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 税金の滞納を理由に鳥取県が、禁止されている児童手当の差し押さえをしたのは違法だとして、鳥取市内に住む自営業の男性(40)が県を相手取り、処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が3月29日、鳥取地裁(和久田斉裁判長)でありました。判決は差し押さえを違法と認め、「子を持つ父親として多大な精神的苦痛を被った」として慰謝料20万円と弁護士費用の支払いを命じました。

 訴えていた男性は病弱な妻と子ども5人の7人家族(当時)で、本業の収入が激減したため、個人事業税や自動車税約24万円を滞納していました。2008年、2カ月半にわたり残高73円しかなかった銀行口座に児童手当13万円が振り込まれた9分後に、県は全額の13万73円を差し押さえました。児童手当は滞納していた子どもの教材費や給食費にあてる予定で、その後、子ども1人が高校中退を余儀なくされました。

 児童手当が銀行口座に振り込まれた場合、「一般財産と混在」するとして最高裁は差し押さえを認める判例(1998年)をだしています。判決では、最高裁の判例を踏まえ、差し押さえは原則として許されるとしながらも、県が児童手当によって租税を徴収することを意図し、児童手当以外に預金口座への入金がない状況を知っているか、知りえる状態にありながら処分を断行した場合は、児童手当法の精神からの裁量逸脱であり、違法と認定し、県の処分を取り消しました。国家賠償法の違法があったとしました。

 日本共産党は09年に佐々木憲昭衆院議員が財務金融委員会で、仁比聡平参院議員(当時)が決算委員会で、この問題を質問。当時の与謝野馨財務相から児童手当は子どもの養育に使うという目的に達せられるべきものだとの答弁を引き出しました。

【児童手当】 児童手当法により、児童を養育している者に支給され、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的としています。第15条で児童手当の受給権は、差し押さえることができないとしています。

(しんぶん赤旗 2013年3月30日)