがされたらとんでもないことになる」(自民・西田昌司氏)との声が出ました。(しんぶん赤旗 2016年12月8日)